人間関係の悩みと“他者の愛情・承認”を求める普遍的な欲求3:孤独感をどう緩和するかの視点

“孤独感・疎外感・無援感”は自分に心理的な支えがなくて、他の人は他者と上手く関係を作りながら楽しくやっているのにと感じる中で、自分だけが一人で広漠とした社会(世界)に投げ出されているという感覚をもたらし、その孤立した不安で寂しい状態からこのまま抜け出せないのではないかという認知によって苦悩・絶望が強まることになる。

誰かと話したくても話せる人がいない、自分を好意的に認めてくれる他者がいないという状態が長く続くと、大半の人は精神的にかなりつらくなってくるが、そのつらさや苦しみを和らげる最善の方法は『信頼感のある人間関係の構築』であるが、すぐに人間関係の形成や維持が上手くいかなくても幾つかの方法によって、孤独感のつらさを改善することはできる。

1.“できれば良い人間関係を作りたいという認知”と“どうせ上手くいかないから人間関係なんか無くても良いという認知”が矛盾・対立している認知的不協和(cognitive dissonance)を修正して、できるだけストレートな(素直な)気持ちと明るい表情で行動するようにすること。

2.“今このようにある現実の人間関係の状態”と“これからこのようになりたいという理想の人間関係の状態”の間で、実現可能な目標をオープンマインド(開かれた気持ち)で設定すること。“今の人間関係の悪化”に対して適切な捉え方や対処法を取れるようにすること。

3.“人間関係・他者との付き合い(他者からの反応)”だけに自己の存在価値や生き甲斐を依存せずに、“人間関係以外の課題・趣味・目的・楽しみ”にも意識を向けてみて、努力しても人間関係で行き詰まった時には他の活動でも気分転換できるようにすること。

4.『この人は~だから自分とは絶対に合わない・この人は~の属性や帰属先を持っているから嫌いだ・この人は~の特徴があるから不快だ』といった偏見や固定観念を生み出す“スキーマ(認知的枠組み)”をできるだけ弱め、フラット(中立的)な目線で色々な人を見てみたり接してみること。

5.人間関係が上手くいっていても上手くいかなくても、『自分自身の存在価値・尊厳』が失われるわけではないという現実認識(自己認知)を持つようにして、人間関係や仕事、学業、趣味・娯楽をトータルに捉えながら、『今の自分にできそうなこと・それをやることで自信(自己肯定感)が高まること』にまずは取り組んだり、必要に応じて『何もしないぼんやりリラックスする時間』も取り入れること。


人が人との“広義のふれあい(相互承認のコミュニケーション)”を求める理由には、“助け合い(役割分担)の社会的生産性”“異性選択の繁殖適応度”といった進化生物学的な理由ももちろんあると思われるが、社会性や孤独感、承認欲求(帰属欲求)を持つ人は自分ひとりの意志の力だけでは、『自分の存在価値・生きる意欲や目的性』を十分に支えきることができない精神的な弱さ(個体単位の自己不全性)も抱えている。

誰かに自分の存在や活動、考え方、好き嫌いを認めてもらいたいという欲求は、その程度の差はあっても半ば普遍的なものである。自分一人だけに閉じた世界ではそういった『他者からの支持・共感・承認』が得られないために、人は対人関係が完全に無い状態では孤独感や寂しさ、自己不全感を感じやすくなり、『自己の空虚化』を避けるために他者を必然的に求めてしまうのである。

他者との共感的な語らいや相互承認のコミュニケーションに対する飢えは、『自分に自信が無くなった時・自分の自尊心が傷つけられてしまった状態』において高まりやすく、自分の存在や活動、実績、野心にギラギラとした自信が漲っているような時期に、それほど強い孤独感や寂しさを感じる事はあまり無いはずである。

他者との共感的なコミュニケーションや円滑で持続的な人間関係は、『自分がその相手に好かれていて必要とされているという感覚』を生み出すが、その心地良い感覚が傷ついた自尊心(自己肯定感が弱まる孤独感)を癒したり、物事をやり遂げるという自信を高めてくれることも多い。

エリック・バーンの交流分析(transactional analysis)では、他者の存在を認知する刺激(言動・態度)のことを“ストローク(stroke)”と呼ぶが、人は本能的に『正のストローク(肯定的な刺激)』であっても『負のストローク(否定的な刺激)』であっても、それが全く無いよりかはあるほうを望むという傾向性を持っている。

十分な自己肯定感と精神状態の安定があって、物事に対応するための自信が高まっている時には、『孤独感による寂しさ・自信喪失(自己不全)』というのは感じる事が少なくなるが、『人と何かを話したくてたまらないという思い・自分の感情や思考、体験を聴いて貰えないことがつらかったり面白くないという感覚』は自分の自己存在に対する自信(確信)が低下していることのメルクマール(指標)になることもある。

いつでも自分が話したい時に話を聴いて貰える、自分の語りかけに対して適切な反応(応答)が返ってくるというのは、子ども時代や学生時代はともかく、それぞれの仕事・生活で忙しくなる大人になるとなかなか贅沢な願望でもある。子ども時代には親が子どもの不満・疑問・体験について丁寧に話を聴いてくれるという事もあり、子どもの訴えかけに対する親の適切な受け答えのことを『情緒的応答』と呼んだりもするが、成長して大人になるに従って随時の情動的応答を与えてくれる人は『配偶者(自分で形成した家族)・親友・恋人』などに限られてくる事が多くなる。






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■書籍紹介







認められたい欲望と過剰な自分語り—そして居合わせた他者・過去とともにある私へ
東京大学出版会
牧野 篤

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