インターネットの“匿名コミュニティ・文字コミュニケーション”を用いた人生相談(悩み相談)の利点と限界

インターネット上では各種の掲示板やSNS、Q&Aサイト、ブログなどを用いて、現実の人間関係の中では話しにくい『人生相談(心理相談・悩み相談)』が行われていますが、『ネット相談に関する記事』を起点にしてネット相談の利点と限界について考えてみます。


ネット相談 効果と危険性

匿名のインターネット掲示板などを利用し、不特定多数に悩みを打ち明け、相談をする人が増えている。相談相手は自分を知らず、自分は相手を知らない。専門家は「自殺を思いとどまるなど、多くの人が救われている」と効果を指摘する一方で、「危険性も多い」とも話している。


ネット相談の最大の利点は、確実に返事が貰えるわけではないが『いつでも誰かに話を聞いてもらえる可能性がある』ということであり、更に『自分の個人情報を明かさなくて良いので、話しにくい悩みでも話しやすい』ということがあります。特に、家族関係が険悪であったり親密な友人知人がいなかったり、現実の人間関係では理解して貰えないと予測される種類の相談(悩み)をしたかったりする場合には、匿名のネット相談の有効性は高まるでしょう。

ネット相談で行われやすい相談の内容は、『自殺願望(希死念慮)・生活の困窮・家族の不和・性嗜好や性同一性に関する悩み・身体疾患・精神疾患・服薬経験や副作用・ひきこもり・不登校・ニート(社会参加意欲の喪失)』などであり、一般的に家族や友人には話しにくい内容だったり、実際に何度か話しみても思ったような支持的反応が得られない話題だったりします。あるいは、何度も繰り返し相談してみたり不満を話してみたりした結果、現実社会にいる家族や友人知人が真剣に付き合ってくれなくなったり、否定的な反応を返すようになった話題であるということもあります。

インターネットの『匿名性』による相談者のメリットとしては、現実の生活状況や人間関係に影響を及ぼさずに気楽に相談しやすいということがあり、どんなネガティブで陰鬱な話をしても実際の自分に対する印象・評価が変わらないということがありますが、これは同時に現実の自分の行動や考え方までは変えにくいという『ネット相談の限界』も示唆しています。特に、相談に乗ってくれる相手が決まっておらず、不特定多数からランダムに断片的なアドバイスを受け取るという場合には、『相手の返信に対する返信』ができないということから、心理的な問題やこれからの対応について十分に話を深めることは難しくなります。

人間の心理的な悩みや人生の問題の多くは、『現実社会における他者・環境との相互作用』によって生み出されますので、最終的な問題解決や自己成長につなげるためには『他人からの支持・共感を得て励まされ安心する』ということに加えて、『自分の行動や他者への関わり方を実際に変える』という段階的なステップが求められます。

ネット相談の限界として『特定の相手との継続的な対話が続きにくい』ということや『現実の自分の行動や考え方・人間関係を変化させる動機づけにまで発展しにくい』ということがあり、『文字によるコミュニケーションの感情表現・詳細な説明』にも一定の限界があります。ネット相談では、表情・視線・態度・身振りといった『非言語的コミュニケーション』の情報が得られず、親しい家族・恋人・親友のように肩を叩いたり軽い抱擁をしたりする『スキンシップの安心感』も得られないということはあります。

しかし、それは逆に『(相談相手と実際に向き合う)対面の相談場面・面接状況』では、過度に緊張したり恥ずかしかったりして思い通りに話せないという人にとってのメリットにもなっています。ネット相談の利点として、どうしても誰かに聞いてもらいたくてたまらない悩みや気持ちを聞いてもらいやすく、何らかの共感的(支持的)な返事を貰える可能性があるということがあります。こういった『共感的な即時的反応』が得られるという利点は、緊急避難的な自殺抑止や自傷行為の抑制、躊躇している犯罪の防止などに役立つ可能性もあると考えられます(反対に、極端に否定的で侮辱的なコメントなどが返ってくれば、衝動性や悲観的認知、自殺願望を逆に高めてしまう恐れもありますが)。

ネット相談の欠点や危険性としては、どんな相手がどのような内容の返事を書いてくるか予見できないということがあり、『攻撃的・否定的・侮辱的・中傷的な心ない言葉』を不意に受け取ることで、かえって自分の心が傷ついてしまったり余計に気分が落ち込んで自信を失ったりする危険もあるでしょう。

身体疾患や精神疾患、服薬(副作用)の悩みなどを相談する場合には、相談相手が必ずしも正確な専門知識や適切な対処法を知っているわけではないので、相手のアドバイスをそのまま鵜呑みにせずに、きちんと知識・情報の正しさの裏づけを取ったり、専門家(医師など)の意見を聞くことが必要になります。そういった専門知が要求される種類の相談はともかくとして、ネット相談には肯定的な意見も否定的な意見も含めて、多種多様な立場や観点からのアドバイス・意見を多くもらいやすいというメリットがあります。

更に、自分で『自分に必要なアドバイス・共感的なコメント・(厳しくても)有益な意見』を適切に取捨選択することができるのであれば、自分の心理状態を回復させたり問題状況を解決するヒントを得たりといった『ネット相談の有効性』が生きてくると思います。インターネットで人生相談(悩み相談)をしようとする場合には、そのウェブサイトやコミュニティの『性質(意見・価値観・言葉遣いの傾向)』を大まかに見極めることで、自分が相談しやすい雰囲気のサイトや効果的なアドバイス(共感的な反応)をくれそうなメンバーを見つけやすくなります。

自分の悩みや問題について、多少は不快なコメントがあっても不特定多数から多様な意見をとにかく貰いたいという場合には『掲示板・Q&Aサイト』が向いているでしょうし、コメントに含まれるノイズを少しでも取り除きたいという場合には『有料のQ&Aサイト(はてなの人力検索など)』のほうが向いているでしょう。ある程度信頼できる固定されたメンバーからアドバイスや返事を貰いたいという場合には、mixiやFacebookのようなSNSも向いていると思います。

しかし、『特定の相手との継続的な対話・問題状況や心理状態の掘り下げ』をしたいというケースや、『専門知識に基づくアドバイス(実際的な生活支援や法律相談含む)』を受けたり、『問題解決や自己成長への方向づけ』を段階的に支援してもらいたいというような時には、カウンセリングや心理療法、行政のケースワークのような専門的な対人援助を受けたほうが効果を実感しやすいと思います。

インターネットの匿名性や利便性を活用した『カウンセリング的なコミュニケーション空間(バーチャルコミュティ)』については、過去の記事でも考察したことがあるので、興味のある方は下記の関連URIにも目を通してみてください。










■関連URI
ウェブで語られる“プライベートな問題”と“メンタルヘルスの悩み”:共感的なコミュニティの可能性と影響

ウェブとリアルの人間関係・コミュニティを区別したいユーザの需要と匿名性が支える日記的コンテンツの問題

“現代社会における不確定性・孤独感の高まり”と“他者の代替不可能性(深く親密な人間関係)の希求”

“言語的表現(意味内容)が優位のウェブ世界”と“社会的属性(役割規範)が優位のリアル世界”

■書籍紹介

インターネット・セラピーへの招待―心理療法の新しい世界
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