“iPhone SE”の4インチ回帰とスマホの進化に対する期待感・想像力の低下
Appleがコンパクトな4インチの“iPhone SE”を発売したが、“iPhone6(iPhone6S)”の時代まで感じられたスマホのバージョンアップによる分かりやすいメリット(進化したポイント)が見えづらくなった。iPhone SEは実質的に、A9を搭載したiPhone6Sを多少の機能を削りながらそのまま小型化(ダウンサイジング)したような商品に見える。
iPhone SEは機種名に5や6といったナンバーが付与されていないので、iPhoneのオーソドックスな進化を示す新商品ではなく、画面の大型化を嫌う『手のひらサイズ(片手操作可能なサイズ)』のスマホをもう一度販売して欲しいというニーズに応えただけの商品という見方ももちろん成り立つ。
一方で、“次のiPhone7”以降のスマホの新規な機能やより優れたデザインがほとんど見えないという『スマホ進化の停滞感(イノベーションによる市場の持続的成長の困難)』は強まっており、時価総額で世界トップだったAppleの株価も低下しがちになっている。
今販売されているスマホのモデルで、スマホの商品や市場が概ね成熟してしまったのではないか、これ以上消費者をあっと驚かせるイノベーションはもう起こりにくいのではないか(昔のPCのようにスマホもコモディティ化してしまいそれほど頻繁に買い換えなくなる)という見方が強まってきたとも言える。
世界のスマホ市場ではAndroidのシェアが約8割で圧倒的に大きくなっており、日本でも通信費の高さ(0円スマホの販売方式の規制)からMVNOの格安スマホに目を向けるユーザーが増えてきているが、AppleがiPhone6Sまでの驚異的な成長路線を次の7以降にも持続していけるかに不透明感が出てきている。iPhoneを筆頭とするスマホの新商品に対するワクワク感が落ちており、『旧モデルの全般的なスペックの向上』以外に目立った変化や期待感を持ちづらくなっているのが問題なのだろう。
高性能のA9チップを搭載し、4インチのコンパクトな画面サイズに回帰したiPhone SEは、画面サイズの好みはあっても、確かに使いやすくて素晴らしい商品である。スマホとしてのスペックや機能には問題がなく、綺麗な写真や動画も撮れるし(写真撮影と同時に数秒の動画も録画できるLive Photosなどもついているし)、AppleのWebサービスとの連携はスムーズで、デザインも5からの完成度の高い直線基調のデザインを踏襲している。
iPhone SEが果たした最大の役割は『4インチ(SE)‐4.7インチ(6)‐5.5インチ(6Plus)』というユーザーの好みや用途(使い勝手)、手の大きさなど合わせた『ディスプレイのサイズの選択肢』を準備したということである。つまり、iPhone5Sまでの4インチの画面が一番使いやすかったのにと感じていた『画面大型化』に反対のユーザーの支持を取り戻せる可能性を高め、他社のAndroidスマホの画面が大きすぎると感じるユーザーの目線をiPhoneに向けやすくした。
ブログのタイトルには『iPhone SEの4インチ回帰』と書いたが、正確には『4インチのラインナップの追加(4インチのサイズも選べるようにした)』ということであり、各世代でiPhoneの画面サイズを『ワンサイズ』に固定しない複数の選択肢を用意したということである。
片手操作が可能でポケットに入れて携帯しやすい4インチのコンパクトスマホにも一定の需要はあるが、スマホ市場の最も大きな需要は今後も依然として『5インチ前後の大型画面』に集中することになるだろう。
iPhone6Plusのような5.5インチ以上になってくるいわゆる『ファブレット』は、コンテンツを閲覧するには非常に便利で文字も読みやすく一画面に掲載される情報量も多くなるが、(タブレットよりは持ち歩きやすいが)携帯性が悪くて重量もやや重くなるのでスマホの主流にまでなることはないように思う。
スマホの利用目的が動画・写真の閲覧やオンラインゲームを含めたリッチコンテンツ化の傾向を強めているため、『できるだけ大きな画面でコンテンツを楽しみたいというユーザーの希望』と『日常的に持ち歩いて使用するのに邪魔にならないサイズ』とのバランスが求められることになり、現状では概ね5インチ前後が最も使いやすい(綺麗な画質で写真・動画を見る際の満足度も高い)と思うユーザーが多いのだろう。
AppleがiPhone SEを販売して『ディスプレイのサイズの選択肢』を増やしたことで、次世代のiPhone以降でもユーザーそれぞれの使いやすさに配慮した『3つ程度の画面サイズのスマホ』が揃えられるようになるのかもしれないが、それはGalaxyがコモディティ化してスマホの画面サイズをやたらに増やした(極端に大型化したり細かくサイズを分けたりした)サムスンと同じで、『スマホのオーソドックスな進化の方向性』が見えづらくなったことの現れという面もあるのだろう。
スマホユーザー自身も、『現行モデルのスマホに付け加えてほしい機能』や『より洗練された使いやすいデザイン』についての意見・要望・感想が減っており、今のスマホでも自分のやりたいことは概ねスムーズにできてしまうという人が大半なのではないかと思う。
その意味でもスマホがかつてのパソコンと同じようにコモディティ化(どのスマホを買ってもそれなりに満足できる普及品化)の兆候を見せているように感じるが、iPhone SE以降のAppleがどのような進化の方向性やイノベーションの可能性を打ち出せるのか、スティーブ・ジョブズ亡き後のAppleの新規な発想力(人を今までになかった新商品で感動させる力)が試されるのかもしれない。
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■書籍紹介
iPhone SEは機種名に5や6といったナンバーが付与されていないので、iPhoneのオーソドックスな進化を示す新商品ではなく、画面の大型化を嫌う『手のひらサイズ(片手操作可能なサイズ)』のスマホをもう一度販売して欲しいというニーズに応えただけの商品という見方ももちろん成り立つ。
一方で、“次のiPhone7”以降のスマホの新規な機能やより優れたデザインがほとんど見えないという『スマホ進化の停滞感(イノベーションによる市場の持続的成長の困難)』は強まっており、時価総額で世界トップだったAppleの株価も低下しがちになっている。
今販売されているスマホのモデルで、スマホの商品や市場が概ね成熟してしまったのではないか、これ以上消費者をあっと驚かせるイノベーションはもう起こりにくいのではないか(昔のPCのようにスマホもコモディティ化してしまいそれほど頻繁に買い換えなくなる)という見方が強まってきたとも言える。
世界のスマホ市場ではAndroidのシェアが約8割で圧倒的に大きくなっており、日本でも通信費の高さ(0円スマホの販売方式の規制)からMVNOの格安スマホに目を向けるユーザーが増えてきているが、AppleがiPhone6Sまでの驚異的な成長路線を次の7以降にも持続していけるかに不透明感が出てきている。iPhoneを筆頭とするスマホの新商品に対するワクワク感が落ちており、『旧モデルの全般的なスペックの向上』以外に目立った変化や期待感を持ちづらくなっているのが問題なのだろう。
高性能のA9チップを搭載し、4インチのコンパクトな画面サイズに回帰したiPhone SEは、画面サイズの好みはあっても、確かに使いやすくて素晴らしい商品である。スマホとしてのスペックや機能には問題がなく、綺麗な写真や動画も撮れるし(写真撮影と同時に数秒の動画も録画できるLive Photosなどもついているし)、AppleのWebサービスとの連携はスムーズで、デザインも5からの完成度の高い直線基調のデザインを踏襲している。
iPhone SEが果たした最大の役割は『4インチ(SE)‐4.7インチ(6)‐5.5インチ(6Plus)』というユーザーの好みや用途(使い勝手)、手の大きさなど合わせた『ディスプレイのサイズの選択肢』を準備したということである。つまり、iPhone5Sまでの4インチの画面が一番使いやすかったのにと感じていた『画面大型化』に反対のユーザーの支持を取り戻せる可能性を高め、他社のAndroidスマホの画面が大きすぎると感じるユーザーの目線をiPhoneに向けやすくした。
ブログのタイトルには『iPhone SEの4インチ回帰』と書いたが、正確には『4インチのラインナップの追加(4インチのサイズも選べるようにした)』ということであり、各世代でiPhoneの画面サイズを『ワンサイズ』に固定しない複数の選択肢を用意したということである。
片手操作が可能でポケットに入れて携帯しやすい4インチのコンパクトスマホにも一定の需要はあるが、スマホ市場の最も大きな需要は今後も依然として『5インチ前後の大型画面』に集中することになるだろう。
iPhone6Plusのような5.5インチ以上になってくるいわゆる『ファブレット』は、コンテンツを閲覧するには非常に便利で文字も読みやすく一画面に掲載される情報量も多くなるが、(タブレットよりは持ち歩きやすいが)携帯性が悪くて重量もやや重くなるのでスマホの主流にまでなることはないように思う。
スマホの利用目的が動画・写真の閲覧やオンラインゲームを含めたリッチコンテンツ化の傾向を強めているため、『できるだけ大きな画面でコンテンツを楽しみたいというユーザーの希望』と『日常的に持ち歩いて使用するのに邪魔にならないサイズ』とのバランスが求められることになり、現状では概ね5インチ前後が最も使いやすい(綺麗な画質で写真・動画を見る際の満足度も高い)と思うユーザーが多いのだろう。
AppleがiPhone SEを販売して『ディスプレイのサイズの選択肢』を増やしたことで、次世代のiPhone以降でもユーザーそれぞれの使いやすさに配慮した『3つ程度の画面サイズのスマホ』が揃えられるようになるのかもしれないが、それはGalaxyがコモディティ化してスマホの画面サイズをやたらに増やした(極端に大型化したり細かくサイズを分けたりした)サムスンと同じで、『スマホのオーソドックスな進化の方向性』が見えづらくなったことの現れという面もあるのだろう。
スマホユーザー自身も、『現行モデルのスマホに付け加えてほしい機能』や『より洗練された使いやすいデザイン』についての意見・要望・感想が減っており、今のスマホでも自分のやりたいことは概ねスムーズにできてしまうという人が大半なのではないかと思う。
その意味でもスマホがかつてのパソコンと同じようにコモディティ化(どのスマホを買ってもそれなりに満足できる普及品化)の兆候を見せているように感じるが、iPhone SE以降のAppleがどのような進化の方向性やイノベーションの可能性を打ち出せるのか、スティーブ・ジョブズ亡き後のAppleの新規な発想力(人を今までになかった新商品で感動させる力)が試されるのかもしれない。
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