iPS細胞作製の山中伸弥教授のノーベル生理医学賞受賞と森口尚史氏のiPS臨床応用の誤報・虚偽発表:1

京都大学教授の山中伸弥氏(50)が、再生医療や新薬製造に応用可能なiPS細胞(人工多能性幹細胞)を初めて作製した実績を評価されて、ノーベル生理医学賞の受賞が決まった。日本人としては19人目のノーベル賞受賞者だというが、2006年にマウスの線維芽細胞(皮膚細胞の一種)に遺伝子を挿入して世界で初めて作製されたiPS細胞は、『人工的に作製可能なES細胞(万能細胞)』として当時から基礎科学の分野でも臨床医学の分野でも大きな注目を集めていた。

日本語で人工多能性幹細胞と呼ばれる『iPS細胞(Induced Pluripotent Stem cells)』は、ヒトの発生初期段階である受精卵が成長した胚盤胞から抽出される“ES細胞(胚性幹細胞,Embryonic Stem cells)”と同じ万能の分化・増殖機能を持つ特殊な幹細胞を、一般的な体細胞から作製したものである。

iPS細胞はES細胞と同じく理論上は、身体を構成するあらゆる組織・器官に分化する分化多能性(万能性)を持ち、その分化した細胞を無限増殖させることができるので、作製当初から再生医療(難病治療・遺伝子疾患治療)や新薬製造への応用に強い期待が寄せられている。iPS細胞はES細胞が万能細胞と呼ばれる事になぞらえて『新型万能細胞』という意訳が当てられている事も多い。

人工多能性幹細胞あるいは誘導多能性幹細胞と翻訳されるiPS細胞は、その日本語の語感からは生命を人工的に誘導して多様に操作するという『神の視点・技術』がイメージされやすいが、実際にはヒトの受精卵由来の胚盤胞を破壊せずに作製できるので、ES細胞よりも倫理的な問題が少なくなっている。ES細胞では、順調にそのまま成長していけばヒトになる受精卵・胚盤胞(内部細胞塊)を破壊して利用するために、受精の瞬間からヒトが生まれるという『キリスト教的な人間観・倫理観』に反するという倫理的問題が兼ねてから指摘されていたからである。

日本ではヒトの発生的な定義や受精卵(胚盤)の位置づけを巡って『宗教的・倫理的な論争』が過熱する事は殆どないのだが、それでも無際限にヒトの受精卵(初期胚)からES細胞を樹立して自由に取り出して良いわけではなく、不妊治療で実際に使われる事がなかった余剰胚からの取り出し(ES細胞の樹立)に限るなどの生命倫理的な制限が設けられているのである。

ヒトの原点である受精卵や初期胚に由来する“ES細胞”は、自由に必要なだけ作製できるわけではなく数量的な作製の限界があるのが普通であり、山中伸弥教授が作製した一般的な体細胞に由来する“iPS細胞”は、倫理的な制約をかなり緩和したという意味でも画期的な発明・業績だと思う。無論、ヒトの原型である初期胚を壊すという意味での生命倫理学的な問題を緩和しただけであり、iPS細胞をどこまで実用化しても良いのか、女性由来の精子や男性由来の卵子、ヒトのクローンのような非自然的な生殖細胞(個体)をどこまで自由に作製しても良いのかといった『技術応用の範疇』に関する倫理的問題は数多く残されている。

iPS細胞は体細胞を幹細胞に変異させる複数の遺伝子(無限増殖性・発がん性のある遺伝子含む)を挿入することで、擬似的なES細胞(胚性幹細胞)を作り出したものである。iPS細胞は、あらゆる組織・器官に分化し得る『分化万能性 (pluripotency)』と細胞が分裂増殖しても組織としての形質を維持できる『自己複製能』という特徴を持っている。

山中伸弥教授自身もiPS細胞の臨床応用・実用化に非常に強い意欲と期待を滲ませているように、 あらゆる組織・器官に分化できる可能性を持つiPS細胞は今まで根治(根本治療)ができなかった難病(特定疾患)や神経変性疾患、脊髄損傷、脳血管障害、Ⅰ型糖尿病、心筋症(心臓の奇形)などを、治療することができるかもしれない非常に高いポテンシャルを持っている。世間一般のiPS細胞に対する関心も、どちらかというと基礎医学・病理学的貢献にあるというよりは、機能不全になった臓器(器官)や遺伝子のエラーで機能しなくなった器官をiPS細胞から作製して移植するという『臨床応用の再生医療』にある。

現時点では、ES細胞でもiPS細胞でもそれらを用いて再生医療に成功したという事例はないが、山中伸弥教授のノーベル賞受賞後に、米ハーバード大研究員・客員講師を自称する森口尚史氏(48)がiPS細胞を使った心筋移植手術に立ち会って6件成功させたという報道が読売新聞から流れた。

ハーバード大学医学部やマサチューセッツ総合病院に限らず、iPS細胞から組織(器官)を誘導・分化させて移植する『再生医療』の成功事例はないため、世界初のiPS細胞を用いた心筋細胞の臨床治療を成功させたという報道は大きなインパクトがあるものだったが、報道の後に全く大学や病院、執刀医、医療スタッフからの裏付けが取れずに『誤報・虚偽』ではないかという疑いが強まった。






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