“幸福感・充実感・リラックス感”を得るためのカウンセリング的な視点2:人間関係の悩みの捉え方

『前回の記事』の続きだが、『急がなきゃ急がなきゃ。このままじゃ間に合わない』という自分を急き立てるような切迫感は、確かに稀にではあるが、尻に火がついた事でモチベーションと仕事の処理速度を引き上げることがある。だが、それはやらなければならない仕事量が、『スケジューリングの時間枠』の中に何とか収まっていて、自分の能力・意欲を最大限に発揮すればぎりぎりで終わらせられるという実感に支えられているケースに限られる。

また周囲の人に過剰な気配りをさせる『タイトで余裕が全く無いスケジュール(仕事や勉強の計画)』は、自分自身の充実感や自己肯定感を落としたり、大切な人間関係を磨耗させたりするだけでなく、『不測の事態の発生・予定のズレや計画を中座させる出来事』に全く対応することができなくなる。

全神経を集中して僅かな時間のロスも許さないで、与えられた時間の全てを有効活用しなければ終わらない過密スケジュールを組み続けていれば、心身の疲憊とストレスは否応なしに高まって、最終的には身体的・精神的な健康を崩したり、『家族・恋人・友人・子どもなど大切な他者との関わり合い』でさえも、自分の仕事のスケジュールや進捗を邪魔する迷惑な要因のように思えてきてしまうから問題でもある。

全く余裕の無いぎちぎちの計画性、少しの無駄や邪魔も許されない無理なスケジュールを組むことの最大の問題点は、『他者・環境変化への寛容性』が大幅に低下し、少し家族(子ども)が騒いで大笑いしただけで激昂して静かにしろと怒鳴りつけたり、隣の部屋の住人の僅かな生活音や周囲の子ども達の遊ぶ声が自分の仕事(勉強)を邪魔する許せないものに思えてきたりして、『自分以外の他者の存在』が煩わしくなり人に寛容になったり好意を持ったりすることが難しくなってしまうことだ。

人や仕事によってはそこまで自分を追い詰めて一分の余裕もないほどに集中しなければ、どうにもならない事態や締め切りがあるかもしれないが、『物事の優先度・重要度』を冷静になって現実的に整理すれば、家族や恋人、友人、子どもなどからの干渉すべてを排除して絶えずピリピリと心身を磨耗させて集中しなければならないという『絶対的優先度』があるか否かは考え直せる余地もきっと生まれてくるだろう。

確かに膨大な仕事ややるべきこと、スケジュールを抱えていれば、人は精神的な余裕を失い『今・ここにある自分』だけに意識を集中できなくなり、『早く終わらせて次にいかないと大変なことになる』というややオーバーな破局的認知の虜(とりこ)になって、心理面・行動面の柔軟さや自由度を失ってしまいやすい。

しかし、『自分にとって本当に大切なもの・今自分ができることの範囲』というものを落ち着いて見つめなおしてみること、絶対に無理なことと頑張ればできることの境界を認識して、『行動・思考の区切り』をつけていくことができれば、『一息つける安らぎの時間』を自分で自分にプレゼントすることはそれほど難しい事ではないように思う。

『人間関係が上手くいかない不満・怒り・寂しさ・孤独』についてはどのようにして改善策を講じていくべきだろうか。人間関係の悩みは広範なので、個別的なケースによって対応は異なってくるがコミュニケーションを通して他者との関係を良好にするヒントは、『話す時間・聴く時間の配分』『相手(他人)に興味を持つことを楽しむ姿勢』が関係している。

そして、人間関係の疎外や裏切り、孤立によって苦しみ続けている人がいるのであれば、『他者に愛されて認められなければ自分は不幸で惨めな存在に過ぎない』という内語(自己内面のつぶやき)による自己催眠を解除して、『人間関係(異性関係含め)への依存性・執着心の強度』を何段階も落として、『人間関係以外の人生の目的・楽しみ』とのバランスをもう一度取り直してみるべきだろう。

他者に愛されたり尊重されたりすることは、確かに『心理的な幸福感・自己価値』を増大させる好ましい経験であることは疑いがないが、他者に愛されなかったり認められなかったりしたからといって、『自分自身の価値・存在意義』が決定的に損なわれてしまうと考えるのは、現実的で適応的な考え方(認知)とは言えない。

それは自分で自分をより惨めで憐れな存在にしていき、本当はもっと充実した人生を生きられるはずの自分を自己催眠的に無価値化してしまうという意味で、『フィルタリング(悪い部分だけへの注目)・ネガティブ思考(良い部分の無視)・結論の飛躍(確かな根拠もない思い込み)』という自分を不幸にする認知の歪みに囚われてしまった状態なのである。他者から承認されれば嬉しかったりやる気がでたりするが、それは自己価値が客観的に引き上げられたわけではない。

それと同様に、他者から拒絶(疎外)されたり裏切られれば悲しかったり気分が落ち込んだりするが、それを他者のネガティブな言動によって自己価値が直接的に否定されたという風に受け取ってしまうと、『自分の人生』が『他者の人生(他者から制御される人生)』になってしまう恐れがでてくる。

他人から承認されたり賞讃されればそれは幸福であると同時にラッキーなことであるが、他人から非難されたり拒絶されたとしてもそれが直接的に自分の不幸や生きる意味の喪失を意味するわけではなく、『次の望ましい人間関係』に遭遇するまでは人間関係以外のやるべき事ややりたい事に幅広く関心の網を広げていったほうが、より早い時期に対人的な満足感を得やすくなったりもする。

『愛情・承認の欠損』による飢餓感や自己憐憫の心理は、他者に自分の精神的リソースや時間的余裕を奪われるのではないかという不安感をもたらしやすく、『人間関係・愛情のみへの寄りかかり(依存性)』は自然な他者との出会いや親密感の深まりを阻害することも少なくないからである。

それでも他者からの愛情や関心を十分に受けているという実感が得られないと、気持ちが不安定になってしまい抑うつ感・自己嫌悪が強まってしまうという境界性パーソナリティ障害や共依存、恋愛依存(性愛依存)の問題もある。そういった対人的な承認や愛情、好意への飢えは、根本的には幾ら愛情や関心を注がれても容易には解決しない種類の問題としての側面を持つ。多くの愛情・関心を注いで貰ったとしても、何かの事情や変化でそれが注がれなくなった時には、再び愛情の飢餓感や存在論的な孤独感に押し潰されそうになるという悪循環のループを少しずつでも改善するためには、以下の2つのポイントに気をつけてみてはどうだろうか。

1.他人に認められたい愛されたいという受動的な姿勢から、自分が他人を認めたり関心を持ったりしようという能動的な姿勢に変えて、去っていく者がいても温かく見守ろうとする認知を持つ。

2.『自分自身のための時間』を準備してそれをどのように有益に使えるか考えてみて、『一人で過ごす時間の楽しみ方・使い方』を経験的に学び取っていく。

人間関係にまつわる基本的な認知・態度を変えるということは、特に人間関係・他者の反応のみによって自己アイデンティティを支えてきた人にとっては非常にシビアで苦しい体験になるだろうが、自分から他者に適度な好意や関心を持つようにして、まずは自然な長続きする人間関係を作るための地均しとして、他者を積極的に承認してその人の話を丁寧に聴くことを楽しんでみるというのも一つの方法である。






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