北海道電力・泊原発停止による原発ゼロ化と電力不足の問題3:もしもの原発事故のリスクと電力不足のリスク

東日本大震災による福島第一原発事故が発生する前には、原発が深刻な過酷事故(シビア・アクシデント)を起こす確率は数百万分の一以下で無視しても良いほどに低く、『核分裂制御の制御棒・緊急炉心冷却装置(ECCS)・非常用ディーゼル電源・多重の防御壁』によって安全性が万全に保たれているとされていたが、実際に“一回”の福島第一原発事故が発生してしまったために、それらの安全管理基準や原発事故の確率論が一挙にその説得力を失ってしまい、科学的な仮説としてもその安全性のロジックが反証されてしまったのである。

東日本大震災によって発生した高さ30メートルにも及ばんとした大津波は、『想定外の自然災害』であるという電力会社や識者の意見も出たりしたが、原発事故はただ『一回』でも起こってしまうとその被害規模が大きく、放射能汚染の持続時間が長いために、『想定外・レアケース』だからといって看過することのできない致命的な事故被害になってしまう。

確かに確率論としては、東日本大震災と同規模以上の地震と津波が短期間のうちに襲ってくる確率は限りなく低いし、シミュレーションに基づく安全対策を強化しておけば同程度の地震と津波には耐えられるかもしれないが、『一度の原発事故の発生』によって、どの専門家もどの政治家も絶対にどんな自然災害が来ても大丈夫とまでのお墨付きを(活断層の近くにある)各原発に与えることは難しくなった。

もしかして今度は30メートルを遥かに超す大津波が起こるのではないか、東日本大震災を越える震度の地震にも本当に耐えられるのか、最近茨城県で起こった竜巻でもアメリカ並みのトルネードになって直撃したら原発は壊れるのではないか、富士山など各地の活火山が爆発しても原発は大丈夫なのか、宇宙からの隕石落下によって原発が破損する恐れはないのかなど、『もしもの想定外の不安・予想以上の自然災害の発生リスク』に対して100%の保証は原理的に与えられないという事はあるが、福島以前であればそういった限りなく可能性が低いと思われるリスクは無視されてきた。

それが、起こるはずがないとされていた原発事故が福島県で一回起こってしまったことによって、『無視しても良いほどには確率は低くないのではないか,原発の安全対策にはまだ不備があるのではないかとの疑念』に一定以上の説得力が伴うようになったのである。電力危機によって発生する現実的な被害・困難を考えれば、安全対策を強化して『一次・二次のストレステスト』をクリアした原発を当面は再稼動させる必要も出てくると思うが、原発再稼動の難しさの要因にはもう一つ、『電力会社が出してくる電力需給・発電能力の数字』がどれくらい信用できるのか分からないという事もある。

福井県・大飯原発(おおいげんぱつ)の再稼動の是非を巡る関西電力と橋下徹大阪市長との直接対決においても、再稼動に強く反対する橋下市長は関電の出している電力需給のデータの信用性が怪しいとして、『原発なしでも節電・電力融通で夏場の電力需要を賄える』とする独自の見解を示している。

橋下市長は原発を再稼働しないままでも、昨年並みの節電対策や火力発電・揚水発電・自家発電の増強、他地域の電力会社からの電力融通などで何とか賄えるとする試算結果を出しており、関電や資源エネルギー庁が主張している『18.4%の電力不足』などは、原発を再稼動するために不足分を過大に見積もっているのではないかという不信を強めている。原発依存度の高い関西電力管内は日本全国でももっとも電力が不足すると見られている地域であり、関電と橋下徹市長の電力需給予測のどちらが実態に見合っているのかが注目されるが、大阪のような大都市圏で大規模停電が起こるような事態を招かないように細心の注意と努力が必要なことは言うまでもない。

福島第一原発事故の発生を防ぐことができず事故発生後の対応も後手後手に回って混乱したということで、既存の原子力安全委員会と原子力安全・保安院が出している安全基準やテスト方法が信用されなくなっているという政治家や国民の意見もあり、原子力行政の再構築という意味では原子力の規制を担当する役割を明確化した『原子力規制庁』の発足も急がなければならない。

現在の電力危機をどう乗り越えていけば良いのだろうか。常識的に考えれば原発を当面は必要最小限の数だけ再稼動して、『火力発電・自然エネルギー発電(太陽光・風力・地熱)』も並行的に増強していきながら、広域停電のリスクを無くせるだけの『余剰電力(代替電源)』を確保すべきである。『脱原発依存社会・原発ゼロ社会』という理想に向かうには、まず経済や生活、医療、社会インフラなどに深刻な被害が及ばないだけの電力会社の総電源の供給量(停電しないだけの供給力)と適正な電気料金の維持、発送電分離の市場環境などを整える必要があり、その上で原子力発電所を計画的・漸進的に削減していくべきと考える。






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