Googleが中国から撤退。Facebookへのアクセス数がGoogle検索へのアクセス数を抜く。

Googleが中国市場からの撤退を検討しているというニュースについては、過去の記事でも触れましたが、Googleは『中国市場からの撤退』を正式に発表したようです。Googleと中国政府の間では、『中国国内からのサイバー攻撃』『検索エンジンの表示結果の検閲』が対立点となっていましたが、検索エンジンの検閲廃止などを求める交渉が合意に至ることはありませんでした。


グーグル、中国本土から香港に「撤退」 さらなる対立も

中国でのインターネット事業をめぐり、当局が要求する検閲にはこれ以上従わない姿勢を示している米グーグルは22日、中国本土でのネット検索サービスから撤退し、代わって同日から香港を拠点とする同社サイトで検閲抜きの中国語版検索サービスを始めたと発表した。

このところ厳しさを増している米中間の対立の火種のひとつにもなっているこの問題で、グーグルはいったん打ち出した言論の自由を重視する立場を貫きつつも、同社が当初警告していた全面撤退を回避し、巨大な中国市場に一定の足場を残しておく選択を行ったといえる。しかし、中国の国営通信社、新華社は早くも「グーグルは中国に事業参入する際に行った誓約を破った」と批判する中国のネット担当者のコメントを伝えており、今後米中間での駆け引きはさらに激化しそうだ。


サイバー攻撃の実行者が誰なのか、その攻撃の指示・命令に中国が関与していたのかなどは不明なままですが、『中国共産党の情報管理政策』『ウェブ社会のオープンな情報環境』とのコンフリクトは強まっています。

中国では『統一国家の歴史性や国民性の共通基盤(=現政権の正統性を担保する歴史教育・知識)』に対する差し迫ったリスクとして、検索エンジンやウェブのコミュニケーションが捉えられている節もあります。

特に、中国や北朝鮮、イランのような近代化・自由化されきっていない非民主主義の国では、『政府が流す情報』『ウェブで流通する情報』との落差が目立ちやすくなります。更に、『言論-議会-選挙-世論レベルでの問題解決の慣習』が法律的(体制的)にも確立していないので、『言論・表現の自由』『暴力を用いた実力闘争(弾圧・革命・抵抗)』との境界線が非常に曖昧で脆いという政治情勢があります。

各メディアを通じて伝達される『情報・知識の検閲』は許されないというのは、第二次世界大戦をはじめとする近代戦争で、『国民に対する情報統制(政府の全体主義的なプロパガンダ)』を経験した先進国ではかなり普遍性の高い政治原則です。

しかし、国内情勢が不安定なとき、一定以上の武力を有する過激な政治集団(部族集団)が存在するとき、国民の政治や格差(困窮)への不満が高まっているときには、『言論・表現の自由(検閲を廃止した情報と意見の流通)』が、現在の社会秩序や政治体制をハードランディングで崩壊させかねない危険なものとして認識されやすくなるという面もあります。

中国はアメリカに次ぐ世界第二位の経済大国の地位に上り詰めつつあるとは言え、多民族国家としての不安定性、少数民族(チベット・ウイグル)に対する同一化政策の人権問題、民主化運動を弾圧してきた歴史(天安門事件)、選挙のない共産党一党独裁体制、国内の極端な経済格差と階層社会など、多くの潜在的な政治リスクを抱え込んでおり、統一国家としての秩序維持に苦心しています。

中国共産党の首脳部は、『言論・表現の自由』がフラットに認められた中国において、政治的・経済的あるいは領土的な大国としての現在の地位を守れるという確信が持てていない、そのことが検索エンジンの検閲やウェブの規制の背景にあるのだと思われます。

中国共産党による安定統治は、『軍事力(抵抗勢力の威圧)』『経済成長(豊かさの波及)』という二つの要因によって支えられていますが、中国人としての統合的なアイデンティティを強く持っておらず、経済的な恩恵も少ない少数民族や農民の層では反政府感情が燻りやすくなっています。知識人や学生の層には、自由主義・民主主義といった近代化を求める動きもあり、検索エンジンの検閲廃止や自由な言論活動によって、共産党一党独裁への思想的・論理的な批判が強まることも警戒されているように感じます。

Googleの中国市場におけるシェアは百度(バイドゥ)に比べると小さいので、ユーザーが受ける影響は限定的なものだと思いますが、Googleの『あらゆる情報を検索可能にしてアクセスできるようにする』という企業理念が、政治・世論の不安定化を懸念する中国に受け容れられる可能性は今後も低いでしょうね。

一党体制の中国では『政権交代』が原理的に起こり得ないので、経済成長や生活水準の向上に伴って促進される自由化で、どこまで国内の体制や党内の意見が変われるかということが注視されます。しかし、前回の記事にも書いたように、中国では『情報の自由化・言論活動の活発化による影響』が予測困難であり、少数民族の分離独立運動や共産党独裁へのレジスタンスなどハードランディングするリスクも高いので、一気に言論・表現の自由を加速化させるという可能性は小さいようにも思います。

各種の情報公開や政治プロセスの透明化は、ウェブの普及による情報革命と連動したトレンドですが、そのトレンドに対応できる国と対応できない国との違いは『(非軍事的な)言論レベルでの国内問題の解決』が図れるか否かという点にあるのではないかと思います。

インターネットが登場する以前には、政府は新聞・テレビ・出版物のマスメディアさえ規制しておけば、『国民世論の方向性・価値観の形成』をある程度コントロールすることができましたが、誰もが低コストな個人メディアを運営できるウェブ社会では、検索エンジンや個人メディアの規制といったより国民(個人)に近いレベルでの規制をしないと、社会に流通する情報(非民主的な政府・現行の秩序に不都合な情報)をコントロールできなくなっています。

そのため、中国では個人が自由にサイトやブログを開設できない規制も導入されており、サイト・ブログの運営をするためには、役所への届出と許認可が必要になっているようです。政府の厳しい監視・管理の下でしか情報発信やコミュニケーションができないという状況は、ウェブのメディアやデータベースとしての長所の大部分を失わせてしまうようにも感じますが。

Googleは中国から全面撤退するわけではなく、香港のサーバーに置いた検索エンジンを利用して検閲を受けない検索サービスを中国のユーザーに提供するとしていますが、中国政府は中国国内から香港へのアクセスをブロックするのではないかと見られています。中国国内のプロバイダーは、政府の規制に従ってユーザーがアクセス可能な情報を制限するので、いずれにしても中国のユーザーの大部分は、『検閲された情報結果』にしかアクセスできなくなるようですね。

世界最大のSNSであるFacebook(会員数約4億人)が、Googleのアクセス数を追い抜いたというニュースもありましたが、SNSやTwitterをはじめとして、人と人とのつながりやコミュニケーションを重視するソーシャルメディアの隆盛が続いているようです。検索エンジンのGoogleはインターネット全体をインデックスの対象にしていて、Facebookやmixi, Twitterはインターネットの一部のサイトに過ぎないわけですが、ソーシャルメディアにあってGoogleにないものは『他者とのコミュニケーション・関係性の深まりと拡大』といった要素でしょう。

探している情報や求めている知識を、即座に検索できるというGoogleの検索エンジンは優れていますが、そこで得られるのは『スタティック(静的)な情報・知識』であり、ソーシャルメディアの魅力となっている『ダイナミック(動的)なコミュニケーション・人間関係』を得ることはできません。

GoogleやYahoo!のような検索エンジンで検索する目的には『勉強・仕事・学問・調べもの・商品やサービスのレビュー』などがありますが、ソーシャルメディアを使う目的である『知人とのつながりやコミュニケーション・人間関係の拡張や深まり』と比較すると、検索エンジンの需要(利用回数)はやや小さくなるのかもしれません。

しかし、引用した記事で『ソーシャルメディアのマネタイズ(収益化)の難しさ』が言及されているように、広告メディアとして検索エンジンとSNSを比較した場合には、『友人知人とのコミュニケーション』に熱中しやすいSNSでは、広告に視点が移動することがより少なく、クリック率などもかなり低くなることが予測されます。

TwitterやFacebookでは膨大なユーザーが集まっても、ビジネスとしての収益性に直結しないという問題も指摘されますが、検索エンジンと比較するとソーシャルメディアは『サービスの利用目的』と『広告内容への注意転換』が結びつきにくく、コミュニケーションやアプリ利用の目的だけにユーザーの興味関心が集中しやすい(他の要素が視界に入りにくい)のだと思います。


フェースブックがグーグル抜き首位に 「ソーシャルの時代」鮮明に

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)世界最大手の米フェースブックが、週間のウェブサイトへのアクセス数でネット検索最大手の米グーグルを抜いて初めて首位に立ったことが、インターネット調査会社ヒットワイズの調べで明らかになった。インターネットの利用法として存在感を強める「ソーシャル・ネットワーキング=交流」分野の急激な成長ぶりが、印象づけられたかたちだ。











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