人の判断や選択を間違わせてしまう認知のバイアス(偏り)とは何か?1:フレーミング・確証バイアス

行動経済学や認知心理学には、人間の判断や認知(考え方)、選択がなぜ偏ったり間違ったりするのかを説明するような理論仮説が多くある。そして、『買い物依存症・お金の使い方や投資の失敗・情報や人に騙される問題・非合理的な損失を生む選択』には、誰もが陥りやすい『生理的・心理的なバイアス(偏り)』が関係していることも少なくない。

そういった人間の認識や判断の間違い(バイアス)を説明する理論仮説を知っておくことで、『バイアスによる判断のミス』を予防しやすくなることもある。『錯視・盲点』が典型的であるが、人間は基本的にありのままの現実や数字を直視する『客観的な認識+合理的な判断』が余り得意ではないという特徴を持っている。

認識や判断に『生理学的あるいは心理学的なバイアス(偏り)』がいつの間にか無意識的にかかってしまうほうが普通であり、結果的に失敗や損をしても何となく正当化したり納得したりしてやり過ごすものでもある。だが後になって改めて考えれば、『もっとマシな選択肢』も選べたはずの失敗も多いかもしれず、過去はやり直せないとしても『転ばぬ先の杖』として人間の認識に自然にかかってくるバイアスを知っておくことにも意味はある。

1.フレーミング効果

カウンセリング技法にも『フレーミング』という概念があるが、フレーミング(framing)というのは『物事を判断する枠組みを作る』という意味であり、『今までとは違う視点で物事をもう一度見直してみる』という方法論として用いられることも多い。

『フレーミング効果』とは、物事の説明の仕方や数字の示し方(統計の見せ方)によって、『客観的な事実』に複数の解釈を生み出して意思決定(実際の選択)を変化させる効果である。

例えば、交通統計を見ると交通事故件数はここ5年間殆ど減っておらず深刻な状況ですという時には、『ここ5年間だけの件数というフレーム』に縛られており、『5年以上前から現在までの事故件数の推移』が無視されてしまうことで、『現在の交通事故状況は深刻だという認識』が導かれている。こういったフレーミング効果は、少年事件の増加・凶悪化を訴える主張でも見られるし、今よりも昔のほうが治安が良くて幸福度も高かったというようなノスタルジックな意見にも見られる。

お金の使い方についても、『毎月の給料・貯金』は物凄く節約してケチケチ使うのに、『想定外の臨時収入』は全額を深く考えずに使い切っても構わないというフレーミング効果が働くことは多い。『給料・貯金のフレーム』と『偶然の臨時収入のフレーム』を区別することで、『同じ金額のお金』であっても後者のフレームでは無駄遣いしても勿体無くない(損失ではない)という風に感じることができるのである。

フレーミング効果で判断・選択を誤らないためには、『限定的なフレーム・説明の仕方』に意識を囚われないようにして、『客観的な数字・事実』だけに長期的スパンで注目していくことが有効である。


2.パターン認識のバイアス(外挿のバイアス)

何回か同じような結果や展開が続くと、脳がそのパターンを学習して予測するようになり、『二度あることは三度ある・物事は今まで通りのパターンを繰り返すはず』という非合理的なパターン予測を半ば自動的にしてしまうのが、『パターン認識のバイアス』である。

過去に経験したり学習したりしたパターンから未来を非合理的に予測してしまうこのバイアスは、『ここまで上がり続けた株は明日以降もまた上がるだろう』という株価が上昇を続けている株式市場での投資ミスの原因になったり、『何回か勝っているこのスロット機であればまた当たりを出すことができるだろう』といったギャンブル依存症的な心理の動機づけになったりすることもある。

『過去の自分の成功体験・上手くいった方法』がパターンとして認識されることで、『次はそのパターンから外れてしまうかもしれない確率的な可能性』を殆ど無意識的に無視してしまうバイアスである。パターンや傾向性に依存し過ぎる認知の歪みであり、『自分の偶然・能力・幸運』を過信することによって、『合理的な確率論のリスク』を認識すること自体ができなくなってしまうのである。

パターン認識のバイアスで判断・選択を誤らないためには、『自分自身の経験論・能力の根拠』をもう一度冷静に疑ってみること、『未来を確実に予測できるパターン学習などは存在しないという現実』を受け容れることが大切である。自分の過去の経験から確実な未来予測などはできないという現実を受け容れた上であれば、自分が認識している『過去のパターン・傾向性』をどのように解釈して選択するかはその人の自己責任である。


3.確証バイアス

確証バイアスとは、その人が今までの人生で積み上げてきた信念・常識・価値観によって、『客観的な事実・数字』よりも『主観的な思い込み(長い期間にわたって確証している内容)』のほうが優先されてしまうというバイアスである。自分が正しいと思っている常識や世界観が前提にあって、それを証明するための情報・知識を選択的に集めてしまうようなバイアスで、『確証している内容』を変更することができない頑固さもある。

確証バイアスとは、長年の思い込みと実体験によって作られた固定観念である。例えば『学歴が高いほど優秀であるという固定観念』を持っている人は、『実際の人材の資格・能力・実績』が高くてもその人に学歴がなければその能力を認めることがないという確証バイアスを伴うことになる。『自分が好きなもの・信じていること・慣れ親しんでいる価値観(世界観)』などが固定観念としての確証バイアスを生み出し、その結果、見たいものだけを見て聞きたいものだけを聞くという状況を作り出してしまう。

例えば、自分が尊敬している好きな作家・学者が新刊を出した場合には、『この作家・学者の書く作品はすべて価値があるもので素晴らしいものである』という確証バイアスが働きやすいので、『その作品に対する否定的な書評・論評』などはその批判内容に聞くべきところがあっても、すべて根拠のない誹謗中傷のように認識してしまうのである。

こういった確証バイアスは、『日本は全て正しい・韓国は全て間違っている(その逆も然り)』といったナショナリズムの世界観や歴史認識でも働きやすく、『自分が信じている価値観・世界観を否定する主張や内容』に対しては、初めから無根拠で間違ったものだとみなして耳を塞いでしまうか強く反発してしまう。確証バイアスが強くなると、客観的な事実の検証や中立的な価値の判断ができなくなり、すべての情報・知識が『自分の見たい世界』に合わせて自動的に取捨選択されてしまうのである。

確証バイアスで判断・選択を誤らないためには、自分の持っている常識・価値観を疑うことができるような『自己批判の余裕』を持つこと、『自分の判断や選択の根拠』について落ち着いて見直してみることが何より大切である。『結論ありき・好き嫌いありき』になって、他の人の意見や中立的な情報が耳に入らなくなると、確証バイアスによって間違った判断をするリスクが高まってしまうので、『自分や賛同者以外の意見』を意識的に聞くようにすることも有効である。






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