ビネー式知能検査に関する補足と臨床診断的に用いられるウェクスラー式知能検査:サイトの更新

心理アセスメントとしての知能検査の歴史とアルフレッド・ビネーが開発したビネー式知能検査については、心理アセスメントで用いる心理検査とインフォームド・コンセント:ビネー式知能検査による一般知能の評価『集団知能検査の開発を促進した第一次世界大戦:投影法の性格検査と無意識概念』の記事でその内容を概説しました。

アルフレッド・ビネーとテオドール・シモンが開発したビネー式知能検査やそれ以外の心理学者に見られる知能観の特徴とIQ(知能指数)の導入による相対評価の方法、IQの恒常性の間違いなどについて、ウェブサイトのほうで少し補足記事を書きました。

構造主義を心理学に取り入れたことで著名な児童心理学者ジャン・ピアジェの認知的な思考能力の発達論に基づく『同化と調節の均衡による知能観』なども興味深いものですが、現代において説得力や客観性の高い知能の定義としては『環境適応・問題解決・知識応用に貢献する総合的な精神機能(認知・学習・記憶・思考・対人スキル)で、実践的な効果発現や環境への適応行動につなげられる能力』というのが妥当であると思います。

知能検査(知能テスト)の種類:ビネー式知能検査


ビネーは、初め『知能』を生得的素質によって規定される『判断力』と同義な能力と考えたが、実証的な知能研究を進めていく中で知能を判断力のみで定義することは不可能であると気づいた。そこで、知能を構成する要素として『判断力・理解力・批判力・方向付け・工夫する力』を想定するようになった。

現在では、知能とは何であるかについて一義的にずばり定義することは困難であると考えられるようになっているが、敢えて知能を定義するならば『学習能力・記憶能力としての結晶性知能』と『問題解決能力・環境適応能力としての流動性知能』の複合体を知能の一般的理解として定義できるだろう。結晶性知能とは、意識的な学習行動の結果としての知識・技術を蓄えるストックとしての知能であり、流動性知能とは、変動する環境や所与の課題にその場その場で対応して問題解決するフローとしての知能である。

知能の定義にはこれ以外にも様々なものがあり、経験的な学習行動による知能発達を無視するC.バートの知能の生得的素因説やA.R.ジェンセンによる遺伝要因を重視した知能観など実に多様な定義がある。感覚・知覚機能から切り離された抽象的思考力や高次の判断力のみを知能とするL.M.ターマンらの古典的定義は、実際の行動次元での知能が説明できず、知覚材料と抽象的思考との相関関係を無視していることから現在では余り一般的な定義とは言えない。



幼児から成人、高齢者まで幅広い年齢層を対象として知能の臨床診断的なアセスメントを実施することの出来るウェクスラー式知能検査の種類と評価尺度についても大まかに説明しましたので興味のある方は読んでみて下さい。

デビッド・ウェクスラーが開発した知能検査の特徴は、人間の知能を後天的な学習活動や教育環境によって強化される『言語性知能=結晶性知能』と生得的な遺伝・適性などの要因によって知能の大枠が規定される『動作性知能=流動性知能』に分類して問題を作成したところにあると言えます。

ウェクスラー式知能検査は、現段階で開発されている知能検査の中では、実施事例が最も多く、対象年齢層も広範であり、問題項目と評価尺度が総合的で網羅的なので、信頼性や妥当性が高い有効な知能検査として国際的な評価と認知を受けています。

学校福祉や能力開発、生徒の個別指導に役立てつ知能検査に関しては賛否両論あり、倫理的な議論がなされることもありますが、能力選別や異質性の排除など倫理学的な問題意識については過去の記事で何回か触れてきたので今回は詳述しません。

知能検査(知能テスト)の種類:ウェクスラー式知能検査


ニューヨーク大学ベルヴュー病院に所属していた臨床心理士のデビッド・ウェクスラー(D.Wechsler, 1896-1981)が開発した個別知能検査が『ウェクスラー式知能検査』です。ウェクスラー式知能検査は、初め『ウェクスラー・ベルヴュー尺度(1938)』として作成されました。

その後、幼児から高齢者まで幅広い年齢層をカバーする相対的な知能診断的テストとして色々な種類のウェクスラー式知能検査が開発されました。

1949年に幼児や児童に適用するWISC(Wechsler Intelligence Scale for Children)が作成されたのを皮切りにして、1950年に成人用のWAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale)、1966年に就学前児童を対象としたWPPSI知能診断検査(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence)、1979年に幼児・児童用のWISCを改良したWISC-R(Wechsler Intelligence Scale for Children-Revised)が開発されました。

ウェクスラー式知能検査は、国際的に利用が普及している知能測定の心理アセスメントで、日本語にも翻訳されています。統計学的な点数分布をもとにした客観性の高い標準化が為されているだけでなく、各種のウェクスラー式知能検査にはウェクスラー本人が書いた知能検査の理論・測定法・根拠のテスト・マニュアルが付属しています。

知能の臨床診断的(臨床査定的)特性を持つウェクスラー式知能検査の評価尺度には、『言語性知能尺度・動作性知能尺度』があり、それぞれ複数の下位尺度を持っています。ウェクスラーの知能検査の測定結果は、IQ(言語性知能指数:VIQ,動作性知能指数:PIQ)で算出されますが、測定する変数は言語性知能得点と動作性知能得点、それらを合計した全知能得点になります。

以下のリストにあるように、言語性知能尺度は6つの下位尺度を持ち、動作性知能尺度は5つの下位尺度を持っています。


* 言語性尺度:知識・数唱・単語・算数・理解・類似
* 動作性尺度:絵画完成・絵画配列・積木模様・組み合わせ・符号




■書籍紹介
WISC‐3アセスメント事例集―理論と実際

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