高速道路無料化の社会実験で1ヶ月が経過:交通量1.87倍・公共交通機関の利用者減・一定の観光促進効果

民主党政権がマニフェストで公約に掲げていた『高速道路の無料化』であるが、全ての高速道路を一気に無料化することは現実的・財政的に困難であり、交通量が比較的少ない高速道路を選んで『37路線50区間』で無料化の社会実験が行われている。自公政権でも土日・祝日限定でETC搭載車を全区間1,000円にする割引制度を行っていたが、民主党政権では37路線50区間を実験的に無料化し、残りの高速は当面は曜日とETC搭載に関係なく2,000円にすることが検討されている。

交通量の多い主要高速道路については無料化の目途は立っていないが、土日・祝日だけETC搭載車に限って1,000円が良いのか、ETC搭載に関係なく毎日2,000円が良いのかは、利用者の休みの曜日やETC搭載の有無によって変わってくるだろう。高速道路無料化の目的・効果は、『利用者の負担減と移動効率の向上・家族旅行や観光の増加による経済効果・物流運輸のコスト減による経済効果』などであるが、6月末から無料化の社会実験が行われて暫時的なデータが出てきたようだ。

高速道路無料化のデメリットや反対意見としては、『長い渋滞が頻発して移動効率が落ちる(高速道路の意味がなくなる)・公共交通機関の利用者が減少する・高速道路のメンテナンスのコストが賄えなくなる(税金投入で受益者負担ではなくなる)・一般道に隣接する商業施設の売上が落ちる』といったものがあるが、1ヶ月の実験では交通量は1.87倍で約2倍となっており、恒常的に渋滞が続くというほどの状況ではなかったようだ。交通量が比較的少ない地方を結ぶ高速道路を選んでいるのが、納得のいく結果でもあるが、九州地方では長崎県のハウステンボスの入場者数が3割も増加したという。

高速道路の通行料が約2倍となり渋滞が増加した一方で、高速と並行する主要一般道路において交通量が平均約2割減少して、時速10キロ以下の渋滞時間が6割も減ったということで、高速道路・一般道路を含めた全体で言えば『渋滞緩和効果』があるという見方もできる。

特に、高速道路が無料化された当初は、『特別な用事はないけど無料ならどこかに遠出してみよう・利用したほうがお得な気がする』という観光・行楽・ドライブを目的とする利用者が増えるが、無料化して時間が経てばそういった利用者はかなり減少してくると予測される。そのため、長期的に見れば『交通量・渋滞の増加の問題』だけ考えれば、かなりの区間で無料化することは可能なのではないかと思う。

しかし、観光地・商業施設への影響という面では、高速道路のインター付近にあるか、一般道路沿いにあるかという『立地』によって明暗が分かれる傾向が顕著であり、一般道路沿いにあるテーマパークや商業施設、飲食店では売上が減少したというデメリットが多いようである。
公共交通機関への影響では、JRの特急で10%前後の減少、高速バスも20%程度の減少ということで、一定の利用者の減少が見られたが、主要高速道路まで無料化するとそれと並行する新幹線の利用者数にもマイナスの影響が出るだろう。

高速道路と新幹線とどちらが快適かといえば新幹線であり、できるだけ早く目的地に就きたいという時にも新幹線や航空機のほうが有利なので、高速無料化がされても極端に公共交通機関が使われなくなるということはないのではないだろうか。現状の社会実験を見た感じでは、概ね最悪の想定であっても現状の8割以上の利用率はキープできると思われる。

運輸・物流のコストを減少させて商品価格も引き下げるという効果については、7月12日から28日に無料化区間から50キロ圏内にある282業者にアンケートしたところ、36%の業者が『コストが減少した』と回答し、56%が『変化なし』と答えている。無料区間では高速道路を利用する業者の数は急速に増大しているので、『渋滞の長さ・移動時間短縮の効率性』にもよるが、もう少し長いスパンで見てみないとどれくらい物流コストを削減できるかは分からないかもしれない。

物流コストが削減できたという業者は『荷物を運ぶ時間の短縮・残業時間の減少・人件費コストの低下』といった理由を上げており、無料化によって運搬時間を短縮して残業を減らせたという会社もあるようだ。高速無料化の社会実験は来年3月まで続けられると言うことだが、『無料化のインパクト・興味やお得感の強さ』が薄れてきた時に、どれくらいの渋滞が続くのかといったことが一つのポイントになってくると思う。

車や免許を持っていない人にとっては公共交通機関は必須の社会インフラなので、公共交通機関の売上をどこまで圧迫するのかの検証も必要であり、路線を維持できないほどの売上減少があるのであれば無料化の難しい区間も出てくるのではないだろうか。










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朝日新聞出版
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