S.フロイトの快楽への意志, C.ロジャーズの有機体の価値判断, A.エリスの合理的思考の接点

どういった考え方や物事の捉え方が自分にとって実際的に役立つのか、どの行動を選択すれば自分の未来の可能性を高めてくれるのかを考えるのが、認知療法や解決志向(解決構築)アプローチですが、C.ロジャーズのカウンセリングでは『生得的な功利性への気づき(自然に自己肯定感や幸福感が高まってくれる自己充足的な意識の目覚め)』がその中心にあり、生得的な功利性に気づくことで『自己一致(congruence)』が促進されるとしています。自己一致とは、自分が率直に感じ取っている『自己の経験(self-experience)』と周囲の人たちの期待や要求に応えることで形成している『自己概念(self-concept)』との間の矛盾や葛藤を減らして、出来るだけ両者を一致させようとすることです。

ロジャーズは自己不一致の原点は、両親(他者)から賞賛(承認)されたいために自己の欲求や感情を捨てた原初的体験にあるとしていますが、自己不一致の状態にある人は、『他者が形成した価値判断のスキーマ』に従属しているので主体的で自立的な生き方をすることが困難になっています。これは言い換えれば、他者(両親・友人・恋人)に愛されたくて認められたいために、『自分の有機的な価値判断(本来的な実現傾向が求めるもの)』を否定して、『他人の要求的な価値判断(他人を満足させるもの)』を取り入れしている状態であり、自己不一致で実現傾向が疎外され続けるとさまざまな情緒障害や問題行動、不適応の悩みが生じてくることになります。

自己の経験と自己概念が不一致を起こしていても、心理的な苦悩や社会環境への不適応が起こらない場合もありますが、この場合には、快や満足を求める有機的な価値判断が『大切な他者の満足や充実』に一致(投影)していることを意味します。具体的には、愛している家族のために本当はしたくない仕事を頑張っている場合や、好きな恋人のために疲れていても休日を返上してショッピングやレジャーに付き合っている場合などを想定することができ、『不快な部分もあるが快の部分がそれを上回っている』ために不一致による心理的障害が発生しないのです。

REBT(Rational Emotive Behavioural Therapy, 論理情動行動療法)を創始したアルバート・エリス(Albert Ellis, 1913-2007)も、徹底的に思考(認知)の合理的な功利性にこだわった人物です。つまり、外的刺激のある出来事(Activating Event)をどのような信念を元に判断(Belief)しているのかセルフモニタリング(自己観察)し、『自己の目標達成や利益獲得』に役立つ好ましい結果(Consequence)につながる『合理的な思考(rational belief)』をクライエントに実践的に習得させました。

アルバート・エリスは随分高齢になってからも論理療法に基づくカウンセリングを行っていたことで知られますが、つい先日の7月24日に永眠されたということです。アルバート・エリスは、20世紀の心理療法の主流となった認知療法の発展に大まかな道筋をつけたという意味で、非常に重要な心理臨床家(心理療法の理論家)の一人でしたが、その事績を偲びながら慎んでご冥福をお祈りしたいと思います。

アルバート・エリスが定義した『合理的な思考(rational belief)』『~してみたい, ~を手に入れたい』という欲求的(楽観的)な意志で示され、現実的な利益や発達と相関しているという意味で『功利主義的』であり、ロジャーズの有機体的な価値判断とも近似した概念です。反対に、『非合理的な信念(irrational belief)』『~しなければならない, ~すべきだ, ~しないと最悪な結末になる』という義務的(悲観的)な意志で示され、現実的な利益や生活の満足を阻害するという意味で『非功利的』であり、ロジャーズの有機体的な価値判断やフロイトの現実原則とも相容れないものなのです。

『探索的アプローチの特徴(長期化・観念性・非指示性)』に隠蔽されていた『クライエントのニーズ』を拾い上げた形で台頭してきたのが、『具体的な目標設定』『段階的な目標達成』を短期的に実現しようとする『解決的アプローチ(解決志向や解決構築のカウンセリング,ブリーフセラピー)』です。ワトソンやスキナーの行動科学(行動主義心理学)とも共通する解決的アプローチの最大の特徴は、改善的変化を客観的に確認しやすい現在時点における『認知(考え方)』『行動(コミュニケーション)』に焦点を定めて、原則として『過去の記憶や感情』を詳細に取り扱わないようにしたことでしょう。

行動療法や認知療法、解決志向アプローチ(SFA)については、過去の記事でも何度か取り上げましたが、また、それぞれの技法の実際や特徴などについてまとめてみたいと思います。


■関連URL
S.フロイトの精神分析の基本原則とC.ロジャーズのクライアント中心療法の共感的態度:1

S.フロイトの精神分析の基本原則とC.ロジャーズのクライアント中心療法の共感的態度:2

ソリューション・フォーカスト・セラピーによる解決法の自己構築と潜在的な可能性への注目

NLP(神経言語プログラミング)やSFA(解決構築アプローチ)を活用した短期療法の目標設定


■書籍紹介
“問題行動の意味”にこだわるより“解決志向”で行こう

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