恋愛における相手の性格行動パターンの変化と恋愛関係に問題を引き起こしやすい“認知の歪み”

恋愛で好きな異性のタイプ(性格特徴)として上げられやすいものに、『優しい・明るい・面白い・楽しい・思いやりがある』といったものがあり、『容姿・外見』の好みは人それぞれでばらつきがあっても、好きな性格についてはかなりの共通性が見られます。特に、どんな恋愛・結婚のアンケート調査でも『優しい・思いやりがある・誠実』というのは男女共にトップにくる好ましい性格特徴であり、基本的に『優しくない人・思いやりがない人・いつ裏切るか分からない人』を敢えて好んで付き合いたいという人はほとんどいません。

しかし、『優しい・思いやりがある』というのは実際にはかなり曖昧で抽象的な概念であり、ちょっとした雑談で『あなたはどんなタイプの異性が好きですか?』と聴かれた時に、特別な恋愛についての考えをまとめていない人は、とりあえず『優しい人・思いやりがある人』という無難な答えを返すことが多くなります。自分に対していつも優しく接してくれて、困った時にはすっと手を差し伸べてくれる思いやり深い相手というのは、誰にとっても魅力的ですが、実際には親しく個人的に付き合う前から『相手の持続的な優しさ(本来のパーソナリティ構造)』を見抜くことは難しいですし、関係を維持するためにはそれなりに自分の側の努力も求められます。

『恋人になる前・恋人になった後・結婚する前・結婚した後』でほとんど好きな相手の性格や考え方、言動が変わらないというのが理想ですが、残念ながら大半の人は親しくなればなるほど『本来の性格・考え方・振る舞い方』が現れやすくなってきます。『恋人になる前』は、誰でも好きな人に対して嫌われたくないのでそれなりに『相手の好み・価値観』に合わせてある程度自分の振る舞いを調整していますし、『学校・職場・街中といった社会的空間』でもありのままの自分の欲求や考え方を押し通すわけにはいきませんから、ここでも社会適応的な常識・節制(マナー)に従って抑制的な行動を取ることのほうが多くなります。

その為、『恋人になる前』の段階では、相手の本来の性格特徴や考え方に触れることは難しい部分があるのですが、『恋人になった後』の段階になると、それまでよりもお互いの『自己開示・共有時間・意見(価値観)の交換』が増えてくるので、相手の本来の性格特徴や行動パターンがだいぶ見えやすくなってきます。結婚や同棲をしたりして『生活空間・人生の時間の共有』が多くなってくると、『自分の良い部分・相手に評価して貰える言動』だけを相手に見せることは難しくなりますから、お互いに相手の『良い部分・悪い部分』をバランス良く知ることができる機会が増えてきます。

相手のことを信頼したり二人の関係に慣れてきたりして、自分をよく見せようとする自己防衛が弱くなればなるほど、『本来の自分』をより自己開示したくなり受け容れてもらいたいという思いが強まるからです。好きな相手に対して『自分の良い部分』だけできるだけ多く見せて、『自分の悪い部分』をできるだけ隠したいという人もいるかもしれませんが、結婚や同棲で一緒に生活するようになって『自分の良い部分・相手にとって魅力的な要素』だけを見せようとして無理な努力をし過ぎると、短期間で心身共に疲弊してしまって、余計に関係が長続きしないということも少なくないと思います。

最終的には、『恋愛・結婚の前後』で相手の性格傾向や振る舞い方、価値観が多少変わってきたとしても、『自分を大切にしてくれる・一緒に居ると安心できる・いざという時には自分の側に立って助けてくれる・暴力や罵倒などによる人格否定をしない』という原点に大きなブレや変化が無ければ大丈夫だと言えます。

しかし、恋愛の段階で『過度の依存性・暴力性(DV)・浮気性・金銭感覚のルーズさ(相手への借金)』などが見られる場合には、恋愛関係を良い方向に軌道修正することは難しくなってきます。恋愛・結婚でどんなに自分の心身が傷つく理不尽な対応をされても、どれだけ手ひどい暴力や裏切りを受けても、その相手と別れられないという問題は『共依存・対人関係への嗜癖』のカテゴリーに括られたりもしますが、『自己評価(自己肯定感)の低さ』『男女関係・家庭生活に関する認知の歪み』が共依存の形成・維持に関係しています。

自分を苦しめる不幸な恋愛関係(共依存)を繰り返しやすい、一緒に居て安らげるような相手と出会うことができない、恋愛で自分のほうがいつも犠牲になって傷ついてしまう、異性の良さや魅力を実感することができないというようなケースでは、過去の家庭環境や異性関係によって段階的に形成された以下のような『男女関係・家庭生活に関する認知の歪み』が見られることがあります。

1.自分が一緒に居て助けて上げなければ、相手は生きていくことができない=相手のダメな部分や性格の短所を、自分の行き過ぎた手厚い保護や責任の肩代わりによって増強してしまう。

2.自分には幸福になったり、人生を楽しむような資格がそもそもない=自分の人生における『幸福・幸運の総量の小ささ』が決まっていると感じ、余りに幸せだったり楽しかったりすると、自分には『分不相応・似つかわしくない』と思い込む。幸福の反動としての不幸を恐れて、幸せな関係・状況を敢えて破壊することで、予言の自己成就を行い安心感を得る。

3.どんな人間もいつかは心変わりして裏切るものであるから、相手を信じすぎないほうが良い=他者に対する『基本的信頼感』が障害されているので、どんなに親しくなっても『相手の言葉・態度』を信用することができず、妄想的な裏切りの不安が強くなったり、初めから誰とも親しくならないようにする。

4.相手の期待や欲求に十分に応えなければ、自分はただ見捨てられるだけである=自分だけが一方的に自己犠牲を払って相手のために尽くさないと、他人は自分の価値を認めてくれないと思い込んでいるので、『相互的に助け合う関係』に発展しにくくなる。

5.『異性(男・女)』や『恋愛』に対して、過度に悲観的・否定的なステレオタイプを持っている=『男(女)とは~なものである(裏切るものである・自己中心的である・怖いものであるなど)』というステレオタイプに縛られているので、ひとりひとりの男性や女性のパーソナリティを冷静に評価することができない。自分が経験した少数の異性や事例から、恋愛(異性関係)に関する一般法則に似た確信を得ることで、『過度の一般化』の認知の歪みが起こってくる。

恋愛関係で自分を苦しませることになるこれらの『認知の歪み』を肯定的に修正するのは簡単ではありませんが、過去のつらい経験によって形成された『固定観念(一般化された信念)』に囚われずに、『ひとりひとりの相手(一つ一つの関係性)』の長所・短所・特徴を落ち着いて見ていくことが認知の歪みの改善につながります。『過去の相手・関係で経験した悪い側面』を『現在の相手や関係』に過度に重ね合わせずに、『今、目の前にある相手・状況』の良い側面に集中して、ポジティブに向き合っていくことにも効果があります。

自分と相手とが『人格的・権利的に対等な立場』にあることを認識して、『相手の欲求・要望』にばかり一方的に振り回されないようにすることが大切であり、自分自身が相手と一緒にいることで『幸せ・満足・喜び・安らぎ』を実感できているのかを冷静に振り返ってみるのも良いと思います。その相手と一緒にいることで『心身の健康の悪化』や『不幸・苦痛・悲しみの実感(自己否定感)』ばかりを得ているというのであれば、その相手との今後の関係をもう一度考え直してみる必要があるかもしれません。

次の記事で、過去に書いた『6種類の恋愛形態』に応じた相手との付き合い方・接し方のアドバイスについてまとめてみたいと思います。






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