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zoom RSS 戦争にまつわる人物・出来事を題材にした作品『風立ちぬ』と『はだしのゲン』の感想:1

<<   作成日時 : 2013/08/20 08:18   >>

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宮崎駿監督のアニメ映画『風立ちぬ』を見た。『風立ちぬ』は太平洋戦争(大東亜戦争)で使われた零戦の開発者・堀越二郎(ほりこしじろう)の人生を題材にしながら、文学者・堀辰雄(ほりたつお)の代表的な小説『風立ちぬ』の恋愛のエピソードや印象的な情景を織り込んだ作品である。

大東亜戦争の戦闘機を開発設計した天才的なエンジニアである堀越二郎が主人公だが、『あの戦争の価値判断』を問いかけるような教訓めいた作品ではなく、『平和主義・反戦思想のメッセージ性』を期待した観客は拍子抜けしてしまうような内容になっている。

このブログ記事では『風立ちぬ』の喫煙場面の多さを批判する日本禁煙学会、『はだしのゲン』の原爆投下の残酷な描写や戦後の人心の荒廃・差別(戦時中の暴力・犯罪)の表現が子供に有害であるとする島根県松江市の教育委員会について考えたことを書こうとしている。

しかし、『風立ちぬ』『はだしのゲン』は同じ戦争にまつわる出来事・人物を題材にしていても、全く正反対の表現方法を採用している。『明るさ・人間の希望を感じさせる風立ちぬ』『暗さ・人間の原罪を感じさせるはだしのゲン』は、対照的な表現手法と主題を採用した作品という意味でも興味深い。

『風立ちぬ』は平和教育の題材になるような反戦思想・人権思想が詰め込まれた作品では全くない、宮崎駿がアニメ映画として史実を元に創造した“戦時中にあっても美・純粋さを追求することのできた幸運な男(堀越二郎)”の美しい物語に仕上げられている。『風立ちぬ』では戦争の残酷さ・暴力性や人間の卑劣さ・冷淡さのようなものが直接的な映像として表現されることはなく、零戦を開発した堀越二郎の倫理的な責任や葛藤などがテーマとして浮かび上がるわけでもない。

そういった戦争そのものの倫理的・人道的な問題点を考えさせる類のアニメ映画ではなく、戦争の最中(さなか)にありながらも『理想の夢・美・恋愛(異性)』をひたすら追求して生き抜くことができた男の人生をポエティック(詩情的)に描いている。

宮崎駿監督本人は『風立ちぬ』の制作にあたって岩波新書『本へのとびら』において、『今ファンタジーを僕らはつくれません。子どもたちが楽しみに観るような、そういう幸せな映画を当面つくれないと思っています。風が吹き始めた時代の入り口で、幸せな映画をつくろうとしても、どうも嘘くさくなってダメなんです。二一世紀が本当に幕をあけたんですね。僕はそれから目をそらさないようにするので、せいいっぱいです』というコメントを出している。

だが、『風立ちぬ』は戦時中のファクトや歴史的な人物を題材に取りながらも、『まっすぐに突き進んでいく人生・仕事・恋愛』を、情感たっぷりに明るく鮮やかなイラストを駆使して表現した『ファンタジックな作品』としての趣きが強い。『風立ちぬ』は、荒井由実(ユーミン)が歌う主題歌『ひこうき雲』と明るさを感じさせる映画のイラスト(登場人物に起こるイベント)との相性が抜群で、美しくて感動的な映画に仕上がっているが、『戦争・戦前の出来事のリアリティ』を描いた作品としてはあまりに一般大衆の悲惨や労苦を省き過ぎている側面が否めない。






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戦争で都市や敵艦を爆撃して人を殺害する道具(特攻の道具)として働いた戦闘機の零戦は、堀越二郎にとっては『最も美しい外観と機能を備えた機体』を追求した結果に過ぎず、自分にとって最上の美を造形しようとした作品としてのみリアリティを持っている。 ...続きを見る
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