近代社会(資本主義社会)における非生産的な『高貴性』と『聖性』の消滅:無欲・貧困の怠惰への転落

『前回の記事』の続きになるが、仏教思想では『煩悩(欲望)』によって人間の心が曇り汚れるという人間観が前提にあり、俗世間は人々の無数の不浄な煩悩に覆われた『穢土(えど)』と仮定される。穢土(俗世)から離れて煩悩を断ち切った禁欲生活(修行・学問・布施の物乞い)を静かに続ける出家者や隠遁者、巡礼は、世俗に生きる人たちよりも道徳的に尊い存在(聖…
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近代産業社会の労働道徳と『脱俗の聖域・無欲の聖性』を生み出した前近代的な宗教(仏教)の禁欲道徳

近代産業社会とは労働道徳と市場経済によって成立する社会であり、自然科学と功利主義によって『宗教・思想』の大部分が迷信や誤謬として退けられることになった。日本の歴史では、キリスト教やイスラム教のような一神教の強力な宗教原理が政治に根づいたことはないが、藤原氏の摂関政治が隆盛する平安時代中期くらいから『世俗(俗性)』と『宗教(聖性)』の分離…
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精神分析の愛着形成と大人の対人コミュニケーションに内在する“退行・依存”の要素

S.フロイトはエロス(生の欲望)の原点として『口愛期』における口唇周辺の快楽を仮定しましたが、エロスとは単純な自己保存(生存維持)の目的を超えた『他者への欲望』です。『エロス』に基づく精神分析の汎性欲説(性一元論)や無意識の決定論には多くの反論異論がありますが、汎性欲説が科学的理論ではなくても『人間がパンのみにて生きるにあらず、人間は一…
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バラク・オバマ大統領の誕生とアメリカ国民の熱狂:経済・外交の試練を超えてアメリカ再生の契機を掴めるか

48歳のバラク・オバマ大統領、アフリカ系の黒人から初めてアメリカ合衆国の大統領が誕生した。大統領選でヒラリー・クリントンが選ばれていてもバラク・オバマが選ばれても、アメリカ初の女性大統領か黒人大統領が誕生していたという意味において、アメリカの政権中枢におけるレガシーな価値観は大きな転換期を迎えたことになる。フェミニズムにおいても人種差別…
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『怒りの感情』の発生原因を考慮した認知療法的な対処法:カタルシスとアンガー・マネージメント

精神分析ではエディプス・コンプレックスを経験する前の子供は、『快楽原則』によって行動する利己的な存在と仮定されますが、エディプス・コンプレックスの『去勢不安』によって利己的な快楽原則から適応的な現実原則への転換が起こります。快を追求して不快を回避するというシンプルな『快楽原則』には、自分の思い通りにならない独立した『他者の人格・表象』が…
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平野啓一郎『決壊 上下』の書評:人間の“生きる意味”の錯綜と格差社会に蓄積する無力感の恐怖

格差社会や無差別殺傷事件、将来不安、少年犯罪、ネットでの犯行予告、うつ病の増大の根底にマグマのように蓄積している『ルサンチマン(弱者の怨恨・憎悪)』を文学作品として昇華させた作品であるが、元々どちらかというと暗いトーンの作品が多い平野啓一郎の著作の中でもその陰鬱さと虚無感が際立っている。一応、物語の後半で良介と『悪魔』が対峙する場面では…
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貴志祐介『新世界より 上・下』の書評:倫理的な人々が構築する“完全な世界”と“人間の原罪”

戦争も争いも犯罪も環境破壊もない『完全無欠な世界』はどのようにすれば建設できるのだろうか?あなたがそういった完全な平和と秩序に覆われた理想の世界や倫理的な人間のみによって構築される社会を夢想したことがあるならば、貴志祐介の『新世界より』はかなりおすすめの小説であり一度は読むべき価値があると思う。ロールプレイングゲーム(RPG)のような冒…
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資本主義(自由主義経済)と社会主義における労働観と『努力-結果』の因果応報を求める規範意識

『前回の記事』の続きになるが、自己責任論者にとって『過保護・甘やかし』と映る弱者救済の社会福祉に対する否定感情は、人間の水平的な平等感(応益負担原則)に基づく反応であると同時に、個別的な生活の困窮や将来不安の現れでもある。近代産業社会における『労働と道徳的義務の結合』は極めて強固なものであり、ミシェル・フーコーの規律訓練システムを持ち出…
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新自由主義の自己責任原理と「派遣村」の支援に対する批判について:失業・貧困の原因帰属の心理

世界的な金融危機と景気悪化の広まりによって、世界各地で膨大な数の人々が仕事や住居を失い雇用問題が深刻化している。日本でも派遣切りに遭った失業者や生活に困窮した人たちが東京日比谷の『派遣村』に集まって再就職に必要な支援を受けていたが、派遣村も閉村されることになり新たな滞在地での再就職に向けた活動が始まっている。マスメディアでは派遣村に集ま…
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景気対策としての“定額給付金の不評”と麻生内閣の支持率低下:労働者派遣法の規制強化とセーフティネット

麻生内閣の支持率が19%に急落して不支持率も70%に迫っていますが、麻生政権の大きな政治課題は世界不況下における景気対策と雇用回復であり、特に麻生太郎首相が推進している『定額給付金制度』に多くの国民(約7割の国民)が反対しているようです。バラマキという批判のある約2兆円の定額給付金ですが、定額給付金に反対する理由としては『金額が小さくて…
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イスラエルのガザ侵攻とパレスチナ問題2:ユダヤ人の自己アイデンティティと中東戦争の歴史

ユダヤ人の寛容性・親和性を欠く『選民思想』はよく批判の引き合いに出されるが、仮にユダヤ人が『選民思想』を持っていなければ既にユダヤ人(ユダヤ民族)という自己アイデンティティを持つ集団は歴史から消滅していた可能性が高い。ユダヤ人の苦難と迫害、忍従の歴史を思えば、ユダヤ人であるアイデンティティを捨てて他のヨーロッパ民族と同化するという選択が…
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イスラエルのガザ侵攻とパレスチナ問題1:近代国家のナショナリズムとユダヤ人のシオニズム

イスラエルのガザ自治区への空爆・砲撃によって民間人を含む700人以上のパレスチナ人が死亡しているが、イスラエルの過剰防衛的な『攻撃の対象』を選ばない攻撃と反撃による被害を拡大するだけのハマスのロケット弾発射が、相互の不信や怒りを煽り立てている。イスラエルとイスラム原理主義組織ハマス(ハマスを支持するパレスチナ人)の間には停戦条件を巡る不…
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家庭環境(親子関係)が性格形成に与える影響と“社会性”の始点としてのエディプス・コンプレックス

A.ポルトマンの生理的早産の記事では、人間の行動・認知パターンの可塑性(変化可能性)の高さの要因として『未熟な状態で産まれてくること・自立までの期間が長いこと』を上げた。人間(ヒト)は身体的・精神的に極めて未熟な状態で産まれ、他者(親)の世話や保護を長期間にわたって必要とすることで『生得的な遺伝的要因』よりも『後天的な環境的要因』の影響…
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A.ポルトマンの『生理的早産』と二次的離巣性を示すヒトの性格形成・能力発達の可塑性(変化可能性)

前回の記事の続きになるが、特性論(特性因子論)では性格特性を表現する『形容詞・副詞』を抽出して因子分析を行っていくが、どれくらい多くの特性を抽出すれば十分な網羅性が得られるのかというのも判断しにくい。キャッテルの特性因子論では外部から観察できない内面的な特性である『根源的特性(source trait)』を分類して、『キャッテル16因子…
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永田寿康・元民主党衆院議員が北九州市で自殺というニュースを受けて

北九州市八幡西区里中の11階建てマンションで民主党に所属していた永田寿康・元衆議院議員(39)が自殺したというニュースをウェブにアクセスして初めて知った。自分が住む地域の近くで起こったということも衝撃的であったが、ニュースを読んで感じたことを記録しておきたい。永田寿康氏については昨年11月末に福岡県宗像市の病院を抜け出して自殺未遂を起こ…
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認知行動療法で前向きに生きるモチベーションを高める要素:“セルフ・エフィカシー”と“原因帰属”

A.バンデューラのセルフ・エフィカシー(自己効力感)は、『肯定的・適応的な認知』を獲得して目標課題を達成することを目指す認知行動療法の作用機序にも関係している。セルフ・エフィカシー(自己効力感)とは目的を達成しようとする遂行可能性に対する確信であり、『自分は問題状況を解決できる・自分はストレス事態を乗り越えることができる』という内言によ…
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明けましておめでとうございます。世界経済の混迷と雇用不安、時代の閉塞感を乗り越える意志と知恵を求めて

あけましておめでとうございます。2008年度は、米証券大手リーマン・ブラザーズの破綻から拡大した『金融経済の信用収縮』が、予想を遥かに越えるダメージを世界経済と一般労働者にもたらした年として印象に残る年でした。信用力の低い個人向けの住宅ローンである『サブプライムローン』という金融関連商品の名前が人口に膾炙するところとなりましたが、サブプ…
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