買い物依存症・アルコール依存症などの物質依存と関係する『生理的興奮・消費行動の心理的効果』

買い物やギャンブル、ドラッグ、アルコール、嗜好品などにのめり込んで耽溺してしまう『物質依存症』は、脳内で興奮性のドーパミンや鎮静性のセロトニンを分泌する『報酬系』を刺激する行動パターンにはまることで発症して維持される。

お金を使って買い物をすることで幸福感や自尊感情、有能感が味わえたり、中枢神経を刺激する嗜好品(アルコール・薬物)を使用することでストレスを和らげたり嫌な感情・記憶を忘れたりすることができる体験を繰り返す。その内に、生理反応とも連結した『オペラント条件づけ(道具的条件づけ)』が形成されてしまい、自分の意思や選択ではその行為をやめることができなくなるのである。

『必要ない商品・無駄なもの・既に持っているもの』をお金がなくても借金してでも買い続けてしまうのが買い物依存症の怖いところであるが、買い物依存症の原因は『そのモノやサービスが欲しくてたまらないから買う』のではなく『モノ(お金)を経由した心理的な興奮・癒し・力の効果を体感したいから買う』のである。

現代のような消費主義文明では、お金を使って買い物をする目的が心理化・多様化しやすくなっており、『空虚感・無意味感・退屈さを紛らわすため』『不安感・恐怖感・孤独感を和らげるため』『自分の価値や能力を実感するため(他人にお金・モノの消費を通して承認されるため)』に強迫的あるいは依存的な買い物が行われることも少なくない。

しかし、お金を使う買い物(消費)が生み出す心理的効果は飽くまで『刹那的・一時的』なものに過ぎない、本来必要でなかったモノを買った場合には特に、わずかな時間でその心地よい興奮や安心を伴う心理的効果がなくなってしまい、『更なる次の消費(お金を使う行為)』に強迫的に駆り立てられてしまうことになる。

『感情的・心理的な支出』が行き過ぎると、その快楽性の興奮を何度も味わおうとして依存症になる要因を多く含んでいるため、多重債務からの自己破産や家族離散、人生設計の崩壊といった最悪のケースにも注意する必要がある。

もう一つの破産リスクは、知り合いやお隣さんよりも自分が経済的に裕福で余裕があり高い地位に就いていると見せかけたいがために、高級マンションや高級車、ブランド品などを無理をして買ってしまう『顕示的・競争的な支出』であるが、これは買い物依存症とは異なるタイプのリスクである。

『周囲にいる人よりも優れていたい(豊かでありたい)』という見栄や競争心はかなり本能的なレベルの心理であり、行動経済学では『みんなが年収1000万の会社で自分が年収700万を稼げる職場』よりも『みんなが年収300万で自分が年収500万を稼げる職場』のほうを好んで選ぶ人(基本的生活が十分にできる収入があれば絶対額よりも相対的な差を重視する人)が多いことが明らかにされていたりもする。

空虚感や憂鬱感、孤独感、無力感といった『精神的な問題(人間関係の悩み)』を、何かモノを買えばハイな気分になれるはずという『物質的な欲望』に転換して、『自分の本当の欲求・不満・不安』を誤魔化そうとする時に、買い物依存症をはじめとする物質依存のリスクは高まることになる。

強迫観念に急き立てられるような買い物依存症を改善するためには、『依存症が形成されるメカニズム』とは逆の順番で自分の精神的な問題や人間関係の悩みを突き詰めて特定していき、『自分の本当の欲求・不満・不安』につらくても向き合うという心的プロセスを経験する必要がある。

つまり、自分が本当に求めている状況や関係が何であるのか、自分が本当に恐れている状況や変化が何であるのかを明らかにしていきながら、『物質的な欲望の充足(生理的な脳の興奮)』に安易に頼らずに、自分の本当の問題点や気持ちを少しずつでも正攻法で改善していくという方法が有効になる。






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