Facebookは日本で普及するか?1:Facebookとmixiのソーシャルグラフや利用方法の違い

Facebookの創設者であるマーク・ザッカーバーグの学生時代を題材にした映画『ソーシャル・ネットワーク』の感想を書いたが、昨年半ば頃からFacebook関連のITニュースやブログをよく目にするようになった。日本でSNSといえばmixiやgree、モバゲータウンがよく知られているが、greeとモバゲータウンはオンラインのソーシャルゲームを介したSNSであり、直接的な人間関係やコミュニケーションがメインではないので、日本のコミュニケーション中心のSNSといえばユーザー数約2,000万人といわれるmixiだろう。

Facebookのユーザー数は約5億8千万人、世界最大のSNSとして今後も成長を続けると見られているが、日本国内のユーザー数は約200~300万人で昨年からユーザー増加のスピードは上がっているが、いまいち振るわないという印象はある。ウェブ上のイノベーターやコアユーザーはかなり前からFacebookを利用しているが、日本では既にmixiが大学生をはじめとする若年層に普及しているということもあり、FacebookをメインのSNSにして乗り換えようという大きな動きにはなっていない。

Facebookがmixi同等以上の規模に成長するためには、『既存のmixiユーザーの乗り換え・mixi離れしたユーザーの再取り込み』『今までSNSを使ったことのない新規ユーザーの獲得』かのいずれかが必要となる。日本でSNSをまだ使っていない約1億人の中には、乳幼児・児童・高齢者などSNSの利用が適切でなかったり能力的に使えなかったりする層(ウェブにまったく無関心な層)も含まれているが、それでも『数千万人以上の規模』でSNSを使っていない人、使う必要性を感じない人がいることは、潜在的な成長可能性の根拠にはなるだろう。

Facebookが流行るためには、既存のmixiユーザーをFacebookに惹きつける新たな魅力や利便性、あるいはSNS未体験者をFacebookに引き寄せる何らかの魅力や利便性が無ければならないが、現状では『Facebookでないと実現できない機能(mixiではできない機能)』というのは殆どなく、日本のネット文化にローカライズされたmixiのほうが使いやすいというのはあるだろう。Facebookは確かに高機能でありアプリなどを使ってカスタマイズできることが魅力になっているが、『日記(記事作成)・ボイス(つぶやき)・ニュースの感想(不特定多数からの閲覧)』を中心にして活動する人が多いmixiのUIや使い方に慣れたユーザーにとっては、まず何をすれば良いのかが分かりにくいという問題はある。

Facebookの最大の特徴はリアルとウェブを融合させる『実名制』をベースにした『ソーシャルグラフ(社会的な関係性の可視化)』にあると言われるが、これは日本のウェブユーザーにとっては『リアルの人間関係の充実度・職業的キャリア(ビジネス上のPR)や自己ブランディングへの活用度』によって長所にもなり得るし短所にもなり得るだろう。

Facebookのソーシャルグラフは基本的には、ウェブ上のやり取りで知り合った相手との関係性を反映させるものではなく、リアルで初めから友人知人である相手やリアルの友人とのつながりで知り合った相手との関係性を反映させるものとして設計されている。そのため、ニュースとリンクした記事を書けたり、不特定多数が閲覧可能なコンテンツ(自分の書き込み)の多いmixiと比較すると、『リアルで接点のない相手』とコミュニケーションしたりフレンドに登録しやすい設計にはなっていない。

mixiでは『リアルの家族・友人・同僚・仕事関係者(それらからの紹介)などだけにマイミクを限定している層』『日記やコミュニティ、メッセージなどmixiだけのやり取りも含めてマイミクを登録していく層』とに大きく分かれるが、Facebookのソーシャルグラフは原則としては、前者のネットワークを広げていこうとするものになっている。リアルの人間関係をベースにしてソーシャル・グラフを作成している層には、小中学生時代からウェブ(ケータイ)があったような大学生~20代など若年層と日常的にウェブの活用が必須な業種のビジネスパーソンが多いイメージがある。

現実問題として、学生時代にウェブ利用やケータイ所有が普及していなかった30代半ば以上くらいの年代になってくると、mixiにせよFacebookにせよSNSに参加している人の社会全体での比率はかなり小さくなってくるように感じるし、過去から続くリアルの人間関係をウェブ上に移している人もかなり少ないだろう。学生時代からウェブが普及していなかった世代では、ライフステージの変化や生活環境・仕事状況の変化に合わせて、人間関係が自然に組み替えられていき、過去の人間関係が疎遠になることが多いからである。

50代以上になるとウェブを全く使わない人、会社を退職したら家族以外とは無縁化してしまう人も多いので、ウェブに移すべき『リアルの人間関係』が初めから乏しいという事も少なくない。高齢者も基本的には、夫婦・単身世帯だけで孤立しやすい社会構造があり、Facebookの広範な年代への普及のハードルとして『学生時代以降のリアルの人間関係が狭小化(減少)しやすい・中高年期になるにつれて人間関係が減少しやすい・主婦(主夫)を除く職業社会に上手く適応していない層が取り込みにくい』という日本独特の社会的要因も考慮する必要がある。

ソーシャルグラフとしての実名SNSの普及阻害の要因は、大きく分ければ『日本社会における孤立化・無縁化の社会的要因』と『ハードワーカーの会社員の自由時間の少なさ』、『実名制のメリットが大きいと感じる層の小ささ』などが想定される。この要因を免れやすいセグメントとしては『学生層・ITと親和的なサラリーパーソン(キャリアプランに活用可能な層)・専門職層・経営者層・自営業層・主婦層(主夫層)・マーケティング目的の企業』が考えられるが、Facebookの弱点として日本人の一般ユーザーに分かりやすく訴求できるエンターテイメントや遊びの要素が乏しいということはあるかもしれない。簡単に言えば、サイトのイメージやデザインがやや堅すぎてフォーマルな感じを受けやすく、日本にローカライズされたSNSとしての完成度に改善の余地があるという事だろう。

mixiでも、専業主婦や時短勤務の女性のアクティブ率は高いが、その女性の夫でハードワーカーと見られるサラリーマン層のアクティブ率は必ずしも高くなく、『一定以上の自由時間・SNS参加の必要性』がなければ、ITやウェブコミュニケーションと仕事内容が直接関係しないサラリーマン層は、SNS参加の動機づけを高めることが難しいのかもしれない。また日本では終身雇用制が崩壊したという意見は多く見られても、実際には大企業・役所に勤務する人の多くは終身雇用に近い雇用形態となっており、SNSのソーシャルグラフをキャリアプランに活かせる職場環境・仕事内容のサラリーマンがまだまだ少ないという事情もある。






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