コミュニケーションを円滑にするカウンセリング的な傾聴のポイント1:非言語的コミュニケーションの影響

人間関係やコミュニケーションを円滑にするカウンセリング的な技法として、『傾聴・共感的理解・肯定的受容』について紹介しましたが、相手の話を真剣に聴いている事を示すためには『自分の側の反応・態度』も必要になってきます。どんなに真剣に『相手の話』を聞いてその訴え・内容を理解しているつもりでも、表情・目線が上の空でぼんやりしていたり姿勢が悪くてだるそうな印象を与えたり、相手の話に対する適切な質問・受け応えがなかったりすれば、相手は『自分の話に興味をもってくれていない・この人に話しても受け入れてもらえない』という感想を受けてしまいます。

傾聴や共感的理解、人格的な好意によって形成される“カウンセリングのラポール(相互的な信頼感)”は、クライアントの話している内容をより深い方向へと導くだけではなく、話したことによる満足感や安心感を高める作用があり、この心理的変容や会話の満足感は一般的な人間関係にも通用するものがあります。

『聴き上手な人・相談をしやすい人』というのは、ただその場で付き合って話を聞いてくれる(音声としてヒアリングする)というだけではなく、その人の存在を肯定的に認めた上で相手に興味を持って話を聴こうとしてくれる(感情・意志の篭った声をリスニングする)のであり、そういった態度や反応が『会話をすることの満足感・自分が理解されて受け容れられている感覚』を生み出すとも言えます。

ただ一般の友達・知人などの人間関係では、『専門的・職業的に丁寧に傾聴するスタンス』を取れるわけではないので、共感的・受容的に相手の話を真剣に聴こうとする人であっても、『ある程度の相互性・心理的メリット(自分も相手から話を聴いてもらっているというお互い様の認識や相手に対する持続的な好意・興味)』がなければ、そういった相手を全面的に受け入れるスタンスは長続きしないという違いはあるかもしれません。

自分が相手から受け容れられていて好意的・共感的に話を聴いてもらえているという実感があれば、大半の人は『好意の返報性』を無意識的に発揮して、その相手に対して親切に振る舞ったりその話を丁寧に汲み取って聴こうとします。しかし、『相手に対する不信感・悪印象』が高まるような不快なやり取り(不誠実な対応)が繰り返されると、自分の反応もそれに合わせて悪くなっていくものだからです。

対人コミュニケーションでは、『物理的な距離感・表情や目線の変化・相手の言葉に対する受け応え・ジェスチャー』などが、相手に対する印象・評価を決定する要因になっていますが、特に言葉によって意味を伝達するのではなく、身体的な動きや態度、表情、身振りといった“非言語的コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)”が果たす役割も大きくなっています。対人コミュニケーションにおいて、相手が持つ『自分に対する印象・評価』を高めるためには、以下のような“態度・表情・距離・ジェスチャー・受け応えのポイント”が参考になります。

1.相手との関係にふさわしい対人距離(物理的距離)を取るようにする。

人間はそれぞれの親しさや関係性に応じた『快適・安心に感じられる距離』があり、家族・恋人のように親しい相手であれば手の触れられる『密接距離(45センチ以内)』でも良いが、一般的な友人・知人と話す時であれば『個体距離(45~120センチ以内)』の距離を取ったほうが不快感・違和感を感じにくい。個体距離というのは、相手の表情を自然に確認できるという距離でもある。正式な会見や交渉などの関係性では、『社会距離(120センチ~350センチ)』までの距離を取ることもある。講演・授業・式典などで距離が開けられる『公共距離(350センチ~700センチ以上)』までいくと個人対個人のコミュニケーションとしては不適切である。

2.他の仕事や用事をしながら相手の話を聴かないようにして、相手の顔(胸から顔の辺り)に目線を向けるようにする。

何かのついでに適当に話を聞いているだけという印象を与えないようにするために、相手とのコミュニケーションでは『それ以外の仕事・用事・手遊び』などをしないようにして、相手の胸から顔の辺りに目線の高さを合わせるようにする。親しい関係の相手であれば真正面に立ったり座ったりすれば良いが、それほど親しくない相手や緊張する上司・顧客などであればやや斜めの位置に立ったり座ったりすると気楽さが出てくる。

3.相手の話の内容やその時の感情にふさわしい表情を返すようにする。

相手が自分の不満について怒りを出して語りかけているのに、自分が無表情だったりにやけた表情をしていると、相手は当然ながら『この人は自分のこのつらい怒りや憤慨を理解してくれていない』という不信感を感じてそれ以上話すことをやめてしまう。深い悲しみや絶望を感じて暗い表情で語りかけている相手に、明るく爽やかな表情で応対するというのもバランスを欠いており、相手の悲しみやつらさへの共感を表すためには『真剣な表情・沈痛な趣き』を大袈裟にならない程度に返して上げることが望ましい。

相手が『どこかに旅行に出かけてその景色や人情に感動した』などの明るい話題や楽しい経験について語っている時には、無表情・無関心だったり面白くないような表情をせずに、自分も相手と同じように楽しんでいるという感じの生き生きした表情を返すことで、『自分と相手との共感性・相互理解』のリアリティも必然的に高まっていくことになる。

4.相手の話に対して適当な“肯定・了解・うなずき”の反応を返すようにする。

相手の話を傾聴するといっても、ただ黙り込んで一方的に聞いているだけでは、『相手の話をしたいという意欲』を掻き立てることはできない。黙っている態度や話に対する反応の薄さを見ると、『この人は自分の話題に興味関心がないのだろう。自分だけが話して相手は迷惑に思っているのではないか』と察して話をするのをやめてしまうことになりやすい。

相手の話に対しては、『うんうん・自分もそう思う(そんな経験をしたことがあった)・それからどうなったの?・それは面白いね(珍しいね)・今度自分もそれをやりたい・もっと詳しく教えて・話を聴いてそれについて初めて知ったよ』といった肯定的な反応や適度なうなずきを返すことで、相手は自分に興味関心を持ってもらえているという実感を感じやすくなり、話を聴いてくれている相手に対して好意・信頼(また会いたいとかまた話したいとかいう感情)を覚えやすくなる。

5.相手の話したいことについて聴いたり反応したりするようにして、『自分の意見・忠告・批判・別の話題』などを挟まないようにする。

会話がスムーズに行かなかったり相手の話す意欲を萎えさせてしまうのは、『相手の話の腰を折る反応(相手の話している感情に水を浴びせるような対応)』であり、例えば、自動車のカスタマイズや長距離ドライブが趣味の人に対して、『自動車は排気ガスで大気汚染をするだけでなく、石油資源を大量に燃やして温室効果ガスを出しているので好ましいものではない、自分は車は使わずにできるだけ歩いたり自転車を使いたい』というような批判めいた理屈を持ち出せば、相手は自分の好きな車についてそれ以上語ることが難しくなってしまう。

そこまで極端な反対や批判ではなくても、『でも,しかし~』や『自分の場合は~だから』、『それはともかくとして~』といった言い回しによって、婉曲的に『自分と相手との趣味・考え方が合わない』ことを伝えてしまって、相互の会話が噛み合わなくなりコミュニケーションの面白さ・楽しみが損なわれてしまうこともある。

共感的な傾聴に基づく会話の基本は、『相手の話題(話したいこと)について話す』ということだが、『自分の話したい別の話題に急に切り替える・相手の話題にまったくふれずにスルーする』というのは無意識的にやってしまいやすい事でもあり、その事によって『相手のより深く話そうとする意欲』が低下しやすくなってしまう。






■関連URI
電車・バスの中における携帯電話の通話はどうして迷惑に感じるのか?儀礼的無関心とマナー違反

“他人と関わりたい欲求”と“他人から干渉されたくない欲求”が生み出す人間関係の問題・相性

対人コミュニケーションのストレスとアサーティブな人間関係:1

■書籍紹介







読顔力 コミュニケーション・プロファイルの作り方 (小学館101新書)
小学館
簑下 成子

ユーザレビュー:

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 読顔力 コミュニケーション・プロファイルの作り方 (小学館101新書) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

この記事へのトラックバック