トーマス・フリードマン『フラット化する世界・上下』の書評3:人類の未来を分かつイマジネーション


2.インターネットの普及と、接続の新時代


世界中のコンピュータをケーブルで接続するインターネットのモデルをビントン・サーフが開発し、世界中のサーバに保存されているデジタル・コンテンツ(ウェブページ)にブラウザでアクセスできるワールド・ワイド・ウェブ(WWW)の仕組みとHTMLのマークアップ言語をティム・バーナーズ・リーが作り上げた。

世界のフラット化を最も強力に推し進めることになる情報革命の主要構成要素が、ビントン・サーフのインターネットであり、ティム・バーナーズ・リーのワールド・ワイド・ウェブ(WWW)である。ネスケと呼ばれるネットスケープ・ナビゲータのブラウザが登場し、マイクロソフトのIE(インターネット・エクスプローラ)のブラウザが登場してから情報流通の世界は更にフラットとなり、誰もが容易に世界中に向けて自分のデジタル・コンテンツを公開できるようになった。
インターネット登場以前の世界では、不特定多数の人々に自分のメッセージ(思想・意見・主張・感想)や作品(写真・音楽・映像)を届けられるのは、記者や作家、芸術家、評論家など既存の社会で一定以上の評価を得た人たちだけであった。インターネットの普及によって『選ばれた一握りの人々』だけでなく、特別な資格や名誉、評価を持っていない『一般の市井の人々』が自由に自分のデジタルコンテンツを公開・頒布することが可能となった。

WWWの仮想世界でも当然使用言語の壁はあるが、通用する言語圏だけであっても不特定多数の膨大な他者に向かって、自分の意見や考え、写真や音楽などの作品を公開できるということは驚異的な技術革新であり、(ネット内部でのアクセスと認知度を巡る自由競争も熾烈ではあるが)個人の影響力とビジネスチャンスを飛躍的に高めることとなった。

アメリカのITバブル期に、世界各地を光ファイバーで接続するという情報通信インフラへの過剰投資が起こった。光ファイバーの敷設によって莫大な投資額を回収するような利益は得られず過剰投資をした会社の殆どが倒産したが、その代わりに、常時接続の高速大容量通信(ブロードバンド)の普及速度が大幅に早められることになった。

世界中の人々が、容量の小さなテキストデータだけでなく、低価格の音声通話(IP電話やSkypeのようなソフトウェア)を利用することが出来るようになり、写真や音楽、動画といった大容量のコンテンツをアップロードして効率的に共有することが可能になったのである。ブロードバンドの接続環境が急速に普及したことによって、『情報発信者としての政府・マスコミ・企業・個人の立場(能力)』は(信頼度やアクセス数の差があるとはいえ)基本的にフラット化の道を歩んでいる。

以下のフラット化要因については、説明と感想を割愛して項目だけを挙げますが、興味のある方は一度、詳細な項目の説明が為されている『フラット化する世界・上』を読んでみると良いと思います。


3.共同作業を可能にした新しいソフトウェア

こうした相互利用可能なバンキングと電子商取引機能は、eベイすら驚愕するほどにインターネット市場を急激にフラット化した。eベイのCEOメグ・ホイットマンの説明によると、ペイパルがなかった頃は、『1999年にeベイで取引をするときには、買い手は小切手か郵便為替で支払うしかなかったんです。つまり紙を使うシステムですね。電子的に送金する手段はなかったし、取引が少額なので、クレジットカードの口座を開設する資格もなかった。ペイパルの登場によって、「個人」がクレジットカードを介した支払いを受け取れるようになったんです。われわれはeベイの「個人」の売り手に、クレジットカードで支払いができる。これで競技場はほんとうに平坦になり、商取引の摩擦が減りました』それどころか、あまりにも便利なので、eベイはペイパルを買収した。



4.アップローディング:コミュニティの力を利用する

人間はアップロードを好む。したがって、フラット化の要因10のうち、アップローディングは最も破壊的に広がる力を秘めている。ゲームに参加するためにその力を使う人間がどれほどいるか、さらに、どれほど早く使うかが、アップローディングの破壊的な力の広がりを左右する。『参加という行為は、筋肉を使わないといけない力仕事に似ています』とシフリーはいう。

『それにわれわれは積極的な参加者になるのに慣れていない。だから、ツールがそこにあっても、そんなに多くの人間が使わない……しかも、権威や組織には関わらないでおこうとする習慣が染みついている』つまり、アップロードはまだまだ規模としては小さい。

しかし、個人がアップロードし、共同作業を行うツールは、どんどん普及しているし、人々がアップローディングの経験からフィードバックが得られれば得られるほど、大きな組織やヒエラルキー的な構造にその影響が及ぶに違いないと思う。


このアップローディングの項目では、フリーウェアのサーバソフトであるアパッチ(Apache)や匿名の個人によって編纂され膨大な項目数を誇る百科事典のWikipedia(ウィキペディア)、CGMとして人口に膾炙しつつあるブログ(Blog)などが取り上げられている。


5.アウトソーシング:Y2Kとインドの目覚め



6.オフショアリング:中国のWTO加盟

2001年12月11日、中国はWTO(世界貿易機関)に正式加盟した。つまり、中国政府は輸出入と外国からの投資に世界各国が適用しているルールに従うことに同意した。原則として中国は、自国の競技場を競争原理に則って各国と同じように平らにしなければならない。

誰がライオンで誰がシマウマなのか、私にはわからないが、これだけはわかっている。中国がWTOに加盟して以来、その両者と世界各国は、どんどん速く走らなければならなくなっている。中国のWTO加盟が、共同作業の別の形――オフショアリングを強烈に加速させたからだ。数十年前から行われているオフショアリングは、アウトソーシングとは違う。アウトソーシングは社内でやっている特定の限定的な機能――例えば、研究、コールセンター、会計処理――を抜き出して、他社にまったく同じ機能を果たさせ、その作業を戻して会社の全体的な業務に組み込む。オフショアリングはそれとは対照的で、オハイオ州カントンで操業している工場をそっくりそのまま中国の広東省に移してしまう。



7.サプライチェーン:ウォルマートはなぜ強いのか

サプライチェーンが、フラットな世界で大きな競争力と利益の重要な源になっているのを理解するには、一つの事実だけを考えてみればいい。ウォルマートは現在、世界最大の小売業者だが、製品は一つも製造していない。“作っている”のは、超効率的なサプライチェーンだけだ。サプライチェーン管理の権威でMITエンジニアリング・システム科教授のヨッシ・シェフィは、好んでこういう説明をする。

『品物を作るのは簡単だ。サプライチェーンとなると、非常に厄介だ』シェフィが言いたいのはこういうことだ。現在のテクノロジーをもってすれば、知的財産を秘密にしておくのは難しい。どんな製品でも、分解して模倣し、何日かで品物を作れる。だが、世界中に“品物を届ける”――仕入先、卸売業者、港湾業者、税関、発送業者、運送業者といった関係業種の連鎖を綿密に秩序正しく動かす――プロセスを築くのは、容易ではないし、まして真似するのは極めて難しい。



8.インソーシング:UPSの新しいビジネス

そのため、UPSのような昔ながらの運送会社に、新たなグローバルなビジネスチャンスが生まれた。1996年、UPSは『シンクロナイズド・コマーシャル・ソリューションズ』と称する事業に乗り出した。それ以来、10億ドルをかけてグローバルなロジスティクス・貨物取り扱い業者25社を買収し、フラットな地球の1ヶ所から別の1ヶ所へのサプライチェーンすべてにサービスできるようにした。



9.インフォーミング:知りたいことはグーグルに聞け

このこと――あらゆる言語における世界の知識を容易に入手できるようにする――は、間違いなくグーグルの目標である。また、パームパイロットや携帯電話という携帯型ハードウェアがすでにあるから、誰もがどこでも世界の知識すべてにアクセスできる道具をポケットに入れているという時代がじきに来ることを、グーグルは願っている。

『すべての物事』『すべての人間』が、グーグルにまつわる重要な言葉なのだ。グーグルのホームページに書かれている正式な歴史によると、グーゴル(10の100乗)という言葉がグーグルの由来だという。あなた一人のために無数に近い膨大な情報をウェブ上でまとめるという使命を、グーグルという社名に込めているのである。

グーグルの成功は、こんなふうに世界の知識を指先を動かすだけで自分のものにできることに、人々が絶大な関心を寄せている証左だろう。世界の知識のすべてを――いや、たとえその一部であろうと――誰でも、いつ、どこでも手に入れられるという概念ほど大きなフラット化の要因はほかにはない。

共同作業の概念に、検索はどう当てはまるのだろう?これをインフォーミングと呼ぼう。インフォーミングは、アップローディング、アウトソーシング、インソーシング、サプライチェーン、オフショアリングの個人版といえる。インフォーミングは、個人にサプライチェーン――情報、知識、エンターテインメントのサプライチェーンを創り上げて展開する能力を与える。インフォーミングは自分との共同作業でもある。自分で指示し、自分に力と権限をあたえ、エンターテインメントの研究、編集、選択を可能にした。図書館や映画館へ行ったり、全国ネットのテレビを見たりする必要はない。インフォーミングは知識の探索でもある。同好の士やコミュニティを探すことでもある。



10.ステロイド:新テクノロジーがさらに加速する



世界の変化に合わせて自分や組織の変化を余儀なくされる世界が『フラット化する世界』であり、後進国の人々と先進国の人々が入り乱れて国籍や民族にこだわらず自由競争と共同作業を展開する世界が『フラット化する世界』なのである。フラット化する世界の進展に反対する国家や勢力、個人ももちろん数多くいるし、フラット化した結果、自分の得る利益や地位が向上するのか否かを事前に予測することは誰にも出来ない。

市場による自然選択の潮流の中で、新たに出現するグローバルな経済環境(グローバル・サプライチェーン)に適応的な参加をできない個人は、一般に貧困化する恐れがあり、どんな途上国に生まれても多国籍企業や新興企業のグローバル・サプライチェーンに適応することが出来れば、先進国のホワイトカラー以上の裕福な生活が実現できる。

フラット化する世界で安定した経済生活を手に入れる為には、『無敵の個人(無敵の民)』にならなければならないとトーマス・フリードマンは『フラット化する世界・下巻』で述べているが、無敵の個人というのは端的には『代替不可能な仕事をする個人』のことであり、具体的には『アウトソーシング・デジタル化・オートメーション化の影響を受けない仕事をする個人』のことである。

人間が自分の仕事を失う時は、その多くが、『技術革新(イノベーション)によって過去に仕事をアウトソーシングされる時』であるが、フラット化する社会で厄介なのは、工業製品の生産活動だけでなく、それまで外国へ瞬時に輸送することが出来なかった『ホワイトカラーのサービス業務(事務作業・会計業務・単純なプログラミング・建築設計)』の多くがインターネットでやり取りできるようになり、アウトソーシングの有力候補となったことだろう。

『フラット化する世界』の最高理念は、『自由な競争環境』『効率的な共同作業』の実現という事であり、社会保障のセーフティネットが十分に敷かれていなければ、フラット化の過程で優勝劣敗の競争原理が厳しく働きすぎて、政治情勢の不安定化やテロリズムの台頭を招く恐れもある。このフラット化する世界への警鐘は深く胸に刻んでおかなければならないし、近代化を拒絶する中東地域やアフリカ諸国といった『フラットでない世界』の反動や抵抗は当分の間続くことになるだろう。

フラット化する世界での雇用形態は、終身雇用制や年功序列賃金制の対極にある不安定なものになりやすい。そのため、絶えず自分が企業や団体にとって有益な人材であることをアピールしなければならないので、過剰な競争心による苦痛な精神的ストレスが蓄積しやすくなる。一つの仕事(職場)に退職まで居続けられるケースが減るので生涯予想賃金を算定することも難しくなる。その結果、安心して家族生活の将来設計を立てることも困難になるが、それでも大枠におけるフラット化の流れそのものを意図的(政治的)に押し留めることには限界があるだろうとトーマス・フリードマンは見ている。

フラット化を止められない理由としては、利潤を追求する目的を持つ大企業(多国籍企業)に外国との関係を制限せよと命令することが困難であり、仮に命令できたとしてもグローバルな経済競争に敗れて結果として自国の産業・交易・大企業の衰退を招くことが挙げられる。また、現在、目覚ましい経済成長を続けている中国やインド、ロシアに対して『私達の仕事や生活、自然環境が脅かされるので、この辺で経済成長をやめてもらえませんか?』と提案することは世界のスーパーパワーであるアメリカにも無理な話であり、また、アメリカやヨーロッパ、日本といった先進国だけが環境資源や外国の労働力を使って経済発展をしたことが許され、中国やインド、ロシアにそれが許されないというのであれば、各国の政府だけでなく民衆の大反発が起こることが予想される。

人類の悠久の歴史において、ローマ帝国やスペイン、ポルトガル、清王朝(前近代の中華帝国)といったかつての覇権国家が没落していったように、豊かな国は豊かなままで、貧しい国は貧しいままでという今まで続いた国際秩序を永遠に維持することなどは到底できない話なのである。現在の世界秩序において主導的な役割を果たしているアメリカ・欧州・日本がいつまで現在の地位に留まっていられるのかの保障がないからこそ、アメリカ・欧州・日本は自国の経済的優位性(既得権益)を脅かす大きな変化を牽制しようとするが、反対に、中国・インド・ロシアは経済的な実力で逆転できるチャンスや分野があれば積極的に変化を推進しようとしてくるだろう。

中国・インド・ロシア・ブラジル(BRICs)を筆頭とするこれから発展しようとする後進国の人々の『生活水準を向上させて文明的な生活をしたい』という欲望を押さえつけようとすれば、その国の政府もろとも弾き飛ばされる恐れがある。グローバルなフラット化の流れがその国の人々の所得水準(雇用状況)を底上げしている事実がある限り、そのフラット化の流れを政治権力で強引に押し留めることは難しいといえる。どちらかといえば、先進国で『フラット化する世界』に適応できない個人が増大して所得格差が大きく拡大した時に、ナショナリズムや伝統主義、共産主義(社会主義)を行動原理とする大きな反動が生まれてくる可能性があるのではないだろうか。

いずれにしても、個人の最低限の文化的な生活を保障するセーフティネットを整備せずに、フラット化する世界へ急速に移行した場合には、少なからぬ政治的混乱と民衆の暴発が起こる恐れがあるだろう。フラット化した世界を安定的に持続する為には、経済競争での敗者が何度でも復活してチャレンジできる環境を準備するか、経済競争から離脱する権利を認めて安定的な雇用を地域(一部)的に確保するかなどの工夫が必要だろう。

フラット化する世界に理論的に反対する政治思想や社会理念の根底には、『本人の同意なくフラット化した熾烈な競争環境に投げ込まれる』ということがあり、フラット化した世界に生きるという社会契約を結んでいないのに『競争に敗れる屈辱感や劣等感を味わわされる』ということがある。テロリズムの温床となるアイデンティティは、『世界から疎外された屈辱感に塗れた自分(自民族)』というものであり、テロリズムを地上から排斥する為にはこういった種類の屈辱や怨恨、怒りを低減させるような環境を準備していかなければならない。

ということであれば、成功・名誉・富裕を求めて競争を戦う『フラット化した世界』のプレイヤーとなるのかならないのかを自由意志で決定し、そこに自由に参加したり離脱したりする権利を認めることが、今後の経済政策の課題となるのではないだろうか。無論、フラット化(自由経済化)するという大きな時代の流れそのものに抵抗し切れるものではないだろうが、暫時的な措置であるとしても、フラット化への準備が出来ていない個人に対する保護的な政策や救済的な支援は必要になってくるだろう。

フラット化した世界では、『経済生活に対する自己責任の強化』と共に『熱意と好奇心を持って仕事に努力し続ける義務』みたいなものが暗黙の了解として科されるようになるのかもしれないが、そういった今までよほどの仕事人間でない限り経験することのなかった多大なストレス環境に、人間がどの程度まで対応できるのかはまだ未知数な部分が大きいように思える。

フラット化する世界の過程では、職業的なスキル(技能)の向上と価値あるキャリア(経歴)の蓄積だけでなく、厳しい職場環境と余裕のない生活状況に適応し続ける為の『メンタルヘルス(精神的健康)』が重要になってくるだろう。精神疾患の発症リスクや人間関係における精神的ストレスを回避する為に、効果的なストレス・コーピングに裏打ちされた『精神的なタフネス』が要求されることになる。

企業の安定雇用が難しくなるフラット化する世界において、具体的に個人はどのように対応していけばよいのか、グローバルな経済競争が勢いを増す中で、各国の政府はどのような教育制度を構築すべきなのか、個人の経済的自立を促進する職業訓練の機会とはどのようなものなのかという話が『フラット化する世界・下』で展開される。

しかし、私が比較的興味を持って読み進めた部分は、『フラット化する世界への個人・政府の適応』という部分よりも、『9.11のイスラム原理主義のテロリズムのイマジネーションと、11.9のベルリンの壁崩壊につながった自由な解放のイマジネーションの対立』が記された「第15章 二つの選択肢と人間の未来」であった。
この章では、『未来を肯定する生産的な創造活動へと向かう11.9のイマジネーション』『未来を否定する破壊的なテロリズムへと向かう9.11のイマジネーション』の絶望的なまでの落差、和解不能な認知的スキーマのぶつかり合いが描写されている。淘汰圧の激しいフラット化する世界では、利益や豊かさを獲得する機会を剥奪されて、貧困層に固定された人たちや不公正な競争が行われていると考える人たちの『不満・怒り・怨恨』を無視することは許されない。許されないというよりも、正確には、社会構成員ひとりひとりの生命の安全や生活の安寧を維持していく為には、そういった『フラット化(競争激化・伝統的価値観の衰退・宗教的コミュニティの弱体化)への不安・不満・怒り・怨恨』を放置しておくことは余りに危険である。

第三世界の人々に、自分や自民族が自由主義世界から疎外されて不当な取り扱いを受けていると思い込ませることは、『9.11のイマジネーション』を未来に向けて膨張させることと同義である。また、先進国において『自分は既存の経済社会についていけない・自分は幾ら努力しても駄目な人間だ・周囲の人たちがうらやましくて仕方がない・自分だけが競争で不利益を受けている』という悲観的な認知を持つ人たちが増大するのも、将来の治安状況を悪化させる主要原因となる。

結局、フラット化の恩恵を受けるマジョリティとフラット化で不利益を蒙るマイノリティの格差を極端に大きくすることは、将来のテロリズム(凶悪犯罪)のリスクを高め、平穏な社会環境への脅威になってしまう。自分の能力や意欲をフルに発揮して自由な競争を楽しめる世界にする為には、つまり、9.11の社会憎悪(人間憎悪)をたたえた悲観主義のイマジネーションを弱めて、11.9の人類の未来を肯定する楽観主義のイマジネーションを強化する為には、全ての人々に『明日は今日よりも幸せになれる・自由競争は結果として自分の生活水準を向上させる』という確信を抱かせる必要がある。

破れない最低限の生活を保障するセーフティネットと崩れない安定した供給のある労働雇用市場があってこそ、人間は『自由の価値』と『競争の成果』を信じることが出来る。窮地に陥った自分を社会のセーフティネットが救い上げてくれるという安心感は、他人との相互扶助的な信頼感を形成し、同じ社会に生きてお互いに助け合っている他人を裏切る行為への心理的ハードルを高くする。反社会的なテロリズム(無差別凶悪犯罪)のイマジネーションを弱体化させるための最大のヒントは、第三世界の人々や先進国でルサンチマンをたたえた人たちの怒りや欲求不満(フラストレーション)を低減させる社会環境を整備することであり、憎悪する他人を“倒すべき敵”ではなく“協力し合う味方”であると物心両面から認知させることである。


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トーマス・フリードマン『フラット化する世界・上 経済の大転換と人間の未来』の書評:1

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■書籍紹介
他人の家計簿―ニート、秋葉系、株セレブ…格差社会を生きる若者たちのお金事情




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