“男らしさ・女らしさ”のジェンダーは環境・教育で決まるのか2:性差を巡る生物学と社会科学

平均的に見る限り、女性は男性のように『身体的な闘争』に適した頑健な身体構造を持っておらず(それが近代の法治主義国家ではそれほど役に立たない強さだとしても)、やはり腕力・体力では男性のほうが優位にあって、『戦争・暴力・競争』においては女性よりも攻撃的になりやすい傾向は顕著なものがあります。男性とは何々である、女性とは何々であるという『一般論』は現代では短絡的な決め付けや男女差別として否定されやすいですが、その理由の多くは“ポリティカル・コレクト(政治的な正しさ)”であり、科学的な事実であるというわけではないでしょう。

性ホルモンや身体構造といった生物学的要因が生み出す『男性と女性の性格行動パターンの違い(各種の欲望や優先度の違い)』というのはやはり厳然として残っている部分があります。本能的な部分では特に、『男性の競争性・暴力性・性への関心』『女性の子育ての優先度(子育てのための資源・環境を整えることの重視)』というのは、環境や教育だけによって無かったことにする(男女の行動原理をフラット化する)のは難しいと思います。

男性と女性、雄と雌といった生命史における性別分化の歴史については、福岡伸一の『できそこないの男たち』という新書が分かりやすくて参考になりますが、精子を持つ男性と卵子・子宮を持つ女性では子(自己遺伝子)を残すための生殖戦略の違いがあり、その違いが『性格行動パターン・異性選択の基準・攻撃性と共感性・性欲の強さの違い』にもつながっている部分が多いのです。

男性のほうが女性と比較すると、一般的に攻撃性・権力欲が強くて、正義が悪を力で蹴散らすような(話し合いよりも実力で敵を屈服させるような)暴力的な物語にのめり込みやすく、不特定多数を対象とする快楽的な性への妄想・こだわりも強い(視覚的なポルノグラフィの需要も大きい)という傾向性は、社会的(環境的)に埋め込まれたというよりも遺伝的(本能的)に設計されているものであり、男性と同じような養育をしたとしても女性がそのような傾向性を持つ事は極めて稀か殆どありません。

経験主義のジョン・ロックや社会主義のカール・マルクス、文化人類学者のマーガレット・ミード、徹底的行動主義のB.F.スキナーらは、生まれたばかりの人間は柔軟な適応性だけを備えた“タブラ・ラサ(まっさらな白紙)”だと仮定することで、生物学的・遺伝的な能力差や性差(セックス)の影響を極めて小さく見積もりました。実際には『文化・教育・社会環境』といった外部的・後天的な要因だけによって人間性(人間の行動パターン)が形作られていくという考え方は極端であり、『本能(自然)』を無視して現実の人間の性格形成を説明する場合には無理もでてきます。

進化論を着想したチャールズ・ダーウィン『人間の由来』において、性選択は人間の男と女両方の性差に影響を及ぼしながら、どちらの性にも肉体的・精神的変化を及ぼしてきたと語るように、『男性のフィジカルな頑健性と攻撃性』『女性の生殖能力と共感性』といった基本的な生物学的(生得的)に規定される性差というのは、教育や環境、技術だけによって変化させることが極めて困難か不可能に近いものです。

現代では確かに従来と比較すれば、男性と女性の“中性化”や男女の好きな異性のタイプの変化が進んできたり、異性の獲得(生殖機会)にそれほど熱心にならない“草食男子”が出てきたりということがありますが、それでも“身体的・精神的・指向的な男女の分かりやすい違い”がフラット化されたわけではなく、『男性が女性(家族)を経済的に守る・女性が男性を精神的に支えて育児を担う』という恋愛や婚姻の一般的イメージは大きくは変わっていません。

競争原理(自然選択)・男女関係(家族形成)にまつわる“自然主義(naturalism)”というのは簡単に説明すれば、『自然界の摂理・秩序』から余りに外れた平等的な生き方や倫理的な価値観が普及していくと、人類は生物種として弱くなったり生存・繁殖の維持が難しくなるという価値判断のイズムであり、人間(ヒト)が“自然(本能)”“人為(文化・倫理)”の両方に規定される存在であることを示しています。

人間の行動や心理が『自然(本能)』によって規定されるのか『人為(文化)』によって規定されるのかという問いは、心理学の性格形成仮説における『遺伝要因』『環境要因(教育・育て方)』かの“氏か育ちか論争”とほぼ同じ構造を持っていることに留意が必要です。






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