自閉症スペクトラムの子供が持つ“対人関係パターン”の3分類

自閉症スペクトラムの人たちは、特定の重要な物事だけに集中して意識を向ける選択的注意が苦手であり、瑣末な細部に囚われることで全体の特徴(抽象的な概念)をなかなか認識することができない。

例えば、『学校生活』という大まかな抽象的概念を上手く認識することが難しいので、『学校生活はどうですか?学校での生活は上手くいっていますか?』という質問に対して、学校生活というものが『勉強・授業を指すのか、登下校を指すのか、休み時間や遊びを指すのか、運動会・遠足など行事を指すのか、友達関係を指すのかといった迷いやこだわり』が生じやすい。

『学校生活』というものに対する大まかな全体の認識や概念化ができないため、『算数の授業は分かりやすいですか・遠足ででかけた場所はどこでしたか?運動会でどんな種目に参加しましたか?仲の良い友達は誰でどんなことをして遊びますか?』など具体的な物事を限定して聞いて上げないと、学校生活に対する全体的・抽象的な感想を話すことは難しいのである。

自閉症スペクトラムの認知能力の特徴は、『視野狭窄(視野の狭さ)・細部へのこだわり(要点を得ない)・選好の強さ(見たいものだけを見る)』であり、特に一般化された概念を理解するのが下手で、具体的なモノを対象としていない抽象化の思考ができないことが多い。

アスペルガー障害を含む連続体の自閉症スペクトラムでは一般的に、『対人関係の苦手意識・コミュニケーションの障害や対立』が問題になりやすいが、“自閉症の3つ組”などの自閉症研究で知られる精神科医のローナ・ウィングは自閉症の対人関係パターンを以下の3つの類型に分類している。

1.孤立型……他者への興味・関心が殆どなかったり、知的障害や知覚過敏の症状があったりすることで、『他者との人間関係・コミュニケーション』を避けようとするタイプ。他者と関わろうとする動機づけが弱くて、『自分ひとりの孤立した状態(他者に関わらなくても良い状態)』に安心感・居心地の良さを感じ、無理にコミュニケーションを取られると知覚過敏で興奮してパニックに陥りやすい。自閉症の中では比較的重症の事例であり、知的能力も低いことが多い。

2.受動型……自分から積極的に他者とコミュニケーションをしたいわけではないが、他者から話しかけられたり質問されたりすれば、受身の態度で会話に答えることができるタイプ。

孤立型の自閉症児の早期療育によって受動型に移行することも多いとされるが、『受動的なやり取り・受け答え』で一般的なコミュニケーションがある程度可能なので、特別支援学級の学校生活や指示を受けて作業をする職場への適応が良くなる。知的障害を伴わない自閉症者も多く、知覚過敏によるパニックも比較的起こりにくい。

3.積極的奇異型……自分から積極的に他者とコミュニケーションをしたがるのだが、その関わり方・話し方・声の出し方が奇異であったり支離滅裂であるために、コミュニケーションの障害や感情・気分の対立によるトラブルが起こりやすいタイプ。

マイペースな行動や会話を好み、ADHD(注意欠陥多動性障害)に類似した注意の困難や動き回る多動の症状が見られることが多い。幼児期から小学校低学年にかけて、奇声・大声を出したり教室を動き回る多動が見られることで学校への適応は悪くなりやすいが、身体の発達・感情の安定と共に小学校高学年・中学校くらいから注意の欠如や多動性といった副次的な問題行動が収まって、適応能力のある受動型に移行することもある。


自閉症児は知的障害の有無に関わらず、両親も含めた『他者への興味関心・人と関わりたい欲求』が著しく弱い傾向があるため、他者との人間関係の基盤となる『愛着(アタッチメント)』がなかなか形成されないという精神発達上の課題を抱えることが多い。

端的には、自分だけの自閉的な世界や感覚の楽しみの中に閉じこもってしまい、外部の客観世界や他人に対して興味関心をなかなか見せず、母親にも感情的に甘えたり依存したりするような言動が殆ど見られない(重症例では視線も合わない)といった特徴を示しやすい。

自分にとって特別な価値を持つ他者(両親)に対して『愛着(アタッチメント)』を感じるようになるというのが、親以外の友人知人との人間関係を作っていくための始点になるので、自閉症児の育児や早期療育の課題の一つは『子供が見せる甘え・関心の兆候』を見つけて、甘えられる心地よさを少しでも良いから経験させて上げるということである。






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