『ブログの量の増大』と『ブログの質の向上』の間にシナジー効果を生み出す事の困難

Blog向上委員会の『量は質を凌駕するかどうか』という記事を読んで、『ブログの質と量』について考えました。

定期的なコンテンツ更新のあるアクティブなBlogは、その継続期間が長くなればなるほど、“過去ログの蓄積”が膨大になっていきます。
『ブログの質的転換』を起こすような閾値があるのであれば、過去ログの分量が増大するにつれて質的転換を示す確率が上昇し、質の向上を示す何らかの徴候が見られるという事になりますが、実際にはなかなかそう法則的にはブログの質は変化しないでしょう。

過去に制作されたコンテンツの集積が『ブログの量(Blog Quantity)』だというのは客観的な指標ですが、『ブログの質(Blog Quality)』は、数値化して相対的に比較することが困難な指標です。

記事単体で『ブログの質』を考えてみると、『何度でも読み返したいと思うクオリティの高さ・何回も参照したいと思う情報量の多さ・そこでしか得られない情報価値の高さ』というものを想定することが出来ますが、それらは主観的な選好と評価、必要とする情報に大きく依存するものです。

政治や時事を取り扱うブログ、経済情勢や株式市場を取り扱うブログ、書籍の書評や感想を記録するブログ、日々の生活の日記を書いていくブログという風に特定ジャンルに搾れば、ある程度、ブログの質に対する評価にも一貫性や客観性が出てくると思いますが、異なるジャンルにある二つのブログの質の高低を判断することは不可能でしょう。

また、一つのブログに収載されているコンテンツの内容は専門特化されていないことが殆どですから、政治や経済の批評、社会時評、日記、書評特定のジャンルにカテゴライズする事そのものがナンセンスである事が多いでしょうね。

ある日の記事では日本の外交戦略を語り、ある日の記事では、その日に食べた美味しいスイーツの雑記を書き付けるといったように、ブログでは『コンテンツの一貫性・連続性・専門性』が通常保障されていません。
また、そのコンテンツの多様性と経時的な興味関心の変化などが、テーマを決めて専門特化したウェブサイトと違うブログの特色であり魅力なのだと思います。

国際政治を論じる体系化されたウェブサイトには、通常、グルメや小説の話は出てきませんが、国際政治情勢に精通したブロガーの場合には突然、昨日食べた料理の話が出てくる可能性もあります。
そういった執筆ジャンルを限定されないコンテンツの多様性が、ブログの長所でもあり短所でもあると言えるでしょう。

一つのブログの価値あるいは魅力は『個別記事の質の総和(Σ)』だと思いますが、同時に、過去ログが膨大になればなるほど『一つのブログ全体の価値』を査定し吟味する読者の数は少なくなると推測されます。

先ほど『コンテンツの多様性と自由なテーマ選択』が、ブログの長所であると同時に短所であると述べましたが、これは、『人物重視の閲覧者にとっての長所』『情報重視の閲覧者にとっての短所』ということを意味していると思います。

『その人の特性・生活・思考内容・興味関心・価値観』を知りたいと思ってブログを訪問する人にとって、そのブログ制作者が書くコンテンツはどのような内容であっても有意義なものです。
この典型例は、芸能人や著名人の書くブログなどで、好きな芸能人が『今日は、○○の焼肉屋に行って牛タンを食べたけど、とても美味しかったですよ。ハードな仕事の後に、ビールを飲みながら焼肉を食べるってのは最高ですね』という短いエントリーをアップするだけでも多くの閲覧者が訪れ、何らかのコメントを残していく可能性があります。

それは、その著名人のブログを訪れる人たちの興味や欲求が『著名人が書くコンテンツの情報としての価値』ではなく『著名人の生活状況や趣味嗜好、本人の写真の開示』などにあるからだと言えます。

同じ著名人でも学者や評論家などの場合には、研究内容や専門分野に関する情報の一般的価値を求めて閲覧者が集まる傾向があります。
その為、脳科学者がショッピングの報告や過去の恋愛の思い出話ばかりをしていてもつまらないと感じ、政治学者が毎日、食べた食事やデザートのレシピを公開するだけだとナンセンスだと感じてしまう恐れがあります。
脳科学者というプロフィールを掲げている人には、やはり、ファッションについて語ってもらうよりも、最新の脳科学の進展や脳や神経に関連する興味深いエピソードに言及して貰いたいと考えるのが普通でしょう。

ブログ制作者のプロフィールを開示すべきか否かという問題の一つの回答として、『プロフィールの属性がコンテンツのジャンルや傾向性と関連しているなら、開示したほうが「閲覧者の制作者に対する関心」は高まる』ということが言えると思います。

反対に、自分ではなく情報のみを客観的に見て欲しいという人、コンテンツのジャンルを限定せず広範多岐な話題を扱うブログ、プライベートに関する日記的なコンテンツをアップしない人であれば、プロフィールは性別・年齢などだけの簡略化されたもので構わないと思います。

『コンテンツの多様性と自由なテーマ選択』の話に戻ると、『ブログ制作者への関心』よりも『情報の有用性・網羅性』を重視する人にとっては、コンテンツのジャンルは特定されていたほうが都合が良いし、連続して過去記事を読み進めていく確率が上がるでしょうね。

とはいえ、ブログ開設の初期から現在までの記事全てを読破するという事は、相当な時間・労力のコストを必要とします。
その為、Google,Yahooなど検索サイト、ソーシャルブックマーク(SBM)、他ブログのリンクやトラックバック、雑誌・広告など外部メディアから『質の高いブログコンテンツ』に辿りついても、そのブログ全体を通読することは極めて稀でしょう。

面白い内容や価値ある情報が含まれたコンテンツを制作した人の『それ以外の記事』を全て読んでみたいという気持ちは、確かに多くの人に起こると思います。
しかし、その瞬間的に生起した欲求を、実際に過去ログを読破するという行動につなげる為には、幾つかの条件が必要です。

特に、検索エンジンや他の関連コンテンツから特定のブログ記事を閲覧しに来た人は、『必要な情報を得るという目的意識』を持ってやってきている人が大半ですから、当該記事以外の記事を読んで貰うためには『目的とする情報に関連した重要コンテンツが他にも数多く眠っている』という認知を引き出さねばなりません。

こういった情報獲得を優位に置いてブログを閲覧する層を引き付けて複数の記事を読んでもらうためには、『コンテンツの適切なカテゴライズ』『ブログ内検索の充実』が必要となってくるでしょう。

『コンテンツの適切なカテゴライズ』というのは、個別記事の内容を直感的に認知させるテーマやタグを付けるということです。
当ブログのテーマ分類もかなり大雑把でいい加減なところがあるので偉そうなことは言えないのですが、ウェブリブログは同一記事に3つまでテーマを付けることが出来るので細かなテーマ設定をしたい人には向いているブログサービスだとは思います。

ただ、テーマを最大何個まで設定できるのかが分からないので、あまり細かく設定してしまうとテーマの数が膨大になり「新規テーマ」が設定できなくなる恐れがありますし、テーマ(ジャンル)が数百個のレベルにまで増えてしまうと逆に情報の探索効率が著しく低下すると考えられます。

私は主観的に1ページの縦のスクロールが余りに長くなりすぎると読みにくいと感じますので、このブログでも1つのテーマに収載されている記事の数が多くなってきたら、同じテーマでも『2』とか何とか区分をつけて別テーマにしようかと思っています。
今現在、多くのブログサービスでは文章容量は無制限ですけど、実際問題として1つのテーマに1,000とか2,000とかの記事が収載されてそれが1ページにまとめて表示されるようだと、余りに縦長になりすぎてしまうのではないでしょうか?

そういった意味では、ブログの長期継続可能性という点には若干の不安がありますね。
ウェブリブログに限って言えば、特定テーマの記事数が100を超えたくらいで、別ページに分けて表示して欲しいですね。
今の表示形式のままで、特定テーマの記事数が500とかになると、表示そのものは可能でしょうが非常に見難いものになってしまうでしょう。

別ブログサービスでも、1月や2月といった記事群を選択すると、メモリが限界に達するほどの長さの記事が一気に表示されて、非常に視認性が悪いことがありますので、『1ページに表示する記事数と縦の長さ』には各ブログサービスで工夫改善が必要だと思います。


『ブログ内検索の充実』とも絡んできますが、過去ログの分量が増大すること、即ち、一つのブログの量が増大することの欠点として『ブログ内で必要とする情報を検索して特定することが困難になる』という事が指摘できます。

『ブログの量の増加』『ブログの質の向上』を上手くリンクさせる為には、個別記事の質を上げるだけでなく、過去記事のログの膨大な蓄積から必要な情報だけにアクセスする手段を準備することが大切だと思います。

ブログというCMS(Contents Management System)の弱点の一つは、過去ログの蓄積から必要な情報とコンテンツ群だけを抽出する技術的ソリューションが提供されていないことだと思います。もう一つ、ブログの過去記事が読まれにくい原因としては、『新規記事への選択的注意が向きやすいデザインと構成』が挙げられると思います。

私も冒頭で、“アクティブな”ブログという表現を使ってしまいましたが、ブログはある程度頻繁な更新をしていないと、『生命力や新鮮味を喪失した抜け殻のような場所』と独善的に判断されてしまうリスクがあります。
それは、ブログではカレンダー機能などによって、記事更新の日時に選択的注意が向きやすい構成が取られていて、訪問者が無意識的に最終更新日は何時だろうか?と思いやすいデザインになっているからです。

時間の影響を受けない一般的情報の内容や専門用語の定義などを知りたい人にとっては、更新頻度はさほど重要ではないかもしれませんが、最新の情報を追い求めている人や時事問題の即時的な論評などを読みたい人にとっては更新頻度の高低はそのブログの価値を判断する重要な指標の一つになります。

正確には、『その人の書いている記事を読みたいと思っている層』が、更新頻度の低下による影響を一番受けやすいといえるかもしれません。今は、更新を自動的に知らせてくれるRSSリーダがあるので、訪問しても更新されていなかったという無駄足を踏む可能性は低くなりましたが、それでも数ヶ月、数年と更新がなくなってしまうとどんなに好きなサイトであってもやはり訪問する回数が少なくなり、意識からも存在の強度が薄くなっていきます。

一年以上、何の手入れもされなくなったブログやサイトは、一般的にアクティブではないと見なされると思いますが、ブログの場合には下手をすると1ヶ月程度でも何も更新しなければアクティブではないと見なされて巡回先から外される恐れがあります。
特に、それまで毎日のように更新していた人が、急に月に1回程度しか更新しなくなったりすれば、やはり、この人は現実生活が忙しくなってネット活動をする余裕がなくなったのか、ブログのコンテンツ制作の情熱が弱くなったのかといった認知を受けやすくなるでしょう。

ブログは、HTMLなどの知識がなくても気軽に記事を制作して更新できるのが魅力ですが、最新記事の更新日時が目立つ構成の為に、『ブログのアクティブ性』に閲覧者の意識が向きやすくなる特徴を持っています。
個別の情報よりも書き手の個性に強い魅力があって、日々の更新を楽しみにしている人の数が多いほど、書き手はアクティブ性を維持することを意識せざるを得なくなるでしょう。

『書きたいと思う主張や情報を自由なペースで書いて、自分が希望する程度のアクセス数と反応がある』というのが、理想的なブログ運営のあり方だと思いますが、アクティブであることを強く意識し過ぎると『書きたいと思う意欲や欲求とは無関係に、更新頻度のペースを維持することが義務化』する恐れがあります。

その『ブログ更新の義務化の心理』は、閲覧者の期待や必要に応えたい、現状のアクセス数を減らしたくない、ここまで成長させたブログの活力・アクティビティを落としたくないという欲求によって生起してくるもので、『ブログに対する生真面目な責任感・見える対話者への応答責任の自覚・見えざる訪問者への配慮・アクセス数維持の欲求』などの構成要素に分類することが出来るでしょう。

昔、話題になることが多かったブロガーの燃え尽き症候群も、上述のようなブログコンテンツの更新頻度への意識過剰(過大な責任感)、自分の欲求と他者の期待(ブロガーの内面心理にある閲覧者の期待)にまつわる葛藤が原因であると言えるのではないかと思います。


当ブログは、検索エンジンからの訪問者が圧倒的多数を占めるので、あまり新規記事の重要性やアクティブ性の維持を強く意識してはいないのですが、訪問者との対話などインタラクティブ性を大切にして常連の閲覧者を意識しているブログでは、やはり更新頻度を維持してアクティブであることを心の何処かで考えていると思います。

毎日の更新を定期的に行おうとする場合には、ある程度、一つの記事の分量を減らしたり、記事の内容の密度を下げないと難しいでしょうし、常連者との対話をメインにしている人は本記事以外にもコメントに対するレスも書かなければなりません。

どちらも書きたい情報や主張が無数にある人にとっては大して苦痛な作業ではないと思いますし、私自身、書きたいと考えるだけの内容であれば無限にあるので更新する内容の選択そのもので悩むことは殆どありません。

文章を書く事が好きな人や得意な人が、日々の出来事や時事問題に対する意見などを気軽に書いていく方式を取れば、毎日更新することはそれほど難しいことではないかもしれませんが、無理して文章を書いている人やありきたりなネタでは我慢できないオリジナリティを求める人の場合には毎日の更新はかなり難しいと思います。

また、一つの記事の完成度や文章量にこだわりすぎても、頻繁な更新が難しくなっていきますので、更新頻度を上げたいと思う人は、完全に自分が満足できない内容であっても取りあえず記事をアップして、その補足記事を次の日に書くというようにすればいいのではないかなと思います。

話は変わりますが、ブログではないウェブサイトでは、一定以上の情報量さえ揃えていれば、更新頻度が相当に低くてもサイト自体の意義や活力を失っていないように見せるデザインや構成を考えることが可能ですね。
だから、一冊の本のように内容を完結させてしまいたい、その後に頻繁な更新作業を入れたくないという人はウェブサイトで綺麗にインデックスを作って公開するという形式のほうが良いかもしれません。

ウェブサイトも、項目を増やせば永遠に終わらないライフワークとなりますが……ブログも基本的には本人の執筆意欲が継続する限りにおいて終わりのないライフワークといった側面があります。
とはいっても、一つのテーマに搾ってブログのコンテンツを制作して、ある程度内容がまとまったら、そのブログを終わらせて、異なるジャンルのブログをまた新たに立ち上げるというやり方もあると思います。
ブログを永遠の更新作業ではなく、始まりと終わりのある一つの完結した作品にしたいという人は、複数のブログを一つずつ完結させていくといったやり方もあるでしょうね。その場合には、日記形式や時事問題への言及形式ではなく、特定の分野やテーマに関する網羅的で一貫性のあるブログを目指すという事になるでしょう。

あと、自分のブログの関連記事を色々と読んでもらうという観点からすると、ブログよりもサイトのほうが優れていることが往々にしてあると考えられます。
ブログ閲覧者の大部分は、『初めに目にした質の高い記事』の関連記事か、同一カテゴリーの記事を幾つか読むだけで終わってしまうと思います。

特定のテーマに基づいて制作された一貫性のあるサイト、特定分野に関する情報を網羅したサイトの場合には、閲覧者が欲しいと思っていた情報とその周辺の関連情報がまとめて公開されている場合が多いので、閲覧者のサイト滞在時間は必然的に長くなります。

インターネット上にウェブサイトやブログの絶対数が少なかった時代には、自分の趣味や興味を惹かれたサイトをじっくりと読み込む人も多かったと思いますし、記事を読んだ後にサイトの掲示板に感想や意見を書き込む人も少なくありませんでした。

今は、良質なブログだけに限定しても絶対数が余りに多くなった為、RSSリーダなどを使用していても、日々更新され続けるコンテンツを追いかけるのが大変で、それを解釈し感想を書くことは更にハードルが高くなっています。



■ブログの検索機能の充実に関連して

このブログには、Googleのブログ内検索を付けていて、時々利用して下さる訪問者がいますが、希望する検索結果に辿り付けないケースも多々あるのではないかと申し訳なく思うことがあります。
このブログに掲載されている情報の絶対量の不足や求めている用語に対する説明の不備もあると思いますが、Googleのドメイン内検索では、Googleの検索エンジンにインデックスされた記事しか検索できませんので、FC2ブログなどにデフォルトで備え付けられているブログ内検索よりも網羅性や正確性では劣ります。

その為、このブログに書いてある語句や用語であっても、Googleのドメイン内検索によっては拾えないコンテンツがあります。

当ブログに限らず、多くの人は、一回ブログ内検索を掛けて必要な情報に辿り付けない場合に、わざわざ個別の記事を読もうとはせず、WEB検索に戻って他のサイトやブログの方へと移動することが多いでしょうね。
膨大な過去ログの情報の有用性を十分に発揮する為には、『ブログ内検索の充実』と『関連記事への十分なブログ内リンク』が必要だと言えるかもしれません。
ブログ内の情報整理と検索機能の必要性は、過去ログの分量が膨大になり、閲覧者が一つ一つの記事のタイトルを眺めることさえ困難になってくれば余計に高まってくるでしょう。

当Es Discoveryのブログでも総記事数が200を超えており、一つ一つの記事の文章量が長めなので、その全ての記事を読み通す為には、1週間以上の時間的コストが必要かもしれません。真剣に内容を読解しながら読もうと思えば、思考や記憶をする労力も大きなものになるでしょう。

心理学や精神分析、精神医学など専門分野に関するコンテンツは、なるべく他の事典などを当たらなくても意味を汲んで読めるように詳細な説明をしているつもりですが、それが返って文章量を多くする原因にもなっています。

『ブログの量の増大』と『ブログの質の向上』にシナジー効果を求めようとすれば、最低でもブログのカテゴリー(ジャンル)分類を初期からしっかりと行っておくことが大切だと思いますし、不完全なものであっても何らかのブログ内検索を用意しておくことが必要だと思います。

私自身、ブログのカテゴリーやテーマの適切な分類、コンテンツのユーザビリティの向上にそれほど配慮せずにブログを書いてしまっている部分はありますが、膨大な過去の遺産を抱えたブログから必要な読みたい記事だけ引っ張り出すことは、書き手にとっても読み手にとってもなかなか難しいですね。


■補遺:Blog向上委員会のブログは、“http://mizunohosi.jugem.jp/”に移転作業が進行中のようで、ここにリンクした記事もいずれそちらに移されるものと思われます。

■書籍紹介
このブログがすごい! 2006

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