イギリスのEU離脱問題とブレグジットの賛否を問うた国民投票の内訳(属性・特徴の分類):2

イギリスがEUに残留すれば、EU加盟国27カ国のヨーロッパ全体にフリーアクセスできる経済的・移動的なメリットがあるのだが、英国民(厳密には投票をした英国民)はそのメリットを捨ててでもEUを離脱したいという人が多かったのである。

EUの残留・離脱の国民投票の結果の内訳を見ると、概ね以下のような特徴・属性で分かれていたと報じられていた。

離脱派が多い……地方都市や郊外、高齢者、移民と競合する労働者や義務教育修了レベル、南部(イングランド、ウェールズ)

残留派が多い……ロンドン、グラスゴーなど都市部、若者、知識人や大卒レベル、北部(スコットランド、北アイルランド)

イギリスのEU離脱問題と長期化しそうな離脱プロセス:1

英国のメディアの分析では、離脱派の中心を構成していたのは、『郊外の地方都市に住む保守派の高齢者層』『イギリスの国家主権が制約されていると感じるEU加盟の現状(特に移民・ムスリムの大量流入)に強い不満・反発を抱いている労働者層』であるという。

高齢者には世界的な覇権国だった大英帝国時代の過去の歴史への郷愁とプライドがあり、EU内の一国として扱われ、イギリスだけで決められない外交・内政・規制のテーマが多いことに苛立ちを感じているようだ。ヨーロッパの大陸からドーバー海峡を挟んで離れた『島国』の地理的特性も、英国民の『ヨーロッパ人というアイデンティティー』を阻害しているとも言われ、制度的にもユーロを受け入れずに自国通貨のポンドを維持しており、国境管理も他のEUの国より厳しめになっている。

今でもイングランドとウェールズの地方都市を中心として『我々はイギリス人というアイデンティティー』が強いとされる。だが、日本ではイギリスと呼ばれている国は、現実的には複数の国家・民族が寄り集まって、過去に王権拡大を中心に政治的に統合された『連合王国(UK)』であり、『残留派が多数のスコットランド・北アイルランド』を中心にして、UKからの独立意識を持った英国民も多く、『内部分裂のリスク』を孕んでいるのである。

英国のEU離脱が、『UK(連合王国)の分裂・瓦解』につながるのではないかと言われる所以でもある。

『グレートブリテン及び北アイルランド連合王国』がUK(連合王国)であるイギリスの正式名称であるが、この連合王国は『イングランド・ウェールズ・スコットランド・アイルランド』というかつては独立国だった周辺国を合併してできた約200~300年の歴史を持つ国である。しかし、スコットランドも北アイルランドも独自の議会・制度・言語を持っていて、『我々はイングランド人とは違う』という民族意識も強いなど、連合王国(UK)内部にあっても『文化圏・民族圏の差異』は相当に残っている。

EU(欧州連合)とヨーロッパ人という意識は『差異の包摂・民族の均質化』を志向することによって、『地域・民族の利害と独立心』を背景に持つ国家間の紛争を回避し続けてきた。

だが、ここに来てEUだけではなくアメリカやアジアにおいても『地域・民族の包摂と制度的な一体化=中央集権・多様性・グローバリゼーション』よりも、『地域・民族の分離独立と主体性の再確立=地方主権・同質性・ローカリゼーション』を支持する人たちが増えてきているような印象を受ける。

今は民主党のヒラリー・クリントンのほうが優勢という報道も多くなっているが、アメリカの大統領選挙で移民排斥・孤立主義・世界への貢献縮小を公約に掲げる『ドナルド・トランプ旋風』が起こったこともその一つの現れだろう。


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