上野玲『うつは薬では治らない』の書評3:SSRIの衝動性亢進の副作用と病者の主体性

三環系・四環系・SSRI・SNRI・NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性薬)の抗うつ薬に効果があるという根拠になっているのは、脳内の情報伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンが不足することによって、うつ病や不安障害のような精神疾患が起こるという『セロトニン仮説(脳内モノアミン仮説)』である。 だが、このセ…
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上野玲『うつは薬では治らない』の書評2:SSRIの市場拡大と副作用の不安

精神科や心療内科でうつ病と診断されれば、『薬物治療(抗うつ薬・睡眠導入薬・抗不安薬)+心身の休養(ストレス状態からの離脱)』が行われることになるが、著者の上野氏は自営業者として働く自分の仕事状況から『休みたくても現実的な理由から休めない人』が多くいるのだと語る。薬を服用する以上に、ストレスを感じる人や環境から暫く離れて、ゆっくりと休養す…
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上野玲『うつは薬では治らない』の書評1:うつ病患者の増加と薬物療法の懐疑

うつ病の罹患者は10年で約2倍に増え、現在では日本国内に100万人以上のうつ病の人がいるとも言われているが、『うつ病に対する標準治療』は必ずしも成功しているとは言えない。 本書は薬物療法の画一的な効果を懐疑するところのある本であるが、精神医学・薬物療法を全面的に否定しているわけではなく、『精神医学・薬物療法の根拠の曖昧さと効果の個…
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ブラック企業とハラスメント(使役する人間の道具化)を生み出す現代の競争経済社会の構造要因

過労死・感情労働・権力構造が関与した『ブラック企業問題』の本質は、企業や上司の指示・命令が法律や社会常識に照らし合わせて間違っていても、『閉鎖的な職場環境・人間関係』の中では、同調圧力を伴う逆らえない正義・規範になってしまうということである。 もちろん、組織の上下関係や慣習・文化、同調圧力だけではなく、『拒否すれば解雇されて生活費…
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A.R.ホックシールドの感情労働(感情マネジメント)のつらさと産業構造・リーダーシップの転換:3

感情労働には他者の感情やあり方を理解しようとすること、他者の不満・要求を傾聴してそれをケアしようとすることが含まれるが、こういった『人間関係・情動・コミュニケーションが関わる仕事』は20世紀までは主に“女性の仕事(例えば老親の介護を妻・女性の親族に任せきりにするなど)”としてジェンダーに割り振られてきたりもした。 しかし、産業構造…
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A.R.ホックシールドの感情労働(感情マネジメント)の増加とハラスメントの問題:2

場面・相手に対応して自分の適切な感情を表現できるように制御することを、『感情マネジメント』と呼んでいるが、感情マネジメントをする最大の目的は『他者に対する好意・尊敬・適切な関心』を表現して伝えることで、安定的で良好な人間関係を維持するためである。 好意的な感情の贈り合いの意味と解釈については、過去にマルセル・モースの『贈与論』を参…
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A.R.ホックシールドの感情労働(感情マネジメント)の増加とハラスメントの問題:1

労働環境におけるパワハラやセクハラが増大した背景には、“工業労働(第二次産業の肉体労働)”から“サービス労働・知識労働(第三次産業の精神労働)”への変化といった急速な『産業構造の転換』も関係しているはずである。 第三次産業のサービス業の増大は、ポストフォーディズム(脱産業化社会)、知識産業化、認知資本主義など様々な呼ばれ方がされる…
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子供を産みにくい環境を作るマタハラと認識のギャップから生まれるパワハラ:4

日本では女性本人が退職(子供が小さい間の専業主婦化)を望むケースもあるが、そうではないケース(本当は今の仕事・職位にまた復帰したいのだが妊娠すると職場に留まりにくくなるケース)も含めて、第一子の妊娠出産で『働いている女性』の6割以上がいったんは完全に退職して無職になってしまう。 公務員を代表として大手の正規雇用であれば『長期の育児…
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男社会のホモ・ソーシャルにおける“男女関係の認知の歪み”とマタニティ・ハラスメント:3

ホモ・ソーシャルの男社会のつながりでは、女性とのプラトニックなつながりや相互的な尊敬、性格・話題の一致などを『恋愛関係の中心』に置いた話がほとんどなく、男同士で『分かりやすい良い女(性的に魅惑的な女)』をどれだけモノにできるか(実際にモノにできなくても空想上で強引・快楽的な性関係をどれだけ妄想しているか)、楽しくて快楽的な関係を持ってき…
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パワーハラスメントと男社会のホモ・ソーシャルにおける“セクハラ・犯罪”のリスク:2

『雇用の不安定化・企業への不信・離職率の増大』と連動したハラスメント概念の拡張(企業の理不尽な待遇や上司の人権侵害的な言動を非難する動き)によって、企業に酷使・人格否定されたり使い捨てにされる『非人間的な扱い』をされても、それを我慢しなければならないとする社会的な共有観念は衰えているようにも見える。 だが一方で、暴言や罵倒・解雇・…
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セクシャルハラスメントと労働現場における“ハラスメント概念”の拡張:1

昔であれば何とか我慢されたであろう、企業・職業生活の理不尽さや過労状況も現在では我慢することが難しくなっている。『人件費のコストカット(少人数体制・一人体制)による店舗運営・売上ノルマ・営業活動の過酷さ』が以前より相当に高まっているという問題も深刻だ。 ブラック企業の苛烈な労務管理・時間拘束・責任の押し付けによって、単なる過労状態…
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ブラック企業とパワーハラスメント(パワハラ)が看過される職場環境

端的にはハラスメントとは、一人の人間(人格)として“尊重・敬意・配慮”を受けることがない非人道的かつ被害的な状態が長期的に持続させられることであり、『企業内における従業員の扱い』が企業外における一般的な人間関係と比較して、余りに酷使的(身体的な加害)かつ侮蔑的(精神的な加害)になっているのである。雇われて給料を貰っている従業員であれば、…
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ブラック企業と“過労・過剰適応・失業不安”で追い詰められる労働者の意識

2013年はユニクロやワタミ、東電をはじめとする大企業までが“社員を大切にしない企業風土・労務管理体制”を持っているのではないかとバッシングされ、『ブラック企業』という言葉が流行語となるほど人口に膾炙する年になった。今年は金融緩和と株価上昇のアベノミクス効果もあって、上場企業を中心に企業の業績が良くなり、学生の就職内定率も好転しているが…
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山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条』の書評10:客観的な前提条件を無視する自己肯定の危うさ

日本軍は『精兵の養成』のために徹底的な訓練をして敢闘精神(滅私奉公)の内面化に力を入れたが、それは『精兵に求められる術・芸・精神性の絶対化』であり、『受験競争型の精兵主義』であったため、『一方的に固定されていた前提条件(制約条件)』が変化すれば、それら芸と精神の至上主義の考え方で育成された精兵は実戦で機能しづらくなってしまった。 …
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山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条』の書評9:精兵主義の限界と科学的思考の欠如

ひとりひとりの日本人は兵士としての戦闘力・精神力が強かったし、日本軍は海戦や南洋諸島で玉砕するほどの大打撃を受けるまでは非常に強かったというのは、一面の真実ではあるのだが、それは『アメリカ・本格的な近代戦に勝てる種類の強さ』ではなかった。強い日本兵が敗れたのはなぜだろうか。 その答えが『「芸」の絶対化と量』に記されているのだが、簡…
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LINEの“既読機能”と“つながり(返信)の義務感・SNS疲れ”の問題

メッセンジャーSNSの“LINE(ライン)”は、若年層を中心として爆発的に世界でユーザーを増大させたが、LINEの最大の特徴の一つである『既読機能(自分がメッセージを読んだことが相手に即座に伝わる機能)』を巡って賛否が割れているようだ。 最近では、トーク画面で『既読の表示』にならずに送られてきたメッセージだけ(文字数制限はあるが)…
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山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条』の書評8:軍の士気低下と飢餓・略奪の相互不信

ニューギニア島での戦いまでは日本軍の戦意や士気は高くて頑強に抵抗したが、フィリピン戦では士気が総崩れとなり、上官の将校が懇意にしている慰安所の女を真っ先に逃がすなどして、兵士の規範・模範の基準が失われていったという。自分の日本人の妻妾を部下に荷物を背負わせて山の陣地に連れ込もうとする渡辺参謀の事例が上げられ、こういった軍隊の権限の私的流…
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山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条』の書評7:初めての総力戦・長期戦と厭戦気分

昭和12年(1937年)当時、その後に泥沼化していく『日中戦争』を『日華事変(北支事変)』と呼称していたように、関東軍は中国との戦いを『国家間の大規模かつ長期的な戦争』などではなく『警察力で対応できない騒擾・反乱(=軍隊の出動が必要になるが一時的な騒擾事件に過ぎない)』という程度に甘く解釈していた。 数ヶ月程度の短期間で中国とはケ…
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山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条』の書評6:大東亜共栄圏の理想と対等意識になれない現実

飽くまで日本の支配体制・世界経営に服従して、天皇主体の八紘一宇や大東亜共栄圏の価値観に同意する限りにおいて、外国のアジア人を日本人よりかは劣った同胞(亜日本人)として認めるという『自己の絶対化・文化の普遍性の欠如(他の文化的基準・民族的尊厳の否定ないし劣等視)』があったのであり、こういった独りよがりの価値観をもってアジア解放・欧米追放を…
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山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条』の書評5:フィリピンのゲリラ軍と日本中心のアジア主義

日本人とアジア人との間に当然あるはずの『文化圏・歴史・価値観・生き方の違い』を省みることなく、天皇を君主に戴く日本軍がアジアを欧米帝国主義から解放して上げるのだという世界観(使命感)を強制したことも“敗因の13と20”に上げられている。 敗因13は『一人よがりで同情心がないこと』、敗因20は『日本文化に普遍性なき事』であるが、アジ…
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