男女のセクシャリティの違いが恋愛や結婚に与える影響1:なぜ男女関係は非対称になりやすいのか?

草食男子や女子の恋愛離れ(パートナーのいない若年層の増加)などのキーワードで、現代における『恋愛・結婚の不振(未婚化・少子化との相関)』が語られることがありますが、その最大の要因は社会学的には『男性の雇用情勢の悪化と平均所得(労働意識)の低下・男女の性別役割意識の影響』だと推測されることが多くなっています。それと合わせて、“性的魅力・外見”と“お金・仕事”の要素でメリットやデメリットを意識し過ぎるようになったこと(自分の現状と見合わない高めの要求水準を持ったり将来の人生設計の細かな不安点を意識することの増加)も、結婚にまで至りにくい男女のミスマッチが増えやすくなった事と関係しているかもしれません。

理想的な美しさや可愛さ、カッコ良さを持つ異性しか恋愛対象として目に入らない“ロマンティックラブの先鋭化”では、『性的魅力・外見』にこだわり過ぎることで相手探しが上手くいかなくなることも多くなります。イケメンや美人でないとダメというハードルありきで異性を見れば、付き合っても良いと思える異性の範囲は初めから相当に大きく制約されることにもなるからです。大企業の正社員や公務員、専門職など平均所得の高い人しか結婚対象として目に入らない“条件・ステータスありきの婚活”というのも、そういった好条件の人の絶対数は少なく、更に自分を選ぶかも分からないので、晩婚化・未婚化の要因になりやすくなります。

恋愛・結婚において安易な妥協をして相手を選ぶべきではないですが、初めから『自分の固定的な基準・条件』で対象となる異性を足きりしていくだけではなく、『相手の良い部分・魅力的な部分』を探してみるといった視線も合わせて持つことで、恋愛・結婚の対象となる異性の範囲はぐんと広くなるでしょう。あるいは、『性的魅力・外見』や『仕事・お金』といった分かりやすい異性の魅力だけではなくて、そこに一緒に話していて楽しいとか思いやりが深くて自分のことを大切にしてくれそうといった『性格的魅力・内面の美点』を加えていくことで、異性を見る目がより豊かに実践的に養われてきます。

男性が女性の美貌やスタイルを重視しやすく、女性が男性の経済力や社会適応(雇用)を重視しやすいという『性選択の傾向性(男性の財と女性の性の交換原理)』は、男性社会の経済構造の影響を受けてはいますが、『男性の強さ・女性の美しさを賞賛する価値規範』は世界中の広範な文化圏において見られることから生物学的根拠もかなり強いと推測されます。

男性の性的欲求の強さやセクシャリティ(性嗜好)の多様性によって、女性は女性であるというだけで『男性に対する身体的価値(一般的な性対象としての価値)』を持つことが多いですが、その逆で、男性が男性であるというだけで『女性に対する身体的価値(一般的な性対象としての価値)』を持つというのは殆どないことからも、男性の社会経済的能力が女性に重要視されやすいと言えます。

男性と女性とでは『性的関係を持っても良い(持ちたい)と思う異性の範囲』に相当な差があり、男性はポルノも含め不特定多数の女性に性的関心(異性としての好意)を持ちやすいですが、女性はそういった不特定多数への性的関心を持っている人は殆どおらず、恋愛・性の相手の選択にも一般的に男性よりも慎重です。なぜそういう性行動・性欲の傾向性の違いが生まれるのかは、『卵子の生殖資源の希少性・自分の身体を使って妊娠出産するリスク』など生物学的要因を想定することができますが、女性の性欲を抑圧して独占しようとする『男性社会の性道徳・婚姻規範の内面化』といった社会構造的要因も関係していると考えられます。

現代では男女平等やジェンダーフリーの観点から、男性が女性に食事をおごることが当たり前ではなくなったという考え方や女性の歓心を引くために高額プレゼントでお金を使うのはおかしいという意見もありますが、それでも『男女のセックスの価値(性欲の強さ・性的パートナーの見つかりやすさ)の違い』によって、女性のセクシャルな身体・イメージの価値を高く感じる男性が圧倒的に多い以上は、好きな異性に対して経済的コストをかける男性が減るとは考えにくいのです。

もっとも根底的な男女のセクシャリティの違いは、男性はセックスだけを目的にして女性を求めることもあるが、女性は基本的にはそういったセックスのみの目的を持つことは少なく、更に平均的な女性が本気でセックスに誘えばついてくる男性は多いが、男性が誘っても断られる可能性のほうが一般的には高いということがあります。

その意味では、『性欲・性選択』に関しては男性と女性はかなり『非対称的な力関係』にあり、ある程度若くて平均的な魅力を持つ女性であれば、選り好みしなければ殆ど苦労をせずに性の相手を捕まえることができる一方で、男性は外見的魅力にもよりますが、基本的にはある程度女性から選ばれるために苦労して努力しなければ(あるいは気を遣ったりお金を使わなければ)、性的な関係を持つことが難しくなっています。

このセクシャリティに関係する『男女の非対称性』は、男女の生殖戦略の差異や精子・卵子の産生コスト(希少性)の違い、ホルモン的な性欲の強度とも相関しており、経済的・文化的にも男性向けの性関連産業の需要は、公平に見ても女性向けのそれよりも相当に大きいと考えることが妥当だと言えます。またウェブ上の出会い系サイトなどにおいても、女性にメッセージを送る男性の数は、男性にメッセージを送る女性の数よりも圧倒的に多く、女性であればその気になれば相手を見つける事は容易ですが、逆に言えば多くの女性にとっては『真剣な交際(将来の結婚・出産などにもつながり得る恋愛)』以外の刹那的・不特定的な異性関係の重要性はかなり低く、その需要も著しく低いということを示しています。

異性との出会いを目的としないSNSなどにおいても『男性からの恋愛や性に関する誘いのメッセージ(女性に無差別に送りつけているような定型的メッセージ含め)が煩わしくて迷惑である。知らない男性からのメッセージや友達申請は一切受け付けない』とする女性が多くいるように、男性のほうが女性を性的に求めて、女性のほうがその可否を選択するという構造はかなり普遍的であり、生殖コスト(母胎リスク)や繁殖速度の差異が関係した生物学的根拠を持つものだと考えられます。もちろん、社会文化的なジェンダーによって、男性と女性それぞれに課せられている『性道徳規範・性的な自意識の違い(男性の豪快さ・女性の貞淑さ)』といったものも影響しており、男性と女性は社会的・権利的には平等であっても、恋愛・セクシャリティにおいてはかなりの非対称性が生まれやすくなっています。






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