バングラデシュ・ダッカのテロ事件で犠牲になった日本人1:JICAの開発支援の思い届かず

バングラデシュの首都ダッカで7月1日に発生したテロで、JICA(国際協力機構)の職員である日本人7人を含む20人が犠牲となった。現地で日本人が利用することの多いレストラン『ホーリー・アーティザン・ベーカリー』が、IS(イスラム国)の過激思想に影響されたテロリストに襲撃されて、ほとんど抵抗や交渉をする余地もなく銃器やマチェット(大型の刃物)で殺害されたと報じられている。

犠牲者の一人はテロリストに『自分は日本人だから撃たないでくれ』と懇願したが、その言葉によって相手が日本人の殺害を思い留まってくれることはなかった。一部ではイスラム教徒(ムスリム)であるかどうかを質問してから犠牲者を選別して、ムスリムのバングラデシュ人であれば解放されたと伝えられているが、それを受けて日本人と言わずに『アラー・アクバル』と叫んでイスラム教徒であると言っていれば助かったのではないかとの意見も出されたりした。

しかし、はじめから反IS勢力(バングラデシュにおける欧米寄りの非ムスリム)と見なされている『日本人・外国人』を標的にしたレストラン襲撃計画を練っていた可能性が高い。思いつきの付け焼刃で、アラー・アクバルだとか自分がムスリムだとか言っても最悪の結果は変えられなかっただろう。

下手に嘘をついてテロリストから『コーランの一節を何でもいいからアラビア語で暗誦せよ』などと詰問され答えられなければ、余計に酷い目に遭わされていたかもしれない。実際に、コーランの暗誦を要求されてできなければ首を切り裂かれた非ムスリムの被害者もいたという。

バングラデシュの人々のために支援活動・技術協力をしているJICA職員が、『自分が日本人である(バングラデシュの国や人に悪意がないのは分かってくれているはず)』と訴えることで、もしかしたら嘆願・助命の効果があるかもしれないと思ったのは不思議なことではないだろう。

バングラデシュのテロ事件は、明確に日本人がISのテロの標的(ターゲット)にされたということでショックな事件だが、今回のテロの犠牲になってしまった7名の日本人は、JICAのODA(政府開発援助)の職務を通してバングラデシュの現地の人々のために献身的な仕事や支援活動をされていた人たちばかりなので、余計に善意を悪意で踏みにじられたような憤りを感じざるを得ない。

本人たちも自分自身の仕事や支援活動が、少しでもバングラデシュの人々の役に立って欲しいという使命感があっただろうし、JICAの援助活動がバングラデシュの明るい未来を築く一助になっているはずというやりがいや自負を持っていただろうと思う。何よりJICAのような国際援助機関で熱心に働いている人たちが、赴任しているバングラデシュの国や人を嫌いであるはずがなく、むしろ好きでもっと幸せになって欲しい(少しでも役に立てれば嬉しい)との思いを持って働いていたことを思うと胸が痛むばかりである。

ダッカのテロ事件は、IS(イスラム国)のテロネットワークと学生のリクルートシステムが、東南アジアのバングラデシュにまで拡大していることを示す事件でもあった。シリアとイラクを拠点としているISは現地では勢力・支配地を縮小しているという報道がある一方で、中東・北アフリカ・EUを超えて東南アジアや東アジアへもテロネットワーク(現行の社会のあり方や世界の秩序に不満・義憤を抱くムスリムの若者などのリクルート網)を広げつつある可能性がある。

テロ事件では実行犯の6人が、治安部隊との戦闘で射殺され、生き残った1人は拘束された。現場から救出されるなどした27人の中にも複数の協力者がいたとされるが、監視カメラの映像にテロリストと事件直前に会話する様子が記録されていたハスナトカリムという人物がキーパーソンのようである。ハスナトカリムはバングラデシュ国内で最高峰とされる私大のノース・サウス大学で教授(講師との表記もあり)を務めていた経歴があり、そこで襲撃犯のリーダー格のニブラス・イスラム容疑者と接点を持ったのではないかとも見られている。


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