マクドナルドの異物混入事件とマスメディアの過熱報道の雑感

ハンバーガーチェーンの日本マクドナルドのフライドポテトに『人間の歯(治療痕のある歯)』が混入していた事件が発端となって、次々と飲食店・スーパーなどの食べ物の商品に、異物が混入していたという報告・報道が相次いでいる。

マクドナルドのサンデー(アイス)にプラスチック片が混入していた原因は、アイスを製造する機械の一部が破損していたことであり、マックナゲットにビニール片が混入していた原因は、加工肉の製造過程で使用している着色されたビニール袋がちぎれて混入したとされている。

プラスチックやビニールの欠片というのは、混入した経緯・原因が合理的に推測可能なものであるが、それ以外の『治療痕のある欠けた(抜けた)歯・歯科用の金属・差し歯の一部』などが混入した経路は不明なままである。なぜ歯に関連するものばかりが混入したのかの謎もあるが、人の歯というのは衛生的にもイメージが悪くて話題性もあるので、マスメディアから集中砲火的な報道攻勢を浴びることになった。

マクドナルド側の調査では、製造過程の大半が機械化していて人間の手が入る工程は限られているので、製造過程で『人間の歯』が混入するとは考えにくいとの見解が示されたが、『消費者の手に渡された後に混入した可能性も完全には否定できない』との見方に対して、商品の衛生管理の反省が足りず消費者への責任転嫁だとする批判も起こったりした。

しかし、常識的に考えれば人間の歯や差し歯(歯科用金属)が、製造過程における偶然のミス(歯の持ち主である本人も気づかないようなミス)で商品の中に転がり落ちる可能性は限りなくゼロに近く、そもそも製造現場ではみんなマスクをつけて作業しているので、偶然に折れたり欠けたりした歯が落ちるということはないだろう。

どちらかというと、従業員・販売員にせよ部外者にせよ、何らかの意図を持った『故意の混入』の可能性のほうが疑われるようには思うが、真相究明はできないままに終わりそうである。歯科関連の異物混入のすべてが、店内での飲食ではなくテイクアウト(持ち帰り)で起こっていることも気になる所だが、混入経路が不明なままなので『根拠ある再発防止策』を立てづらいのは問題だろう。

マクドナルドの連続的な異物混入とその集中的報道によって、マクドナルドのブランドイメージは『消費期限切れの鶏肉使用の問題』に追い打ちをかける形で更に傷つけられた。株式市場ではマクドナルド株はそれほどの急落はしていないようだが、マクドナルドのブランドイメージは売上・利益の低下が示すように、数年前と比較してもかなり悪くなってきている。

今回の歯の混入事故に関しては、『マクドナルド社の対応・謝罪の仕方』に購入した女性が納得できなかったために騒動がより大きくなったという経緯もあるが、マクドナルドでは通常、問題のある商品に対しては『新たな商品への返品・支払ったお金の返金』以上の対応はしないということになっているようだ。

今回の歯の混入では、調査・分析をした後に菓子折りと無料券のセットなどで再び謝罪に訪れたということだが、店長よりも上位にいる本社の担当者からの謝罪・説明がないことに対して女性は不満だったとも伝えられている。

苦情・不良品に対してどういった謝罪をするか、どういった誠意の見せ方(埋め合わせ)をするかは各社によって異なるので、どういった対応が正解ということはないと思うが(とにかく高額な品物・無料券を上げれば良いというわけでもないと思うが)、人によっては社長(CEO)まではいかなくても『最高責任者に近い立場にある人(最低でも現場レベルではない本社の担当者)からの直接の謝罪や説明』を聴きたいという意見は多いようである。

逆に言えば組織の階層構造のない、ワゴン車で個人(夫婦など)でたこ焼きやクレープを売っているような個人事業者であれば、売っている本人が最高責任者であるからそれ以上の立場の人はいないということになるが、そういった小規模な事業者に対しては大企業に対するよりも、異物混入でクレームを入れても仕方ない(もう買わなければいいだけ)と感じる人が多くなるのかもしれない。

コアな常連(リピーター)のファンやマックの季節もの商品などが好きな人は変わらずに買い続けてくれるかもしれないが、複数の外食店舗の選択肢がある場合に、敢えてマックに行きたいという客を減らす程度のインパクトはあっただろう。マクドナルドの前には、ペヤングの焼きそばへのゴキブリ混入事故があり、マクドナルドの後にも、ワタミの宅配弁当へのねじ混入や吉野家のタコライスへのミミズ混入事故などが起こっている。

小さなゴミやビニール、プラスチック、髪の毛などの混入は、毎日、数十万~数百万食以上の大量生産をしている外食企業では、確率論的に起こり得ることでゼロにまですることは不可能だろう。

しかし、小さなショウジョウバエや蚊などならまだしも、ゴキブリや銀バエ、ミミズなど大きな生物の混入は、現代を生きる日本人にとっては視覚的にも心理的にも『気持ち悪くて二度と行きたくない(買いたくない)・不衛生の印象が限度を超えている』といった強烈な抵抗感・不潔感につながりやすいのもまた確かだ。

キャベツについている青虫も気持ち悪い異物とみなしてしまう、無菌室的な衛生環境に馴れきってしまった現代人の『潔癖さ・ひ弱さ』といえばそれまでだが、客商売である外食産業の企業にとっては『不衛生・食品管理がいい加減・製造過程や店内環境が汚い』というイメージを持たれるのは致命的である。

異物混入事故は、マスメディアの報道の頻度や内容・責任の伝え方次第によっては、外食企業の価値が大きく毀損されてしまったり下手をすれば倒産するリスクもある。

故意の毒物混入や悪意ある不衛生な食品の提供、重傷患者・死者の発生につながる食品の提供(食中毒の発生)などをした企業は、市場から撤退させられるだけの社会的制裁を受けても仕方ないかもしれないが、今報道されている企業のほとんどは、そういった故意・悪意・重過失のある企業とまでは言えないだろう。

食の安全・衛生を守るという目的を果たすことは大切だが、『故意・悪意・極端な不注意による混入』や『生命の危機や重大な健康被害に関わる混入』でなければ、マスメディアが中心になって徹底的に叩くような社会的制裁の与え方、資本力のない企業なら倒産するくらいの勢いで叩くことには疑問符がつく。

注意していても確率論的に起こり得る通常の混入事故については、原則としてマスメディアが過剰報道で企業を追い詰めるのではなく、当事者間の話し合いや保健所・行政指導の介入によって『風評被害・行き過ぎた企業への制裁』につながらない形で異物混入の問題を個別に処理していくのが望ましいのではないかと思う。

異物混入は今になって急に増えてきた問題ではなく、何十年も前からというか食品を提供する生業・商売が誕生して以来、偶発的に何らかの異物が混じってしまう事態はどうしても避けがたい事として起こってきた。

『何が混入したのか・どういった経緯で混入したのか・提供側の責任や改善の度合いはどうなのか・実際の健康被害が起こったのか』によっても、異物混入事件の報道の仕方やどのくらいの範囲にまでその情報を広めるべきかは変わってくると思う。

だが、現代のウェブ社会では、消費者自らその場で写真を撮影して情報発信できるようになったこともあり、『異物混入事故も含めた企業のミス・不注意・事後対応』によって不愉快な思いをさせられた人や話題をできるだけ大きくしたい人によって、『想定以上の範囲(最終的にはテレビ・新聞のマスメディアレベル)』へと情報が拡散してしまうことを止めることが困難になっている。

『想定以上の範囲』にまで広がってしまった自分が発信した情報が、『予想以上の社会的反応・責任追及や強い批判』を引き起こすことも多い。ウェブ社会では『自分の身近で起こった出来事・アクシデントなどの公開』が、自分の生活・周辺のレベルを遥かに超えていってしまう可能性にもある程度自覚的であるべきだが、『当事者間の問題・話し合い』だけで済まなくなるウェブの影響力(ある出来事へのみんなの興味関心の集中)が、良くも悪くも強まっているように感じる。






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