65歳以上の人口比率が“26.7%”の超高齢化社会の問題と対応:子供・仕事・格差・社会保障の論点

国勢調査の結果を報じるニュースでは、65歳以上の人口比が“26.7%”となり初めて4人に1人を超えたという。日本の『少子高齢化・人口減少』の問題は、女性の合計特殊出生率が下がり始めた戦後に長らく指摘されてきていたが、今まで平均寿命が延びていた事から、子供の数が少なくても日本の総人口は殆ど減ってこなかった。

日本は他の先進国が経験したことのない超高齢化社会に突入しようとしているが、大きな問題はマクロレベルでは『社会保障費の急速な増加+国家財政・地方財政の急速な悪化(財源不足)+国内市場の縮小や労働力不足』であり、国民生活のミクロレベルでは『高齢者の貧困・病気・介護・孤立の問題+高齢者福祉による現役層(若者層)の負担増加+過疎地を中心とした地方の疲弊と村落自治体の消滅危機』である。

河野稠果『人口学への招待 少子・高齢化はどこまで解明されたか』の書評1:人口爆発と人口減少の動態

一億総活躍社会で『人口減少・労働力不足』を解消できるか?:女性・高齢者の潜在労働力の期待と結婚・出産

もっとも根本的な原因としては、『日本経済の低成長(マイナス成長)による長期停滞』『十分な人数の子供が生まれない合計特殊出生率の低さ・晩婚化未婚化の進展』が考えられる。

だが、なぜ日本経済が成長しないのか、どうして雇用の質や所得が落ちているのか、なぜ若い時期に結婚する人や子供を産む人が減っているのかという問題は、グローバル市場や先進国の傾向、男女の心理とも相関しており、日本社会全体が直面している『複雑な背景・構造・要因』が絡んでいるので、この根本的な原因を解決することは不可能に近いくらいに難しい。

15歳未満人口は5年前の国勢調査と比較して、13.2%から12.7%に減少して人口の8人に1人も子供がいないような状況になってきているが、『大勢の子供が産まれないという現象』の背後には、働いている現役の若者層の雇用待遇(所得水準)が悪化していることや結婚して子供を作りたいと思える異性との出会いがないこと(恋愛の段階から上手くいかないこと)が直接の原因としてある。

だが、それだけではなくて何が何でも必死になってお金を稼いで結婚・育児をしてやろうという『労働・結婚・出産の動機づけ』が高まりにくいという心理面の問題もある。

『結婚すること・子供を持つことを目的化して最優先する生き方』が現代では中心的なものではなくなってきていて、『雇用・所得・相手』などで好条件が揃っていれば結婚・出産も視野に入れて行動するが、それらの条件があまり良いものでなければ(非正規雇用の人が更にバイトの収入を加えて家族を養う・出会いがない人が婚活サイトや街活に参加して相手を探すなど)無理をしてまで子供を作ろうとは思わないという人も増えている。

また給与や待遇の良い正規雇用に就職できても、長時間労働・高ストレスのハードワークに耐え切れずに途中で退職してしまって、その後に同程度の雇用待遇の仕事に就職することが難しくなり、非正規の仕事を派遣・バイトで転々とするしかなくなったという人もいて、結婚・出産をバックアップする『雇用待遇・経済条件の長期安定化』を実現できる若者が減少傾向にある。

世間体や周囲の出産動向を気にしやすい正規雇用であったり、周りの仲間関係が結婚・育児を中心としたものであれば、『みんなと同じライフステージを進まなければといった同調圧力』も強くなりやすいが、非正規雇用で経済的に苦しかったり(経済条件で結婚相手として見てもらいにくかったり)周囲の友達関係が希薄化していたりすると、自分の生活だけでいっぱいいっぱいであればなかなか結婚・子供に向けた具体的な行動を取れないということにもなる。

確かに、年5%以上の高度経済成長が続いて、大きな利益を上げた企業が新卒採用でも中途採用でも大勢の若年層を採用し、企業内で教育訓練の機会も与えながら、年々所得が増加していくような環境が長く続けば、婚姻率・出生率は改善する可能性が出てくるが、現実的にそこまでの高い成長率や(特別なスキル・実績を持たない労働者の)高待遇の雇用の増加というのは期待しづらい状況にある。

安倍首相が自画自賛するアベノミクスによって、史上最高益を上げる上場企業が増えて、日本の金融市場(株式市場)は一時的に大きく上昇したが、大企業は大きく儲けてもその利益の大半をもしもの時のための『内部留保』として蓄えたり、大金を投資してくれる株主のための『配当金』として分配するだけで、『雇用の量・質』が劇的に改善される(収入が大幅に増える・非正規が正規雇用に転換される)というわけではないようである。

公的な年金・医療・介護に関連する『税と保険料の負担』が増加し続けていること、現役世代が将来受け取れる年金給付額が大きく減りそうなことなども、『現役世代の可処分所得の減少・将来の楽観的見通しの抑圧・社会保障に対する信用低下』につながっていて、若い人たちの所得に占める保険料の負担率が上昇する中で子供の数が増えることは考えにくい。

子供がもっと増えなければ将来の労働力が不足すると言われている一方で、現在の労働力である若者たちの雇用待遇や所得水準はそれほど恵まれたものではないし、一部の未来予測として出されている『シンギュラリティー(技術的特異点)』ではIT・ロボットの技術革新と普及によって、現在ある職業の半分近くが失われる(ロボットに仕事を奪われた失業者が急速に増加する)と言われていたりもする。

2045年よりも先の未来社会の雇用や所得がどうなっているかなどは、ほとんど想像の範疇を出ないものであるが、『労働力が不足する問題』が長く指摘されている割には『現役の労働者が大切にされている実感(未来の労働者の収入・待遇がもっと良くなっていく予感)』がないという矛盾もあり、少なからぬ人が頑張って働いていても豊かさや満足感を感じられないままでいる。『格差拡大・貧困問題(若者・女性・子供の貧困)・政治腐敗・官民格差・意欲減退』などがそこに加わることで、更に結婚・出産育児につながっていく社会の活力が奪われやすくなっているのだろう。

現役の若年層・労働者層が疲弊したり不満を抱えている中で、社会保障制度の給付率でそれ以下の世代より格段に恵まれているはずの高齢者層の中でも『格差・貧困・孤独・子供の自立困難(老親の年金頼みの生活)』などの問題が立ち上がってきている。

高齢者の社会保障費の削減をしないと財政が立ちいかないと言われながらも、『介護難民(行き場のない高齢者・認知症者)・介護殺人(老々介護)・心中事件』などの悲惨な事態も目立ってきており、裕福で人間関係にも恵まれた高齢者とそうでない高齢者との福祉の手厚さの加減・調整も必要になってくるのではないかと思う。

一般的な超高齢化社会・人口減少社会の処方箋としては、『経済成長を前提とした現役世代の所得・雇用待遇の改善』と『社会保障費を節約できる高齢者の健康寿命の延長・治癒の見込みがない延命治療の見直し』などが出されるのだろうが、現在の日本をはじめとする先進国が直面している問題・心理の構造は格差問題に象徴されるように『個人個人の意識・環境・関係・経済力・居住地(都市か田舎か)の差異』がネックになっている。

現役だから一律に強者(年齢が若いのだから努力すれば何でもできる)、高齢者だから一律に弱者(年齢が高いのだからみんな手厚く保護すべき)という固定の定義に縛られた政策では有効な対応が難しくなっている。

『個別事例・個人の事情や原因に即応したケースワーク』を社会福祉・生活保護の領域だけに捕われずに柔軟に適用していくことが求められるような複雑な問題状況になってきているが、『全体の社会的利益にもつながる個人個人の意欲・動機づけ』を自律的に高めていくようなケースワークや個別支援体制を強めていかないと、『困窮・貧困・格差・無気力(社会全体のコストを増やしてしまう個別のマイナス要因)』を改善することは難しいだろう。


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