斎藤環『関係する女 所有する男』の書評4:なぜ現代の若者は結婚しなくなったのか?結婚の選択性

本書『関係する女 所有する男』の本題である、“男性の所有原理”“女性の関係原理”から生み出される心理や行動、考え方の違いについては、『第三章 すべての結婚はなぜ不幸なのか』『第四章 食べ過ぎる女 ひきこもる男』から本格的に語られていき、読み物としても第三章以降のほうが面白くなる。

第一章の“ジェンダー・センシティブ”や第二章の“自然主義の誤謬(疑似科学問題)”の話は、社会学や生物学周辺の学術的な内容・主張が多くなっているので読み手を選ぶが、第三章の“現代の恋愛・結婚における男女の意識の違い”や第四章の“男性のひきこもりの多さ・女性の摂食障害の多さ”はより日常的な生活文脈に則した内容になっているからである。

『第三章 すべての結婚はなぜ不幸なのか』では、20代後半~30代前半になっても5割近くの男女が結婚しなくなっている未婚化の現代社会の趨勢や、1000万人以上の規模になっている両親と共に経済依存的な同居をしているパラサイトシングルの増加の現状を見据えながら、『就労(労働)・結婚の規範性の弱化』をまず提示している。30代後半以降に結婚するカップルが増えた“晩婚化の原因”は、社会の高学歴化と学卒後にある程度稼げるようになるまでの時間(職業キャリア)の長さが関係しているが、それは飽くまで高学歴・知識労働をしている人たちの話であり、全ての男女に共通する要因ではない。

なぜ現代の若者が結婚しなくなったのかという未婚化の最大の理由は、“雇用形態・給与水準・継続勤務の安定性”などに関係した社会経済的要因にあると推測されるが、より決定的な理由は『一定の年齢になったら絶対に結婚しなければならないという社会規範の強度』が相当に落ちてしまい、結婚がかつてのように生活・出産のためにする当たり前のものではなく、“思索・判断・選択の対象”になってしまったことにある。

現在でも現時点で物凄く好きな恋人がいて、結婚しなければ別れるしかないという状況になったのであれば、大半の人は一定の仕事・収入が確保されていれば結婚に踏み切るだろうが、恋人がいなかったり、将来もずっと一緒に協力して暮らしたいという意味での恋愛感情が曖昧であったりすれば、『結婚(出産)するかしないかの選択』に迷いや躊躇が生じやすくなっている。

もちろん、結婚したいと思っていても『男女それぞれの条件』が折り合わなかったり、好きになった相手から拒絶されたり付き合っても別れてしまったりして、結果的に結婚にまで辿り着かないという問題もあり、未婚化・非婚化が進んでいるとされる現代においても、『いつかは結婚したいという男女』のほうが圧倒的多数派である。

しかし、今すぐではなくいつかは結婚したいという意見には、“今すぐに結婚するための最大限の努力をしてその責任を負うという覚悟”までは含まれておらず、よほど離したくないという恋人などができない限りは、『自分の時間と収入を家族に分け与えて生活する自己犠牲・安楽(気楽)で自由な現在の生活を結婚のために捨てても良いという決断』ができないのではないかと思われる。

現代の未婚化の問題は、相手と子どものためにどんな苦労や負担をしてでも、今の生活を180度変えてでも結婚したいと思うほどの結婚願望が薄れており、好きな相手ができてそれなりに納得できる条件や環境が揃っていれば結婚してもいいかなという程度の願望の人も多いので、よほど幸運な出会いや展開がない限りは、無理してまで結婚しないという人が増えていると推測される。

そのため、現時点で『結婚する選択』をしても良い(ずっと一緒にいるためには遠からずその責任を負う選択をしなければならない)とする“好きな恋人”がいない状況で結婚しようとすると、どうしても『婚活』のように条件面を前提とする功利主義的な選択をするか、『偶然の良い出会い』を期待して受け身のままに年齢を重ねるという事態になりやすいのである。本書にある『第三章 すべての結婚はなぜ不幸なのか』と『第四章 食べ過ぎる女 ひきこもる男』以降の部分については、また時間のある時にそれぞれの内容と主張を振り返りながら感想をまとめていきたいと思います。

この記事は、前回の「斎藤環『関係する女 所有する男』の書評3:“男女の性差・性別役割”を科学的事実で語る誤謬」の記事の続きになっています。






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