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zoom RSS 軽度発達障害と境界知能の問題1:小学校時代の児童の知能の不安定性と学校適応

<<   作成日時 : 2014/01/16 21:13   >>

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アスペルガー障害を含む『自閉症スペクトラム』では、知的障害を伴わずに社会性(円滑な人間関係・対話能力)の発達に困難が生じる『高機能自閉症群・高機能広汎性発達障害』に注目が集まりがちです。

しかし、自閉症は重度であればあるほど知的障害を併発する可能性が高く、自閉症スペクトラム(自閉症特有の症状がある連続的な状態)の全体を見ても、『学習障害・境界知能』の悩みや問題を同時に抱えている人が多くなっています。

自閉症はマスメディアや書籍で、『サヴァン症候群』などの特殊な記憶能力の高さや特定分野への集中力の強さを持った子供が紹介されることも多く、人間関係やコミュニケーションは苦手だが、知的能力(読解・記憶)は人並み以上に優れている確率が高いというような先入観を持たれることがあります。しかし実際は、学校の授業になかなかついていけないという学習面・知能面での悩みも多くなっています。

具体的には、知的障害ではないが正常な知能水準に僅かに及ばないために、勉強の内容が理解しづらいという『境界知能(IQ70〜84に相当)』の問題によって、学校生活や授業内容、友達関係に適応しづらくなり、各種の二次的障害が併発しやすくなっていたりします。発達障害の重い軽いを判断する時に、明確な知的障害を伴っていない高機能群の事例を『軽度発達障害』として分類することもありますが、軽度発達障害においてもIQ85〜100前後の正常知能よりも、IQ70〜84の境界知能の子供が多くなっています。

軽度発達障害の子供は学習障害と境界知能の双方の要因によって、学校の勉強についていけなくなったり友達関係でからかわれたりいじめられたりといった問題が起こりやすくなり、更に『人間関係や勉強に対する苦手意識,他者とのコミュニケーションの取りづらさ,社会環境と他人に対する恐れとその反動としての非行化及びひきこもり』といった二次的障害に発展してしまう可能性もあります。

『軽度発達障害・児童虐待・非行(触法少年)』の問題を抱えた子供では、有意に境界知能の水準にある子供の比率が高くなっていると言われていますが、それが単純に勉強が苦手でずっとしなかったからなのか、先天的な学習障害や知的困難の影響なのか、家庭環境や友達関係の悪さの影響なのか、競争社会や管理教育の過剰の弊害なのか、現代が知能を重要視し過ぎているだけなのかの区別を統計的あるいは科学的に行った研究はありません。

現時点で言えるのは、『境界知能を示す子供のそれぞれの特性やレベルに見合った教育方法・情緒的ケア・進路指導・就職支援』が必要であり、それらが欠けていると二次的障害・不適応を起こしやすいということであり、境界知能の子供たちがそのまま思春期になると『人と上手く関われない苦手さ・常識的な物事が的確に理解できない生きづらさ・方向感覚の喪失・全般的な不器用さ』により悩みやすくなっているということです。

こう記すと境界知能が、将来の社会適応や少年非行、知的水準(常識理解)の問題のリスク要因のように受け取られやすいのですが、ここで留意すべきなのは『境界知能(borderline intelligence)』そのものは、知的障害でもなければ特殊な病気でもなく、かなりの割合の子供達が潜在的に当てはまる状態だということです。

幼児期から小学生低学年くらいの年代の知能は、相当に流動的(不安定)であると同時に上がり下がりの可塑性を持つものですから、何回かのテストでIQが相対的にやや低かったとしても(明確な知的障害の診断がなされる水準でなければ)それだけで何らかの問題・障害があるという性格のものではありません。

境界知能のIQ70〜84という水準は、その時々の集中力の低さや情緒・気分の不安定、家庭環境や友人関係の問題などによって簡単にでてしまいやすい数値でもあり(幼児期から児童期では特にテストごとの数値の変動は大きくなります)、飽くまでその時点での暫時的かつ便宜的な『知能レベルの境界線』であると言っているということなのです。






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