Facebookは日本で普及するか?2:ソーシャルネットワークに何を求めてアクセスするのか。

リアルとリンクしたソーシャルグラフを生かすFacebookの魅力や面白さは、当たり前のことであるが、『リアルの人間関係の量・質』に多くを依存するので、『リアルの人間関係』をウェブ上でも再現して楽しくやり取りしたいと思える人でないと、ソーシャルグラフを作成してコミュニケーションする価値は乏しくなりやすい。あるいは、『コミュニケーションの面白さ・楽しさ』とは別の評価軸として、『現実社会におけるキャリアプラン・ビジネス・人脈形成・リクルーティングに役立つ』という評価軸を重視するビジネスパーソンやIT関係者を中心にして規模を拡大するという可能性が高いように思う。

Facebookを既に最大限活用しているユーザーの多くは、海外に多くの友人知人がいて英語ベースでコミュニケーションしている人(留学経験や海外の学校でのつながりがある人)か、IT関連やパーソナルブランドのビジネスをしていて、ファンページなどでマーケティングをしたい人かという感じではないだろうか。英語圏のコミュニケーションやディスカッションに参加できる程度のリアルの人間関係や英語力があるか否かでも、Facebookで体験できる事柄の質にはかなりの違いが出てきそうだし、英語力や外国の知人の多さがあれば、約5億8千万というユーザー数の規模のメリットを実感できやすいのかもしれない。反対に日本語だけであれば、日本人の登録者数の少なさもあって、一般ユーザーが実際の知り合いを検索できる可能性は低くなりそうである。

Facebookが『実名制』でmixiが『匿名制』という二元論は厳密には正しくなくて、mixiはリアルの知り合いには自分が誰かは分かっているが、表記される名前がHN(ペンネーム)であることが多いのが一つの特徴であり、『自分が教えたい(ウェブでもやり取りしたいと思う)リアルの知人』にだけ教えられるということがある。実名表記だと(特に家族・クラスメイト・上司同僚など)相手から検索されてアプローチされれば、『リアルの人間関係』を自分の都合や必要によって選別することは難しくなり、本当は好きではない相手とも交流しなければならなくなる事もあるが、HN表記だと『リアルとウェブの融合-区別のレベル』を自分でコントロールしやすいというのはあるかもしれない。

孤独な状況だったりリアルの人間関係が楽しくないから、あるいはリアルの家族・知人・同僚には自分の言いたいことを言えないから(話題が余り合わないから)、『趣味・興味・価値観を共有できる相手』を見つけてウェブでコミュニケーションをしているというユーザー層も多いが、Facebookではそういった心情(内面)ベースのコミュニケーションよりも、ソーシャルベースのコミュニケーションによる『現実的な人間関係の拡大』のほうがメインになっていると言える。

無論、Facebookで少数のリアルの知人だけと内輪のやり取りをするような使い方もできるし、自分の気になる著名人や言論人をフォローするような匿名的な使い方もできるかもしれないが、Facebookでは『内容のある記事を読む・文章を読んで人物に興味を持つ』という使い方はあまり重視されていない。あるいは、ソーシャルグラフとして活用されるFacebookの本質は、『内容のある記事を読むための機能・不特定多数に文章を読ませられる機能』がデフォルトで準備されていないこと、mixiの日記・ニュースや一般的なブログのような機能がついていないことに現れているのかもしれない。正確には、ブログを紐づけてニュースフィードに流すことができるので、フレンドに登録後には記事を読んでもらうことは出来るが、知り合いではない人を含めた不特定多数の記事を読むような仕組みにはなっていない。

この辺は、フレンド(マイミク)をどのような存在として定義するかの基本思想の差異でもあるが、mixiは『友達の友達』には余り関心を示さない人も多い一方で(特にライフスタイルや興味関心で共通点が少なそうな相手には関心が乏しい)、『知らない相手』であっても話題や興味が重複すればマイミクにしたりしていて、知り合いの知り合いを通してフレンドを増やすFacebookとはフレンド登録の基準に微妙な違いがあるのかもしれない。リアルの仕事上の利害関係が絡んでいる人が多いか少ないかの違いも当然にあるし、趣味的・娯楽的なやり取りの要素をどれくらい重視するのかという事もあるのだろう。

FacebookとmixiのUI・機能、使い方の違いとして、mixiでは知らない相手であっても『書かれた日記・ボイス・コミュのコメント』などから興味を持って話しかけることも多いようだが、Facebookでは『書かれた文章』よりも『その人のリアルの属性(どんな条件を持っているか)・関係(誰の知り合いか)・履歴(何をしているのか・してきたのか)』などから興味を持つことのほうが多く、知らない相手の文章・考え方を面白いと感じてフレンド申請をするということは少ないように感じる。

Facebookには不特定多数に自分の記事・文章を簡単に読んでもらえる機能や仕組みというのは殆ど整備されていないが、これは『テキストに反映される価値観・思想・知性(何かを考えて文章化するという抽象的な人)』よりも『属性の束としての実在の人(何かをしていて実際にも会えるというような実在的な人)』を基準にしたSNSの設計なのではないだろうか。

つまり、“文章を読み書きして楽しむ(心理主義)”のではなくて“生活・出来事を共有して楽しむ(身体主義)”というのがFacebookの使い方であり、mixiやブログのようにテキストの読み書きがメインなのではなくて、ステータス(どこにいて何をしたか)や写真・動画の共有、遊び・仕事の計画(カレンダー上の予定)のほうがメインになっている。そのため、フレンドになっている人のプライベート(私生活・経験の共有)への興味関心が無ければ、ニュースフィードに流れてくる画像・リンク・ステータス(何をしてるか)などの情報にそれほどの価値が見出せないということもある。

その意味で、Facebookはブログやテキスト文化の延長線上にあるmixi的なSNSとは一線を画した『パーソナルネットワーク(個人的な関心・話題でのつながり)』ではない『ソーシャルネットワーク(社会的属性を持つ人のつながり)』だと言うことができるように思う。その人が書いている日記・記事など“面白い読み物ありき・各ジャンルの話題や興味の一致ありき”というブログの延長線上のようなネットワークが日本のウェブでは一般化しているが、Facebookでは文章・話題の好き嫌い(内面的なシンパシー・どんな内容を書いているか)よりも人の属性(何をしている人で誰とどんな関係にあるか)のほうに主眼を置いたソーシャルネットワークなのである。

それぞれのユーザーの行動パターンの典型的な違いは、mixiであれば『(日記のような記述も含め)何を書いてみんなを楽しませようか・どのニュースをネタに上手い解釈を加えようか』という思考を伴うテキスト中心の行動が多いのに対し、Facebookであれば『今のステータスやイベントの予定を知人に伝えて共有したい・どの写真や動画をアップロードしようか』という思考・文章を必ずしも必要としない経験(記憶)をサラリと共有する行動が多いという事になるのかもしれない。mixiでも位置情報をチェックしたり、各種コンテンツをチェックしたり、写真・動画を共有したりする機能は提供されているが、それらが日記・ボイスなどテキストベースのやり取り以上にマイミクの間で重視されているか(他者のチェックした事柄に注意を多く向けているか)というと微妙だろう。

Facebookは『社会的なソトの顔(ビジネス・人脈形成の用途)』、mixiは『プライベートなウチの顔(遊び・娯楽の用途)』といった分類がされている記事も目にしたが、社会的・ビジネス的(職業的)な実際上のメリットに結びつくSNSの需要がでてくる予兆はあり、その点では学生の就活や友達関係、社会人や企業のリクルーティング、マーケティング、リアルに反映させたい社会活動の用途なども含めて、Facebookのユーザー数が一定規模まで増える可能性はあるように思う。

グローバルなSNSとしてFacebookの未来像を想像するのであれば、日本国内での普及率の見通しとは別に、『Facebook独自の電子マネーの発行(これが普及すると国家レベルの経済圏が生まれる可能性)』『ユーザー属性に適合した広告価値の高いソーシャルメディア』としての成長のほうにも関心を惹かれる。






■関連URI
Facebookは日本で普及するか?1:Facebookとmixiのソーシャルグラフや利用方法の違い


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ウェブとリアルの人間関係・コミュニティを区別したいユーザの需要と匿名性が支える日記的コンテンツの問題

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