赤ちゃんの“記憶・教育・学習能力”と“原始反射・運動機能の発達”:2

新生児の運動の多くは、皮膚や筋、腱に受けた刺激が脊髄に伝わって自動的な筋肉の反応が引き起こされるという『脊髄反射』ですが、新生児期の発達段階だけに特徴的に現れる『原始反射』というものもあります。脳機能の発達がまだ未熟であることによって起こる機械的な新生児の原始反射には、以下のような種類が知られています。

把握反射……手の平を強く押さえられると、強く握り返してくる。

モロー反射(驚愕反射)……仰向けに寝ている赤ちゃんの頭を少し持ち上げて急に離すと、両手両足を左右対称に近い形で伸ばし、何かを抱き締めるような動きをする。

吸綴反射(きゅうてつはんしゃ)……母親の乳房から母乳を吸うための反射で、唇に何かが触れると吸い付く動作をする。

口唇探索反射……口唇探索反射は母乳を吸うために吸綴反射と連動している反射である。唇の周囲に何かが触れると、触れたものがある方向へと顔を向けて乳房を探すような動作をする。

自動歩行反射……新生児の体を腋を持って支え、地面に足を付かせてやると歩こうとする動作をする。

原始反射は『脳神経系の発達レベル=随意運動の発生』に合わせるようにして、生後4ヶ月頃から減少を始めて生後6ヶ月頃にはほぼ消失しますが、これは中枢神経系が発達していき、自分の意志で動作をコントロールする『随意運動』が増え始める事で原始反射が抑制されるからだと考えられています。脳の機能的発達は『神経線維の髄鞘化・樹状突起の発達』によって促進されます。

新生児の段階から見られる反射で成人になっても残るものとしては、『膝蓋腱反射(しつがいけんはんしゃ)・対光反射(瞳孔反射)・唾液反射』があります。膝蓋腱反射は膝の下部をハンマーなどで叩くと、ぴょこんと下腿が跳ね上がる反射、対光反射は明るい光で瞳孔が散大し暗くなると縮小する反射、唾液反射は口にモノが入ると唾液が出る反射です。

赤ちゃんの身体・体型の特徴は、体幹に対して相対的に頭が大きく手足が短いという『幼児体型』であり、およそ4頭身の体型になっています。この頭と体幹の大きさのバランスは年齢と共に変化していき、2歳で5頭身、6歳で6頭身、12歳で7頭身、20代で7~8頭身となり、段階的に頭の大きさが占める割合が体幹の長さに対して小さくなっていくのです。身体の成長スピードは乳児期(0~2歳)と思春期(12~18歳)において急速に早くなりますが、この時期を『急成長期』と呼んでいます。

産まれたばかりの新生児は生後4ヶ月で体重が約2倍になり、1歳までに約3倍、2歳までに約4倍にもなるという急成長を示しますが、2~6歳までの成長のスピードは緩やかになります。6~12歳の小学生の時期も身体の成長スピードは緩やかであるため、精神分析のリビドー発達論でも『潜伏期』と呼ばれるこの時期は『緩慢期』と呼ばれます。人間のように0~2歳と12~18歳という二つの時期に分かれた急成長期を持つ動物は他にはいないと言われますが、特に人間では“第二次性徴期(初潮・射精・陰毛や腋毛などの発毛・声変わり)”を伴う『思春期スパート』によって急速に生殖能力を持った大人の身体に近づいていきます。

脳・脊髄などの中枢神経系と中枢神経の指令による制御を受ける末梢神経系は、生後間もなくからすぐに発達を始めて、思春期の12歳頃になるとほぼ成人に近い機能を持つようになります。脳のニューロン(神経細胞)の数は生後すぐの段階から約120~130億個あり、その数は成長しても増えることはなく、老化が始まると減少すると考えられています。しかし、ニューロンの機能を促進するグリア細胞は増殖を続けて『髄鞘』を形成し、樹状突起の数を増やすことで脳内の神経伝達活動(情報伝達活動)を活性化していきます。

受精卵から3つの胚葉に分化する時に、外胚葉は脳・神経系に分化し、中胚葉は骨・筋肉・皮下組織に分化し、内胚葉は心臓・肺・胃などの内臓に分化していきますが、この3つの胚葉への分化を性格理論に応用したのがW.H.シェルドンの発生的類型論です。

中枢神経系の発達に比べると、身体のホメオスタシスを司っている『自律神経系の発達』は遅く、自律神経が十分に成熟して機能が完成するのは18歳頃だと考えられていますが、筋肉・内臓系の発達は身体の発達と同じように『二度の急成長期(0~2歳・12歳~18歳)』を通して急速に発達していきます。性器・生殖能力の発達は、思春期の第二次性徴期に急速に発達していき、女性は初潮(生理)による排卵、男性は精子を出す射精を経験することになります。

免疫能と関係する『扁桃腺・リンパ節』のように、新生児期から児童期の6~7歳頃までにかけて発達して大きくなり、その後は次第に大きさが小さくなっていくものもあります。喉の奥にある扁桃腺は、子どもの頃に大きくて炎症を起こしやすいという性質を持ちますが、10歳を越える年齢になると大人と同様の小さな扁桃腺になって腫れにくくなります。子どもの聴力の発達は、8~9歳頃に大人と同等の聴力を獲得するとされていますが、生後4ヶ月頃には、母親の声を他の人の声と区別して聞き分けているという動作・表情を示すようになります。生後9~10ヶ月で、音楽や歌を好んで聴くようになり、音楽のリズムに合わせて体を動かしたり、簡単な踊りを見よう見まねで踊ろうとしたりするようになってきます。

腎臓の機能である腎機能の発達は『尿量の増加』によって推測されますが、新生児の尿量は50~200ml/dayであり、生後6ヶ月で300~500ml/dayにまで腎機能が発達し、その後も1歳で400~600ml、3~5歳の幼児期で600~1000ml、児童期で1000~1500mlと飛躍的に増大していきます。腎臓の全般的機能と尿の濃縮能力そのものは、大体3歳頃で成人に近づくとされています。

赤ちゃんの手の細かな運動(つまむ・握る・挟むなど)を『巧緻運動(こうちうんどう)・微細運動』といいますが、巧緻運動に対して立つ・歩く・手足を振るなどのある程度大雑把に制御する全身的な運動のことを『粗大運動(そだいうんどう)』といいます。巧緻運動も粗大運動も、身体の中心部から周辺部に向かって発達していくという特徴があり、体幹部(中心部)の運動能力が初めに発達した後に、肩から腕、手、指へというように身体の周辺部(先端部)の運動能力が発達していきます。

生後4~5ヶ月の赤ちゃんは手の平全体でモノを包み込もうとする『手掌把握(しゅしょうはあく)』ができますが、生後7ヶ月頃になると更に細かい指の運動をコントロールできるようになり、指先だけでモノを掴む『指先把握(ゆびさきはあく)』をするようになります。生後5ヶ月頃になると、欲しいものを取るために目の前にあるモノに手を伸ばして取る『リーチング』ができるようになります。このリーチングは『見る・手を伸ばす・つまむ(掴む)』という3つの運動機能を組み合わせて協調させる高度な運動だと言えます。

1歳頃になると、小さなモノを親指と他の指を用いて綺麗に挟む人間に特有のつまみ方である『ピンチ状把握(対立把握)』ができるようになってきます。このピンチ状把握というのは、箸を持ったりヒモを結んだり、紙を折ったりするなどのかなり複雑な手の巧緻運動をするための基礎となる重要な運動機能だとされています。

この記事の内容は、『赤ちゃんの“記憶・教育・学習能力”と“原始反射・運動機能の発達”:1』の続きになっています。






■書籍紹介







脳科学からみた機能の発達 (発達心理学の基礎と臨床)
ミネルヴァ書房
平山 諭

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