他人を変えるためのコミュニケーションと心理的な対立構造1:相手を肯定的に見ること

人生哲学や処世訓ではよく『自分と現在(未来)は変えられるが、他人と過去は変えられない』と言われます。自分の行動と認知(物事の捉え方・他人についての解釈)を変えることによって、自分の気分・感情を調整していきより望ましい結果を得られるようにするというのが『認知行動療法』の基本ですが、他人と過去については『それをどのように肯定的に解釈するか・自分が苦痛や後悔を感じすぎないようにどのように受け止めるのか』といった対処が中心になります。

しかし、過去の客観的事実そのものを変えられないとしても、他人の考え方や行動は『他人(本人)が自発的に変えたい、変わらなければならないと思った時』には当然ながら変わってきます。『他人は変えられない』というのは、実際には『無理矢理に変えることはできない(変わろうと思っていない本人を無理矢理変えることはできない)』という意味であり、『何らかの刺激やきっかけで自分から変わりたい』と思わせることができれば変わってくる可能性はあるわけです。

他人を変える方法は、大きく分ければ3つに分類されますが、ここでは法的・倫理的に問題の多い“3”については取り上げず、相手の自発的な変化の意志や自分に対する態度(見方)の変化を引き起こす“2”とそれに関連する“1”を中心にして考えていきます。

1.報酬・喜び(正の強化子)で他人を変える

2.お願い・真摯さ・共感で他人を変える

3.恐怖・罰則(負の強化子)を変える

ハードな長時間勤務や内容の難しい仕事などを能力のある人にやってもらいたいと思ったら、今よりも報酬を引き上げたり、大きな権限を与えて自由度を高めてあげたりすることが最も有効ですが、これが“1”の報酬や喜びによる他人の変え方になります。同じ“1”の方法にも、『お金・権限・モノ』のような実利的な報酬を与えることが有効なケース(相手)もあれば、『賞賛・評価・好意』のような心理的な報酬を与えることが有効なケース(相手)もあるでしょう。

一般に、プライベートな人間関係や情緒が深く絡まない『仕事(ビジネス)・職業・交渉事』のような場面では、『お金・権限・モノ』のような実利的な報酬の効果が発揮されやすく、『恋愛・結婚生活・友人関係・親子関係』のようなプライベートな人間関係や情緒が深く絡んでくる場面では、『賞賛・評価・好意』のような心理的な報酬の効果が発揮されやすくなります。

特に自分の立場が“上司・先輩・親”であり、相手の立場が“部下・後輩・子供”であるようなシチュエーションでは、『頭ごなしに怒鳴りつけて萎縮させる・お前のやり方はダメだと否定する・能力や意欲がないと低く評価する』というやり方は完全な逆効果であることが多くなってしまいます。

大半の人は『自分を否定したりバカにする相手・自分を理解してくれない傲慢な相手・一切の感謝や評価をしてくれない相手』の言うことには反発するか、表面的には従っているように見えても機会があれば裏切るリスクが高いからです。

確かに、少しでも反論すれば瞬間湯沸かし器のように激怒して罵倒・否定をしてくる上司・先輩に対しては、恐怖心から言われるがままに動くということもありますが、『本人のモチベーションが重要な難易度の高い作業・仕事の成果』がでなかったりとか、『欠勤が増えて会社を辞める・練習に来なくなって部活を辞める』などのようにその相手との人間関係そのものを断ち切ってしまうリスクもあります。

人間は基本的には『自分を否定してくる相手・自分を理解してくれない相手・その人のために動こうと思えない嫌いな相手』の言うことは、よほどの上下関係の縛りか義務的な役割でもない限りは聞いてくれない傾向がありますが、他人を変えるコミュニケーションという観点では、少なくとも『心理的な対立構造(拒絶の壁)を作らないこと』『相手よりも自分のほうが正しい(相手が間違っている)と必死に主張して争わないこと』が大切なのです。

部下の書類作成の仕事にデータの間違い・誤字が目立っていたり、内容の水準がやや低かったりするような状況でも、『お前はこんな簡単な書類もまともに作れないのか・こんな内容じゃ全くダメだから全部一から書き直してこい』という言い方をすれば、部下もそれなりに努力して書類を作成してきたのですから『そこまで全否定する必要はないじゃないか・書類の内容やデータについて上司も先に十分な指示をしていなかったじゃないか』という反発を招きやすくなります。

『心理的な対立構造(拒絶の壁)を作らない』という部分では、『昨日も家に持ち帰ってまで書類を作成してくれたみたいでありがとう』というような労いの前置きをしてから、『ちょっとこことここに誤字があるから他もざっと見直して訂正しておいてね・内容にもう少し具体的な事例や利用者の感想なども入れたほうが資料として良くなるよ』といった感じで相手の努力・仕事の価値を認めながら、こういう風にすればもっと良くなるよといった前向きな修正・改善の提案を織り込むほうが、相手が意欲的に気持ちよく動いてくれやすくなります。

さぼって怠けているように見える社員・学生などを注意する場合にも、『さぼってばかりで何の役にも立っていない・そんな風だから成績が悪くてダメなんだ・このままじゃクビ(退学)になるぞ』というような拒絶・否定の対立構造で臨んでぶつかり合っても上手くいかないことがほとんどです。

『どうしてこの人は仕事(勉強)に真剣に取り組むことができないのか・本人の人間性(性格や資質)以外の環境要因を変えることで状況が良くならないだろうか』という視点から、『働けなくて(勉強ができなくて)悩んでいる相手の事情を理解しながら、状況を変えられる対応策を提案していく+できた部分について少し大げさなくらいに認めていく』というやり方のほうが、結果として相手が良い方向に変わってくれる可能性が高くなるのです。


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