リラックスした対人関係を生み出す“ペーシング”と“姿勢反響”:お互いの動作を合わせる効果

対人関係を円滑にするコミュニケーション技術をマニュアル化したNLP(神経言語プログラミング)には、ペーシング(pacing)という基本動作がある。

ペーシングというのは『相手の呼吸感覚・話す速さ・話す調子・視線の動き』に自分のそれを合わせていく動作技術なのだが、ペーシングによって親近感や安心感が強まるので一般的なカウンセリングにも応用されることが多い。ペーシングはラポール(相互的信頼感)を形成する一助となり、クライアントに『緊張せずに安心して話しやすい』という自然なリラックス感をもたらしてくれる。

ペーシングとは相手のコミュニケーションの動作や口調とペースを合わせる技術であるが、ペーシングによる『親近感・安心感の上昇』は日常的なコミュニケーションのやり取りでも実感することができる。

自分がゆっくりとした口調で話す人は、まくしたてるように早口で話す人と対面すると、緊張感が高まり相手の言葉を聞き逃してはならないと気負ってしまうので双方向のコミュニケーションが断絶しやすい。逆も然りであり、自分が早口でテキパキと話す人は、話のテンポが遅いゆっくりとした口調で話す人と対面すると、もう少し早く会話を進めて欲しいと思ってイライラしてしまいやすい。

しかし、自分と相手が『類似の行動・動作』を取ったり『話すペース』が同じ時には、どうしてリラックスした親近感・安心感を感じやすいのだろうか。その理由の一つは、自分と類似した動作をして、同じような目線で話すペースを合わせてくれる人は、『(自分に対する)共感可能性』が高いというシグナルを出していると解釈されるからであり、更には『社会的立場の対等性・親近性』を感じやすくなるからである。

カウンセリングではカウンセラー(心理臨床家)とクライアントの座る椅子やお互いの位置といったものも、『クライアントの心理状態』に少なからぬ影響を与えるので、目線の高さを揃えたり同じような材質・クラスの椅子を使うなどの配慮をすることもある。

カウンセラー(精神科医)がしっかりした背もたれ・肘掛けのある椅子に座り、クライアントが簡素な丸椅子に座るというような差異があると、そこに良くも悪くも『権威性・役割意識』が生まれやすくなり、カウンセラーの口調や話す内容によっては思い通りの話をしにくくなることもある。逆に、『権威性(指導的・指示的役割)』が頼りがいや信頼感として受け取られることもあるので、クライアントのパーソナリティや心理状態によっては権威性が必ずしも悪い方向に作用するとも限らないが。

ペーシングの動作技法の有効性は、『親密な信頼感・好意の感情』で結ばれた友人・知人・恋人などの間で見られる『姿勢反響』が根拠になっているともされるが、姿勢反響というのは親しい相手と類似・同等の行為をおよそ無意識的にしてしまうという相互作用のことである。相手がリラックスした雰囲気で足を組んでいる時には、その友人も同じようなリラックスした少しだらけた格好を取るし、仲間集団が陽気に浮かれた感じでおしゃべりしていれば、その友人もそのテンションに合わせて明るく陽気な言動を示すようになる。

姿勢反響は『飲食の場』を共有する行動としても現れることが多く、仲間が飲んだり食べたりしている時には、自分もそれほどお腹が空いていなくても何か飲み物を頼んで飲んだりする。
姿勢反響によって、自分と他者との『類似性・同質性・仲間意識』を象徴的に示し、結果として『仲間との友好感情・集団の連帯感(協調性)』を高めることができる。

姿勢反響という言葉は動物行動学(行動科学)の分野で用いられることが多いが、社会心理学でいう同調行動(同調圧力)に近い要素もある。しかし、同調行動や集団力学のように半ば強制されている行動ではなくて、自分が仲間集団や友好関係に適応するために無意識的に取っている動作が『姿勢反響』である。

相互的コミュニケーションや対人関係の障害が見られる広汎性発達障害(アスペルガー障害等)では、『姿勢反響・同調行動』が極端に少なくなることがあるが、身体動作や話し方のリズムが大きく食い違ってしまうと、自己と他者との距離感が掴みにくくなり『他者の内面・感情』を共感的に推測しにくくなるという問題が起こってくる。

身体動作のリズムや動きを相手と合わせたり、話すスピードやテンションを調整したりといったペーシングの作業は、日常生活の中でおよそ無意識的に行われているのだが、発達障害や精神障害(意識・認知の障害)などでコミュニケーション過程が障害されると、『相手を意識した姿勢反響・ペーシング』が見られにくくなってしまうことがある。そういった精神医学的・発達臨床的な診断がないとしても、友人知人の間で姿勢反響やペーシングが極端に減ってしまうと、以前とは変わってしまったという奇異な印象を受けやすくなり、コミュニケーションの円滑な双方向性が失われやすい。










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