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村田沙耶香『消滅世界』の書評
村田沙耶香『消滅世界』の書評 現代社会で起こっている『恋愛の減少(若者の恋愛離れ)・未婚化晩婚化・少子化・家族の減少(単身世帯の増加)・夫婦のセックスレス・恋愛や性のバーチャル化』などをモチーフにした作品で、テクノロジーが進歩して物理的な性行為に基づく家族・恋人が消滅しかかっている近未来の日本をSFタッチで描いている。 ...続きを見る

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2017/08/22 08:05
橋本治『いつまでも若いと思うなよ』の書評2:年を取る必要のない文化の幻想と年齢実感の薄れ
 橋本治『いつまでも若いと思うなよ』の書評2:年を取る必要のない文化の幻想と年齢実感の薄れ 第二章『年を取ろう』では、作家という自営業者の橋本さんが『(大きな仕事を成し遂げるために自分の腕前を上げるためには)年を取らなきゃだめだ』という考え方をしながらやってきたことが語られる。反対に、公務員やサラリーマンのような一定の給与・身分が保障された被雇用労働者になると『年を取ったらだめだ』の考え方になりやすく、『組織の中で適応するために、人生観・本質論と関係するあまり面倒くさいことを考えない体質』になりやすいと語る。 ...続きを見る

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2017/07/19 15:57
橋本治『いつまでも若いと思うなよ』の書評1:『若さ・新しさ』を持てはやす現代の風潮と老い
橋本治『いつまでも若いと思うなよ』の書評1:『若さ・新しさ』を持てはやす現代の風潮と老い 『いつまでも若いと思うなよ』は中高年の人にとってショッキングなタイトルだ。『若さ・美しさ・生産性(能力)』が持てはやされる現代では、多くの人ができるだけ年寄りにはなりたくないと思っていて、特にあまり親しくもない女性に年齢を聞くことは一種のタブーでもある。お金のある中高年には、できるだけ若くありたい(見かけ・気持ちが老け込みたくない)という欲求から、アンチエイジングのサービスや健康商品、美容整形などにかなりお金を突っ込んでしまう人も多い。 ...続きを見る

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2017/07/19 15:55
村上春樹『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』の書評:2
村上春樹『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』の書評:2 免色渉は『個人主義・自由主義』の現代における典型的成功者である中年男性のイデアとして機能しているが、その免色が『冤罪で拘置所の狭い場所に長く閉じ込められる恐怖の経験とその克服』をしているのは象徴的であり、免色という存在そのものが『他者・共同体とストレートにつながれない現代人の孤独と愉楽』を感じさせるのである。 ...続きを見る

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2017/05/30 15:40
村上春樹『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』の書評:1
村上春樹『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』の書評:1 第1部の顕れるイデア編では、別のハンサムな男ができた妻に突然の別れを切り出された“私”、起業で大きな経済的成功を収めながらも結婚の決断をできずに別の男と結婚した元彼女を永遠に失った“免色渉(めんしきわたる)”という二人の人物を描くことで、『現代のある種の中年男性の孤独・モラトリアム』を寓話的に示した。 ...続きを見る

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2017/05/30 15:37
森博嗣『彼女は一人で歩くのか?』の書評:超長寿化・生命創造による人口減少世界
森博嗣『彼女は一人で歩くのか?』の書評:超長寿化・生命創造による人口減少世界 科学技術の驚異的な進歩によって、人間の寿命が数百歳以上にまで延びた代わりに子供が産まれなくなった近未来を舞台に展開されるSF小説で、人間の死生観とテクノロジーについて考えさせられる。近未来社会に生きる人類のシミュレーションのような物語の流れが面白いだけでなく、現在進行形の高齢化社会や少子化問題にも関わってくるテーマ性もある。 ...続きを見る

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2017/05/10 11:41
村上春樹『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』の感想:3
村上春樹『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』の感想:3 免色渉の肖像画を描きあげていくプロセスで、私と免色は次第に個人的にも親しみを感じ合うようになり、それぞれの人生・感性・考え方についての知的なコミュニケーションを繰り返していくのだが、その会話の言葉一つ一つもなかなか示唆的で含蓄がある。 ...続きを見る

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2017/04/13 20:42
村上春樹『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』の感想:2
村上春樹『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』の感想:2 約6年のユズとの結婚生活が終わろうとしていた私は、精神的に非常に不安定な部分があり、端的には『この先どのように生きていけば良いのか・何を目指して生きていけば良いのか』という方向感覚を喪失していて、そのつらさを意識化しないために世俗から離れた山奥の家に暮らして、宛てのない『車の一人旅・自由な芸術創作・刹那の性的関係』にのめり込んだ所があるようにも思えた。 ...続きを見る

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2017/04/13 20:40
村上春樹『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』の感想:1
村上春樹『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』の感想:1 現代人の孤独と自由、特にセンシティブな中年男性の孤独を感じさせる作品だ。未読なのだが村上春樹の作品に『女のいない男たち』があるが、この『騎士団長殺し』もまた『女のいない男たちの物語』として読める。基本的に男性の目線から見た『社会にスムーズに適応できないこだわりのある人生の型』であり、『結婚・夫婦の枠組みに収まれない男の孤独・奔放な性・潜在するミソジニー』でもある。 ...続きを見る

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2017/04/13 20:38
福田定一(司馬遼太郎)『ビジネスエリートの新論語』の書評4:サラリーマンと芸術家と家庭の価値
福田定一(司馬遼太郎)『ビジネスエリートの新論語』の書評4:サラリーマンと芸術家と家庭の価値 司馬遼太郎は『よい結婚はあるけれど、楽しい結婚はめったにあるものではない(ラ・ロシュフコー)』『できるだけ早く結婚することは女のビジネスであり、できるだけ結婚しないでいることが男のビジネスである(バーナード・ショー)』『一度結婚してしまうと、善良であること以外には何事も、自殺でさえも、残されていない(スティーブンソン)』などの結婚に対してネガティブな格言を引用している。 ...続きを見る

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2017/04/02 21:42
福田定一(司馬遼太郎)『ビジネスエリートの新論語』の書評3:男・女とサラリーマン
福田定一(司馬遼太郎)『ビジネスエリートの新論語』の書評3:男・女とサラリーマン 戦後日本、特に高度成長期にはサラリーマンの人生の目標を『立身出世』に置く企業戦士のような人も多かったが、現在では『ワークライフ・バランス』というように仕事以外の私生活・プライベートの充実にかなりの比重を置く人も増えている。 ...続きを見る

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2017/04/02 21:41
福田定一(司馬遼太郎)『ビジネスエリートの新論語』の書評2:恒産なければ恒心なしの解釈
福田定一(司馬遼太郎)『ビジネスエリートの新論語』の書評2:恒産なければ恒心なしの解釈 サラリーマン哲学の原型を徳川家康家訓の『人の一生は重荷を負ふて遠き道を行くが如し。急ぐべからず。不自由を常と思へば不足なく、心に望みおこらば困窮したる時を思ひ出すべし。堪忍は無事長久の基。怒りは敵と思へ。勝つ事ばかりを知つて負くる事を知らざれば、害その身に至る。おのれを責めて人を責むるな。及ばざるは、過ぎたるより優れり』で示しているのは、後に歴史小説家として大成する司馬遼太郎らしいユーモアが効いている。 ...続きを見る

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2017/04/02 21:39
福田定一(司馬遼太郎)『ビジネスエリートの新論語』の書評1:サラリーマン的生き方の原点
福田定一(司馬遼太郎)『ビジネスエリートの新論語』の書評1:サラリーマン的生き方の原点 司馬遼太郎が本名の福田定一(ふくだていいち)で昭和30年(1955年)に出版した本で、戦後混乱期にある当時のサラリーマンの処世術や時代・価値観の変化について、古今の偉人の名言を散りばめながら記したエッセイ集である。 ...続きを見る

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2017/04/02 21:37
前野隆司『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』の書評:人間はどうすれば幸福を感じられるのか?
前野隆司『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』の書評:人間はどうすれば幸福を感じられるのか? 現代を生きる人間の目的の中心にあるのが『幸福追求』であり、多くの人が幸福になりたいと願い、不幸になりたくないと不安になっている。主観的な幸福感を実感することだけが、人間の生きる意味や価値なのかというと一義的に定まるものではないと思うが、それでも誰もが『幸福追求のプロセスとその帰結(現状の実感)における迷い・悩み・苦しみ』を背負っているのが現代である。 ...続きを見る

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2016/12/30 15:49
グリム童話『忠臣ヨハネス』と破壊・創造を担うトリックスター(道化+英雄):2
グリム童話『忠臣ヨハネス』と破壊・創造を担うトリックスター(道化+英雄):2 C.G.ユングは普遍的無意識(集合無意識)の内容である元型(アーキタイプ)を直接に知覚・認識することはできないとしたから、アニマ(アニムス)という元型も直接の認識はできない。 ...続きを見る

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2016/12/11 21:03
グリム童話『忠臣ヨハネス』と理想的・陶酔的な異性像を示すアニマの元型:1
グリム童話『忠臣ヨハネス』と理想的・陶酔的な異性像を示すアニマの元型:1 グリム童話の『忠臣ヨハネス』では、死を目前にした老王が家臣のヨハネスに、『お前が父親代わりになって王子の後見をしてくれれば、安らかな眠りにつくことができる』と語り、ヨハネスを国家の秩序・規範の暫時の継承者に指名するのだが、王はヨハネスに『王子に長廊下の行き止まりにある部屋の中だけは見せてはならない』と遺言した。 ...続きを見る

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2016/12/11 21:01
C.G.ユングのアニマの元型(アーキタイプ)とジェームズ・フレイザーの『金枝篇』の王殺し
C.G.ユングのアニマの元型(アーキタイプ)とジェームズ・フレイザーの『金枝篇』の王殺し 分析心理学を創始したカール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung,1875-1961)は、人類に共通する普遍的無意識(集合無意識)の内容を示すイメージとして『元型(アーキタイプ)』を考えた。 ...続きを見る

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2016/12/11 20:59
岸見一郎・古賀史健『幸せになる勇気』の書評3:共同体感覚に根ざした協力原理と愛・信頼
岸見一郎・古賀史健『幸せになる勇気』の書評3:共同体感覚に根ざした協力原理と愛・信頼 『第二章 なぜ「賞罰」を否定するのか』では、学級(クラス)を民主主義国家に見立てて教師ではなく生徒を主権者とする、賞賛もしない処罰もしない学級運営のあり方が考えられている。教師が賞罰を厳しく統制して君臨する学級は、独裁国家としての弊害や腐敗を免れないという批判が為されるが、教師自身は『生徒に迎合して褒めすぎて舐められるリスク』と同時に『生徒を賞罰で一方的に支配してお互いに尊敬せず人間関係が破綻するリスク』も背負っているというのは分かりやすい。 ...続きを見る

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2016/10/25 12:47
岸見一郎・古賀史健『幸せになる勇気』の書評2:援助する教育論・幸福を得る人間知
岸見一郎・古賀史健『幸せになる勇気』の書評2:援助する教育論・幸福を得る人間知 本書『幸せになる勇気』は、教師である青年の疑問や悩みに答えていく形で、アドラー心理学の『教育論』としての側面に多くのページを費やしていて、その教育論が一般的な『人生論』にも応用できるように書かれているのが凄いところである。 ...続きを見る

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2016/10/25 12:45
岸見一郎・古賀史健『幸せになる勇気』の書評1:持続する哲学としてのアドラー心理学
岸見一郎・古賀史健『幸せになる勇気』の書評1:持続する哲学としてのアドラー心理学 青年と哲人の対話形式でアドラー心理学を分かりやすく説明した岸見一郎・古賀史健の『嫌われる勇気』の続編に当たる。アドラー心理学の教育論と組織論にフォーカスしながら、教師(中学校の先生)の仕事にまるで役に立たなかった『アドラー心理学』に失望した青年の苦悩を哲人が解きほぐしていく。 ...続きを見る

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2016/10/25 12:43
他者に対する嫌悪・拒絶を生む人間アレルギーと他者の悪意を推測してしまう認知の歪み:1
他者に対する嫌悪・拒絶を生む人間アレルギーと他者の悪意を推測してしまう認知の歪み:1 人間アレルギーでは些細なやり取りがきっかけとなって、『異質性・違和感を感じた他者』に対する嫌悪感・拒絶感が強まり、その相手との人間関係(コミュニケーション)を維持できなくなってしまう。 ...続きを見る

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2016/07/03 14:50
岡田尊司『人間アレルギー なぜ「あの人」を嫌いになるのか』の書評2:過剰な異物認識
岡田尊司『人間アレルギー なぜ「あの人」を嫌いになるのか』の書評2:過剰な異物認識 人間アレルギーの根本原因として、『愛されず虐げられてきた過去のトラウマ(不信・怒り・憎悪の鬱積と再現)』と『愛着障害による他者との距離感の混乱』を上げている。幼少期から現在に至るまで他者からの愛情・優しさ・保護を受けた感情記憶が殆どない場合(あるいは親も含めた他者から攻撃・拒絶・否定・侮辱を受けた記憶が多い場合)には、他者全般を基本的に『近づくべきではない危険な存在』とする認知の偏りや歪みが生じやすくなるというのは説得力のある論理展開だ。 ...続きを見る

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2016/06/14 19:06
岡田尊司『人間アレルギー なぜ「あの人」を嫌いになるのか』の書評1:異質な他者への拒絶・嫌悪
岡田尊司『人間アレルギー なぜ「あの人」を嫌いになるのか』の書評1:異質な他者への拒絶・嫌悪 人間には“自己”と“異物”を区別して異物を攻撃・排除する『免疫応答反応』が備わっていて、この免疫によって細菌・ウイルスの感染症から自分の身を守っているが、免疫反応が不適切にアレルゲン(原因物質)に過剰反応してしまうと『アレルギー』が起こってしまう。 ...続きを見る

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2016/06/14 19:04
島田裕巳『葬式は、要らない』の書評4:時代の変化で変わりゆく“葬式・寺・祖先崇拝(子孫継続)”
島田裕巳『葬式は、要らない』の書評4:時代の変化で変わりゆく“葬式・寺・祖先崇拝(子孫継続)” 葬式にお金のかかる理由は、近世以降は『ムラ社会的な共同体内部においての見栄・格式・世間体(世俗の地位や功績に応じた相応の豪華さの葬式を営むことが常識とされる)』であった。しかし、その原点には仏教の歴史と相関した『極楽浄土に往生するために現世に浄土を再現しようとする平安貴族以降の考え方(葬式においても豪勢な祭壇を設けたり目立つ宮型霊柩車があったのは浄土の再現である)』と『出家者の証明となる戒名のランクづけ・戒名の格に応じたお布施』があるというのは忘れられやすい部分だろう。 ...続きを見る

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2016/04/26 12:12
島田裕巳『葬式は、要らない』の書評3:日本仏教の歴史と葬式仏教・戒名の問題
島田裕巳『葬式は、要らない』の書評3:日本仏教の歴史と葬式仏教・戒名の問題 日本の仏教の歴史を振り返りながら、日本の葬式文化・葬式仏教の発生と変化、高コスト化(贅沢化)について説明しているが、葬式文化の原点におけるエッセンスになっているのが『平安貴族の浄土教信仰(死後に極楽浄土に往生したい悲願)』と『近世以降の村落共同体内部における地位・見栄・世間体』である。 ...続きを見る

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2016/04/26 12:11
島田裕巳『葬式は、要らない』の書評2:葬式になぜお金をかけるのか?少子高齢化の影響
島田裕巳『葬式は、要らない』の書評2:葬式になぜお金をかけるのか?少子高齢化の影響 現代の都市部では、地縁血縁のある人や助け合える相手がいない『無縁社会の問題』が多くなってきた。地縁血縁から切り離されて配偶者・きょうだい・親族もほとんどいない『無縁者・天涯孤独な人(身寄りのないご遺体)』も増えてきていて、豪華な会場・僧侶の読経・戒名などを省略し、自宅で簡単な祭壇を設けて一晩を過ごし翌日に火葬に送る『家族葬(密葬)』や納棺・略式の通夜だけでご遺体を火葬にするだけの『直葬』を希望する人も増えている。 ...続きを見る

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2016/04/26 12:09
島田裕巳『葬式は、要らない』の書評1:葬儀・慰霊の歴史的普遍性と外国に比べて高い日本の葬式費用
島田裕巳『葬式は、要らない』の書評1:葬儀・慰霊の歴史的普遍性と外国に比べて高い日本の葬式費用 人生でもっとも大きなお金のかかるライフイベントの一つとして、結婚式や葬式に代表される『冠婚葬祭』の行事がある。冠婚葬祭は規模や人数、設備、豪華さによってそれにかかるコストは大きく違ってくる。 ...続きを見る

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2016/04/25 15:58
天皇・農村と境界領域に生きた非農業民:日本史における神聖なるものと卑賤なるものの距離
天皇・農村と境界領域に生きた非農業民:日本史における神聖なるものと卑賤なるものの距離 生活共同体の互助から外される村八分を恐れるのが『有縁(農民)の世界』であるが、縁切り寺を象徴的なものとする『無縁(漂白民・宗教勢力)の世界』においてはむしろ『縁・絆から生まれる束縛・強制・不自由』から人を解放する作用のほうが重視されたりもした。 ...続きを見る

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2016/03/13 14:14
網野善彦の百姓論と柳田国男の常民論と戸籍・徴税:日本史における擬制的な親子関係
網野善彦の百姓論と柳田国男の常民論と戸籍・徴税:日本史における擬制的な親子関係 日本は『神の国』だという森喜朗元首相の発言が過去の天皇主権体制を意図しているのではないかということで物議を醸したこともあったが、『神の国』というのは『瑞穂(米作)の国』と並ぶ日本の画一的・伝統的にそう思われてきた国家観の一つであると言って良い。 ...続きを見る

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2016/03/13 14:12
網野善彦の非農業民に注目した百姓論と日本の地域の多様性:日本人観のステレオタイプ
網野善彦の非農業民に注目した百姓論と日本の地域の多様性:日本人観のステレオタイプ 日本の国土の大部分で米作りの稲作(水田農耕)が行われてきたという『瑞穂の国』の伝統的な日本観は、古代ヤマト王権にまで遡る江戸時代以前の時代に日本人の一般庶民の大半が『百姓(ひゃくしょう)』と呼ばれる農民だったという単一農耕民族(定住民たる農民)の伝説を作り上げてきた。 ...続きを見る

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2016/03/13 14:10
小保方晴子『あの日』の書評5:STAP細胞はあったのかなかったのか?
小保方晴子『あの日』の書評5:STAP細胞はあったのかなかったのか? STAP細胞関連のニュース報道だけでは分かりにくかったこととして、『多能性マーカーのOct4陽性のSTAPの細胞塊を作製すること』と『STAP細胞を長期培養してES細胞(胚性幹細胞)の多能性を実際に持つSTAP幹細胞を作製すること』と『STAP幹細胞をマウスの受精卵に混入してキメラマウスを作製すること』の3つが混同されていたことがある。 ...続きを見る

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2016/02/12 12:46
小保方晴子『あの日』の書評4:200回も成功したとされるSTAP細胞作製の定義
小保方晴子『あの日』の書評4:200回も成功したとされるSTAP細胞作製の定義 小保方晴子さんの『あの日』は『STAP細胞捏造事件(本人の認識では不公平なSTAP細胞捏造疑惑)』に対する抗弁や後悔の書の体裁になっているのだが、全体の構成と内容からすると『自分の担当していた研究内容の範囲外の問題(特にキメラマウスの作製)』で自分に責任があるとして非難されて処分されたことに納得がいかないという強い思いが滲んでいる。 ...続きを見る

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2016/02/12 12:39
小保方晴子『あの日』の書評3:若山照彦氏のキメラ作製の手技とストーリーありきの研究
小保方晴子『あの日』の書評3:若山照彦氏のキメラ作製の手技とストーリーありきの研究 バカンティ教授は初期の仮説では、スフェア細胞(スポアライク・ステム・セル)は全身の組織に初めから存在しているとしていたが、その後に『スフェア細胞は体内のストレスなどによって後で作られる』というものに発想を変えているが、この初めから存在するのではなく何らかのストレスなどの要因で作られるという仮説は、STAP細胞作製のメカニズムの原点でもあるのだろう。 ...続きを見る

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2016/02/03 02:31
小保方晴子『あの日』の書評2:チャールズ・バカンティのスポアライク・ステム・セル仮説の影響
小保方晴子『あの日』の書評2:チャールズ・バカンティのスポアライク・ステム・セル仮説の影響 バカンティマウスを作成したチャールズ・バカンティ教授の研究室に所属することになるが、一緒に研究する3人の学生たち(アナ・セレナ・ヴァネッサ)もイェール大主席卒業のセレナをはじめとして秀才揃いである。 ...続きを見る

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2016/02/03 02:29
小保方晴子『あの日』の書評1:小保方氏の学生時代と再生医療への興味
小保方晴子『あの日』の書評1:小保方氏の学生時代と再生医療への興味 STAP細胞問題と研究不正疑惑で話題になった小保方晴子さんの自伝的な著作だが、『生命科学・多能性幹細胞(万能細胞)』についての専門的な知識や具体的な実験手法の説明にも多くのページが費やされている。 ...続きを見る

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2016/02/03 02:27
ショーペンハウアーの『幸福について』の書評5:現実の苦痛回避と社交(他者)を避ける隠棲主義
ショーペンハウアーの『幸福について』の書評5:現実の苦痛回避と社交(他者)を避ける隠棲主義 幸福や快楽を心理作用が織り成す一時的な幻想と見なす悲観主義者のショーペンハウアーは、『欠乏・疾患・困難などの不幸』を除去した状態を幸福と定義しており、できるだけ危険(リスク)や災厄を避けて生きたほうがいいというわけである。 ...続きを見る

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2016/01/01 01:29
ショーペンハウアーの『幸福について』の書評4:人にどう思われるかを気にする名声欲の解釈
ショーペンハウアーの『幸福について』の書評4:人にどう思われるかを気にする名声欲の解釈 アルトゥール・ショーペンハウアー(1788〜1860)の著書『幸福について』は、“自分の外側(他者)”にではなく、“自分の内側(自己承認)”に幸福の原因を求めることを推奨する幸福論の本である。 ...続きを見る

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2016/01/01 01:27
ショーペンハウアー『幸福について』の書評3:永続的な幸福と他者否定のペシミズム
ショーペンハウアー『幸福について』の書評3:永続的な幸福と他者否定のペシミズム ショーペンハウアーは脱俗的あるいは非社交的なペシミスト(悲観主義者)であるから、その理想的な人間性は外界や他者に自分の内的世界の充実を邪魔されないという意味での『隠遁生活・孤高の境地』となって具体化されるということになる。 ...続きを見る

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2015/12/14 16:14
ショーペンハウアー『幸福について』の書評2:“人のあり方・内部の財産”を強調する幸福論
ショーペンハウアー『幸福について』の書評2:“人のあり方・内部の財産”を強調する幸福論 ショーペンハウアーは完全な健康と身体の好調の価値を賞賛するが、それは健康な乞食が重病で苦しむ王様よりも幸せだということに通じ、『本質的に透徹した価値・魅力のある人間性(内部にあるもの)』に対しては、位階も富もそれに取って代わることができないというのである。 ...続きを見る

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2015/12/14 16:12
ショーペンハウアー『幸福について』の書評1:人間の運勢の差を生み出す“3つの根本規定”
ショーペンハウアー『幸福について』の書評1:人間の運勢の差を生み出す“3つの根本規定” ドイツの哲学者アルトゥール・ショーペンハウアー(1788〜1860)が、人間の精神的(内向的)な幸福追求の手段と可能性を論じたのが『幸福について ―人生論―』であるが、冒頭でまず古代ギリシアのアリストテレスの『人生の3つの財宝』に触れている。 ...続きを見る

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2015/12/14 16:11
又吉直樹『火花(オーディオブック版)』とAmazon運営のAudibleの感想
又吉直樹『火花(オーディオブック版)』とAmazon運営のAudibleの感想 ドコモでスマホを機種変する際、『スゴ得コンテンツ』なるものに強制加入させられたのだが、通知で又吉直樹さんの『火花』(第153回芥川賞受賞作)がオーディオブックの朗読で聴けるということで聴いてみた。『火花』を朗読してくれている声は俳優の堤真一さんで、渋みと温かみのある声質であり、読む速度もちょうど良い感じでストレスなく物語の世界に入り込むことができた。 ...続きを見る

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2015/12/08 19:20
山本七平『勤勉の哲学』から読む石田梅岩の『消費の倫理』3:“名聞・利欲・色欲”の破滅回避と近代的合理
山本七平『勤勉の哲学』から読む石田梅岩の『消費の倫理』3:“名聞・利欲・色欲”の破滅回避と近代的合理 石田梅岩の『斉家論』というのは、家の秩序を整えるための書であり、家を浪費・奢侈・見栄によって破産させないための書でもあるのだが、実際、慶長時代から栄えていた商家・町家(成金)の多くが、分不相応な贅沢・豪勢な生活をして派手な浪費に耽ったことで、江戸初期には没落してしまったのである。 ...続きを見る

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2015/12/08 13:20
山本七平『勤勉の哲学』から読む石田梅岩の『消費の倫理』2:なぜ散財・贅沢を戒めたのか?
山本七平『勤勉の哲学』から読む石田梅岩の『消費の倫理』2:なぜ散財・贅沢を戒めたのか? 石田梅岩の石門心学において人間の性善説の根拠となる『本心』について、本書では『自分を批判する心(自己反省の内省力)』として解説されており、この本心はS.フロイトの精神分析に置き換えれば『超自我(スーパーエゴ)』としても理解することができるものだろう。梅岩の回心(コンバージョン)による本書で『発明』とも呼ばれる絶対善(赤子のような無智の聖人)への接近は、『無自覚的に本心の言うままに、生きている状態』として捉えられている。 ...続きを見る

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2015/12/08 13:19
山本七平『勤勉の哲学』から読む石田梅岩の『消費の倫理』1:高尚な学問と日常生活・仕事の統合
山本七平『勤勉の哲学』から読む石田梅岩の『消費の倫理』1:高尚な学問と日常生活・仕事の統合 山本七平が『勤勉の哲学』で、仏教徒の鈴木正三(すずきしょうさん,1579-1655)に続いて取り上げているのが儒者の石田梅岩(いしだばいがん,1685-1744)である。石田梅岩は賢しらな知識に惑わされない無学者を賞賛する仏教徒と同じく、知識や自意識に左右されない『無智の聖人・赤子の心・自然悟道(しぜんごどう)』を人間の性善説の現れであるとしている。 ...続きを見る

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2015/12/08 13:17
信田さよ子『選ばれる男たち 女たちの夢のゆくえ』の書評3:家庭・親のトラウマと夢の男の条件
信田さよ子『選ばれる男たち 女たちの夢のゆくえ』の書評3:家庭・親のトラウマと夢の男の条件 本書『選ばれる男たち 女たちの夢のゆくえ』では、DVやモラルハラスメントの概念の誕生と普及によって、『自分が悪いから夫が怒るのだ・自分が我慢するしかないのだと思い込まされていた女性』が、自分が悪いわけではなく多少のトラブルや衝突・対立があったからといって、自分(妻)に暴力・罵倒・無視をしかけて支配しようとする相手(夫)のほうが悪いということに気づいたエピソードなども紹介されている。 ...続きを見る

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2015/11/04 09:31
信田さよ子『選ばれる男たち 女たちの夢のゆくえ』の書評2:DV概念がなかった時代と教育と称した暴力
信田さよ子『選ばれる男たち 女たちの夢のゆくえ』の書評2:DV概念がなかった時代と教育と称した暴力 本書は『シリアスな恋愛関係・異性選択の場』から退いている中高年女性(おばさん)がどんな男が理想的かということを放言する形を取りながら、『ロマンティックラブ・イデオロギーの夢を壊した同世代の男たちやそのモラルハラスメント』を間接的に非難するという構成を取っている。 ...続きを見る

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2015/11/04 07:22
信田さよ子『選ばれる男たち 女たちの夢のゆくえ』の書評1:イケメン好きを隠さなくなった各世代の女性
信田さよ子『選ばれる男たち 女たちの夢のゆくえ』の書評1:イケメン好きを隠さなくなった各世代の女性 信田さよ子さんはアダルトチルドレン関連のカウンセリングや心理学の本を多く書いている家族臨床の専門家だが、本書『選ばれる男たち 女たちの夢のゆくえ』は中高年女性たちの視点から“結婚生活・夫(同世代の男性)への失望”と“美しくて優しい理想の男性像(イケメン)”について書いている異色の書である。 ...続きを見る

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2015/11/04 07:21
山本七平『勤勉の哲学 日本人を動かす原理』の書評8:人生と仕事の運命性にどう向き合うか?
山本七平『勤勉の哲学 日本人を動かす原理』の書評8:人生と仕事の運命性にどう向き合うか? 鈴木正三の生きた江戸初期の『封建制・身分制』が固められていこうとする時代には、憲法で『職業選択の自由』などが保障されているわけでもないから、『職業・仕事にまつわる自己決定権(自己選択権)の前提』そのものはないのだが、『下克上(戦国乱世)の終焉による身分流動性の大幅な減少』によって野心ある元武士(元々はかなりの家柄・身分)であっても農業をしなければならないといった運命の変化はいくらでもあった。 ...続きを見る

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2015/10/28 18:53
山本七平『勤勉の哲学 日本人を動かす原理』の書評7:現代の職業選択の悩みと鈴木正三の前世論
山本七平『勤勉の哲学 日本人を動かす原理』の書評7:現代の職業選択の悩みと鈴木正三の前世論 現代における職業選択に関する迷い・悩みの多くは、『自己決定権・自己選択権の想定』によって生まれている。実際には様々な所与の前提条件があり、すべての職業を現時点の自分が選べるわけではないのだが、自分が選んで決めたはずの職業・仕事に上手く適応できなかったり職務のきつさ・ストレスに耐えられなかったことに『罪悪感・自己否定感・無力感』を感じやすくなる。 ...続きを見る

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2015/10/28 18:51
山本七平『勤勉の哲学 日本人を動かす原理』の書評6:修行(仏行)としての職業と純粋動機原理
山本七平『勤勉の哲学 日本人を動かす原理』の書評6:修行(仏行)としての職業と純粋動機原理 仏僧でもある鈴木正三の勤労観は、すべての職業の本質は運命的に与えられた役割を黙々と正直にこなす『仏行・修行』であり、それぞれの職業は罪業(業障)や煩悩を消していく『悟りの道』に通じているいうもので、すべての職業が仏行である以上、あらゆる職業に貴賎の区別はないとしている。 ...続きを見る

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2015/10/28 18:50
山本七平『勤勉の哲学 日本人を動かす原理』の書評5:『私が悪かった+あなたは悪くない』のバランス
山本七平は江戸時代の思想家である鈴木正三(すずきしょうぞう)と石田梅岩(いしだばいがん)の『勤労観・倫理観(宗教観)』をベースにしながら、日本人の精神性の根底にある行動規範を探索していく。 ...続きを見る

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2015/10/28 16:36
J.D.クランボルツの『計画された偶発性理論』:行動主義と偶然の幸運の引き寄せ
自分で自分がどのような人間になりたいか、どんな仕事や活動をしたいか、どんな相手と人間関係を深めていきたいか、何を実現して達成したいのかといった『目的意識・具体的な計画』を持ち、それに向けて努力や工夫を積み重ねていくというのが、『人生の幸福・成功』を実現するための王道であることは今も昔も変わらない。 ...続きを見る

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2015/10/15 15:55
山本七平『勤勉の哲学 日本人を動かす原理』の書評4:修行や運命としての職業・人間の定義
仏教の輪廻転生を前提として『前世の因縁』や『来世への責任』といったコンセプトを持ち出すのは、仏僧である正三らしい思想の現れと言える。人間個人の職業的な運命を、前世からの自己責任として受け止める鈴木正三の思想は、『仏法=世間法(与えられた職分・職能を勤勉にまっとうすること)』に必然に行き着くことになる。 ...続きを見る

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2015/10/07 17:05
山本七平『勤勉の哲学 日本人を動かす原理』の書評3:鈴木正三の職分論と士農工商の差別
曹洞宗の禅僧でもある鈴木正三は、諸法無我の真理に重ね合わせるように『自己愛への執着・自己身体の優先』を厳しく批判するような文章を書いている。それらを突き詰めればすべての人が主君・社会・他者のために自らの職分(仕事)に黙々と勤勉に励むことによって、『万民徳用の自然な秩序(すべての人の徳性が活かされた自然と調和した秩序)』が形成されて維持されるということなのである。 ...続きを見る

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2015/10/07 17:03
山本七平『勤勉の哲学 日本人を動かす原理』の書評2:石門心学・自然か不自然か
“自然”であるか“不自然”であるかの認識の違いが、日本人の是非善悪の価値判断に深く関わっているというのは、現代の平均的日本人の意識からしてもそれほど違和感を覚える見解ではない。『ごく自然な人間らしい生き方・働き方(そこには規則正しい生活習慣・労働適応の自然な日常の認識が織り込まれている)をすべきである』という日本的自然法の考え方は、現代の日本人にも通用する割合がかなり高いものだろう。 ...続きを見る

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2015/10/07 17:01
山本七平『勤勉の哲学 日本人を動かす原理』の書評1:天職と天命に見る日本人の労働意識
西洋世界の資本主義と労働意欲(勤勉)の歴史的発生をキリスト教の信仰と絡めて説明した書物として、社会学者マックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』はあまりに有名である。 ...続きを見る

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2015/10/07 17:00
武雄市図書館(CCCへの委託)の経営・蔵書・利便・癒着の問題と現代の図書館のニーズ
樋渡啓祐(ひわたしけいすけ)・前武雄市長(45)の市長在任時の政策は、『官から民への市場主義』と『公的機関のウェブサービス(Facebook等のSNS)・タブレットの活用』を特徴としていて、当時としては時代をキャッチアップするような政治改革の新鮮さ・面白さを感じさせるものだった。 ...続きを見る

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2015/08/14 13:14
池上彰『世界を変えた10冊の本』の書評2:ユダヤ教・キリスト教・イスラム教と聖典
『聖書』は、キリスト教圏である欧米世界の信仰・歴史・価値観の原点にある聖典だが、創世記・預言者や神が結んだユダヤ人との契約を中心にした『旧約聖書(ヘブライ語)』とイエス・キリストの言行録を中心にした『新約聖書(ギリシャ語)』との違いについて説明している。 ...続きを見る

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2015/06/27 19:01
池上彰『世界を変えた10冊の本』の書評1:アンネの日記とユダヤ人の国家建設
池上彰さんが選ぶ『現代を読み解く新古典10冊』と銘打たれているが、本書で紹介されている10冊は『世界の歴史・宗教・紛争(テロ)・経済』にまつわる主張や価値観の根底にあるものを理解するための基本書である。 ...続きを見る

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2015/06/27 18:59
田沼靖一『ヒトはどうして死ぬのか 死の遺伝子の謎』の書評
ヒトを含む生物はなぜ死ぬのか、どうして個体は永遠に生存することができないのかという問いに対するマクロな答えは、進化生物学では『有性生殖で遺伝子多様性を保つため+世代交代で環境適応能力を高めるため』ということになる。 ...続きを見る

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2015/06/08 18:20
『昭和天皇独白録』の書評2:なぜ日米開戦は防げなかったのか?天皇と政治家・軍人・国民
昭和天皇が臣下の首相・軍人に対して例外的に自分の意思を示して命令や指示、賛否表明をした事例としては、『張作霖爆殺事件(1928年)に対する軍法会議の処分を怠った田中義一内閣の総辞職』『上海事件(1932年)における白川義則大将に対する停戦・戦線不拡大の指示』『ポツダム宣言受諾と終戦決定の御前会議における御聖断(1945年)』などがある。 ...続きを見る

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2015/04/28 19:20
『昭和天皇独白録』の書評1:アジア太平洋戦争と“立憲君主”としての天皇の役割
戦後の昭和21年(1946年)3〜4月にかけて、昭和天皇が大東亜戦争の原因と経過、終戦についてご自分の記憶だけを元に語られた独白を、外交官(書記官)の寺崎英成(てらさきひでなり)が書き留めて記録していたものである。 ...続きを見る

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2015/04/28 19:19
大屋洋子『いま20代女性はなぜ40代男性に惹かれるのか』の書評:男女の世代論と仕事・恋愛・結婚の壁
恋愛関係も婚姻関係も統計的には、年齢差が5歳以内の『同世代の異性』と結ばれることの方が多いが、20代の若い女性が一回り以上年上の40代男性と交際するケースが、社内恋愛・不倫関係などで見られることがある。 ...続きを見る

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2015/04/20 19:44
宮部みゆき『ソロモンの偽証 5・6』の書評2:柏木卓也の死の真相と現代的な自己愛の肥大
優等生の藤野涼子は、目立たず物静かだった不登校の同級生・柏木卓也の死の真相、札付きの不良として世間から半ば殺人犯だという決めつけの目線で見られている大出俊次の殺人の嫌疑を明らかにするために、教師たちの反対をはねのけて『学校内裁判』の提起と準備、開廷に踏み切る。 ...続きを見る

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2015/04/07 16:07
宮部みゆき『ソロモンの偽証 5・6』の書評1:人物のパーソナリティーの多面性を描く学校内裁判
クリスマスの夜、城東第三中学校の屋上から飛び降りて死んでいた不登校の柏木卓也(かしわぎたくや)。死亡の経緯がはっきりしない柏木卓也の不審死を巡って、“自殺”か“他殺(殺人)”かの憶測が飛び交い、一年後に受験を控えた同級生の気持ちを掻き乱す。 ...続きを見る

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2015/04/07 16:05
星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち』の書評2:ADHDの各種症状と発達障害の治療方略
ADHD(注意欠如・多動性障害)に対する一面的な見方として『落ち着きがなくて短気でキレやすい』ということがあるが、同じADHDでも多動性と衝動性が前面に出る“多動性・衝動性優勢型(ジャイアン型)”と注意散漫や忘れ物の多さ、片付けのできなさ、人付き合いや会話の苦手さが前面に出る“不注意優勢型(のび太型)”とでは問題状況の現れ方がまるで異なってくる。 ...続きを見る

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2015/04/01 17:14
星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち』の書評1:大人の発達障害が見過ごされやすい要因
中枢神経系(脳)の生物学的な成熟障害や機能不全によって発症する『発達障害(developmental disorder)』は、今まで子供に特有の障害と考えられてきたが、『子供時代の発達障害』を見過ごされたままで大人になってしまう人たちが少なからずいる。 ...続きを見る

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2015/04/01 17:12
岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気 自己啓発の源流 アドラーの教え』の書評:3
『嫌われる勇気』という本書のタイトルに関係する内容としては、『承認欲求の否定』や『課題の分離』といった考え方が取り上げられている。 ...続きを見る

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2014/12/18 12:41
岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気 自己啓発の源流 アドラーの教え』の書評:2
『嫌われる勇気』の全体を貫いているアドラー心理学のテーゼは、『人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである(すべての悩みは対人関係の悩みである)』というものであり、アドラーは『個人の内面や意識だけで完結する悩み(他者の実在・想像・心像が関係しない悩み)』などは存在しないとしている。 ...続きを見る

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2014/12/18 12:39
岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気 自己啓発の源流 アドラーの教え』の書評:1
実践的で啓発的な認知療法の趣きを持つアルフレッド・アドラー(Alfred Adler,1870-1937)のアドラー心理学を、古代ギリシアの『対話篇』の形式で分かりやすく解説している。 ...続きを見る

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2014/12/18 12:38
宮部みゆき『ソロモンの偽証 第T部 事件,上下』の感想
宮部みゆきの『ソロモンの偽証』のハードカバーが出版された時に気になっていたが、あまりに分厚くて読むのに相当な時間がかかりそうだったので読まずにいた。文庫版が全6巻で完結したので、一冊一冊マイペースで読み進めていきたいと思っている。 ...続きを見る

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2014/12/12 09:05
貴志祐介『雀蜂(スズメバチ)』の感想
貴志祐介のミステリーでは、『新世界より』や『天使の囀り』といった重厚な物語の構成(プロット)があって、意外な視点から各テーマの探求・解釈をしてくれるような作品が好きだが、本書『雀蜂(スズメバチ)』は短編の感覚で気軽に読むことができるライトなホラーサスペンスに仕上げられている。 ...続きを見る

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2014/12/12 05:06
春木豊『動きが心をつくる 身体心理学への招待』の書評3:多元的な心身一如の人間観
脳生理学者の有田秀穂(ありたひでほ)によれば、セロトニン系神経を活性化させる方法として『呼吸のリズム・咀嚼のリズム・ウォーキング』があり、リズミカルな歩行を続けるウォーキングによってメンタルヘルスが改善しやすくなり抑うつ気分(うつ病のような症状)を予防しやすくなるのだという。うつ病の運動療法と歩行のレスペラント反応としての特徴との関係について記されている。 ...続きを見る

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2014/09/01 12:08
春木豊『動きが心をつくる 身体心理学への招待』の書評2:心身相関を説くレスペラント反応
第4章『心が先か、動きが先か』では、“悲しいから泣くのではない。泣くから悲しいのだ”という命題で有名なウィリアム・ジェイムズの末梢神経仮説と“個人的要因・環境的要因・行動が相互に作用する”というアルバート・バンデューラの相互決定論(reciprocal determinism)が紹介されている。 ...続きを見る

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2014/08/31 05:03
春木豊『動きが心をつくる 身体心理学への招待』の書評1:人間の心の起源としての動き・感覚
中枢神経の“脳”によって人間の“心”が作り出されるという心脳一元論の脳科学的な心理観が現代では優勢である。しかし、本書で解説されている『身体心理学』では、高次脳機能よりも原初的で本質的な『身体の動き(行動)+感覚』に焦点を当てて、人間の心が『脳』よりも『身体』によって大きく制御されていることを語ろうとする。 ...続きを見る

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2014/08/31 04:58
佐藤賢一『革命の終焉 小説フランス革命]U』の書評2:ロベスピエールの女性恐怖の葛藤と理想主義の挫折
マクシミリアン・ロベスピエールにとっての共和主義の理想は必然的に『徳の政治との融合』を志向していたが、大多数のフランスの民衆や政治家にとって『清く正しく慎ましく公正な生活態度(非俗物な徳のある人間になること)』は言葉や思想の上での綺麗事の域を抜け出るものではなく、それを恐怖を用いて強制されれば清廉なロベスピエールに対する不平不満・怨嗟の声が高まるのは不可避でもあった。結局、ロベスピエールは『平均的な人間の本性や欲求』がどのような類のものであるのかの理解ができずに反乱を招いたところがある。 ...続きを見る

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2014/06/02 20:43
佐藤賢一『革命の終焉 小説フランス革命]U』の書評1:徳の政治とロベスピエールの禁欲
勤勉で高潔な理想主義者マクシミリアン・ロベスピエール(1758-1794)は、私利私欲のすべてを捨ててフランスと民衆のために『徳の政治』の実現に奔走する。フランスからありとあらゆる不正義・不平等と政治腐敗を排除する理想を思い描き、他者を自分と同じ人間として尊重する“徳”を人々に身に付けさせようとするロベスピエールは、その理想をストイックに追求する余り、反対者を次々にギロチンの断頭台に送り込む『恐怖政治』へと傾斜していく。 ...続きを見る

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2014/06/02 20:39
プラトン『ソクラテスの弁明』『クリトン』の書評2:ソクラテスはなぜ理不尽な死刑を受け容れたか?
ソクラテスは自らをアレテーを備えた有徳者であると自負しており、告発されている『青年を腐敗させた罪・他の神霊(ダイモニア)を信仰して広めた罪』についても身に覚えのない冤罪であることを主張していた。だが、実際に裁判官から死刑判決をくだされると、その無意味に思える死刑から逃れて亡命したほうが良いという親友・知己の勧めをソクラテスは退けて、従容(しょうよう)として『毒人参の杯』を呷り不条理な刑に服してしまった。 ...続きを見る

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2014/04/05 06:03
プラトン『ソクラテスの弁明』『クリトン』の書評1:賢者の無知の暴露と青年を腐敗させた罪
岩波文庫の『ソクラテスの弁明』と『クリトン』を久しぶりにざっと読んでみた。ソクラテス(B.C.469-B.C.399)という古代ギリシアの哲学者には自著がなく、ソクラテスの刑死の謎に迫るこれらの本も弟子プラトン(B.C.427-B.C.347)の回想に基づいて書かれたものである。 ...続きを見る

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2014/04/05 06:02
村上春樹『1Q84 BOOK3<10月‐12月>』の書評2:現代の神話的構成と救済のラブロマンス
村上春樹の小説全般にその傾向があるのだが、青豆も天吾も『標準的な成育歴・家庭生活(親子関係)・職業活動・社会適応』からは遠いイメージのある登場人物で、実在する人物というよりは象徴的なイコンのようにも感じられる。 ...続きを見る

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2014/03/08 09:38
村上春樹『1Q84 BOOK3<10月‐12月>』の書評1:一人の孤独な少年と一人の孤独な少女の再会
村上春樹の『1Q84』のハードカバー全3巻のうち、“BOOK2<7‐9月>”までは一気呵成に読み終えていたのだが、その後に間が空いてしまい、最後の“BOOK3<10月‐12月>”をようやく何年かぶりかで読み終えた。 ...続きを見る

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2014/03/08 09:36
和田秀樹『日本人には「2つの性格」しかない』の書評2:現代のシゾフレ化と努力・向上を好むメランコ型
『自分があるかないかの基準』はそのかなりの部分が判断する人の解釈の仕方に依存してしまう。いずれにしても、日本人は全般的にアメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトが『菊と刀』で指摘したように、『恥の文化(他人にどう見られているかによって行動を規定する文化・世間体や体裁を気にすることで恥を回避しようとする文化)』に相当に強く影響されている。 ...続きを見る

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2014/01/30 12:42
和田秀樹『日本人には「2つの性格」しかない』の書評1:シゾフレ型とメランコ型の類型論
日本人の性格類型を『シゾフレ型』と『メランコ型』の二分法で簡単に整理しようとしたものだが、前提となっている性格テストを実施した時期はちょっと古い。前書きにある比較的若い世代のデータが1965年以降に生まれた人、中高年世代のデータが1955年以前に生まれた人とあり、若者世代が現在の40代以上の中年世代になってしまっているという時間軸のズレは感じるが、和田秀樹氏のいう『シゾフレ型』は類型的な現代人論のパターン(俗流の性格判断論)として読むことができる。 ...続きを見る

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2014/01/30 12:40
上野玲『うつは薬では治らない』の書評3:SSRIの衝動性亢進の副作用と病者の主体性
三環系・四環系・SSRI・SNRI・NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性薬)の抗うつ薬に効果があるという根拠になっているのは、脳内の情報伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンが不足することによって、うつ病や不安障害のような精神疾患が起こるという『セロトニン仮説(脳内モノアミン仮説)』である。 ...続きを見る

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2013/12/29 07:04
上野玲『うつは薬では治らない』の書評2:SSRIの市場拡大と副作用の不安
精神科や心療内科でうつ病と診断されれば、『薬物治療(抗うつ薬・睡眠導入薬・抗不安薬)+心身の休養(ストレス状態からの離脱)』が行われることになるが、著者の上野氏は自営業者として働く自分の仕事状況から『休みたくても現実的な理由から休めない人』が多くいるのだと語る。薬を服用する以上に、ストレスを感じる人や環境から暫く離れて、ゆっくりと休養することには確かに効果があるが、雇用・競争の状況が厳しくなっている現代社会では、誰もが病気だからといって十分な休養を取れるわけではないのである。 ...続きを見る

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2013/12/29 07:00
上野玲『うつは薬では治らない』の書評1:うつ病患者の増加と薬物療法の懐疑
うつ病の罹患者は10年で約2倍に増え、現在では日本国内に100万人以上のうつ病の人がいるとも言われているが、『うつ病に対する標準治療』は必ずしも成功しているとは言えない。 ...続きを見る

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2013/12/29 06:57
山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条』の書評10:客観的な前提条件を無視する自己肯定の危うさ
日本軍は『精兵の養成』のために徹底的な訓練をして敢闘精神(滅私奉公)の内面化に力を入れたが、それは『精兵に求められる術・芸・精神性の絶対化』であり、『受験競争型の精兵主義』であったため、『一方的に固定されていた前提条件(制約条件)』が変化すれば、それら芸と精神の至上主義の考え方で育成された精兵は実戦で機能しづらくなってしまった。 ...続きを見る

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2013/12/10 15:41
山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条』の書評9:精兵主義の限界と科学的思考の欠如
ひとりひとりの日本人は兵士としての戦闘力・精神力が強かったし、日本軍は海戦や南洋諸島で玉砕するほどの大打撃を受けるまでは非常に強かったというのは、一面の真実ではあるのだが、それは『アメリカ・本格的な近代戦に勝てる種類の強さ』ではなかった。強い日本兵が敗れたのはなぜだろうか。 ...続きを見る

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2013/12/10 15:40
山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条』の書評8:軍の士気低下と飢餓・略奪の相互不信
ニューギニア島での戦いまでは日本軍の戦意や士気は高くて頑強に抵抗したが、フィリピン戦では士気が総崩れとなり、上官の将校が懇意にしている慰安所の女を真っ先に逃がすなどして、兵士の規範・模範の基準が失われていったという。自分の日本人の妻妾を部下に荷物を背負わせて山の陣地に連れ込もうとする渡辺参謀の事例が上げられ、こういった軍隊の権限の私的流用による『上官の道徳的な疚しさ』が『部下への八つ当たり・威張りちらし・暴力の体罰』となって、余計に軍隊内部の指揮命令系統や信頼関係が崩れていくことになった。 ... ...続きを見る

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2013/12/05 17:19
山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条』の書評7:初めての総力戦・長期戦と厭戦気分
昭和12年(1937年)当時、その後に泥沼化していく『日中戦争』を『日華事変(北支事変)』と呼称していたように、関東軍は中国との戦いを『国家間の大規模かつ長期的な戦争』などではなく『警察力で対応できない騒擾・反乱(=軍隊の出動が必要になるが一時的な騒擾事件に過ぎない)』という程度に甘く解釈していた。 ...続きを見る

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2013/12/05 17:17
山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条』の書評6:大東亜共栄圏の理想と対等意識になれない現実
飽くまで日本の支配体制・世界経営に服従して、天皇主体の八紘一宇や大東亜共栄圏の価値観に同意する限りにおいて、外国のアジア人を日本人よりかは劣った同胞(亜日本人)として認めるという『自己の絶対化・文化の普遍性の欠如(他の文化的基準・民族的尊厳の否定ないし劣等視)』があったのであり、こういった独りよがりの価値観をもってアジア解放・欧米追放を唱導してもそれについてくるアジア諸国は殆ど現れなかった。 ...続きを見る

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2013/12/05 17:15
山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条』の書評5:フィリピンのゲリラ軍と日本中心のアジア主義
日本人とアジア人との間に当然あるはずの『文化圏・歴史・価値観・生き方の違い』を省みることなく、天皇を君主に戴く日本軍がアジアを欧米帝国主義から解放して上げるのだという世界観(使命感)を強制したことも“敗因の13と20”に上げられている。 ...続きを見る

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2013/12/05 17:12
山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条』の書評2:バシー海峡の悲劇と日本の精神主義
戦後の日本には漁船といえども殆ど船は残っておらず、日本にあった無数の船が戦地の海域や上陸作戦に活用されて、そのほぼ全てが撃沈されて海の藻屑と消えた。つまり驚愕すべき押し込み率で兵員を押し込んだ約3000人搭載の居住環境最悪(生存条件ギリギリ)のボロ船の大量投入は、『確率論的なフィリピン上陸』のために大多数が死ぬことを前提として、機械的に実行された狂気的かつ非人道的な戦術であった。 ...続きを見る

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2013/11/06 16:46
山本七平『日本はなぜ敗れるのか―敗因21カ条』の書評1:小松真一の『虜人日記』とバシー海峡
陸軍専任嘱託の技術者として戦地に徴用された小松真一氏が、日本が敗戦して間もない時期のフィリピンの収容所で密かに書き残した『虜人日記』は、山本七平氏がいう『現地性』と『同時性』を兼ね備えた一級史料である。軍人ではない立場で戦地に派遣されていた小松真一氏は、『戦前日本の軍国主義・皇国史観』にも染まらず、『戦後日本のアメリカ式の自由民主主義・東京裁判史観』にも染まっていない中立的かつ常識的な心境で、自分が見たままの状況やそれについての考えを『虜人日記』に書き付けている。 ...続きを見る

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2013/11/06 16:42
“Amazonや電子ブックの台頭”によって減少する書店:書店で本を買うニーズと電子書籍の利便性
巨大ECサイトのAmazonや楽天が台頭したことで、実店舗を構える書店・電器屋などが『既存の顧客・売上』を奪われて閉店する事例が相次いでいる。特に書店(本屋)は、出版不況というマクロなパイの減少に、『便利なAmazonの利用者の増加』と『Kindleに象徴される電子ブックの登場』が追い討ちを掛けており、よほど売場面積が広くて品揃えの良い大型書店しか生き残りが難しくなってきている。 ...続きを見る

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2013/11/01 05:14
菅付雅信『中身化する社会』の書評2:個人・集団の可視化とビッグデータがもたらす変革
現代のファッションモードは単純にチープな製品へとカジュアルダウンしているだけではなくて、『本質的な価値・実用主義の利点』に従って見せかけだけの装飾・意匠・高級感をむしろ取り除くようなベクトルの動きも見られるというわけである。 ...続きを見る

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2013/10/20 18:51
菅付雅信『中身化する社会』の書評1:若者の消費離れと現代のライフスタイルの変化の分析
ウェブ社会は『仮想空間』や『表面的な関係・言葉』などと呼ばれて、リアルのフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションよりもその価値や濃度が低いと見なされやすい一方、本音の言葉のやり取りや現象の本質の摘出によって『社会経済的な建前・見栄』を壊していく作用も持っている。 ...続きを見る

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2013/10/20 18:49
松本清張『砂の審廷 小説東京裁判』の書評2:大川周明・東条英機の確執と汎アジア主義
大川周明の日本精神を中核に置いたアジア主義の思想は、猶存社時代の『雄叫び』に書いた大川の文章、猶存社の綱領にも反映されているが、大川は1920年頃に以下のようにアジア主義・アジアの大同団結のために果たすべき日本の役割について述べていた。こういった日本を絶対的盟主の地位に置いたアジア主義のための軍事国家建設思想(アジアを団結させて白人の世界支配を終わらせる神の国の思想)が、国家・国民を誇大妄想めいた思想で騙し、無謀な戦争へ誘導した罪として評決される対象になってもいた。 ...続きを見る

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2013/09/26 20:14
松本清張『砂の審廷 小説東京裁判』の書評1:戦時中の右翼思想を代表した大川周明
敗戦後の『東京裁判(極東国際軍事裁判,1946年5月〜1948年11月)』は、戦勝国による敗戦国に対する一方的な断罪・報復で不公正な裁判だという批判は根強くあるが、松本清張の『砂の審廷 小説東京裁判』では日本の右翼思想の理論的指導者だった大川周明(おおかわしゅうめい,1886-1957)を題材として、『大東亜共栄圏構想の本流だった世界観(戦争判断)』に切り込んでいく。 ...続きを見る

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2013/09/26 20:11
佐々木俊尚『レイヤー化する世界』の書評4:境界線のない“場”と自己の多面性を映す“レイヤー”
世界で生きるすべての人々を呑み込んでいってしまうと予測される“場”は、インターネット上のビジネスモデルとしての重要性がずっと指摘され続けている“プラットフォーム”と言い換えることもできるが、『誰もが必然的にアクセスしたりアクションしたりするために集まってくる場』であり、国家のように物理的な領土・物質に紐付けられている必要さえないものである。 ...続きを見る

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2013/09/06 23:16
佐々木俊尚『レイヤー化する世界』の書評3:“ウチの世界”と“ソトの世界”の境界が揺らぐ
シーパワーである日本は、海に囲まれた単一民族国家に近い特殊な国家(自然発生的な国家)であると見なされがちであるが、日本が『日本人という国民アイデンティティを持った国民』によって構成される近代国家になるためには、『明治維新と国民教育=幕藩体制・身分制度・コメ経済に代表される近世の世界システムの否定』が必要だった。 ...続きを見る

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2013/09/01 23:54
佐々木俊尚『レイヤー化する世界』の書評2:国民国家・民主主義の世界システムは普遍的か?
グローバルな範囲で膨大なユーザーを集める先端的なネット企業は、本社機能(ブレーン)を担う少人数の精鋭部隊以外は、自国で大勢の正社員を雇用するわけではない。ネットビジネスをする上で必要になってくる細かなデザインやプログラム、コーディング、コールセンターといった実務の仕事は、『アウトソーシング(外部委託)・オフショアリング(海外拠点の建設)』で人件費・税金の安い途上国のやる気・能力のある労働者に回してしまうので、第三の革命を推進する多国籍企業のネット企業は『国益・自国の労働者の雇用(給与)』に必ずし... ...続きを見る

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2013/08/31 11:30
佐々木俊尚『レイヤー化する世界』の書評1:中世の帝国から近代の国民国家への変化の歴史
『プロローグ 現代』と『第三部 未来』で、現代の情報化社会で進行している“第三の産業革命(情報革命・技術革新)”の意義を分析しながら、未来のレイヤー化する世界で起こると予想される“国民国家+民主主義の世界システムの崩壊”を独自の視点で予言する。 ...続きを見る

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2013/08/31 04:51
リンダ・グラットン『ワーク・シフト 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図2025』の書評:2
第2部『「漫然と迎える未来」の暗い現実』で示されているのは、『未来の働き方・仕事環境の変化』に何とか適応しようとせずに漫然と時間を過ごしてしまい、『既に変化してしまった未来の働き方・周辺環境・人間関係』の悪影響をモロに受けてしまった場合の想像上のケーススタディである。リンダ・グラットンは『暗い未来の働き方のストーリー』を構成する要因として、以下の3つを上げているが、この3つの要因が少しずつ時代と共に悪化していきそうな兆候は、現代の日本や先進国でも見られ始めている。 ...続きを見る

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2013/07/29 10:09
リンダ・グラットン『ワーク・シフト 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図2025』の書評:1
2025年の近未来の世界を合理的に予測しながら、『変化する未来の仕事』にまつわる絶望のストーリーと希望のストーリーをシミュレートしている。若者の就職難と失業率の増加、ブラック企業の劣悪な労働環境と非正規雇用の不安定さ、ビジネスの成功者と失敗者の格差拡大、仕事やその環境によるメンタルヘルスの悪化、職場不適応のストレスが関係するうつ病やひきこもりの増加など、現代においても既に『仕事と職業・人間関係・労働条件に関係するストレスや悩み』はかなり深刻な状態にある。 ...続きを見る

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2013/07/29 10:07
湊かなえ『少女』の書評:相手の本心が分からなくなった由紀と敦子の友情や因果応報を巡る物語
湊かなえというと映画化もされた『告白』のイメージが強いが、学校生活における複雑な人間関係(友人関係)や生徒・教師の思惑(憶測)が交錯する心理を題材にしたテンポの良い物語を作るのが上手い作家である。本作『少女』では、幼馴染の友人である女子高生の由紀と敦子の友情のぐらつきと再建を描いているのだが、学校という閉じた世界で生活する高校生にありがちな『友達関係への依存・不安(相手のことを何でも知っているように見えて実際にはよく知らないのではという不安)』の落ち着かない心情をさまざまなエピソードを通してリア... ...続きを見る

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2013/07/03 05:48
山田順『資産フライト 「増税日本」から脱出する方法』の書評:2
消費意欲が強くて、新しいテクノロジーや知識情報への関心が強い『ニューリッチ層』とは、成功したベンチャー経営者、オーナー企業家、高所得の専門家、個人投資家などのことを言うらしいが、ニューリッチが最も好む投資方法が『日本の投資市場の平均利回り(インデックス)』と連動していない『ヘッジファンド型の海外投資』なのだという。海外投資の増大にせよ資産フライトの増加にせよ、現金(日本円)の違法な持ち出しにせよ、その根底にあるのは『日本の経済・財政・社会保障負担(高齢者増加)への将来不安』と『日本政府の増税姿勢... ...続きを見る

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2013/06/22 09:14
山田順『資産フライト 「増税日本」から脱出する方法』の書評:1
安倍政権は経済政策の『三本の矢』の成長戦略として『企業減税・国家戦略特区』を打ち出しているが、日本の企業・個人の税制については、お金を持っている人からは依然として『高過ぎる』という不満も聞かれる。反対に、経済格差の拡大や過度の節税を批判する人からは、もっと『大企業・富裕層に対する増税』をして税の累進性を高めるべきだという意見も出され、お金のある人(場所)から税金を徴収すべきだという応能負担が強調されたりする。 ...続きを見る

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2013/06/22 08:55
東野圭吾『幻夜』の書評2:“雅也(亮司)の献身”と“美冬(雪穂)の冷淡”の構造
『幻夜』でも『白夜行』と同じように、美冬の清楚さと妖艶さを兼ね備えた美貌に魅了された男たちは、次々と悪どく利用されて不幸に追いやられていき、美冬の謎に満ちた過去を深入りして探ろうとする者は冷酷に命を奪われていく。美冬一人では完璧に実行することが不可能な犯罪と計略の実務を担当しているのは、言うまでもなく、美冬と完全につながっていてこの犯罪が『自分と美冬の将来』のためになると思い込んでいる雅也である。 ...続きを見る

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2013/06/21 14:18
東野圭吾『幻夜』の書評1:秘密(犯罪)を共有する新海美冬と水原雅也の物語
東野圭吾のベストセラーでドラマ化・映画化もされた『白夜行』の続編という位置づけに当たるのが『幻夜』であるが、まったく別の悪女の物語としても読める。唐沢雪穂(西本雪穂)と桐原亮司の組み合わせが、新海美冬(しんかいみふゆ)と水原雅也(みずはらまさや)に変わっているが、『白夜行』のエピローグ後の雪穂が美冬として再設定されており、『トラウマ(殺人の犯罪)の記憶の共有』によって美冬と雅也の男女の仲が深く結び付けられている(ように見せかける)というプロットも共通している。 ...続きを見る

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2013/06/21 14:11
キケロー『友情について』の書評2:変化し続ける状況と変化しない友情
『友情とは何か?』の本質論についてラエリウスは、友情は順境をいっそう輝かせ、逆境を分かち担い合うことで軽減してくれるものと定義し、『まるで自分に語るように、安んじて全てを語ることができる人を持つことほど嬉しいことがあろうか。自分と同じだけそれを喜んでくれる人がいないのなら、繁栄の中にあったとてどうして大きな喜びがあろうか』という共感感情への欲求を述べているのである。 ...続きを見る

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2013/06/07 11:03
キケロー『友情について』の書評1:ラエリウスと小スキピオの不滅の友情を巡る対話篇
古代ローマ市民が理想とした『友情』のあり方を、哲学者キケローが、思慮深い執政官ガーイウス・ラエリウスの口を借りて、二人の女婿に向けて語らせる構成になっている。ラエリウスが亡くなった親友の小スキピオとの友人関係を振り返りながら語るのだが、現代の日本から時間的にも地理的にも遠く離れた『古代ローマ』に生きた人たちが、私たちと全く変わらない友情や人間関係に対する価値判断を持っていたことに改めて気づかされるような本である。 ...続きを見る

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2013/06/07 11:00
神田昌典『2022――これから10年、活躍できる人の条件』の書評:3
ピーター・ドラッカーの『ネクスト・ソサエティ』に書かれているNPOの社会的・経済的な影響力が強まるという未来の予言が、これからの日本に当てはまるという主張も展開される。確かに近年では東日本大震災後のボランティア活動の影響もあって、『社会起業・社会事業』をコンセプトにした仕事に関心を示す人や社会起業関連の書籍が増加している。その結果、従来の営利事業ではない『社会的な価値・貢献・協力』を生み出す社会事業(=社会問題の解決に直接に関与する事業)に、スポットライトが当たりやすくはなっている。 ...続きを見る

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2013/05/28 13:31
神田昌典『2022――これから10年、活躍できる人の条件』の書評:2
第3章『踊る中国・沈む日本』では、日本の超高齢化社会と若年層(現役層)の人口減がもたらす『景気・雇用・株価・イノベーション』の低迷を憂慮しながらも、チャイナバブルで沸く中国の景気も『人口ピラミッドの高齢化』によって長続きはしないと予測する。日本は1971〜1974年生まれ(あるいは1971〜1979年生まれ)の『団塊ジュニア世代(現在30〜40代前半)の人口ボリュームと消費活動』によって、今後暫くは消費がある程度まで上向く可能性があるが、団塊ジュニア世代の合計特殊出生率が人口維持水準の2.06を... ...続きを見る

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2013/05/28 13:28
神田昌典『2022――これから10年、活躍できる人の条件』の書評:1
自分の死生観を揺さぶられるがんの闘病体験を経た著者がビジョナリーとなり、近未来の日本の政治経済情勢と日本人の働き方(生き方)、世界情勢の変化を肯定的かつ合理的に予見(想像)していく。 ...続きを見る

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2013/05/28 13:26
小熊英二『社会を変えるには』の書評2:日本の社会運動史と民主主義政治への参加意識
高度経済成長期にも、ハードワーク(過労)や受験競争(管理教育)、経済格差、余暇の少なさ、女性の社会的地位の低さ、強引な開発主義などに対する不満がなかったわけではない。だが、経済成長によって給与・生活水準が上がる分かりやすい効果によって、社会一般の人たちの政治・社会の仕組みに対する不満・反抗は自然に抑制されることになった。権威的・既得権益的な自民党の『55年体制』が磐石のものになった所以でもあり、『一億総中流社会のフィクション』を大勢の人が信じられるほどに、1970〜1980年代の日本は右肩上がり... ...続きを見る

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2013/05/20 01:14
小熊英二『社会を変えるには』の書評1:日本社会の問題の本質である“リスク・負担の先送り”
2011年の東日本大震災と福島第一原発事故の発生は『日本人の政治参加意識』を高め、被災地の復興支援・寄付活動や原発(もんじゅの核燃料サイクル)の再稼働・廃炉の問題は『当事者としてどう判断(行動)するのか』のポリティカルな問いかけを切実なものとした。被災地の復興活動も原発のエネルギー政策も現在進行形の政治課題であり、自民党政権に変わってからも『原発再稼働の問題』は原子力規制委員会の判断と各種の民意、エネルギーコストに対する経済的要請の間で揺れ続けている。 ...続きを見る

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2013/05/20 01:11
『武雄市図書館』のTSUTAYAへの運営委託2:現代の公立図書館はどうあるべきか。
何かの分野を突き詰めて勉強している人、専門的な研究者や資料収集を行っているクリエイター(作家など)であれば、図書館司書の『レファレンス(利用者が求めている内容に合致した本の検索・紹介)』の能力も必要になることから、図書館を民間委託する場合にも、図書に関する広範で深い専門知識を持った一定数の図書館司書は置いておかなければならないと思う。武雄市の場合は図書館部分の16人をはじめとして、約50人の運営スタッフ全員がCCCの社員・アルバイトとなっているが、図書の専門的知識のあるスタッフを社内で抱えている... ...続きを見る

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2013/04/05 09:08
『武雄市図書館』のTSUTAYAへの運営委託1:蔦屋書店・スターバックスが併設する図書館
佐賀県武雄市が『指定管理者制度』を利用して、民間企業のTSUTAYA(CCC=カルチュア・コンビニエンス・クラブ)に武雄市図書館の運営を委託した。図書館内部に併設する“TSUTAYA(蔦屋書店)”の店舗スペースで、有料の書籍・雑誌が販売されていたり、CD・DVDの有料レンタルができたりと、今までとはかなり異なるモダンな内装や運営のコンセプトを持つ市立図書館である。 ...続きを見る

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2013/04/05 08:56
佐藤賢一『小説フランス革命[ 共和政の樹立』の書評2:革命の理想精神と現実の悲劇
1792年の陰惨な『9月虐殺』を正当化したのは、『民衆の旧体制に対する鬱積した怒り』と『戦時における裏切り者(反革命者)の出現への恐怖』である。反革命のプロイセン軍がパリに近づいている状況下で、『国内の反革命勢力(王党派寄りの勢力)』が内部からプロイセンと共謀して、自分たちフランス市民を攻撃してくるのではないか、再び封建主義的な体制を復古しようとするのではないかという不安であった。その怒りと恐怖、不安によって、革命支持のフランス市民たちは、かつて自分たちが王党派から受けた『シャン・ドゥ・マルスの... ...続きを見る

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2013/02/03 06:25
佐藤賢一『小説フランス革命[ 共和政の樹立』の書評1:デムーランとルイ16世の視点
世界史には、国王や貴族が人々を専制的に支配する政治体制を打ち倒す『市民革命』が幾度か起こったが、フランス革命は『立憲君主制』に落ち着くイギリスの清教徒革命や名誉革命とは異なり、最終的にはフランス王家(ブルボン朝)の君主制(王政・帝政)を廃絶することになった。 ...続きを見る

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2013/02/03 06:22
新田次郎『アラスカ物語』の書評3:“アラスカのモーゼ”と呼ばれたフランク安田の生涯
アラスカの旧支配者だったロシア人とゴールドラッシュでアラスカに進出してきた荒くれの白人による“鯨・海獣・カリブー”の行き過ぎた資源濫獲によって、エスキモーの食糧になっていた獲物が激減してしまい、エスキモーたちは長年続けてきた『伝統的な狩猟採集の生活様式』を維持していく事が困難になっていく。自然の再生産能力を超えた海洋資源の乱獲は、現代でも『クロマグロ・ホンマグロの乱獲+マグロ資源維持のための漁獲量制限』などが問題になったりするように、文明社会における『嗜好的な食品・毛皮・皮革の大量消費』は資源利... ...続きを見る

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2013/02/02 22:07
新田次郎『アラスカ物語』の書評2:日本人とエスキモーの異文化コミュニケーション
冒頭の『第一章 北極光』では、オーロラの妖艶な美しさと不気味さ、冷気で水蒸気が氷の粒となるダイヤモンドダストの清冽な輝き、静かで寒い星明かりの夜、全てを剥ぎ取って凍りつかせるような暴風雪などが精緻に描かれており、凍りついた北極海から厳寒のアラスカへと歩いていく過酷な冒険小説の臨場感を高めている。 ...続きを見る

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2013/02/02 22:04
新田次郎『アラスカ物語』の書評1:人生の閉塞感からアラスカに向かった日本人
明治時代の日本に、北アメリカ大陸の酷寒のアラスカへ、孤独な外国航路の見習い船員として乗り込んだ少年がいた。地域の名望家だった一族の零落と医師の進路の喪失、心を寄せていた女性・千代との別離によって、日本に己の居場所を見いだせなくなった安田恭輔は、三菱汽船のアラスカ航路の船員として弱冠19歳で名乗りを上げる。 ...続きを見る

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2013/02/02 22:02
村薫『太陽を曳く馬 上・下』の書評:2
最終的に、死刑判決を受けた福澤秋道は、何の主張も抵抗もないまま国家権力が執行する絞首刑(死刑)に処せられるのだが、父の彰閑は死刑が執行される直前まで、『秋道と関連する人物や場所の近況報告・秋道の芸術の感性や興味・自由意思と人間の罪業・思想や哲学による本質考察』といった秋道の犯罪とは直接に関係していない難解なテーマを、一方的に手紙に書き付けて留置場の秋道に送り続けた。 ...続きを見る

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2012/11/29 08:19
村薫『太陽を曳く馬 上・下』の書評:1
都会の片隅にある“永劫寺サンガ”では、禁欲的な雲水たちが集まって道元禅師が伝えた只管打座と布施行の修行に黙々と励んでいる。永劫寺サンガは形式的な葬式仏教を批判する福澤彰閑(ふくざわしょうかん)が主導して開いた僧侶集団の修行道場であり、物質主義の現代で身心脱落と教外別伝の悟りを追求する不可思議な聖地である。福澤彰閑を名乗る福澤彰之(あきゆき)は若かりし時に対人能力に問題のある一人の女・杉田初江と関係を持ち、福澤秋道(しゅうどう)という一男児を設けたが、長年にわたって子の存在を知らず初江とは音信不通... ...続きを見る

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2012/11/29 08:17
岡田正彦『検診で寿命は延びない』の書評:2
エックス線によるレントゲン検査で被検者が受ける放射線量(ミリシーベルト)は、『胸部レントゲン検査:0.05〜0.1,検診の胃レントゲン検査:0.6〜106,精密な病院での胃レントゲン検査:3〜1058,マンモグラフィ:0.1〜1.8,大腸のレントゲン検査:5〜100,腹部CT検査:2〜10,頭部CT検査:2〜50』という数字が示されていますが、数字にかなりの幅があるように、専門家でも身体表面と対象臓器の正確な被曝線量ははっきりしない(計算式の立て方・理論値で変化してしまう)という部分があります。... ...続きを見る

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2012/11/25 12:00
岡田正彦『検診で寿命は延びない』の書評:1
健康診断(健診)や検診のイメージは、『肯定派』と『否定派』で両極端に分かれています。健常者を対象にして大雑把に健康状態を確認するための“健診”と特定の疾患の有無を判断するための“検診”の違いはありますが、健診に肯定的な人は早めに深刻な病気が見つかれば助かる可能性が上がるという『早期発見・早期治療のメリット』を重視します。健診に否定的な人は、病院は無駄な検査ばかりをして時間とお金がかかる、自分がしてもらいたい治療とはズレているという『検査の過剰(無意味に感じる検査項目の多さ)・時間と金銭のコスト肥... ...続きを見る

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2012/11/25 03:09
貴志祐介『ダークゾーン』の書評
奨励会に所属してプロの棋士を目指している塚田裕史三段は、中学生の頃から天才的な将棋の才覚を発揮していたが、プロ棋士の関門である『三段リーグ』を勝ち抜けないままに20歳を越えてしまい焦っている。塚田三段はプロ棋士となる『四段昇格』を目指して、同世代でほぼ互角の力量を持つライバルの奥本三段と激しく競い合っている。 ...続きを見る

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2012/10/23 14:38
藤田晋×見城徹『憂鬱でなければ、仕事じゃない』の書評
好きなことを仕事にすべきや長所(得意)だけを伸ばせばいい、効率的で無駄のないやり取りのビジネスが一番といった“オプティミスティックでライトな仕事観”が主張されやすい現代ですが、サイバーエージェント社長の藤田晋(ふじたすすむ)氏と幻冬舎社長の見城徹(けんじょうとおる)氏がそれぞれの仕事経験や苦労・逆境、人間関係の履歴を踏まえて『仕事の原理原則』を語った一冊。 ...続きを見る

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2012/10/15 14:49
長谷川英祐『働かないアリに意義がある』の書評3:なぜ個体(人)は社会のために働きやすいのか?
『第三章 なんで他人のために働くの?』は、W・D・ハミルトンの血縁選択説(血縁淘汰説)によって、自分の遺伝子を残さずに働いてくれる真社会性昆虫の個体がなぜ生まれるのかを説明している。女王アリとその子のワーカーは同一の遺伝子を共有しており、ワーカーが自分自身の遺伝子を残せないとしても、女王アリに協力して働きその子を増やすことで、間接的に自らの血縁の遺伝子を増やすことにつながるという仮説である。 ...続きを見る

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2012/10/03 13:09
長谷川英祐『働かないアリに意義がある』の書評2:みんなが一斉に働き者になる事の何が問題か?
なぜアリの社会集団の中に働かない個体がいるのかの最も簡単な説明は、『余剰労働力(バッファ)の確保』のようだ。エサを探索する仕事に全てのアリが出払っていれば、そのエサを回収する仕事に回れるアリの数が減ってしまうように、『働いていない手の空いた個体』がいたほうが、環境変化・必要な労働の追加に対応しやすくなる。また、感染に弱い卵を舐めて抗菌作用をもたらすような、雑用だが重要な仕事に従事できる個体を確保するというような効果もある。 ...続きを見る

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2012/10/03 13:07
長谷川英祐『働かないアリに意義がある』の書評1:真社会性生物が構成する階層・役割のある社会
人間は自分や家族の生活のために働いているが、間接的な貢献・結果が多いにしても、社会全体のためにも働いている。『社会のために働いている・日本国憲法には勤労の義務がある』という大義名分を口に出すことは少なくても、“働かない個人”に対して道徳的な不満を抱いたり、自分だけが働かせられて損をしているというような感覚を持つ人も多い。 ...続きを見る

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2012/10/03 13:04
斎藤環『関係する女 所有する男』の書評7:男性のひきこもり・女性の摂食障害とジェンダーの規範性
『第五章 「おたく」のジェンダー格差』では、虚構のキャラクターに性的に興奮できるおたくのファンタジーが分析されているが、男性のおたくだけではなく女性の腐女子も考察の対象にされているのが興味深い。そしてそのおたく論に関する性的な興奮形式の分析でも、斎藤環氏は男性おたくの欲望は『所有』に向かい、腐女子(女性おたく)の欲望は『関係』に向かうと結論づけており、男性は創作物(アニメ・漫画)の虚構・幻想に興奮しようとする場合でも“ファルス(男根)の主体性(位置・方向)”が無ければ興奮できないと述べている。 ... ...続きを見る

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2012/07/01 19:59
斎藤環『関係する女 所有する男』の書評6:結婚生活に対する男性の欲望と女性の欲望の違い
結婚生活における男女の根本的なすれ違いの原因として、斎藤環は『男性の所有原理』と『女性の関係原理』の違いを上げるが、これは男女の意識の上で男性にとっては結婚が“ゴール”になりやすく、女性にとっては結婚が“スタート”になりやすい事を意味する。男性の所有原理では、好きな女性を自分の独占的なパートナー(恋人・配偶者)として手に入れるまでが目的となりやすく、結婚してしまうと『完全に相手を所有したという感覚(社会的・法律的にも他の男性が手を出しにくいという感覚)』から、それ以前ほど熱心な愛情表現や援助行動... ...続きを見る

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2012/06/28 17:34
斎藤環『関係する女 所有する男』の書評5:恋愛・結婚の偶有性と男女のカップリングの仕組み
インターネットでは『悲観的な結果を予測する結婚の格言(偉人・作家の名言)』が出回っていたりもするが、斎藤環もそういった結婚の格言を幾つか紹介したり自身の離婚経験を語ったりしながら、既婚者であればこういった格言に納得したり共感したりする部分は少なからずあると述べている。 ...続きを見る

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2012/06/28 17:32
斎藤環『関係する女 所有する男』の書評4:なぜ現代の若者は結婚しなくなったのか?結婚の選択性
本書『関係する女 所有する男』の本題である、“男性の所有原理”と“女性の関係原理”から生み出される心理や行動、考え方の違いについては、『第三章 すべての結婚はなぜ不幸なのか』『第四章 食べ過ぎる女 ひきこもる男』から本格的に語られていき、読み物としても第三章以降のほうが面白くなる。 ...続きを見る

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2012/06/28 17:30
斎藤環『関係する女 所有する男』の書評3:“男女の性差・性別役割”を科学的事実で語る誤謬
第二章『男女格差本はなぜトンデモ化するのか』では、アラン・ピーズとバーバラ・ピーズのベストセラー『話を聞かない男、地図が読めない女』などを例に挙げながら、『自然主義的な誤謬』と『疑似科学的な男女の性格行動の違いの説明』を問題として取り上げている。自然主義的な誤謬というのは、『事実命題と倫理命題が異なるという事』の指摘であるが、簡単に言えば『客観的な事実として〜であるという認識から、あなたは〜すべきであるという倫理規範を導き出すことはできない』ということである。 ...続きを見る

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2012/06/28 17:27
斎藤環『関係する女 所有する男』の書評2:“性別に関する知識・社会的な共有認識”としてのジェンダー
斎藤環が前書きで書いているように、『ジェンダー否定・男女平等主義の機械的な極論』というのは、自分が自分の持つ自然な欲望に傷つけられないようにしようとするシニシズム(冷笑主義)の態度に根ざしており、何とか異性を無価値化しようとする認知的不協和による虚しい努力に近いものである。しかし、シニシズムの対極にある男性と女性がとにかく性的に結びつけば良いというような“デカダンな快楽主義・享楽趣味”というのも反道徳的であり、それが集団化すればカルト宗教のような異様な外観を呈してしまう。 ...続きを見る

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2012/06/23 23:33
斎藤環『関係する女 所有する男』の書評1:ジェンダー・フリーとジェンダー・センシティブ
人間の男と女の違いが何に由来するのかという説いは、歴史的にも意識的にも常に普遍的な問いである。近代社会は『男女同権社会』を志向するプロセスの中にあるが、それでも『ヘテロセクシャル(異性愛)』によって多くの男女の行動が規定される限り、男と女の考え方や価値基準が全くフラットな同じようなものになるとは考えられない。『法律的な権利・自由』の上では男女は平等であるべきだが、イデオロギーとしての“ジェンダーフリー”には、男が女に好かれたいと思い、女が男に好かれたいと思う以上、一定の限界がある。 ...続きを見る

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2012/06/22 03:13
新田次郎『栄光の岩壁 上下』の書評4:マッターホルン北壁に登頂した岳彦の強さと弱さ
岳彦と大五郎より少し前に登り始めたパーティーは、晴天の気象に恵まれたお陰でアイガー北壁を制覇することができたが、ほんの僅か登り始める日が遅くなっただけで、登攀が不可能な気象になってしまうのである。そして、岳彦らの横を急いで通り抜けていったスペインの遠征隊は、悪天候になっても退却せずに無理をして(日本へのライバル意識を出して)強行軍で突き進んだため、頂上付近で吹雪に埋もれて帰らぬ人になってしまった。 ...続きを見る

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2012/06/22 03:09
新田次郎『栄光の岩壁 上下』の書評3:アイガー北壁を目指す岩壁登攀と仕事・結婚との両立
“河本峯吉・辰村昭平・谷村弥市”と相次いで親しい人たちを山で亡くしてしまった岳彦は、自分と一緒に山に登った者は次々に死んでしまうと感じ、自分自身を不運な疫病神のように蔑んだりもする。だが、高校時代に冬の八ヶ岳で峯吉と一緒に死んでいてもおかしくなかった自分がこうやって生かされていること、もう二度と歩けないはずの足が再び歩けるようになったばかりでなく山にさえ登れるようになったことに対して、自分なりの人生の意味を、難易度の高い『未登攀の岩壁登攀』を通して確認したいという強靭な意志を持ち続けていた。 ... ...続きを見る

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2012/06/22 03:08
新田次郎『栄光の岩壁 上下』の書評2:“山を歩く登山”から“岩を登攀する登山”への転換
同級生の誰よりも優れた体力があり、長距離を歩いても疲れないだけのスタミナを持っていた岳彦だったが、足を失ってからは『山道を歩くこと』が途轍もない苦痛となり、歩くことに対する苦手意識にも囚われるようになった。 ...続きを見る

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2012/06/16 22:51
新田次郎『栄光の岩壁 上下』の書評1:敗戦による社会・人心の変化と冬の八ヶ岳での遭難
新田次郎の書いた小説『孤高の人』は、不世出の登山家・加藤文太郎を題材にしたヒューマンな山岳小説だったが、『孤高の人』では長距離をひたすら歩き続ける縦走登山と日本の冬山での過酷なビバーク(厳冬期の野営を可能にする生命力)に力点が置かれていた。この『栄光の岩壁』という作品は、『孤高の人』『銀嶺の人』と並ぶ新田次郎の長編三部作の一つとされているようだが、それぞれの作品には『加藤文太郎(孤高の人)』『今井通子(銀嶺の人)』『芳野満彦(栄光の岩壁)』という実在する当時の一線級の登山家(登攀家)のモデルがい... ...続きを見る

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2012/06/15 02:09
新田次郎『孤高の人 上・下』の書評4:“不死身の加藤”の槍ヶ岳・北鎌尾根での最期
小説『孤高の人』では、園子と花子という二人の女性を巡る加藤文太郎の恋愛も描かれ、そこに加藤のことを尊敬して慕って弟子のように加藤の登山を真似ていく宮村健(みやむらたけし)が加わってくる。洗練された知的なお嬢様のような雰囲気を持つ園子に、加藤は『別世界の理想的女性』としてのイデアを見て憧れて惚れる。 ...続きを見る

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2012/03/04 01:41
新田次郎『孤高の人 上・下』の書評3:“冬山の自然の厳しさ”と“世俗の人間関係の難しさ”
小説内の加藤文太郎の登山は一流の域に達してはいくが、徹頭徹尾、誰にも学ばず誰とも一緒に登らない登山であり、その単独行は『山では自分以外の何ものをも頼ることはできない。自分独りであればどんな状況でも死ぬことはない』というストイックなまでの他者の存在を拒絶する信念であった。遂には外山三郎も藤沢久造も加藤を正規の登山界に組み入れることを諦め、彼の自発的なトレーニングと忍耐力に根ざした冬山登山の経緯を見守るようになり、加藤文太郎は次々と当時の登山界の常識を覆すような冬山のビバークをやり遂げ、金字塔的な記... ...続きを見る

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2012/03/04 01:38
新田次郎『孤高の人 上・下』の書評2:社会人登山家の嚆矢となった加藤の友人関係と孤独感
漁師町の兵庫県美方郡浜坂町で産まれた加藤文太郎は、元々は海・泳ぎに親しみを持っていたが、18歳から独自に山登りを実践しはじめ、20歳の段階で和田岬の寮を朝早くでて、横尾山、高取山、菊水山、再度山、摩耶山、六甲山、石の宝殿、大平山、岩原山、岩倉山、宝塚までの片道50キロを縦走し、その日の夜までに17時間で和田岬に帰ってくるという『六甲全山縦走』を成し遂げて登山家の素質の片鱗を覗かせた。 ...続きを見る

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2012/03/04 01:35
新田次郎『孤高の人 上・下』の書評1:驚異的な脚力と精神力で登山に臨む“単独行の加藤文太郎”
登山小説(山岳小説)を多く書いている新田次郎の作品では、『槍ヶ岳開山』の書評を書いたが、『孤高の人』もまた加藤文太郎(かとうぶんたろう,1905-1936)という実在の登山家をモデルにして書かれた小説である。 ...続きを見る

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2012/03/04 01:33
百田尚樹『モンスター』の書評:“醜貌”と“美貌”の両極から描く社会と人間(男女)の不条理劇
百田尚樹氏の作品は初めて読んだが、“女性の容姿の美醜・外見と内面・美容整形”という一連のテーマを取り上げた『モンスター』は、エンターテイメント小説として最後まで読ませる物語としての面白さはある。 ...続きを見る

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2012/02/23 15:40
貴志祐介『悪の教典 上・下』の書評
生徒や同僚の教師から信頼されて好かれている爽やかな英語教師が、他人の苦痛や恐怖に共感できず合理的な損得計算だけをする『サイコパス(精神病質)』だったらという前提で書かれたサイコサスペンスのホラー小説。小説全体の雰囲気や流れからすると、同じ学校内での殺戮を題材にした高見広春の『バトルロワイヤル』にもどこか似ているが、貴志祐介の今までの作品と比べると同じ恐怖感やサイコパス(ソシオパス)を描くにしても、物語の重厚感や理解不能な人間の恐ろしさというものの記述がやや軽過ぎるように感じる。 ...続きを見る

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2011/12/04 23:50
桐野夏生『ポリティコン 上・下』の書評2:唯腕村の村内闘争と高浪東一の権力と愛・性への欲望
旧世代の村民のサボタージュとボイコットの結果、唯腕村の『世代交替』が急速に進み始めるのだが、それは東一にとってはうるさい老人たちを退かせる渡りに舟の変化でもあり、父親の素一の後を襲って理事長の座に就いた東一は、唯腕村を『自分の王国(自分に都合の良い村)』に変革するために、北田・スオンら・メディアの力を借りて村内改革を進めていくことになる。 ...続きを見る

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2011/12/04 17:27
桐野夏生『ポリティコン 上・下』の書評1:理想的で閉鎖的な農業共同体としての唯腕村の歴史と現状
慌しくストレスの多い資本主義・企業経済の世界から脱け出して生きていきたいという欲望の現れとして、『自給自足的・非貨幣的なコミュニティの形成』がある。心から信頼して助け合える同志と呼べるような仲間と一緒に汗水を流して懸命に働けば、『お金・企業・市場に束縛されない人生』の道が切り開けるのではないか、『仲間・共同体のための労働』ができるのであれば物質的に貧しくても、そこにヒューマニスティックな労働の喜びが実感できるのではないか、そういった農本主義の理想郷建設の思想の下に『唯腕村(いわんむら)』は人工的... ...続きを見る

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2011/12/04 17:24
村上春樹『1Q84 BOOK1<4月―6月>』の書評3:さきがけの宗教団体化と天吾の親子関係の記憶
自然と共に生きる有機農業を精力的に行う『さきがけ』の評判は高まり、深田保を慕って農業生活を送りたいという人々や家族が次第に増加して農業コミューンは大きくなっていったが、初めに深田保の共産主義的な政治思想に感化されて参加していたメンバー(学生)は『非革命的・非政治的になったさきがけ』に不満を覚えるようになる。 ...続きを見る

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2011/10/13 07:07
村上春樹『1Q84 BOOK1<4月―6月>』の書評2:男女のジェンダーと農業コミューンの変質
DVや性犯罪の被害に遭った女性たちをシェルターで匿い、タマルという屈強なボディガードも雇っている麻布の老婦人(女主人)は、自らが信じる『正義の遂行』と『女性の保護』のためには如何なる手段をも選ばない(罪の意識を持たず迷いも抱かずに暗殺をも指示する)冷徹な女性である一方、普段は温室で植物・蝶を愛でながら穏やかに紅茶のカップを傾けるような貴婦人でもある。“暗殺の指示者”である老婦人も“暗殺の実行者”である青豆も、共に自分にとって大切なかけがえのない女性を暴力を振るう男性から奪われたというトラウマを共... ...続きを見る

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2011/10/13 07:01
村上春樹『1Q84 BOOK1<4月―6月>』の書評1:青豆の暗殺業と罪に対する罰、屈曲した性愛
『青豆』という不思議な姓を持つ暗殺者の女性と『天吾』という自我の宿命を感じさせる名前を持つ作家志望の塾講師の男性との物語が交互に繰り返されていくが、BOOK1の段階では青豆と天吾の直接の接触や会話はない。だが二人が出会う予兆めいた言葉として、不特定多数の中年男性とストレス発散のための放縦な性交を重ねる青豆は、『少なくとも私には好きな人がいる。一人でもいいから、心から誰かを愛することができれば、人生には救いがある。たとえその人と一緒になることが出来なくても』と語り、運命の邂逅を見逃さないようにいつ... ...続きを見る

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2011/10/13 06:59
島田荘司『写楽 閉じた国の幻』の書評3:“平賀源内=写楽説”の頓挫と鎖国体制の盲点を突く推論
本作『写楽 閉じた国の幻』では、幾つかの有力な別人説を塾講師の佐藤貞三が片桐教授の援助を受けながら検証していくところがメインになっているが、今まで取りざたされた別人説は正に何十人にものぼるという多種多様な状況であり、『決定的な物証・証拠』が無いために、どの仮説が正しいのかを確実に言うことはできないようだ。今まで江戸美術史で取り上げられたことのある『別人説』には、主だったものだけでも以下のようなものがあるという。 ...続きを見る

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2011/10/09 06:02
島田荘司『写楽 閉じた国の幻』の書評2:浮世絵・錦絵の歴史と東洲斎写楽の謎
開人を襲った悲惨な事故は、実際に2004年に六本木ヒルズ森タワーで起こった『回転ドア死亡事故』に題材を取っていることは明らかであるが、作中では追加でコイン投入できないパーキングメーターの不親切な設計と合わせて、センサー作動で急停止しても事故回避ができない回転ドアの構造上の問題を、『回転ドア事故被害者の会』での会話で論じていたりする。 ...続きを見る

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2011/10/04 01:00
島田荘司『写楽 閉じた国の幻』の書評1:佐藤貞三の家庭生活の破綻・挫折感と回転ドア事故
世界的に著名な浮世絵師の葛飾北斎(1760-1849)の研究をしていた東大卒の佐藤貞三(さとうていぞう)は、川崎市の準ミスでお嬢様の千恵子と28歳でお見合い結婚をして、総合商社M物産の役員の義父(小坂)の支援を受けながら大学教授のポストを目指していた。叩き上げで権力と財力を掴み取ってきた義父は尊大で威圧的であり、自分の娘の結婚相手として私大講師の佐藤を十分な相手とは見ていない。東大卒の学歴と将来性だけに期待しており、私大の講師をしている佐藤を支援して大学教授にさせることで、漸く自分の家と釣り合い... ...続きを見る

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2011/10/04 00:58
池上永一『テンペスト 上下』の書評2:男としての孫寧温と女としての真鶴の人生の交錯と琉球王国の命運
喜舎場朝薫は6歳より漢文を読み始めた神童であり、科試を受験する段階において自他共に認める『琉球第一の並ぶ者なき逸材』であるはずだったのだが、それまで全く無名であった孫寧温と出会い、自分を大きく超える知性と国際認識に人生で初めて遭遇して驚愕する。しかし、精神に潔さを持つ喜舎場朝薫は、孫寧温を謀略で追い落とそうとするのではなく、良きライバルとして孫寧温に追いつき追い越そうとし、また宦官で男であるはずの孫寧温に対して、その美貌と優しさに不思議な魅力を感じる自分に戸惑う。後半において既に他の女性と結婚し... ...続きを見る

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2011/09/02 17:58
池上永一『テンペスト 上下』の書評1:宦官の男としての人生を生き始める孫寧温と琉球王朝の危機
現在の沖縄県は紛れも無く、日本の九州地方に帰属する47都道府県の1つの自治体であるが、日本本土と陸続きではない沖縄には、北海道のアイヌと同様に独自の民族文化圏があった。近代日本は明治維新の前後において、北と南に支配領域を拡大して、異民族・異文化を『日本の一部』として併合して組み入れた。 ...続きを見る

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2011/09/02 17:55
マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』の書評6:サンデルの思想と現代の共同体の連帯
前回の記事の続きになるが、目的論的な世界観を持つアリストテレスは政治についてもその目的を問い、『政治的共同体は何のためにあるのか?』という目的性の遂行にこそ正義があると考えるのだが、こういった政治理解も国民自らが投票と議会によって政治の方向性を決めていく自由民主主義の社会とは折り合いが悪いかもしれない。 ...続きを見る

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2011/08/23 15:54
マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』の書評5:ロールズの平等主義の正義とテロス
J.ロールズは彼以前の政治哲学や倫理規範において仕方が無いことや運命として見過ごされていた『道徳的恣意性(遺伝や身分、家庭、民族など偶然の要素による有利・不利)』をできるだけ縮減して無くそうとすることに正義を見出したのだが、ロールズのいう格差原理に基づく平等主義の正義論には、『実際には無くすことが難しい種類の格差(生まれながらの能力・環境)』が多いという限界も指摘される。 ...続きを見る

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2011/08/21 00:43
マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』の書評4:カントの定言命法とロールズの正義論
インマヌエル・カント(Immanuel Kant, 1724-1804)は外部の条件や他者の要求に従う『他律』ではなく、自分が定めた格律(行為規範)に従って行動する『自律(オートノミー)』こそが、真の自由であり責任能力の根拠であると主張した。I.カントは功利主義的な『結果(帰結)の利益』によって物事の善悪を判断する思想に反対して、自由な行動とは目的(利益)のための手段としての行動ではなく、目的そのものになる行動であり、行為の結果よりも動機づけのほうを重視した。 ...続きを見る

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2011/08/21 00:41
マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』の書評3:徴兵制と志願兵制(労働市場)の倫理学
前回の記事の続きになるが、政府への服従を嫌う個人主義が根づいていたアメリカの北軍の勢力圏では『徴兵』は余り有効に機能せず、20万7千人に徴兵命令を送付しても、大半は逃亡するか障害申請で兵役免除を願い出たという。免除費を支払ったのは8万7千人、身代わりの傭兵を雇ったのは7万4千人で、実際に兵役に従事したのは4万6千人に過ぎなかった。鉄鋼王のアンドリュー・カーネギーや銀行家のJ.P.モルガン、合衆国大統領の親族をはじめとする金持ちのほとんどは、徴兵免除費を支払って兵役を免れていた。こういった状況を前... ...続きを見る

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2011/08/19 12:57
マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』の書評2:ベンサムの功利主義とミルの自由主義
イギリスの哲学者のジェレミー・ベンサム(Jeremy Bentham, 1748-1832)は、人間の快楽と苦痛は計量可能な『量的』なものと定義して、『最大多数の最大幸福(あるいは人数にこだわらない最大幸福)』を原理とする功利主義(utilitarianism)を提唱した。ベンサムにとっては『快楽や幸福をもたらす効用(結果)のある行為』が善であるとし、快楽と苦痛を計測して快楽の総量が最大になる行為が正しいと考えた。 ...続きを見る

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2011/08/17 14:09
マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』の書評1:対話型講義と現代社会を動かす原理
ハーバード大学教授であるマイケル・サンデル(Michael J. Sandel,1953〜)の『正義(justice)』について考える倫理学的な哲学が、現代において注目されている理由は何だろうか。その理由は色々と考えられるが、大きく分ければ以下の2点に収斂してくると思う。 ...続きを見る

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2011/08/17 13:58
桐野夏生『優しいおとな』の書評:大人に守られなくなった子ども達と家族的なものを模索する物語
日本経済が衰退して社会福祉が切り捨てられ、東京の至るところに途上国にいるようなストリートチルドレンが溢れている。経済格差が絶望的に拡大したことで、貧困層の児童遺棄(捨て子)が増大するようになり、“親のいない子ども達”は劣悪な生活環境の児童保護センターに収容されるか、自力で街を彷徨いながら犯罪も厭わずにサバイバルするかのどちらかの厳しい選択を迫られる。近未来の希望が萎んだ東京を舞台にして、子どもの権利も福祉も守られなくなった貧困な社会の非情さ・不平等を描きながら、『人間らしく生きるための条件』をテ... ...続きを見る

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2011/08/03 08:40
新田次郎『槍ヶ岳開山』の書評2:“悟り(煩悩消尽・自他救済)”につながる登山と瞑想の相関
ストイックに自分と弟子を戒律と専修念仏で律し続ける見仏上人は、文政・天保の世の中を『末法の苦悩に満ちた時代』と看破しているが、この時代に衆生を地獄の苦しみに突き落としていた大飢饉と幕府・藩の苛斂誅求に対しては為す術を持っていなかった。本書の後半では、『天保の大飢饉(1833年〜1837年)』が発生して重罪・飢餓で苦しむ百姓たちが、仏教信仰や念仏の称名(功徳)に限界を感じて絶望したり仏法に反対したりするのだが、岩仏(播隆)は徹底的に追い詰められて二進も三進もいかなくなった衆生と自分を救済するために... ...続きを見る

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2011/08/02 02:31
新田次郎『槍ヶ岳開山』の書評1:笠ヶ岳・槍ヶ岳に登頂した播隆の信仰や煩悩を巡るストイックな物語
日本の山の多くはアニミズム(精霊崇拝)や山岳信仰の影響を受けており、俗界を超越して高くそびえ立つ『山』は実在する神仏(権現)の象徴であり、神仏の住みなす霊域とされてきた。人を寄せ付けないほどに峻険で悪路を極める山は、俗塵に汚されない聖地であり、神仏の霊威が立ち込める特別な領域であるから、古代から日本の神官・僧侶の宗教者は世俗と遮断された深山幽谷に寺社仏閣を建設して、その地を仏教宗派・修験道の大本山としてきた。 ...続きを見る

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2011/08/02 02:28
福岡伸一『世界は分けてもわからない』の書評4:ラッカーとスペクター、科学界が見たいと思った絵
アメリカのコーネル大学の生化学者エフレイム・ラッカーは、細胞のエネルギー代謝の研究に関する第一人者であり、細胞内でエネルギーとして使われるATP(アデノシン三リン酸)を合成するATP合成酵素の発見という大きな功績を成し遂げていた。ラッカーはエールリッヒ腹水ガン細胞を用いて、『なぜ細胞はガン化するのか』の理由を解明するための研究を精力的に行い、ガン細胞ではATP分解酵素が異常に亢進して、『無意味なATPの生産と消費の浪費』を行っているのではないかというガン細胞のワールブルク効果の仮説を立てた。 ... ...続きを見る

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2011/07/18 17:19
福岡伸一『世界は分けてもわからない』の書評3:秩序の構築と崩壊を説明するエントロピー増大原則
写真家の渡辺剛さんの作品『Border and Sight』で事物の境界線の曖昧さを示して、『TRANSPLANT』で事物の可塑性や交換可能性を示唆しながら臓器移植の考察を進めていくのだが、『第6章 細胞のなかの墓場』では科学的な要素還元主義の限界を問いかけている。全体が部分の総和以上の性質(特性)を見せることを、複雑系の科学などでは『創発性(emergency)』と呼んだりもするが、著者は生命の本質をこの創発性と動的平衡に見出す。 ...続きを見る

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2011/07/14 16:11
福岡伸一『世界は分けてもわからない』の書評2:マップラバーとマップヘイターの対照的な行動原則
大気中に漂っている微生物やモノ・身体に付着した微生物の増殖活動によって、食物の腐敗現象が起こりますが、人類は微生物による腐敗現象を抑制する化学物質として『防腐剤・保存料』を発明した。本書では、サンドイッチ・弁当などに使われるポピュラーな保存料のソルビン酸の作用について説明されるが、ソルビン酸は本来の栄養素(リンゴ酸・乳酸など)の囮物質として作用することで、微生物の代謝を阻害して腐敗を抑制している。微生物の細胞内にある酵素がソルビン酸とがっちり結合してしまうことで、加工食品に含まれる栄養を微生物は... ...続きを見る

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2011/07/14 16:07
福岡伸一『世界は分けてもわからない』の書評1:パワーズ・オブ・テンによる世界の拡大と縮小
生命・生物の仕組みや研究者のエピソードを題材にした福岡伸一の本は、科学的な内容を文学的なメタファーを駆使して解説しているので、読み物としても楽しめるところが良い。過去に、生命の本質を動的平衡性に見出した『生物と無生物のあいだ』や生物の雌雄分離・有性生殖の起源を物語的に書いた『できそこないの男たち』を読んだが、この『世界は分けてもわからない』はミクロな世界では“(生命を構成する)部分”について明確な境界線を引くことができないという事が主題になっている。 ...続きを見る

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2011/07/14 16:05
佐々木俊尚『キュレーションの時代』の書評3:キュレーターの視座を介した世界の拡張とグローバルな変化
『社会との接続・承認』や『他者とのつながり・共感』のために、物語的なコンテキストをセットにした消費が増大することになり、更には『商品の消費による間接的承認』よりも『場・行為による直接的承認(何かを一緒にすることや話すことを楽しむ)』のほうが優勢になってきているというのは、社会変動の実態の一面を上手く捉えています。 ...続きを見る

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2011/06/20 00:12
佐々木俊尚『キュレーションの時代』の書評2:他者の眼差しに制御された戦後日本の“記号消費・階層意識”
『第二章 背伸び記号消費の終焉』というジャン・ボードリヤールの著作をイメージさせるような表題がつけられた章では、映画業界と音楽業界が斜陽化してきた背景を『バブル景気の期待・マス消費の幻想』と絡めて詳述しています。インターネットの登場によって『コンテンツの希少性(コンテンツに対する飢餓感)』が格段に縮減されたために、マスメディアがとにかく宣伝してブームを作れば売れるという時代は終焉に近づいています。 ...続きを見る

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2011/06/20 00:09
佐々木俊尚『キュレーションの時代』の書評1:コンテンツを“つくる人”と“見出す人”の相互補完性
テレビ・新聞・出版・広告といったマスコミュニケーション(一方向的な大量情報伝達)が衰退した後に、『人と人のつながり』を介して双方向的に情報をやり取りするキュレーションの時代がやってくるという。 ...続きを見る

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2011/06/19 23:58
梅田望夫・飯吉透『ウェブで学ぶ オープンエデュケーションと知の革命』の書評3:学校と学びの意欲
グローバルウェブとして破格の成功を収めて、世界中の膨大な人に恩恵を与えているサービス(企業)として、GoogleやLinux、Wikipedia、Appleなどが例に出される。梅田氏は『構想や理想を打ち出す第一段階→コツコツと努力し成果を出して一部から高評価を得る第二段階→不連続なブレークスルーを経由して世界を変えるようなレベルになる最終段階』の成長段階を説明するのだが、オープンエデュケーションの取組みは、まだグローバルウェブとしては十分な普及度と影響力を持ち得ていないと語っている。 ...続きを見る

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2011/06/04 03:28
梅田望夫・飯吉透『ウェブで学ぶ オープンエデュケーションと知の革命』の書評2:ウェブと教育の進化
オバマ大統領のオープンエデュケーション宣言や教科書の低価格化・無料化に貢献するオープン・テキストブックなどを取り上げて、初等中等教育においても教育格差の大きいアメリカにおいて、オープン・エデュケーションが『格差超越装置(経済・地域・人種・学習環境の格差を超えて誰もが必要な知識や学びにアクセスできるような教育装置)』として機能する可能性も模索していく。オープン・エデュケーションは『高等教育(大学)に関する社会通念』や『物理的な建築物を拠点とする大学の実在性』をも変えていくのではないかという壮大な展... ...続きを見る

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2011/06/04 03:23
梅田望夫・飯吉透『ウェブで学ぶ オープンエデュケーションと知の革命』の書評1:ウェブの教育環境
ウェブが普及し始めてから10年以上の歳月が経ち、ウェブ上には膨大な数の知識と情報が溢れていて、Googleのような検索エンジンとfacebook,mixiのようなソーシャルウェブによって効率的な情報のフィルタリングが行われるようになっている。本書はそういったウェブの進化の中でも、特に『オンラインの教育活動の進化』をテーマにした本であり、MIT(マサチューセッツ工科大学)のオープンコースウェアなどを参照しながら、世界の一流の講義や知識の教授に誰もがオープンにアクセスできるようになった教育革命(知の... ...続きを見る

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2011/06/04 03:19
鈴木伸元『加害者家族』の書評:“一つの重大事件”が生み出す被害の拡大とウェブ時代の社会的制裁
平成20年度の警察庁による犯罪認知件数は253万3351件、悲しみと怒り、苦悩に打ちひしがれる膨大な被害者家族(遺族)と共に、世間から非難され排斥される加害者家族も生み出されている。犯罪被害者やその遺族の『心理的ケア・加害者による謝罪と補償・公的補償と生活再建』というのは極めて重い課題である。近年まで刑事裁判で被害者遺族の苦悩に満ちた感情と犯罪後の生活の混乱が、余りにも軽く扱われてきた事にも真摯な反省・改善が求められる。重大事件に関する裁判員制度の導入も、量刑・判決に市民感情や常識感覚を反映させ... ...続きを見る

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2011/05/07 13:23
マルセル・ローゼンバッハ『全貌ウィキリークス』の書評4:近代国家・リスク管理と対立するウィキリークス
ウィキリークスの無差別的な機密情報の暴露が善なのか悪なのかの判断は一義的ではないが、イギリスの歴史学者ティモシー・アートン・アッシュが『歴史的・政治的資料の連続性と相関性』がより良く認識できるようになったと言うように、学術研究や資料調査の文脈では内容を考慮しない機密の暴露にはメリットがあるだろう。 ...続きを見る

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2011/04/24 06:14
マルセル・ローゼンバッハ『全貌ウィキリークス』の書評3:ウィキリークスの情報公開と既成秩序
ウィキリークスがどういった経緯で誕生したのかについては『第3章 ウィキリークス誕生』にあるが、冒頭に引用された言葉にアサンジには国家や階級制度に対する共感は殆ど無いとあるように、アサンジは既存の公的な強制力や秩序形成機構に従っておけば安定した政治・生活を実現できるという、マジョリティの日常感覚には全く賛同しない人物である。2006年10月4日に、“wikileaks.org”“wikileaks.info”などのドメインを取得したのがウィキリークスの始まりだが、各技術者や協力者が自由に自発的に参... ...続きを見る

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2011/04/24 06:12
マルセル・ローゼンバッハ『全貌ウィキリークス』の書評2:アサンジの個性的なパーソナリティ
ジュリアン・アサンジは公権力を挑発するラディカルな情報公開思想やネットワーク至上主義の持ち主であるが、その原点は違法なクラッキングをゲーム感覚で楽しんでいたハクティビスト(ハッカー活動家)の時代にあるようだ。知的水準が高く幼い頃から図書館に通いつめて読書に没頭していたというアサンジが、コンピューターやインターネットの世界にのめり込むようになるきっかけは、1980年代に出た最初期のホームコンピューター『コモドール64』との出会いだった。13歳で母に350ドルのパソコンを買ってもらうまでに、電器屋に... ...続きを見る

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2011/04/23 06:43
マルセル・ローゼンバッハ『全貌ウィキリークス』の書評1:米国外交公電を流出させたマニング上等兵
インターネットの登場と普及によって『情報の公開・共有』は格段に進んだが、そこには政府や公的機関、大企業の『機密情報・内部情報・スキャンダル』までは含まれていなかった。また、多くの人々は『情報公開の必要性・政治プロセスの透明化』を望みながらも、あらゆる情報を一切の制限なく公開・共有しさえすれば世界が良くなるとシンプルに信じてはいないし、ラディカルな機密情報のリーク(暴露)こそが倫理的な正義であるとも断じられないのではないかと思う。 ...続きを見る

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2011/04/23 06:41
万城目学『プリンセス・トヨトミ』の書評:“大阪城地下・大阪の大衆文化”に隠蔽された謎
会計検査院第六局に所属する副長の松平、部下の鳥居と旭ゲーンズブールの3人が、大阪府庁や公益法人・特殊行政法人の会計検査を実施するために大阪を訪れる。アイスクリーム好きだが検査の厳格さで知られる上司の松平、怪しい経理書類を独特の嗅覚で見極める特技を持つ鳥居、内閣法制局出身のエリートで容姿端麗なハーフの美女の旭ゲーンズブールといった個性豊かな3人が、大阪で会計検査を行ううちに、社団法人OJOの使途不明な補助金5億円へと辿り付く。 ...続きを見る

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2011/04/13 23:33
人間はなぜ“威嚇・敵視”されるよりも笑われたほうが怒るのか?:対等な相手に見られたい心理
攻撃行動のディスプレイや威嚇的な言動から分かることは、人間も他の動物種と同じように、実際に相互が傷ついたり死んだりするリスクのある『戦闘・戦い』をできるだけ避けようとして、『威嚇・虚勢・攻撃のディスプレイ』によって直接的に戦わずに自他の優劣関係や譲歩の確認をしようとしているということである。誰かと激しい対立をした時に、大声で凄んでみたり言葉で相手を脅したり、ジェスチャーで戦闘の準備・覚悟を示したりする行動は比較的多く見られるかもしれないが、実際に殴ったり蹴ったりする乱闘・戦闘が発生することは人間... ...続きを見る

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2011/03/13 07:36
堀江貴文『君がオヤジになる前に』の書評:思考停止によるオヤジ化と価値認識による生き甲斐創出
堀江貴文の『君がオヤジになる前に』では、自身の経験も含めたオヤジ化しない思考形態や価値認識、ライフスタイルのあり方を模索し、『前進・進歩・成長・上昇』といった成功(達成)のベクトルに軸足を置いた提言をしていますが、本書でいうオヤジ化は『思考停止・現状維持・責任転嫁(愚痴不満)』に象徴化される主体性の放棄として定義されています。 ...続きを見る

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2011/02/23 20:31
堀江貴文『“本物のお金持ち”と結婚するルール』の書評:結婚に求めるものと男女の魅力のバランス
『“本物のお金持ち”と結婚するルール』も『君がオヤジになる前に』も、“超個人主義”といっても良い私個人の幸福とメリットの観点から功利的に書かれた本なので、日本人の保守的な倫理観や一般的な社会適応性からはかなりズレています。その“常識とのズレ”を自分自身の人生に何らかのかたちで応用したいと思う人もいれば、現代的な読み物や一つの価値観として楽しもうとする人もいれば、非常識で自分勝手な考え方だと眉を顰める人もいるでしょう。 ...続きを見る

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2011/02/23 20:27
植木理恵『ウツになりたいという病』の書評3:認知の歪みの改善とうつになりにくい物事の考え方
社会の標準的な価値観や常識と距離を置いて、『自分なりの人生観・価値観』を持つことができれば精神的な葛藤や焦燥(苦悩)を緩和できるとは思いますが、現実には『社会的な価値観と最低限の生活水準がセットになりやすい』という圧力もあるので、なかなか現代人が自由な価値観を持ってそれに従ったライフスタイルを作り上げるというのは難しいとも思います。 ...続きを見る

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2010/11/22 05:13
植木理恵『ウツになりたいという病』の書評2:現代の競争社会の圧力とセリグマンの学習性無力感によるうつ
『第一章 ウツ気分を大量生産する社会の秘密』では、どうして現代の日本でうつ病(ウツ気分)や自殺者が増加しているのかという社会的要因を考察しているのですが、著者は現代の競争社会が生み出す学習性無力感をクローズアップしています。 ...続きを見る

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2010/11/19 01:50
植木理恵『ウツになりたいという病』の書評1:うつ病の未病としてのウツもどきとうつ概念の拡大
古典的なうつ病(気分障害)とは異なる症状や特徴を持つ『非定型うつ病(新型うつ病)』については、過去にこのブログでも何回か取り上げていますが、本書では“ウツもどき”というフレーズによって現代的なうつムーブメントを分析しています。 ...続きを見る

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2010/11/19 01:47
内田樹『日本辺境論』の書評3:“辺境性”を活用してきた日本と先行者(世界標準)との距離
戦前と戦後の日本の軍事外交や国際情勢の認識に共通する要素として、内田氏は『被害者意識(外国が攻撃してくるからこちらも反撃せざるを得ない)』を上げていますが、『追い詰められる前の段階』で自ら先手を打って状況を変えようとはしないというのは、日本の政治・外交や日本人の行動様式に見られやすい傾向性かもしれません。 ...続きを見る

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2010/11/16 22:40
内田樹『日本辺境論』の書評2:“理念・ビジョン”ではなく“他国との比較”で語られる日本
日本の政治家・知識人は日本がどのような国であるかということについて、『日本固有の主張・理念(ビジョン)・特徴』で語るのではなく『他国との比較(ランキング)』で語ることが多いというのですが、他国との比較や先進的な文明文化との接近度を通じてしか自国の国家像(国家戦略)を描けないというのも、『日本の辺境性』の現れであると言えるのでしょう。 ...続きを見る

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2010/11/13 21:47
内田樹『日本辺境論』の書評1:“中心―辺境(周縁)”の二元論から考察する日本文化論
『日本人とは何者なのか?日本文化とは何なのか?』という普遍的な問いに対して、“辺境性・周縁性の概念”を用いて答えようとしている本ですが、著者の内田氏が何度も『既に先賢・先人によって語りつくされたテーマではあるがそれを改めて日本論として整理し確認する』と述べているように、日本の思想史や民俗学に触れたことのある人であれば何処かで読んだ理論も多く紹介されています。 ...続きを見る

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2010/11/13 21:45
五木寛之『百寺巡礼 第十巻 四国・九州』の書評4:加藤清正の本妙寺と大分県国東半島の羅漢寺
第97番 本妙寺(ほんみょうじ) ...続きを見る

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2010/11/09 22:06
五木寛之『百寺巡礼 第十巻 四国・九州』の書評3:空海信仰の善通寺・長崎の唐寺の興福寺
第93番 善通寺(ぜんつうじ) ...続きを見る

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2010/11/07 08:31
五木寛之『百寺巡礼 第十巻 四国・九州』の書評2:太宰府の古刹の観世音寺と久留米の梅林寺
『百寺巡礼 第十巻 四国・九州』では、四国・九州地方にある10宇の寺院が選ばれているが、前半の5つの寺院の来歴・地理・特徴、その感想を簡単に書き留めておこうと思う。 ...続きを見る

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2010/11/07 08:22
五木寛之『百寺巡礼 第十巻 四国・九州』の書評1:なぜ人は寺院を巡るのか?信仰と観光の癒し
日本全国にある百の寺を巡礼するシリーズの最終巻であるが、自分自身が九州に在住しているということもあって『四国・九州篇』から手に取ってみた。日本における仏教の歴史は朝鮮半島にあった百済の聖明王が、欽明天皇に仏像・経典を贈った538年(552年)にまで遡り、中世期には鎌倉仏教の登場で仏教の信仰と勢力は大衆にまで広がった。 ...続きを見る

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2010/11/07 08:17
香山リカ『母親はなぜ生きづらいか』の書評:血縁の親による子育てと社会共同体による子育てのバランス
近代日本のスタンダードな家族像である『父親が外で働き、母親が家で家事・育児をする』という性別役割分担は、共働きの農家が人口の大半を占めていた日本の伝統的な家族形態ではなく、富国強兵を目指す明治政府の国策と社会の工業化(男性のサラリーマン化)によって作られた側面がある。 ...続きを見る

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2010/10/16 02:42
リリエンフェルド『臨床心理学における科学と疑似科学』の書評2:科学的な心理療法研究の概略
S・O・リリエンフェルドの『臨床心理学の科学と疑似科学』では、特定の精神障害の客観的な実在性や診断の妥当性、因果論的な分析、症状の影響の範囲についても考察されていて、特に第5章では解離性同一性障害(多重人格障害)の研究の解説に力を入れています。第9章の『心的外傷後ストレス障害(PTSD)の新奇で論争となっている療法』では、PTSDに伴う恐怖感やフラッシュバック、不適応状態を緩和する効果があるとされる複数の『パワー療法』の技法やその根拠・効果について批判的な検証が加えられています。 ...続きを見る

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2010/10/03 15:30
リリエンフェルド『臨床心理学における科学と疑似科学』の書評1:症候群の認定と法的責任の変化
臨床心理学における『理論仮説・心理アセスメントの科学的客観性』は、心理学者・精神科医・精神保健専門家・行動科学者の証言の真実性や有効性とも関係していますが、リリエンフェルドの『臨床心理学における科学と疑似科学』の『第4章 専門家証言の科学と疑似科学』では裁判における心理専門家の証言の有効性・許容性についての検証が為されています。 ...続きを見る

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2010/10/01 13:05
佐藤賢一『小説フランス革命X 王の逃亡』の感想:フランス王ルイ16世のヴァレンヌ事件と共和政の接近
小説フランス革命は全12巻で完結する構想になっているようだが、第5巻の本書はフランス王であるルイ16世と王妃マリー・アントワネットが、『革命の熱狂・共和主義者(ジャコバン)の敵意』を避けて首都のパリから逃げ出そうとするヴァレンヌ事件(1791年)の経緯が詳細に描かれている。 ...続きを見る

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2010/09/26 11:09
水無田気流『無頼化する女たち』の書評2:中間層解体と無頼化する女性のサバイバル戦略・安心欲求
前回の記事の後半は、『第五章 「おひとりさまの老後」革命』のテーマにもつながってくる“職業キャリア・資産”のある女性の孤独感をどう受け止めるのかの問題でもある。『結婚・家庭・出産』というのは、どれだけ所得の多い社会的地位のある女性にとっても、決して無視できない要素として残っているように思えるが、そこには『他者の欲望を欲望する(多数者が価値があると思っているものを欲望しやすい)』という人間の無意識の働きも関係しているだろう。 ...続きを見る

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2010/09/08 08:53
水無田気流『無頼化する女たち』の書評1:ニッポン女子のハッピーリスクと努力の方向性
水無田気流の『無頼化する女たち』では、従来、『社会経済システム(企業・雇用のシステム)』によって十分に保護されてこなかった女性は、『家族システム(結婚・配偶者の所得)』に頼るしかなく、1980年代までは多くの女性は実質的に結婚して家庭に入るという選択肢しかなかったという。しかし、女性の雇用と社会進出が増えて、女性にも一定の経済的自立が求められるようになる中、男性の所得水準や雇用待遇が低下したことで、女性は『家族システム』によっても十分に守られなくなってくる。 ...続きを見る

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2010/09/08 08:08
宮城谷昌光『三国志 第一巻』の書評:楊震・曹騰の目線を通した後漢王朝の斜陽と外戚・宦官の跋扈
宮城谷昌光の描く三国志の世界は『正史』に基づく重厚さと背景描写の緻密さがあるので、中国の古代史に一定の関心を持った人でないと読み続けることが困難になるかもしれない。第一巻では人口に膾炙する曹操も劉備も孫権もその名前すら殆ど出てこないのだが、三国時代に入る前の『後漢王朝の斜陽期の政治・人物』が入念に正確に描写されていて興味深い。 ...続きを見る

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2010/08/28 23:08
ブレンダ・ボイド『アスペルガー症候群の子育て200のヒント』の書評:育児のトラブルにどう対処するか?
アスペルガー症候群(AS)の子どもを持つ親が、日常的な子育てや指導・援助で悩みやすいポイントとその対処法を、実際の育児経験の試行錯誤に基づいてまとめた本です。広汎性発達障害(PDD)の専門書ではないので難解な専門用語や理論的な解説が無くて、『実践的な子育ての方法やアドバイス』にテーマを絞っているので、アスペルガー症候群の子どもやコミュニケーションが苦手な子どもの支え方や教育方法について色々な気づきを得られます。 ...続きを見る

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2010/08/28 16:13
吉本隆明『僕ならこう考える』の書評:自分のコンプレックスや人間関係にどう向き合うかの私的談義
吉本隆明が自身の人生経験や文学者・哲学者(思想家)のエピソードを参照しながら、誰もが一度は抱くであろう身近な人生や自意識、人間関係の悩みに答えていくという体裁の本。コンパクトな分量であり、分かりやすい話し言葉で書かれているのでさらりと読むことができるが、『思索の深度・論理性』よりも『日常の経験・暮らし』に重点が置かれているので読み手によっては物足りなく感じるかもしれない。 ...続きを見る

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2010/08/16 07:02
認知症の延命医療を巡る日本とアメリカの文化差:“生命の尊厳”と“自意識・他者とのつながり”を思う
この記事は、前回の大井玄『「痴呆老人」は何を見ているか』の書評の続きになります。自分(私)が自分(私)でなくなっていき、人格の統合性が解体していく認知症というのは、本人にとって『現代社会の構成員である資格・価値』を失うかのようなショッキングな体験として受け取られやすいのですが、本書では『競争社会に適応した近代的自我』をそれほど絶対視する必要があるのかという根本的疑問から、認知症の内面心理や対応を掘り下げて考察しています。 ...続きを見る

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2010/08/12 13:07
大井玄『「痴呆老人」は何を見ているか』の書評:認知症に対する恐怖感を生む自我中心の現代社会
認知症(Dementia)は主に老年期に発症する脳の器質的障害で、『知能・記憶力・見当識・判断力の低下』をはじめとする様々な精神症状(認知障害)を発症して、重症化すれば『食事・着替え・排泄』といった基本的な日常生活動作も困難になってきます。 ...続きを見る

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2010/08/12 13:00
香山リカ『しがみつかない生き方』の書評2:勝間和代を目指さない生き方と金銭・子どもとの距離感
前回書いた香山リカ『しがみつかない生き方 「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール』の書評の続きになります。 ...続きを見る

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2010/07/20 08:27
香山リカ『しがみつかない生き方』の書評1:恋愛・自慢・他者否定・老化と生きる意味の相関
前回の記事の続きになるが、『標準的な幸福像・幸せ観』のイメージや定義が先行することによって、そのイメージからズレた自分を否定的に評価してしまったり、その定義から外れた自分の人生を不幸なもの(無意味でつまらないもの)だったのだと決め付けてしまうことは少なくない。こういった『不幸の自己規定性の罠』から脱するための一つの方法が、本書が示す『しがみつかない生き方』であり、論理療法的には『イラショナル・ビリーフ(非合理的な思考)を持たない生き方』でもある。 ...続きを見る

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2010/07/19 05:15
勝間和代『目立つ力 インターネットで人生を変える方法』の書評:セルフブランディングのPDCAサイクル
日本の社会・組織や人間関係では『個人で目立つこと・集団から突出すること・自己アピールすること』はある種のリスクと見なされやすい。『個人の実名』で目立った行動や発言をすれば批判や反論、非難を受ける確率が高まるだけではなく、一般的なサラリーマンや公務員では『個人としての知名度』を上げることで得られる実際的なメリット・報酬というものも乏しい。 ...続きを見る

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2010/07/07 02:54
本田直之『レバレッジ英語勉強法』の書評:“完璧な英語”ではなく“使える英語”を学ぶ勉強法
日本の学校教育における英語の授業は『リーディング(読むこと)・文法と構文』に力を入れているので、『ライティング(書くこと)・ヒアリングとスピーキング(聴いて話すこと)』が得意な日本人は少ないと言われます。受験英語やTOEICのペーパーテストが得意であっても『英会話・英作文』が苦手な人は多く、英語のスキルが『自分のレベルに合った英文が読める』ということに特化されやすくなっています。 ...続きを見る

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2010/06/17 06:59
京極夏彦が電子出版、電子ブックはどこまで普及するか?ソニーと提携した“GoogleTV”の可能性
京極堂シリーズで知られる京極夏彦の作品は僕も結構読んでいるのですが、京極氏が5月15日発売の新作『死ねばいいのに』を電子出版するというニュースがありました。 ...続きを見る

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2010/05/22 14:14
F.ニーチェの『この人を見よ』に投影されたツァラトゥストラ(超人)の理想と自己讃美・復讐の衝動
フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)の思想というと『ツァラトゥストラはこう言った』や『道徳の系譜』が注目されやすいのですが、ニーチェの著作を概観してその思想のエッセンスを知りたいのであれば『この人を見よ』がお勧めです。ニーチェ哲学の入門書・解説書にも良書は少なからずありますが、『この人を見よ』はニーチェ自身が書いた自尊心の漲る自伝であると同時に、主要著作の解説書となっています。この著作を読めば、ニーチェがどういったことを言いたかったのかを正確に知ることができるでしょう。 ...続きを見る

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2010/05/20 06:57
天童荒太『静人日記』の書評:『匿名の死』を悼む坂築静人の奇妙な生き方と現実の他者との距離感
人間と動物の差異として『死を悼む』ということがある。人間は血縁のある家族の死を悼むだけではなく、自分と付き合いがあった親しい友人の死を悼み、何かの縁があった知人の死を悼む。飼っていた愛らしいペット(動物)の死を、悲しみに暮れながら悼む人も少なくないだろう。しかし、人は年月の経過と共に『死を忘れる』ものでもある。あれほど悲しみや痛みに打ちひしがれていた人も、『他者の死』を一時も忘れずに生き続けることはできない、『自分自身の人生』へと戻っていかなければならないからだ。 ...続きを見る

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2010/05/14 10:09
堀江貴文『格差の壁をぶっ壊す!』の書評:13の格差の論評と格差問題に対するスタンス
2000年代に入ってから『格差』という言葉が社会問題・将来不安を象徴するキーワードとなり、ライブドアの上場前後の時期には『勝ち組・負け組』という社会階層・所得水準の二分法が流行して、お金持ちの裕福で華やかなライフスタイルが『セレブ』としてメディアで持てはやされた。セレブやエリート(大企業のサラリーマン・上級公務員)の対極にある社会階層として、非正規雇用やワーキングプア、無職、下流、ニートが位置づけられ、かつて『中流階層』を自認していた平均的なサラリーマンの人口階層が急速に溶解していった。 ...続きを見る

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2010/05/06 00:59
M.J.アドラー,C.V.ドーレン『本を読む本』の書評:本の正確な理解を目指す“読書のマニュアル”
読書をするためにマニュアルが必要なのかという疑問があるかもしれないが、『本の内容・読書の目的』によっては、M.J.アドラーの『本を読む本』のような読書のマニュアル本が役立つこともあるだろう。 ...続きを見る

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2010/05/05 20:01
伊坂幸太郎『終末のフール』の書評:地球・人類の滅亡が決定されても残る人生(日常)の意味とは?
宇宙科学の天体運動の予測により、8年後に地球に小惑星が衝突することが分かったという前提でSFチックな物語が展開する。地球滅亡のカウントダウンを告げるニュースがテレビ・新聞を占拠すると、多くの人々は日常生活や仕事を、今まで通りに規則正しく行うことの意味を見失い、世界中が大パニックになる。 ...続きを見る

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2010/04/24 01:43
T・バトラー=ボードン『世界の成功哲学 50の名著』の書評2:潜在能力と富の獲得に関する本
前回の記事で書いていた『世界の成功哲学 50の名著 エッセンスを解く』の書評の続きで、『潜在能力を発揮する』のテーマから3冊ピックアップして簡単な概略と感想を書いています。『富と財産を築く』のテーマは4冊の書名を挙げましたが、ナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』やロバート・キヨサキの『金持ち父さん貧乏父さん』などは自己啓発書とビジネス書の定番タイトルでロングセラーとなっています。 ...続きを見る

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2010/04/12 11:47
T・バトラー=ボードン『世界の成功哲学 50の名著』の書評1:意欲の向上と人間関係に関する本
世界的にベストセラーになった『成功哲学』の本を50冊ピックアップしたブックガイド(読書案内)の本ですが、各書籍のエッセンス(要点)をコンパクトにまとめてくれているので、その内容がどんなものか大まかに知りたいという人にも役立ちます。 ...続きを見る

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2010/04/12 11:43
篠田節子『逃避行』の書評:家族との縁が切れた主婦と愛犬ポポの悲しくも温かい逃避行
人間よりも犬のほうが好きという『無類の犬好きな人』は多くいるが、ペットブームや単身世帯の増加の影響もあって、愛犬や愛猫との生活に癒しを感じてのめり込む人は今後も増えるのかもしれない。人間と犬との共同生活の歴史は、数百万年前の旧石器時代にまで遡れるほどに古いといわれるが、多くの人は物言わず自分をひたすら慕ってくれる犬が好きだし、『愛犬と暮らした記憶』は『人間と暮らした記憶』以上の良い思い出になることも少なくないようだ。 ...続きを見る

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2010/04/08 01:50
宮台真司『日本の難点』の書評2:人間関係へのコミットメントと生活世界再建の教育論
前回の記事の続きになるが、日本社会のコミュニティ性(ゲマインシャフト)がなぜ解体したのかということについては、『二段階の郊外化』という概念で説明が為されている。『団地化・専業主婦化+ニュータウン化・コンビニ化』という二段階の郊外化によって、地域社会と家庭が次第に空洞化して、相互扶助的な人間関係の市場化(サービス化)と行政化(福祉国家)が進んだという図式はなかなか分かりやすいものだと思う。 ...続きを見る

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2010/03/17 16:30
宮台真司『日本の難点』の書評1:現代社会のコミュニケーション論とマスメディアの衰退
宮台真司氏が社会学・哲学・現代思想・国際政治などの概念装置を用いながら、『現代社会の状況分析・対処法』を各章のテーマごとにまとめた新書である。新書にしてはかなりボリュームがあり読み応えがあるが、現代社会を生き抜くクリティカルポイントとして、個人の人生に承認や存在実感をもたらす『コミットメント(他者・社会への関与)』を重視しており、その論調はすべてのテーマに共通している。 ...続きを見る

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2010/03/17 16:27
駒崎弘樹『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』の書評:社会問題解決の事業化
誰でも若い頃には『何のために働くのか?』という仕事についての疑問を抱き、『お金を稼ぐこと以外の動機づけ』を探すものだと思う。生きていくためには、仕事を通して『生活の糧』となるお金を稼がなければならないが、どうせならば他人(顧客)や社会の役に立ったり誰かに感謝されたりする仕事をしながら収入を得たいという人も多いだろう。 ...続きを見る

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2010/03/10 00:52
村上宣寛『心理学で何がわかるか』の書評:科学的心理学のプロセスを重視した丁寧な概説書
医学・医療や健康食品、エコロジーなどの領域では、一見して正統的な科学理論を装っているが、科学的根拠に瑕疵や不備のある『疑似科学』が問題にされることがある。疑似科学にも体験談(目撃談)のみに依拠する杜撰なものから、研究データを細かく例示する精巧なものまで様々なレパートリーがあるが、自然科学と疑似科学との境界線を正確に見極めることは門外漢の素人には難しいし、研究方法・デザインが科学的であってもデータのサンプリングや統計の解釈に問題があることもある。 ...続きを見る

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2010/02/18 09:27
『自分の小さな「箱」から脱出する方法 人間関係のパターンを変えれば、うまくいく!』の書評
本書でいう『箱』は、『自己欺瞞』のことであると解説される。箱とは『自意識(自己愛)へのこだわり』のことであり『自己中心的な認知(物事の捉え方)』のことでもある。自分が『箱』に入ってしまうことによって、人間関係のトラブルや目的達成の困難などが次々と生まれてくるが、自分で自分が『箱』に入っていることに気づくのは非常に難しい。 ...続きを見る

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2010/02/07 16:26
平野啓一郎『ドーン』の書評:“分人主義・顔認証検索・宇宙開発”から予測される近未来
宇宙船ドーン(Dawn)による世界初の有人火星探査の成功、人々のイデオロギー(基本的価値観)の分断を鮮明化するアメリカ大統領選挙、自己アイデンティティが複数化する『分人主義(ディビジュアリズム)』の拡大、地球からは見えないドーン船内の人間関係のドラマ、アメリカの貧困層の兵士化と戦争ビジネス……ハリウッド映画でキャスティングされても違和感のないような壮大なスケールで、2030年代の近未来を舞台にした小説『ドーン』は書かれている。 ...続きを見る

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2010/02/05 08:53
恩田陸『不連続の世界』の書評:現代の怪奇と各地の旅情が漂うトラベルミステリー
音楽プロデューサーの塚崎多聞(つかざきたもん)が次々と経験する『少し怖くて不思議な話』を題材とした恩田陸のミステリー短編集。どこか茫洋として憂き世離れした雰囲気のある音楽プロデューサーの塚崎多聞、完璧な経歴と家柄を持つ美人な旧通産省官僚の美加、イギリスの名家の生まれで美加に思いを寄せる証券マンのロバートといった登場人物は共通しているが、収載された作品はそれぞれ独立した物語として読むことができる。 ...続きを見る

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2010/02/05 06:25
堀江貴文『人生論』の書評:自伝的要素を含む各ジャンルのエッセイやアイデア
堀江貴文氏の自伝的な述懐とエッセイを融合したような体裁の本で、『新・資本論』と合わせて読んだのだが、東京地検特捜部によるライブドア事件についての感想や批判についても多くのページが割かれている。証券取引法違反の容疑が掛けられたライブドア事件に対する解釈や論評は、賛否両論含めてウェブ上にも無数に存在するが、本人の言葉で事件摘発の概要に対する評価・反論が書かれているので、マスメディアとは異なる見方に触れられるのが良いところだろう。 ...続きを見る

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2010/01/19 18:14
堀江貴文『新・資本論 僕はお金の正体がわかった』の書評:マネーの本質と信用の効用を説いた本
元ライブドア社長の堀江貴文氏が『お金の本質』と『日本経済の将来予測』を語りながら、現代日本で生き抜くためには“個人”がどのようにすれば良いか、“社会”がどういう方向に変われば良いかを提起した新書。対談形式なので気軽に読み進められますが、『経済格差・生活困窮に対する処方箋』や『貯金・長期ローンの否定論』については賛否が分かれる内容かもしれません。 ...続きを見る

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2010/01/13 18:07
歌野晶午『絶望ノート』の書評:いじめを記録したノートから“複数の視点”を通して展開する物語
大刀川照音(たちかわ・しょおん)が、具体的ないじめの状況を書き記した『日記(絶望ノート)』を巡って様々な事件が起こるという物語。いじめをする是永雄一郎、庵道鷹之、倉内拓也と、いじめを受ける大刀照音とのやり取りが毎日の日記に記されていく。 ...続きを見る

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2010/01/08 17:41
東野圭吾『使命と魂のリミット』の書評:職業倫理と過去の執着からの離脱を描く医療ミステリー
ベストセラー作家である東野圭吾の医療系ミステリー小説ですが、東野氏が小説の題材とするテーマや社会問題は非常に幅広くて、どれも一定以上の物語のクオリティを持っています。『使命と魂のリミット』は、大学病院で心臓外科医を目指す研修医の氷室夕紀が、『過去の医師・母親にまつわる個人的な不信』を乗り越えていくという筋立てですが、夕紀を取り巻く『親子・師弟の人間関係の設定』がよく練り込まれています。 ...続きを見る

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2010/01/08 13:48
藤本ひとみ『皇帝ナポレオン 下』の書評:“成り上がりの皇帝ナポレオン”が抱えた野心・孤独・愛国
コルシカ島出身のナポレオン・ボナパルト(1769-1821)は、フランス革命の『反王政・反封建主義』の理想を掲げて幾多の戦争を戦いながら、自分自身が皇帝に戴冠してレジオン・ドヌール勲章を用いた『擬似的な貴族制度(上流支配階層)』を作り上げるという複雑に矛盾した存在であった。1808年には『帝政貴族』を任命して貴族制の再興を図っており、皇帝となったナポレオンは自らが否定したブルボン王家と同じような『貴族階級による自身の権威づけ・取り巻きの形成』を行うことになった。 ...続きを見る

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2010/01/01 15:14
2009年にEs Discoveryのブログ経由で売れた本(心理学・カウンセリング)のピックアップ
2009年に、Es Discoveryのブログやウェブサイトを経由して購入して頂いたAmazon.co.jpの『本・書籍』と『それ以外の商品』には以下のようなものがありました。 ...続きを見る

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2009/12/31 16:13
岡田斗司夫『オタクはすでに死んでいる』の書評:昭和的な価値の終焉と大人を拒絶する現代社会
ミクロなオタクの文化史について筆者の経験を交えて論じながら、『昭和の死』や『日本の変化』というマクロなテーマにつなげていこうとする意欲的な作品。現代にもたくさんのオタクと呼ばれる人たちはいるが、岡田斗司夫氏は本書において『オタクはすでに死んでいる』と宣言して、オタク文化と昭和の時代の終焉を『新たな個人の時代の到来』として読み解いています。 ...続きを見る

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2009/12/10 21:02
小川浩『仕事で使える!Twitter超入門』の書評:Twitterと従来のウェブメディアとの違い
“140文字”を入力して何でも良いのでつぶやくだけのTwitter(ツイッター)というサービスがウェブで人気を集めている。Twitter関連の新書を何か読んでみようと思って、1ヶ月ほど前に小川浩『仕事で使える!Twitter超入門』をAmazonで買ったのだが、その時には津田大介『Twitter社会論 〜新たなリアルタイム・ウェブの潮流』やコグレマサト『ツイッター 140文字が世界を変える』といった本は在庫が無くて購入できなかった。 ...続きを見る

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2009/12/09 21:16
土井隆義『友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル』の書評2:“言葉の力”と“つながりの身体感覚”
『前回の記事』の続きになるが、何人かが集まる形式的な友達関係があったとしても、数ヶ月以上の時間が経過する中で、共通の話題や関心事が乏しくなって、何となく『友達同士で集まっていても退屈で面白みがないという倦怠感・違和感』を感じやすくなる。友達と一緒にいても話すことが無くなったり、何となく居心地が悪くなったりすると、『優しい関係(見せ掛けの友だち)の虚偽性・表層性』が浮かび上がってくるような不安感に襲われる。 ...続きを見る

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2009/11/18 23:26
土井隆義『友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル』の書評1:“優しい関係”と“いじめ問題”
現代社会で生きる人たちにとって『友達とは何なのか?』という問いに対する答えは様々であり、友達が多くいることに安心感や自己肯定を感じる人もいれば、友達から私生活に干渉されることに煩わしさや面倒くささを感じる人もいる。学校・会社の所属が同じだったり、人脈をつなぐ必要性からとりあえず付き合っている『見せ掛けの友達(ビジネスライクな友達)』と、何でも遠慮なく話し合い相談できるような『本当の友達(プライベートな友達)』は違うという意見もあるだろう。 ...続きを見る

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2009/11/17 22:36
福岡伸一『できそこないの男たち』の書評:男女の性差を巡る生物の歴史と弱き者としての男性の誕生
本書で語られる『できそこないの男』というのは、社会環境に適応できない男や道徳的に間違ったことばかりする男のことではなく、生物学的あるいは発生学的に不完全で脆弱な男のことである。男性と女性を比較すると、筋肉量が多く戦闘に適していて政治経済的な力を掌握している割合が多い男性のほうが女性よりも優位のように見えるし、有史以後の人類の歴史は基本的に男性原理(男権社会)によって運営されてきた。 ...続きを見る

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2009/11/08 17:15
藤本ひとみ『皇帝ナポレオン 上』の書評:皇帝としてのナポレオンと私人としてのナポレオンの対照性
フランス革命の後に第一帝政を敷いたナポレオン・ボナパルト(1769-1821)の公私を含めた実像を、新聞記者のモンデールがいろいろな関係者へインタビューすることで再現しようとする筋書きの小説。コルシカ島生まれの朴訥な青年に過ぎなかったナポリオーネ・ブオナパルテが、どのようにして並み居る将軍(元帥)のライバルを押しのけて皇帝ナポレオンとなったのかが多角的な視点で再構成されていく。 ...続きを見る

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2009/11/05 16:57
鈴木みそ『銭 壱巻』(コミック)の感想:“漫画雑誌・アニメ・コンビニの値段”のテーマ
“金銭”をテーマにして経済社会の仕組みを説明する漫画コミックには、『ミナミの帝王』『闇金ウシジマくん』『ナニワ金融道』などいろいろなものがあると思いますが、それらはどちらかというと“借金(負債)・法律の抜け道”と絡んだアンダーグラウンドな社会の厳しさに焦点を当てています。 ...続きを見る

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2009/10/31 16:36
吉本隆明『老いの流儀』の書評:老年期における心身の健康と高齢化社会の展望について語る
『円熟』と『老化』という言葉の語感はかなり異なるし、最近では『老人』という言い方を嫌って『高齢者』という風に表現することが多くなった。『後期高齢者』という言葉は『人生の末期』をイメージさせるものとして随分と不評だったし、老いの不安や肉体の劣化を緩和するための『アンチエイジング』をコンセプトとした各種のビジネスはかなり隆盛しているようだ。 ...続きを見る

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2009/10/20 13:31
香山リカ『キレる大人はなぜ増えた』の書評:“自己防衛的な攻撃性”と“利益獲得的な攻撃性”
少し前に、少年犯罪・校内暴力などの事例を挙げた『キレる若者』というフレーズが流行したことがあったが、最近は若者の特徴を評価するフレーズが『草食系男子・消費や結婚をしない若者・雇用の安定志向』といったマイルドで抑制的なものへと変化してきているようだ。 ...続きを見る

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2009/10/15 21:39
戸矢理衣奈『下着の誕生 ヴィクトリア朝の社会史』:女性のファッション史と身体の解放
S.フロイトの創設した精神分析は、イギリスのヴィクトリア朝時代(1837年-1901年)の余りに厳格過ぎる性道徳へのアンチテーゼとしての側面を持っており、19世紀のヒステリー(神経症)は性的な欲望や身体を罪悪視する社会的風潮(世論の圧力)と強い相関を持っていた。現代からは想像できないことだが、近代ヨーロッパの黎明期には『女性の身体』は美しさや華やかさと結びつけられずに、罪深さ(恥辱)やはしたなさと結びつけられており、とにかく社会の中で女性の身体(肌)を見せることはタブー視されて抑圧されていたので... ...続きを見る

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2009/10/11 06:52
島田荘司『龍臥亭幻想 上下』の書評:森孝魔王の正義の復讐と村落社会の迷信・差別の悲しみ
明治維新によって幕藩体制と身分制度が解体され、備中藩の旧藩主・関森孝(せきもりたか)はかつての所領と家臣の多くを失い、関家の遺産を元に暮らすことになった。廃藩置県と四民平等によってかつての威勢と富裕を失ったとはいえ、関森孝は江戸時代であれば備中藩を治める殿様であり、明治の御世に入っても派手な暮らしを繰り返して次第に関家の財産は細っていった。 ...続きを見る

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2009/10/07 20:47
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』の書評
『ジェネラル・ルージュの凱旋』は、医療ミステリー小説としてベストセラーや映像作品になった『チーム・バチスタの栄光』と『ナイチンゲールの沈黙』の続編(3作目)に当たる。医療系小説にありがちな難易度の高い手術や発症率の低い難病を取り扱ったような内容ではなく、『病院内の派閥闘争・医療倫理や病院財務の問題・Ai(死亡時画像診断)・業者との癒着』などをテーマにしながら、色々な患者や医師のエピソードを描いた作品である。 ...続きを見る

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2009/09/23 12:50
佐藤賢一『小説フランス革命V 聖者の戦い』の書評:フランスの国家権力と第一身分の宗教権威の対立
1789年7月14日、貴族政治の圧政(搾取)に反発して弾圧を恐れる『第三身分』の民衆が、バスティーユの要塞(監獄)を力づくで陥落させたことにより、民主的な議会政治を推進する『フランス革命』が勃発した。アンシャン・レジーム(旧体制)を実力で解体する市民革命によって、平民である『第三身分』と貴族である『第二身分』の力関係は逆転する。封建主義社会の有力者であった貴族階級(封建領主)は、市民革命による抑圧・略奪を恐れて次々と国外に亡命していき、フランス国王16世の王権と拮抗していた貴族階級の地方権力は空... ...続きを見る

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2009/09/07 13:29
桐野夏生『メタボラ』の書評:“居場所”と“記憶”を失って漂流する若者の暗くて明るい物語
過去の記憶をすべて失って南国・沖縄の原生林をさまよっていた「僕」は、天真爛漫で田舎臭さが抜けない宮古島出身の美青年・伊良部昭光(いらぶあきみつ)と偶然出会う。何が何だか分からないまま、混乱した気持ちで沖縄奥地のジャングルを抜け出した「僕」は、昭光と一緒に名護に向かう国道沿いのコンビニに駆け込み、自分の顔を初めて確認する。鏡に映っていた「僕」の顔は、今まで見たことの無いちょっと冴えない四角張った若い男性の顔だった。 ...続きを見る

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2009/09/05 23:51
山崎元『エコノミック恋愛術』の書評:“恋愛・結婚”と“経済・市場”の持つ類似性に着目したコラム集
恋愛に関する心理・行動を、経済学的な観点から著者の経験談も織り交ぜながら気軽に面白く分析した新書です。経済雑誌の連載コラムを書籍としてまとめたものなので、それぞれのトピックが一話完結型になっており、短い空き時間でもさらりと読み終えることができます。自分の好きなタイプの異性や自分と相性が合う異性を求める『自由恋愛』は、財の需要と供給によって価格が決まる『自由市場経済』になぞらえられることがあり、俗に『恋愛市場(結婚市場)・恋愛資本主義』といった言い方がなされることがあります。 ...続きを見る

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2009/08/25 12:43
勝間和代『起きていることはすべて正しい 運を戦略的につかむ勝間式4つの技術』の書評
本書『起きていることはすべて正しい 運を戦略的につかむ勝間式4つの技術』は、勝間和代の過去の失敗談と現在進行形のセレンディピティ(偶然の幸運)を交えながら、自分の人生をより充実した楽しいものに変えるには、具体的にどうすれば良いのかのヒントを満載した自己啓発書です。 ...続きを見る

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2009/08/21 05:51
小川洋子『貴婦人Aの蘇生』の書評
私の母方の伯父は、地質学を研究して海底油田の調査をする仕事をしていたが、その仕事を辞めてからは職を転々としたり、色々と怪しげな事業に手を出しては失敗を繰り返していた。気が向くままフワフワと仕事を渡り歩き、地に足がつかない『自由人』としてのライフスタイルを謳歌していた伯父は、真面目さと堅実さを絵に描いたような常識人である私の父母とは反りが合わなかった。私の父親は大学の法学部の教授で、大学での講義と法律の本を読むだけで人生を終えてしまったような堅物であり、専業主婦の母親は規律正しい家庭生活を整えるこ... ...続きを見る

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2009/08/17 19:24
佐藤賢一『女信長』の書評:織田信長を“女性の御長”として描いた異色の歴史小説
織田信長と言えば『鳴かぬなら 殺してしまえ ほととぎす』の俳句に象徴されるように、自分に逆らう者を徹底的に殲滅した癇癪持ちの短気な暴君というイメージがあります。もちろん、歴史上の織田信長は男性ですが、『女信長』はそのタイトルのまま、『天下布武』を目指した織田信長が“女性”だったという大胆な仮定で書かれたフィクションの歴史小説です。武力で日本全土を統率して陋習を廃そうとした豪腕の信長が、実は色白で細身の美貌をたたえた女だったという前提は荒唐無稽なものですが、小説を読み進めていくうちにその違和感は自... ...続きを見る

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2009/08/09 21:49
伊坂幸太郎『魔王』の書評:ファシズム(群集心理)の不安と安藤兄弟の超能力を巡る物語
自分が頭の中で念じている内容を『他人の口』から喋らせることができるという超能力(腹話術)を持つ会社員の安藤が、閉塞した日本に忍び寄るファシズム(全体主義)を警戒して阻止しようとする。経済が悪化して景気低迷が続く日本では、失業率が史上最悪となり、国民の心は希望の無い諦観に緩やかに包まれていた。国内の政治・経済に活路を見出せない国民の感情的な鬱積は、アメリカ・中国・朝鮮半島などへの対外的な不満や怒りへと向け変えられ、政府の弱腰で妥協的な外交は厳しくバッシングされている。 ...続きを見る

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2009/07/16 16:04
竹内裕『日本の賃金――年功序列賃金と成果主義賃金のゆくえ』の書評:賃金制度・企業業績・モチベーション
日本企業の『人事制度・賃金制度』の仕組みについて詳述した本書では、企業の業績向上とサラリーマンのモチベーションアップにとって、どのような人事・賃金制度が望ましいのかを歴史的な視点を交えて多角的に考察している。サラリーマン(会社員・公務員)は『何』に対して賃金(給与・賞与)を貰っているのだろうかという原理的な部分を紐解きながら、『年功給・年齢給・職能給(安定的賃金)』と『職務給・成果給・年俸制(変動的賃金)』のバランスのあり方を問い掛ける。 ...続きを見る

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2009/07/06 23:13
ユン・チアン『マオ 誰も知らなかった毛沢東 上』の書評:毛沢東はいかにして中国の支配者となったか?
共産主義国家を目指す『中華人民共和国』を1949年に建設した中国共産党のリーダー、毛沢東。日本人であっても近代中国の絶対的独裁者として君臨した毛沢東(1893-1976)の名前を知らない人はまずいない。毛沢東が指導して膨大な数の犠牲者を出した無謀な生産倍増計画の『大躍進』や原理主義的な思想改革運動の『文化大革命』についてもよく知られているが、毛沢東がどのようにして中国共産党のトップに上り詰め、蒋介石率いる国民党に勝利したのかの詳細を知っている人は少ないのではないだろうか。本書は、物語形式で読める... ...続きを見る

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2009/06/29 09:43
佐藤賢一『カルチェ・ラタン』の書評:青年ドニ・クルパンの“自立”に向かう友情と性的成熟の物語
パリ有数の資産家クルパン水運の次男であり、純情過ぎるが故に女性が苦手なドニ・クルパンとパリ大学神学部が輩出した女好きの俊英マギステル・ミシェルの友情を中心にして、16世紀パリの『キリスト教改革(神学論争)』と『男女の性愛の葛藤』を小説化した作品である。 ...続きを見る

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2009/06/13 07:10
佐藤賢一『小説フランス革命U バスティーユの陥落』の書評2:人権宣言と憲法制定で紛糾する議会
武装蜂起の英雄に瞬時に担ぎ上げられたカミーユ・デムーランは、パリ市民に対して『武器をとれ』と呼びかけたものの、実際には正規の軍隊に敵対して戦えるような小銃・火器などの武器はほとんど無かった。『武装』といっても実際には、家庭にある包丁やナイフ、農具などを持ってきているだけだったり、軍隊に投げつけるために拾った瓦礫(石つぶて)を集めているだけであった。こんな貧弱な武器で本当に、『銃器・刀剣・騎馬・大砲』で重武装して訓練された国王の軍隊・傭兵と戦って勝利することなどできるのだろうかという不安を抱きつつ... ...続きを見る

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2009/05/30 14:53
佐藤賢一『小説フランス革命U バスティーユの陥落』の書評1:第三身分の市民の武装蜂起
西欧諸国に自由化・民主化をもたらす起爆剤となった『1789年のフランス革命』を題材にして書かれた佐藤賢一氏の小説である。フランス革命に主要な役割を果たした人物たちの心理描写が実に繊細で迫真的に描かれており、特に、自己の臆病と卑屈を乗り越えて『民衆の武装蜂起』を指導する青年弁護士カミーユ・デムーランの感情の揺れや興奮の高ぶりを書き記す滑らかな筆致は見事である。 ...続きを見る

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2009/05/30 14:48
村上龍『半島を出よ 上下』の書評
村上龍の大部の長編小説だが、北朝鮮の特殊部隊である『高麗遠征軍(こうらいえんせいぐん)』が近未来(2011年)の日本に解決困難なテロリズムを仕掛けてくるという政治サスペンスである。北朝鮮のミサイル実験や核開発問題などを考慮するとタイムリーな物語設定であるが、北朝鮮の兵士ひとりひとりの人物像と心の揺れの詳細な描写により、単純な勧善懲悪の筋書きにはなっていない。必ずしも極東の軍事情勢のみを主題に置いているわけではなく、村上龍の『人物描写を掘り下げる労力』は日本人の登場人物よりも北朝鮮軍人の登場人物に... ...続きを見る

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2009/05/20 06:35
勝間和代『会社に人生を預けるな リスク・リテラシーを磨く』の書評:終身雇用制の問題とリスク教育
『会社に人生を預けるな』という刺激的なタイトルであるが、本書の主題は自分の人生のリスクを主体的に引き受けてコントロールすることによって、『不確実な未来』に備えることにある。個人も会社も国家も『不確実な未来』に向かうベクトル上にあるリスクに恐怖して、リスクを『回避すべき危険』としか認識していないが、リスクは『不可避な危険』であると同時に、危険度に見合ったリターンをもたらす『分析して引き受けるべきチャンス』でもある。 ...続きを見る

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2009/05/18 04:29
小飼弾の『仕組み』進化論の書評
仕事を『単発的な労働』から『循環的な仕組み』に作り変えていくためにはどうすれば良いのかのヒントが詰まった本ですが、仕組みを作る目的は大きく分けると『効率性の向上』と『生存適応度の向上』に帰結してきます。個人が自らの力量とアイデアで安定的かつ効率的に作動して、価値や報酬を生み出す“仕組み”を作り出すのは現実問題としては至難の業であり、そのために大半の人は“既存の仕組み(いわゆる企業体)”と相互依存的な契約を結んで働くことになります。 ...続きを見る

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2009/04/28 16:06
『吉本隆明の声と言葉。その講演を立ち聞きする74分』の感想:人間が投影された“話し言葉”を聴く悦び
『ほぼ日刊イトイ新聞を運営するコピーライターの糸井重里(1948-)が、現代思想の巨人と評されることのある思想家・吉本隆明(1924-)の細切れの講演を編集したCDブックスです。吉本隆明の著作や対談集を以前に何冊か読んだことはあったのですが吉本氏の肉声を聞いたことはなく、この本に付属しているCDのダイジェスト版の講演で初めて聞いたのですが、『技巧的な完成された語り』ではなく『情趣的な体当たりの語り』を楽しむことができました。 ...続きを見る

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2009/04/11 00:23
童門冬二『内村鑑三の「代表的日本人」』の書評:西郷隆盛・上杉鷹山・二宮尊徳・中江藤樹・日蓮
内村鑑三(1861-1930)は東京英語学校(東京大学の前身)で英語教育を受けた『英語名人世代』の代表格であり、日本に一神教の神に帰依するキリスト教信仰を導入した人物として知られる。内村鑑三は『少年よ、大志を抱け』の名言で有名な札幌農学校(現・北海道大学)の初代教頭ウィリアム・スミス・クラーク(1826-1886)の薫陶を受けて、メソジスト(プロテスタントの宗派)のキリスト教徒に転向した。 ...続きを見る

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2009/04/05 12:22
堀江貴文『徹底抗戦』の書評
2006年1月16日に、証券取引法違反の容疑で六本木ヒルズのライブドア本社に東京地検特捜部が強制捜査に入り、その後間もなく、ライブドアトップの堀江貴文社長や宮内亮治取締役が逮捕された。それまでのライブドアは旭日昇天の破竹の勢いで、M&A(買収・合併)や株式分割を繰り返し飛躍的に『事業規模・時価総額』を拡大させて日本のIT業界を牽引しており、堀江貴文社長は“ホリエモン”という愛称で時代の寵児となりマスメディアに持てはやされていた。 ...続きを見る

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2009/03/28 11:22
京極夏彦『邪魅の雫』の書評:“毒の雫”を持つことによる危険な誘惑と男女の別離に絡みつく情念
陰陽師の拝み屋で古書店を営む中禅寺秋彦(ちゅうぜんじあきひこ)が、“言葉の呪力”で『憑き物落とし』をする京極夏彦の京極堂シリーズを何年ぶりかに読んだ。想像妊娠をトリックに用いた『姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)』や戦時中の科学研究が絡んだ奇怪な事件を題材にした『魍魎の匣(もうりょうのはこ)』から京極堂シリーズを読み続けているが、最近は新作が出たからといってすぐに読むというわけでもなくなっている。 ...続きを見る

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2009/03/07 16:35
島田荘司『帝都衛星軌道・ジャングルの虫たち』の書評:妻の突然の失踪を巡る謎と夫の絶望からの回復
それまで女性に全く縁が無かった信用金庫に勤める銀行マン紺野貞三(こんのていぞう)が、行き着けの定食屋『ひょっとこ』で見初めた美砂子(みさこ)にダメ元で声を掛けてデートに誘い、あっさりとOKを貰う。風采が上がらない真面目だけが取り得の紺野貞三だったが、堅い安定した仕事をしているだけに、お見合いの話は両親や上司から何度も舞い込んでいた。しかし、過去に女性と付き合ったことが無かった貞三は、自分の好みからかけ離れたお見合い写真を見て断り続け、結婚する前に一度で良いから少し見栄えのする美人と付き合ってみた... ...続きを見る

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2009/02/25 09:03
伊坂幸太郎『砂漠』の書評:『砂漠(現実社会)』へと乗り出していく大学生たちのモラトリアムの思い出
5人の大学生のモラトリアムの期間と友情・恋愛のプロセスをテーマにした小説ですが、いかにもありそうな人間関係の展開と各場面のエピソードが、上手く学生生活や恋愛関係のリアリティを浮き立たせています。伊坂幸太郎という作家は、日常的な人間の行動や発言を『小説の表現』に自然に乗せることがかなり上手いと感じますが、『砂漠』では主人公の北村の『冷めている鳥瞰型の態度』が、友達や異性との出会いを通して徐々に本人が意識することも無く崩れていく過程を軽快な筆致で描いています。 ...続きを見る

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2009/02/07 10:53
童門冬二『妖怪といわれた男 鳥居耀蔵』の書評
水野忠邦(1794-1851)の復古的な『天保の改革』に己の人生のすべてを捧げて歴史の狭間に散った幕閣・鳥居耀蔵(とりいようぞう,1796-1873)の伝記小説。耀蔵の“耀(よう)”と甲斐守の“甲斐(かい)”の音を合わせて『妖怪』の異名を取ったとされる鳥居耀蔵は、江戸南町奉行・目付として市中の厳しい風紀粛清・文化統制を行い、改革方針に逆らう一切の人間を強権で握りつぶそうとした余り評判の良くない人物として知られる。 ...続きを見る

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2009/02/06 14:28
平野啓一郎『決壊 上下』の書評:人間の“生きる意味”の錯綜と格差社会に蓄積する無力感の恐怖
格差社会や無差別殺傷事件、将来不安、少年犯罪、ネットでの犯行予告、うつ病の増大の根底にマグマのように蓄積している『ルサンチマン(弱者の怨恨・憎悪)』を文学作品として昇華させた作品であるが、元々どちらかというと暗いトーンの作品が多い平野啓一郎の著作の中でもその陰鬱さと虚無感が際立っている。一応、物語の後半で良介と『悪魔』が対峙する場面では『庶民的幸福の救済と勝利』が準備されているのだが、それでも良介と佳枝・良太の平凡な家庭生活の幸福が突然足元から叩き壊されていくプロセスには胸が痛くなるし、『破滅的... ...続きを見る

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2009/01/21 07:45
貴志祐介『新世界より 上・下』の書評:倫理的な人々が構築する“完全な世界”と“人間の原罪”
戦争も争いも犯罪も環境破壊もない『完全無欠な世界』はどのようにすれば建設できるのだろうか?あなたがそういった完全な平和と秩序に覆われた理想の世界や倫理的な人間のみによって構築される社会を夢想したことがあるならば、貴志祐介の『新世界より』はかなりおすすめの小説であり一度は読むべき価値があると思う。ロールプレイングゲーム(RPG)のような冒険物語の構成によって綴られていて、一見するとSF・ファンタジー小説のライトノベルのような読み応えなのだが、ストーリーが先に進むにつれてその印象は良い意味でかなり変... ...続きを見る

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2009/01/20 17:57
島田荘司『UFO大通り/傘を折る女』の書評:“二つの中篇小説”を“一つのトリック(謎解き)”でつなぐ
島田荘司の御手洗潔シリーズの作品ですが、表題の『UFO大通り』ではガソリンスタンドの元店員の変死と宇宙人とUFOを家の近所で見たという老女小平ラクさんの証言が計算された物語のプロットの中で上手く結び付けられていきます。奇妙な状況で亡くなっていたガソリンスタンドの元店員・小寺隆の死亡の謎は合理的に納得できるものになっていますが、小寺の婚約者・柴田明美が銀色に輝く顔になって死亡した状況の説明はやや牽強付会のような感じも受けます。 ...続きを見る

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2008/12/29 13:06
有川浩『図書館内乱』の書評
図書館と図書館司書、メディア規制を題材にとったちょっと変わった色合いの小説ですが、『図書館戦争』という前作を読まずにこの『図書館内乱』を読んだので登場人物のキャラクターと人間関係に少し手間取りました。ウェブで検索してみると『図書館戦争』シリーズとして『図書館危機』『図書館革命』などがありますが、恋愛小説的なストーリー展開やトレンディな場面が織り込まれていることもあり、少女漫画や映像作品としても展開されているようです。 ...続きを見る

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2008/12/29 08:22
香山リカ・五木寛之『鬱の力』の書評:「躁の時代」と「鬱の時代」の循環に適応するための考える視点
ポップで読みやすい心理学関連の本を多数出版している香山リカと『百寺巡礼』など仏教関連のエッセイなどを精力的に書いている五木寛之の対談本です。現代日本に蔓延している『鬱の気分』を、精神疾患としての臨床的な『うつ病』と人間本来の思考力に内在する『鬱の傾向』とに分類して、『鬱』を完全には排除できない人間の本性を肯定的に受け止め、『これからの現実』を生き抜いていくにはどうすれば良いかを語り合っています。 ...続きを見る

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2008/12/21 00:32
伊坂幸太郎『重力ピエロ』の書評:性愛・家族・内面の倫理を巡って紡がれる『罪と罰』の物語
伊坂幸太郎のミステリー小説を初めて読んでみましたが、軽快で読みやすいウィットの効いた文章と個性的な登場人物の取り交わす哲学的な会話が印象に残る作品で、『性』と『生』の悲愴感溢れる相関を照射しながら進むストーリーは人を引き込むものがあります。現代小説で人気の高いベストセラー作家には、東野圭吾や宮部みゆき、桐野夏生、重松清など色々な作風の小説家がいますが、伊坂幸太郎もそれらの作家と並ぶような『創作世界への誘引力』を持っており、物語の先を知りたいと思う読者の視線と時間を心地よく奪っていきます。小さな謎... ...続きを見る

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2008/12/09 14:03
村上憲郎『村上式シンプル英語勉強法』の書評:“完全主義の罠”にはまり込まない実践的な英語学習
Google日本法人の社長である村上憲郎さんが書いたシンプルな英語勉強法の本ですが、本書は『実用的な英語を身に付けるにはどうすれば良いのか?』という具体的な方法論のみに焦点を当てた本です。実際の英会話では良く『習うより慣れろ』と言われますが、本書も『試験のための語学』ではなく『実用のための語力』を伸ばすためにはどのようなトレーニングをすれば良いのかという視点を取っています。 ...続きを見る

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2008/11/29 12:28
平野啓一郎『あなたが、いなかった、あなた』の書評
数ヶ月前に村上春樹の短編集『東京奇譚集』を読んだまま書評を書きそびれていたが、村上の短編集を興味深いストーリーと人物で関係性のエロスをメタファー化した作品と評するならば、平野啓一郎の『あなたが、いなかった、あなた』は小説を叙述する多様なテクニックを駆使しながら平野の日常風景や人間観を巧みに切り取った作品のように感じた。現代小説には小説の物語性や人物の描写といったコンテンツとは別に、『レイアウト・フォント・図版の修飾』による文章の視覚効果に配慮した作品があるが、本作の中では『女の部屋』『母と子』『... ...続きを見る

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2008/11/15 04:38
レフ・トルストイ『イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ』の書評
『イワン・イリイチの死』は、『戦争と平和』や『アンナ・カレーニナ』で知られるレフ・トルストイ(1828-1910)の後期の代表作の一つである。過去に『戦争と平和』を読んだ時には、作品自体の長さと写実的な描写の回りくどさに辟易した記憶があり、一般に冗長で読みにくいといわれるドストエフスキーと比較してもトルストイの作品には若干の苦手意識を持っていた。実際、トルストイの作品を読んだのは10年以上ぶりだったのだが、本作『イワン・イリイチの死』は中篇であること、こなれた文体の新訳であることもあり現代小説の... ...続きを見る

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2008/11/07 13:20
エリザベト・ルディネスコ『ジャック・ラカン伝』の書評
『ジャック・ラカン伝(河出書房新社)』はエリザベト・ルディネスコの原書を藤野邦夫が翻訳した本だが、邦訳されたジャック・ラカンの伝記ものでは最も詳細な解説が為された作品だと思う。『ジャック・ラカン伝』は本そのものの版型が大きく内容も重厚長大で、ラカンの私生活の細々した部分や当時のフランス思想界の時代的背景の解説にまで踏み込んでいるので気軽に持ち運んで読めるような本ではない。また、ジャック・ラカンの思想や精神分析のアウトラインをざっと読みたいというような読者に向いている本ではなく、どちらかというと今... ...続きを見る

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2008/11/02 10:53
池田信夫『ハイエク 知識社会の自由主義』の書評:合理主義的な計画経済・社会設計に優越する自生的秩序
池田信夫が近代哲学と経済学の歴史を振り返りながら、オーストリア生まれの新自由主義者で経済学者のフリードリヒ・A・フォン=ハイエク(1899-1992)の思想・理論の要点を分かりやすくまとめた新書である。フリードリヒ・ハイエクは一般的には『自由市場の競争原理』と『個人の精神的自由』を重視する新自由主義者(リバタリアン)とされるが、本書では近代思想が到達した合理的経済人(ホモ・エコノミクス)や理性主義を批判して『自由経済の有用性・自生的秩序の効率性』を論証したハイエクの実像に迫っている。なぜ、ケイン... ...続きを見る

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2008/10/28 09:28
森博嗣『キラレ×キラレ Cutthroat』の書評
いつの間にか『φは壊れたね』から始まり『ηなのに夢のよう』に続く森博嗣の“Gシリーズ”が一段落していたようで、『イナイ×イナイ』から始まる“Xシリーズ”というのが単行本化されていました。Gシリーズの“G”は「Greek(ギリシアの)」を意味していましたが、Xシリーズの“X”はタイトルに必ず含まれる「×」を指しているようです。登場人物や時間経過など『物語世界の背景』は西之園萌絵と犀川創平が主役を務めるS&Mシリーズと若干の連続性が見られますが、ミステリー小説としての複雑性や思想的な密度はGシリーズ... ...続きを見る

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2008/10/28 00:27
小飼弾・山路達也『弾言 成功する人生とバランスシートの使い方』の書評
ブログ『404 Blog Not Found』を書いている小飼弾氏が、現代社会を自分らしくサバイブするヒントや自分の社会的価値を高めるノウハウについて弾言(断言)している本です。いわゆる成功哲学や自己啓発の本として読める部分もありますが、人生・社会・ビジネス(事業運営)・環境問題について小飼氏の個性的な考察も所々に加えられており、ブログのように一つ一つのテーマがコンパクトな文章量にまとめられているので、『自分の興味が惹かれたタイトル』だけを拾い読みしても面白いと思います。人生・仕事の悩みや社会の... ...続きを見る

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2008/10/11 12:38
村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』の書評:“走ること”と“書くこと”を継続する原動力
村上春樹が『書く人』であることに加えて『走る人』であることを初めて知った。本書は、村上春樹が『走ること』について語りながら、自分の私生活と執筆にまつわる事柄を率直に振り返っている日記形式の随筆である。自叙伝的に村上が自分の人生と執筆のあらましをラフな言葉で語っていくのであるが、村上の私生活と作家活動の根底にはフィジカルに走り続けるという単純な反復活動があった。私は村上春樹の小説はすべてとは言わないがその大半に目を通してきているものの、村上春樹自身がどういった人物であるかどのような日常生活を送って... ...続きを見る

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2008/09/21 17:43
桐野夏生『グロテスク』の書評:2
第6章『発酵と腐敗』では、名門のQ女子高を卒業して東大医学部に進んだ秀才ミツルの人生の挫折と、Q女子高を退学したユリコと斡旋役の木島高志のその後の転落について語られるが、年齢を重ねるにつれて人間の悪い部分や醜い要素が強調されるという意味での『発酵と腐敗』は本書全体を暗喩するメタファーでもある。あらゆる男を誘惑する完成された美貌を持ち自由奔放な“性”を生きたスイス人とのハーフのユリコは、加齢現象による美の衰退に歯止めをかけることができず、ウエストが太ってスタイルが崩れ野暮ったい厚化粧をして客を誘う... ...続きを見る

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2008/09/07 05:10
桐野夏生『グロテスク』の書評:1
『グロテスク』は、スイス人の父親と日本人の母親から生まれた対照的な容姿と性格を持つ二人の姉妹、姉の“わたし”と妹の“ユリコ(百合子)”を巡る小説で、そこに勤勉な垢抜けない同級生の“佐藤和恵”と学校一の秀才で東大医学部に進んだ“ミツル”のエピソードが加わってくる。第1章『子供想像図』と第2章『裸子植物群』では、P区役所のアルバイトをする“わたし”のモノローグ形式で妹の“ユリコ”と友人の“佐藤和恵”について語られる。全く異なる人生の道筋を歩んできた奔放なユリコと実直な和恵が共に娼婦になり、中国人の若... ...続きを見る

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2008/09/07 05:03
重松清『疾走』の書評
重松清の小説の多くは『家族の愛情』や『人間関係の喪失』をテーマにしているが、この『疾走』という作品では『家族的なものの徹底的な剥奪』がテーマとなっており、今までの小説とはやや異質である。『疾走』では、社会構造の暗部にダイレクトに晒された少年少女の苦悩と絶望が生々しく描かれているが、未熟な少年の人生を保護してくれる『家族的なもの』をすべて剥奪されたシュウジに、容赦のない性と暴力の欲望の疾風が絶えることなく吹き付けてくる。大人でも耐えられず逃げ出したくなるいじめ・屈辱的な性と暴力・寄る辺のない孤独…... ...続きを見る

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2008/08/19 10:15
重松清『カシオペアの丘で 上・下』の書評
“シュン・トシ・ミッチョ・ユウちゃん”の4人の幼馴染みが、人工衛星ボイジャーを見るために親に内緒で夜中に抜け出しカシオペアの丘にのぼった。1977年に小学校4年生だった彼らの頭上に広がる北海道・北都市の夜空は、雲ひとつない見渡す限りの満点の星空……4人はこのカシオペアの丘に遊園地ができればいいと声を揃えて語り、その夢は十年以上あとに赤字財政を積み重ねる北都市の公共事業として実現する。その『カシオペアの丘』と名づけられた遊園地の園長になったのは、子ども時代の事故がきっかけで車椅子に乗るようになった... ...続きを見る

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2008/08/02 08:46
河野稠果『人口学への招待 少子・高齢化はどこまで解明されたか』の書評3:人口転換論が示す人口動態
『第4章 人口転換−「多産多死」から「少産少死」へ−』では、人口統計学のグランドセオリーである『人口転換論』についてイギリスの事例などを元に解説しているが、人口転換論とは簡単に言えば『経済活動の発展・教育水準の向上・安定秩序の確立』によって多産多死の段階が終わって少産少死の段階へと転換するという理論である。人口転換論では、政治・経済の近代化に成功して経済的に豊かになった社会は必然的に『死亡率の低下→出生率の低下』という人口動態の変化を経験することが示唆されているが、工業化・都市化・教育制度の発展... ...続きを見る

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2008/07/25 00:49
河野稠果『人口学への招待 少子・高齢化はどこまで解明されたか』の書評2:人口モメンタムの加速度
『第2章 生命表とその応用』では、形式人口学の始祖のグラントとハレー彗星の発見者ハリーが作成した『生命表(死亡表)』の読み方と意味合いについて書かれているが、生命表とは人口減少の直接的原因となる『死亡モデル(死亡率の年齢別推移の統計データ)』のことである。生命表には『年齢別・男女別・年次別の生存率・死亡率・平均余命』がまとめて記載されているが、生命表はコーホート(同じ年次に産まれた出生集団)の10万人の死亡データとして統計的に処理されている。 ...続きを見る

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2008/07/22 14:59
河野稠果『人口学への招待 少子・高齢化はどこまで解明されたか』の書評1:人口爆発と人口減少の動態
若年層の未婚化・晩婚化の傾向と少子化の進展は密接に結びついているが、『少子化による人口減少のトレンド』は西欧・北欧の先進国をはじめとする世界各地に広まりを見せており、日本一国だけの特殊な現象ではない。本書は『なぜ、少子高齢化が進むのか?なぜ、人口は増減するのか?』という疑問について、『人口学』の基礎知識や方法論を参照しながら解説した新書であり、903円という新書価格を超える豊かな知見と鋭い指摘を得ることができる。 ...続きを見る

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2008/07/20 22:57
森博嗣『ダウン・ツ・ヘヴン』の書評
『ダウン・ツ・ヘヴン』はスカイ・クロラシリーズの『ナ・バ・テア』に続く作品だが、時間軸はスカイ・クロラよりも過去に戻っている。草薙水素(クサナギ・スイト)はまだ管理職になっておらず、現役のパイロットとして生死を賭けた空中戦に参加している。エース・パイロットの草薙水素とクールな少年パイロットの函南(カンナミ)ユーヒチとの出会いの場面も描かれていて、シリーズ全体の人間関係のつながりが見えやすくなってくる。 ...続きを見る

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2008/07/18 16:39
マイケル・J・モーブッシン『投資の科学』の書評2:学際的研究による株式市場の予測とラプラスの悪魔
第9章『すべての鍵はタッパーウェアパーティーにあり』では、営業・勧誘やマーケティングで他者の行動をコントロールする心理的テクニック(行動形成に対する影響力)をまとめたロバート・チャルディーニの『影響力の武器』をもとにして、投資家がはまりやすい心理的な罠について考察している。ロバート・チャルディーニは『影響力の武器』の中で、他者の言動に自分の意思決定が左右されたり合理的な意思決定が困難になる要因として、以下の6つの行動性向を上げている。 ...続きを見る

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2008/07/07 08:54
マイケル・J・モーブッシン『投資の科学』の書評1:投資行動における確率と期待利益のバランス
マイケル・J・モーブッシンの『投資の科学』は、マーケットにおける最適な投資行動について各種の科学的知見を集めたオムニバス形式の書籍である。本書の内容は、株式市場や金融市場で利益(利回り)を得るための『投資行動の分析・予測・アドバイス』だけに留まるものではなく、より良い人生を生きるための効果的な意思決定と最善の問題解決法について多くの示唆を与えてくれる。結果を予測することが不可能な市場や事業に資金を投入する『投資(investment)』は、リスクのある『ギャンブル(gamble)』とは似て非なる... ...続きを見る

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2008/07/07 08:49
森博嗣『スカイ・クロラ』の書評
『スカイ・クロラ』は戦闘機を操縦するパイロットの子供の話であり、近未来的なシチュエーションの中で『無機的な戦争(生存競争のメタファー)』と『生きる意味の喪失』が語られる。『スカイ・クロラ』を読み始めたばかりの頃は、今までの森博嗣の作品とは雰囲気や世界観がかなり違っていて、文字を追いにくいような感じを受けた。恐らく、散香マークBという戦闘機のエンジンやメカニズムの描写が多いことや、物語的連関が無い空中戦のシーンが繰り返し登場することがある種の読みにくさに影響しているのだろう。 ...続きを見る

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2008/06/29 13:02
齋藤孝・梅田望夫『私塾のすすめ――ここから創造が生まれる』の書評3 :ワークスタイルと幸福の条件
第3章『「ノー」と言われたくない日本人』では、終身雇用制が緩やかに崩れかかっている日本の雇用環境において、どのようにして職業アイデンティティやワークスタイルを確立していけば良いのかが語り合われています。齋藤は会社組織への適応方略として『寒中水泳の比喩』を用いながら、自己アイデンティティ(自分のやりたい事)と会社での役割を「期間限定」で思い切って一致させてゆくことを推奨します。 ...続きを見る

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2008/06/27 09:53
齋藤孝・梅田望夫『私塾のすすめ――ここから創造が生まれる』の書評2:ウェブの流儀と教育者の情熱
齋藤孝が『祝祭共有のコミュニティありきの教育』であるのに対して、梅田望夫のほうは『やる気のある個人ありきの教育』であるのが両者のパーソナリティの特徴を顕著に表していて非常に興味深く感じました。齋藤が好きで堪らないという『授業というスタイルの関係性』とは、学びの場に参加している人全員が『自分の上達・成長』を体験して、生徒が『お互いの上達の感動(その上達が必ずしも相対的に素晴らしい上達である必要はない)』を祝祭の時間(空気)の中で笑って共有するということです。究極的には、授業というスタイルの“関係性... ...続きを見る

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2008/06/25 11:50
齋藤孝・梅田望夫『私塾のすすめ――ここから創造が生まれる』の書評1 :志向性の共同体と教育ビジョン
子ども達と直に触れ合いながら教育学の分野で実践を続ける齋藤孝とウェブの最先端を見据えながらビジネスの分野で活躍する梅田望夫の対談本です。未来におけるウェブ技術を駆使した『学習の進歩の可能性』というテーマについて語り合う齋藤孝と梅田望夫ですが、二人がイメージしている『教育活動の具体像・対象範囲』にはかなりのズレがあり、そのズレを補正する共通の理念として『私塾願望』が掲げられます。リアルとネットを架橋して『志を同じくする仲間』が集い『ロールモデルとしての師』と出会うことで、年齢や場所に制限されない『... ...続きを見る

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2008/06/25 11:37
重松清『トワイライト』の書評:積み上げてきた過去の時間と揺らぐ中年期の自己アイデンティティ
家族や子どもを持つようになった39歳の元同級生の男女が、夕刊の告知面を見て小学生時代に校庭に埋めたタイムカプセルを開封するために同窓会に集まる。たまがわニュータウンの団地に住んでいた彼らが通っていた長山西小学校が廃校になることが決定し、40歳になって開封する予定だったタイムカプセルを1年半ほど前倒しして開けることになった。当然、30年近い時間が流れている状況でクラスメイトの全員が集まるはずもなく、小学生時代の思い出や人間関係に郷愁を感じる少数のメンバーだけが集まった。 ...続きを見る

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2008/06/20 11:55
斎藤環+酒井順子『「性愛」格差論 萌えとモテの間で』の書評3:システム社会における性愛の可能性
3章『「ヤンキー」――語られざる一大文化圏』では、ヤンキー文化圏を『現実の恋愛と結婚を最重視する文化・行動様式(ファッション)や消費行動を通した自己主張(自己顕示)の強い文化』として大まかに定義していますが、ヤンキー文化圏には外国ブランドのビジネス・ステイタスなビジネス・ギャンブル産業・性風俗産業・自動車(VIP車)のカスタマイズ・音楽産業・テレビ業界など非常に多くの経済活動が取り込まれており、『内なるヤンキー性(通俗的でキッチュな自己主張の強さ)』を抜きにしては現代の経済社会が回らなくなるとい... ...続きを見る

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2008/06/07 21:58
斎藤環+酒井順子『「性愛」格差論 萌えとモテの間で』の書評2:リアルとバーチャルで満たされる性愛
『2章「おたく」――萌える男たちの心理とは?』と『4章「腐女子」――異性と番う(つがう)よりも同性で』は、バーチャルな虚構のキャラクターに恋愛感情・性愛欲求を一方向的(モノラル)に抱くという意味では共通性があるのですが、男性のおたくのほうが女性の腐女子よりも『現実の異性関係との距離』が若干遠いという特徴があるようです。斎藤環は男性ジェンダーの性愛の特徴を『所有(排他的な独占)』に見出し、女性ジェンダーの性愛の特徴を『関係性(共感的コミュニケーションの密度)』に見出していますが、アニメ・ゲーム・漫... ...続きを見る

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2008/06/05 13:56
斎藤環+酒井順子『「性愛」格差論 萌えとモテの間で』の書評1:結婚・未婚・規範性を巡る男女の意識
『社会的ひきこもり』などひきこもり関連のガイダンスを多く出している精神科医の斎藤環(さいとう・たまき)と『負け犬の遠吠え』で“負け犬”というキーワードを流行らせたエッセイストの酒井順子(さかい・じゅんこ)の対談本ですが、『社会的属性』と『性愛の形態』との相関を対談形式で興味深く読むことができます。格差社会が喧伝される現代では、『所得・資産・職業・社会保障(社会保険)』といったマネーと社会的地位・老後保障の格差に目が行きやすくなっていますが、格差が拡大しても社会秩序が比較的安定している背景には『性... ...続きを見る

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2008/06/05 13:42
桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』の書評2:結婚と労働の規範性の相対化と現代の自由社会を生き抜く覚悟
人々に共有される社会規範としてあった一定の年齢で男女が結婚をして子供を産み育てるという『共通のゴール』が現代からは失われつつあり、男女の役割も相対化が進んできているため、現代では『こうすれば大丈夫・この選択のほうが望ましい・このようにすべきだ』という社会(多数派)の側からの価値の承認というのが極めて弱くなっている。その分、『他人と違う属性(結婚・出産・就労・性愛にまつわる少数派の属性)』を持つということに対する『世間の抑圧感(偏見・差別)』から個人はかなり解放されたが、そのメリットと引き換えに『... ...続きを見る

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2008/05/18 23:06
桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』の書評1:戦後から現代に至る社会の世相を反映した“三世代の女性”の物語
桜庭一樹という作家の小説は今まで読んだことがなかったが、『赤朽葉家(あかくちばけ)の伝説』は日本社会の規範と世相(流行)の変化を『三代の女の歴史』を通して描いた小説で結構楽しく読むことができた。戦後間もない時代を生きた女性から、現代を生きる女性へと移り変わる歴史は、『戦後の貧しさとイエ制度の名残・高度経済成長と女性の専業主婦化・政治(全共闘)の季節の終わり・記号的な消費文明と性道徳の緩和・男女同権と価値基準の多様化』によって目まぐるしい価値観の変化を体験させられた歴史であった。今でも昔ながらの結... ...続きを見る

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2008/05/17 16:59
梅田望夫『ウェブ時代 5つの定理』の書評2:若者を応援する大人の流儀とインターネット
追記ですが、本エントリーのURIに著者である梅田望夫さんがリンクを貼ってくださっていることに気づきました(My Life Between Silicon Valley and Japanの4月21日分の記事)。一般読者のエントリーに著者がフィードバックを返してくれることは非常にありがたいことであり、著者本人が自分の感想に目を通してくれたことを実感できるというのもウェブ時代に特有の貴重な体験であると思います。自分が書いた記事をいつも以上の多くの閲覧者に読んで貰えた事を大変嬉しく感じると同時に、また... ...続きを見る

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2008/04/22 08:44
梅田望夫『ウェブ時代 5つの定理』の書評1:ポジティブな金言と主体的な人生の可能性
梅田望夫さんが精選した『ウェブ時代の金言』はビジネスの成功とポジティブな希望を志向する言葉の群れであり、一つ一つの言葉の中には『仕事(起業)のヒント』とは別に『生きる姿勢』への問いかけが含まれています。『ウェブ時代 5つの定理』では、理想的な未来のビジョンや先進的な思考過程を言語化するビジョナリーの金言が、5つのカテゴリーに分けて収録されています。興味を惹かれた定理の言葉から読み進めていく内に、絶え間なく変化する現代社会(情報化社会)を生きる勇気や未来の世界への知的好奇心が高まってくるような感じ... ...続きを見る

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2008/04/20 20:14
セス・ゴーディン『ダメなら、さっさとやめなさい!』の書評:仕事や勉強で価値を生み出す努力の方向性
『勝間和代のインディペンデントな生き方』の書評で、経済活動としての仕事(職業)では『努力の方向性』が重要になるという話をしました。セス・ゴーディンの『ダメなら、さっさとやめなさい!』は、何に時間や労力のリソースを振り向けるべきなのかという問題意識に絞って書かれたコンパクトな本です。冒頭の『古くからの格言は間違っている』という前書きの中に、『この目標は、本当に骨を折るだけの価値があるのか?』という言葉がありますが、私たち一人一人に与えられた人生の時間と能力は有限ですから、限られた時間を何に重点的に... ...続きを見る

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2008/04/16 01:09
Amazonのインスタントストアの機能で、“ESD ブックストア”を作成してみました。
amazon.co.jpがアソシエイトで用意しているインスタントストアの機能を利用して、“ESD ブックストア”という簡易型のウェブショップを作成してみましたので、書籍紹介に興味のある方はぜひアクセスしてみてください。ウェブサイトのほうでもHTMLファイルでAmazonの商品を紹介していますが、インスタントストアのほうが『ページ作成のコスト(商品のアップロードと削除のしやすさ)』と『ページ内の商品の一覧性(一ページのコンパクトな構成)』で優れているので、新刊を紹介する場合などにはESD ブックス... ...続きを見る

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2008/04/04 19:50
『勝間和代のインディペンデントな生き方 実践ガイド』の書評:経済的・精神的自立と個人の幸福追求
本書は2006年1月に勝間和代氏が書いた『インディでいこう!』のリメイク版ということですが、基本的には、これから就職活動をしようという女性に向けて『職業キャリア(人生設計)の大まかなビジョン』を提示した自己啓発的な内容になっています。前書きでも、20〜30代の女性向けに書いた本とされており、雇用情勢や将来保障が不安定になる中でインディペンデント(自立的・自律的)な生き方をするにはどうすれば良いのかをテーマにしているとあります。一般的な新書と比較してもページ数が少ない薄手の本なので、通勤途中や講義... ...続きを見る

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2008/03/13 11:21
森博嗣『Θは遊んでくれたよ』『τになるまで待って』の書評
森博嗣の小説を読んだのは、真賀田四季シリーズの『四季 春・夏・秋・冬』を読んで以来でしたが、『φ(ファイ)は壊れたね』から続くGシリーズはS&MシリーズとVシリーズの続編のような形式になっています。お嬢様の大学院生・西之園萌絵と工学部助教授の犀川創平を主役とするS&Mシリーズが『すべてがFになる』で始まったのが、Amazonを見てみると1998年ですからかれこれ10年間続いているわけですね。 ...続きを見る

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2008/03/01 05:52
宮城谷昌光『管仲 上下巻』の書評2:“人の己を知らざるを患えず”の精神と自己の人生の肯定的受容
管仲が人民の生活を重視した善政を実際に敷くまでには、天才的な知性を現実世界とリンクさせるために『人間そのものへの関心』と『明るく闊達な人格』を取り戻す必要があった。そして、管仲の遁世的な憂鬱の陰と人格の暗さを晴らしたのは親友の鮑叔と妻の梁娃であった。最後に『母親からの愛情欠損』というトラウマティックな過去と訣別することにより、管仲は生身の人間が織り成す世俗の政治と軍事に真正面から対峙することが出来た。 ...続きを見る

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2008/02/24 04:53
宮城谷昌光『管仲 上下巻』の書評1:“管鮑の交わり”が象徴する永遠不滅の友愛のイデア
紀元前8〜7世紀を生きた管仲(かんちゅう)は斉の桓公を中国大陸の覇者にした名宰相であるが、管仲が歴史に不朽の名を刻めたのは親友・鮑叔(ほうしゅく)の長年月にわたる支援があったお陰である。管仲と鮑叔の不滅の友情から派生した故事成語に『管鮑の交わり(かんぽうのまじわり)』という言葉があるが、本書『管仲』は古代中国の春秋時代に芽生えた管鮑の交わりを中心軸として、管仲の「憂暗」から「栄達」への人生の見事な転換を描ききっている。管仲も鮑叔も、中国全土を統べる周王の権威が衰退し始めた紀元前7世紀に生きた士大... ...続きを見る

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2008/02/23 04:42
太田雄三『英語と日本人』の書評2:“教養・知識としての英語”と“実用・道具としての英語”
『英語と日本人』の中で一番読み応えがあるのが第四章『これからの英語と日本人』であり、この本は1981年に刊行されたものにも関わらず、『英語の勉強法・日本人の語学力』について現代にも通用する本質を見事突いている。『なぜ、日本人は英語が苦手なのか?』という質問をする人は、日本人は学校の英語の勉強が得意な人でも英語の語学力が低いと思っているが、これは半分正しくて半分間違っている。日本の受験レベルの英語をマスターして英語の一般書籍を読みこなせるという人はかなりの数いるはずだが、これらの人は『英会話』がま... ...続きを見る

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2008/02/12 15:00
太田雄三『英語と日本人』の書評1:日本人はなぜ、英語が苦手なのか?英語名人を育てた明治の英語教育
先日解散された教育再生会議の最終報告書には、『英語教育を抜本的に改革するため、小学校から英語教育の指導を可能とし、中学校・高校・大学の英語教育の抜本的充実を図る』という項目があり、世界経済のグローバル化に適応するための英語教育改革が謳われている。よく日本人は中学校で3年間、高校で3年間、大学の教養課程でも2年間の英語の授業を受けるのに、英語の語学力が低くて全く使い物にならないと言われる。日本人ほど英語を勉強している国民はそうそういないのに、英語に投資した勉強時間がまったく実際の英語力に反映されて... ...続きを見る

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2008/02/10 14:08
島田荘司『魔神の遊戯』の書評
個人的な読書履歴を振り返ってみると2000年頃からフィクションの小説を読む頻度がめっきりと減り、その代わりに専門書や各ジャンルの新書(ノンフィクション)に触れる時間が増えた。歴史小説や一般的な小説、軽めのエッセイのような本には時折目を通すのだが、特に、推理小説、広義のミステリーを読む機会はほとんど無くなったと言える状況である。不可能犯罪の解明やフーダニット(犯人探し)をテーマにするミステリー全般が嫌いになったわけではなく、実際に読んでみれば動機(人間関係)や犯行の手法、叙述の順番が緻密に計算され... ...続きを見る

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2008/01/21 09:03
勝間和代『お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践』の書評:2
前回の書評の続きになりますが、第2章『金融商品別の視点』ではその他にも外債投資・外貨預金の特徴や利率についての説明があり、金融資産としての住宅・REIT(不動産投資信託)についても解説されています。勝間氏は各金融商品の特徴を比較した上で、投資の初心者が最も安定的に資産を増やせる可能性が高い金融商品として『ノーロード(売買手数料無料)の投資信託』を上げています。一方、銀行の最大の収益源でありリテール(個人顧客)部門のゴールである『住宅ローン』については、『他の金融資産に投資できなくなること』や『今... ...続きを見る

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2008/01/14 02:32
勝間和代『お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践』の書評:1
『お金は銀行に預けるな』は、慶応大学商学部に在籍中の19歳で公認会計士試験に合格しJPモルガンやマッキンゼーでキャリアを積んだ勝間和代が、『金融・投資の基礎中の基礎』について分かりやすく解説した入門書です。そのため、本書を最も読むべきなのは『今まで普通預金・定期預金以外の金融商品(リスク資産)に手を出したことがない人』であり、『これから車や住宅のローンを組もうかどうか悩んでいる人』であり、『金融の基本的な仕組みを大まかに知っておきたい人』であると言えます。あるいは、働いて得る“勤労所得”以外の“... ...続きを見る

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2008/01/12 05:07
パオロ・マッツァリーノ『反社会学講座』の書評:データと価値観から社会問題を解釈するリテラシーの必要性
『つまらない学問は罪である』と本の帯に掲げてあるように、とっつきにくい学問にエンターテイメント性を加えて、『常識的ではあるがデータ(資料)と矛盾した社会認識』を興味深く反証するという内容になっている。私はウェブサイト版の『反社会学講座』を断片的に読んだ事はあったのだが、ちくま文庫の文庫版で本書が発売されたのを機に、反社会学講座のすべてのテーマに目を通してみたいと思い購入してみた。ウェブ版でも殆ど全ての内容を閲覧できるので、書籍版は買わないなら買わないでも良いと思ったのだが、3年ぶりに手を加えた本... ...続きを見る

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2007/12/17 17:48
ロバート・P・マイルズ『バフェット 投資の王道』の書評:企業価値への長期集中投資と株式市場の軽視
世界の富豪や株式投資の戦略などのジャンルでは必ず出てくる人物として、20世紀で最も成功した投資家のウォーレン・バフェット(1930-)がいる。フォーブスで公開される世界の長者番付では微妙な順位の変動があることもあるが、マイクロソフトの会長ビル・ゲイツに続く世界第二位の富豪としてバークシャー・ハサウェイのCEOのバフェットの名は知られている。Wikipediaの記事では、2006年度の世界長者番付で世界第二位、個人資産は約460億ドル(5兆3800億円)とあるので、未だ破格の資産を持つ機関投資家と... ...続きを見る

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2007/12/09 05:44
リチャード・ドーキンス『祖先の物語 上』の書評2:ホモ・サピエンスから類人猿・サル類への歴史的遡行
人類がその生命の歴史を遡っていく時に、異なる近縁種と初めて合流(ランデブー)するのはチンパンジーやボノボとのコンセスター(共通祖先)である。ドーキンスの『祖先の物語』では、その前に人類(ホモ族)の進化の歴史が『現代型ホモ・サピエンス(新人)→古代型ホモ・サピエンス(旧人)→ホモ・エレクトゥス(原人)』という順番で語られていくが、ヒトと類人猿の厳密な境界線を化石資料や断片的な遺伝子情報から確定することは困難なようだ。 ...続きを見る

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2007/12/01 09:12
リチャード・ドーキンス『祖先の物語 ドーキンスの生命史 上』の書評1:文明社会を構築した人の適応戦略
科学としての進化生物学には進歩主義的な進化(evolution)というものは存在せず、進化という現象に『今よりも優れた存在になる』という意味は含まれていない。進化は自然淘汰(自然選択)と突然変異という二つの原理によって生成される『個体の適応的な変化』であり、悠久の歴史過程における微細なDNAの変異の膨大な累積が『配偶不能な種の変化(小進化・大進化)』を生み出す。進化の方向性は盲目的であり非目的的なので、進化の結果を事前に予測することは不可能であり、客観的に見て複雑で高度な機能を持った生物種のほう... ...続きを見る

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2007/11/30 04:44
梅田望夫『ウェブ時代をゆく ―いかに働き、いかに学ぶか』の書評3:自由主義を取り巻く世論の空気と教育
前回の続きになるが、本書を、世間一般的なワークスタイルや進路選択のアドバイスをしてくれる本として読んでしまうと道を踏み誤ってしまう恐れもある。本書は『高速道路の先(高く険しい道)』に行こうとも『けものみち』を進もうとも、飽くまで『自由な生き方の実現のためのケーススタディと条件』にまつわる本なのである。その為、『自由な生き方』に強い不安やリスクを感じてしまう人や『知的な生き方』に特別な意味づけを見出せない人にとっては、具体的なキャリア選択のビジョンとして本書の内容が役立つか否かはわからないのだが、... ...続きを見る

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2007/11/17 12:36
梅田望夫『ウェブ時代をゆく ―いかに働き、いかに学ぶか』の書評2:好きを貫く事と知的に生きる事
前回の記事では、ウェブ経済圏の最大規模について考えたが、マスメディアや財界の有力企業、ベンチャーキャピタルの主要な関心事は確かに『ウェブビジネスの成長可能性』だった。しかし、大多数の個人にとってウェブは元々大金を稼いだり事業を起業したりするような場所ではなかったのだから、梅田氏が言うように『経済のゲーム』よりも『知と情報のゲーム』にもっと興味を持ってウェブを有効活用することで、ウェブとリアルの中間領域に新たな価値を見出すことが出来るかもしれない。新たな価値とは、自分の新しい生き方のフレーミング(... ...続きを見る

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2007/11/15 13:38
梅田望夫『ウェブ時代をゆく ―いかに働き、いかに学ぶか』の書評1:経済圏と知的情報網としてのウェブ
1990年代後半から続くIT(情報技術)の発達とウェブ環境の普及によって、18世紀イギリスの産業革命に次ぐ情報革命が起きたと言われるが、私たち個々人にWeb2.0(総表現社会)を前提とする情報革命はどのようなインパクトをもたらしたのだろうか。産業構造の概略について考えると、『産業革命』は管理された集権的な工場労働(営利活動)によって全世界に高コスト・高品質な工業製品を大量に頒布することに成功したが、個人と企業(組織)の結びつきは半ば義務的・必然的なものとなり、福利厚生をも担う企業から個人が離れて... ...続きを見る

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2007/11/14 15:14
本田直之『レバレッジ時間術 ノーリスク・ハイリターンの成功原則』の書評
過去の記事で、本田直之氏がビジネス書の多読法について書いた『レバレッジ・リーディング』を紹介しましたが、その時に『レバレッジ時間術』も読んでいたので自分の時間管理法と簡単に比較しながらレバレッジ時間術の書評を書きたいと思います。『レバレッジ・リーディング』では、ビジネス書の多読にレバレッジ(関数的な効用)をかけることで読書を投資行為としていましたが、『レバレッジ時間術』の発想も基本的にそれと同じで時間を『消費(consumer)』せずに『投資(invest)』しようという観点に立っています。 ... ...続きを見る

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2007/11/13 07:53
本田直之『レバレッジ・リーディング』の書評
読書には人それぞれのスタイルがあり、『読書をする目的』によって最適な読書スタイルは変わってきます。読書スタイルは読むスピードや読解の丁寧さ、一冊の本への愛着によって『精読・速読・多読・濫読・愛読(再読)』などに分かれてきますが、一般的には、学習活動や知識習得を目的にする読書では一つ一つの項目を正確に理解していく精読が良いとされています。精読には、書籍の初めのページから順番に読むという意味と一つ一つの項目を丁寧に読解するという意味がありますが、全ての本を初めから終わりまで精読すれば良いというわけで... ...続きを見る

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2007/10/28 19:32
平野啓一郎『葬送 第二部』の書評2:ショパンとドラクロワの「制作への没頭」と「死」のメタファー
前回の記事で『創作と時間間隔』について書いたが、芸術や執筆、創作といった活動の本質は『孤独に耐え得る力』ではないかと思う。実際に相手に会うか会わないかに左右されない『他者との想像的なつながり』を信じられる相手でないと、創作・思索の狂気に耽溺する芸術家(思索家)との人間関係に不信や不快を感じてしまうだろう。本作におけるショパンとドラクロワの友情は、『ショパンの死に目にも駆けつけないドラクロワの酷薄さと罪悪感』を前面に出しながらも、『親友との交流』からさえも自己を疎隔する『創作(仕事)の狂気』に彩ら... ...続きを見る

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2007/10/21 02:34
平野啓一郎『葬送 第二部』の書評1:終わりなき「制作」に取り組む芸術家たちの生
『葬送 第二部』では、第一部の冒頭で描写された『フレデリック・ショパンの葬儀』へと至る悲壮なプロセスが詳細に叙述されていく。繊細な神経を持つ不世出の天才ショパンを絶え間なく苦しめたのは、回復不能な病魔(結核)と彼を見捨てた愛人のジョルジュ・サンド夫人であった。か細い指から至高の音の芸術を創り出すショパンは王侯貴族からその無類の天才をこよなく愛され、音楽家や画家の友人は彼への手放しの賞賛を惜しむことはなかったが、ショパンは末期の病床で心から望んだものの幾つかを手に入れられないままにこの世を去ること... ...続きを見る

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2007/10/19 04:57
福岡伸一『生物と無生物のあいだ』の書評2:生命の一回性と適応性がもたらす機械論的生命観への疑念
前回の記事で書いたこと以外に、『生物と無生物のあいだ』を読む楽しみはもう二つある。一つは『生命とは何か?』という根本的な生命感の刷新に関する記述であり、もう一つは『科学史から見落とされやすい地味な研究者』にもう一度スポットライトを当てて「分子生物学の歩みのプロセス」を再確認できることである。更に、分子生物学の研究現場における実際の作業 ...続きを見る

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2007/09/09 07:02
福岡伸一『生物と無生物のあいだ』の書評1:科学者の研究生活の楽しさと厳しさ
『生物と無生物のあいだ』の帯タイトルには、『読み始めたら止まらない極上の科学ミステリー』と書かれているが、本書の対象とする読者層は、生命の基本的な仕組みあるいは本質に関心がある人であり、自然科学分野の研究者を目指してみたいと漠然と思っている若い人たちではないかと思う。つまり、純粋に『生命とは何か?』という根本命題を考えることが楽しくて仕方がない人であれば娯楽本として読むことができ、これから生命科学分野(遺伝子工学分野)で論文を書く研究者になりたいと思っている高校生にとっては、科学者の具体的な研究... ...続きを見る

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2007/09/08 05:25
ジョセフ・マーフィー『マーフィー わずか「1日」ですべてが変わる!』の書評
書店やウェブで『マーフィーの法則』という言葉をよく見かけた時期がありましたが、普段、人生哲学(成功哲学)や自己啓蒙(ポジティブシンキング)に関する本は余り意識しないこともあり、ジョセフ・マーフィー関連の本は一度も読んだことがありませんでした。本書『マーフィー わずか「1日」ですべてが変わる』は、厳密にはマーフィーの法則というものを一つ一つ解説したものではなく、マーフィーの法則を教えられた人がどのようにして自分の問題や欠点を克服したかという事例集のような構成になっています。その為、具体的な法則や理... ...続きを見る

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2007/09/07 08:09
保田隆明『なぜ株式投資はもうからないのか』の書評2:求められる公正な投資環境の整備と将来不安
前回の記事で触れた『金融市場における格差』についてであるが、第2章『株式投資の理想と現実、そしてワナ』の冒頭でずばり、株式市場は『金持ち(上得意)優位の世界』であると述べ、『金融・株の勉強をすれば儲かる』という理解の落とし穴を指摘している。金融・財務・経営・投資の専門的な高等教育を受けていない素人の個人投資家が、雑誌や書籍のみを頼りに勉強を進めても、一般知識レベルで到達できるレベルには一定の限界がある。金融取引にまつわる最高の教育を長年受け、特別な人脈(情報網)を多く持っている金融分野のエリート... ...続きを見る

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2007/08/22 00:52
保田隆明『なぜ株式投資はもうからないのか』の書評1:米国サブプライムローンの焦げ付きと株式市場の下落
世界経済は昨年来概ね好調に推移していたが、8月初めにアメリカの低所得者向け住宅ローンであるサブプライムローンの焦げ付きによる信用不安が起き、日欧米の世界同時株安が進行している。日米欧の主要銀行は非常事態宣言を発して、即座に40兆円以上の巨額資金を金融市場に投入することで事態の鎮静化を図ったが、下落した株価や投資信託、REIT(不動産投資信託)の基準価額はなかなか回復しない。 ...続きを見る

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2007/08/20 19:21
塩野七生『ローマ人の物語]X ローマ世界の終焉』の書評3:盛者必衰の理に絡め取られたローマ帝国の没落
ローマ帝国の崩壊の瞬間をリアルタイムで直接的に実感したローマ市民は一人もいなかったのであり、ただロムルス・アウグストゥスを廃位した後にオドアケルも含めて誰も皇帝位に就任しなかったことで、西ローマ帝国は歴史の狭間へと消滅したのである。人間に壮年期の絶頂を越えて衰退へと向かう寿命があるように、どんなに強大な勢力を誇った国家(帝国)や民族にもまた成長期から絶頂期を経て、衰退期へと傾斜していく寿命があるのだ。都市国家ローマを原点とするローマ帝国の寿命は、紀元前753年から紀元後476年までの1229年に... ...続きを見る

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2007/07/23 23:11
塩野七生『ローマ人の物語]X ローマ世界の終焉』の書評2:ヴァンダル族の劫掠と全ての力を失ったローマ
ローマ劫掠(410年)後の423年ホノリウスは死去し、西ローマ帝国皇帝にはホノリウスの妹ガッラ・プラチディアが産んだ若干6歳のヴァレンティニアヌス3世が即位するが、実質的な皇帝権力は後見人のガッラ・プラチディアが掌握するところとなる。絢爛豪華なオリエント文化を誇る東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルでも、帝国が東西分裂した395年以降、男性の皇帝ではなくその周囲にいる親族の女性が政治の実権を握るようになっていた。 ...続きを見る

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2007/07/19 02:42
塩野七生『ローマ人の物語]X ローマ世界の終焉』の書評1:安全保障の責務を放棄したローマ皇帝
テオドシウス大帝は全軍指揮権を掌握する皇帝として自ら戦場に立った最後の皇帝(インペラトール)であると言われるが、テオドシウスの子として皇位を継承したホノリウス(西ローマ帝国皇帝)やアルカディウス(東ローマ帝国皇帝)は、もはや軍最高司令官(インペラトール)としての責務を自覚した皇帝ではなくなっていた。 ...続きを見る

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2007/07/17 00:10
ひろゆき(西村博之)『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?』の書評:2
前回の記事の続きになりますが、2ちゃんねるなど巨大掲示板の匿名コミュニケーションの話題に戻ると、この問題の原点は、ここ数年でウェブへの参加者が急激に増大してウェブがコモディティ化したことにあります。その結果、『現実社会(リアル)と仮想世界(ウェブ)の距離感』が急速に縮小して、ウェブの話題が現実社会に持ち込まれる可能性が高くなりました。GoogleやYahoo!の検索エンジンが公共インフラ化してきた側面もあり、『固有名の検索結果』によって企業・個人の社会的評価に影響が及ぶ可能性も出てきました。 ... ...続きを見る

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2007/07/11 14:31
ひろゆき(西村博之)『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?』の書評:1
インターネットの匿名掲示板の象徴である『2ちゃんねる』がさまざまな法的リスクや社会的問題を抱えながらも、なぜ、潰れないのか?について管理人のひろゆき(西村博之)の言葉をインタビュー形式でまとめた新書です。2ちゃんねるに対する評価は正に千差万別であり、『言論の自由の境界線』と『社会的な影響力の是非』を巡って、2ちゃんねるの存在を肯定的に見る人と否定的に見る人とが対立する構造があります。 ...続きを見る

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2007/07/10 12:21
大泉実成『人格障害をめぐる冒険』の書評:2
客観性の高いDSMの統計学的な診断マニュアルからこぼれ落ちてしまうものは、人間の精神障害を解説する具体的な心的プロセスであり、葛藤(苦悩)を生み出す精神力動に対するナラティブな哲学である。つまり、DSMには『個人の内面心理や価値判断のプロセス』に対する共感的関心が致命的に欠落しているので、適切な治療法を選択できる客観的診断はできても、クライアントの内面に深く寄り添っていく主観的理解へつなげにくいという問題が潜んでいる。 ...続きを見る

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2007/07/03 08:31
大泉実成『人格障害をめぐる冒険』の書評:1
司法精神医学に基づく精神鑑定の重要な鑑定事項として、『加害者の法的な責任能力』の判定と『刑罰の適用可能性』の判定があるが、現在の日本の刑法では心神喪失者や心神耗弱者と鑑定されれば刑罰の量刑が減免される可能性が高くなる。私も本書『人格障害をめぐる冒険』を読むかなり前に、過去の幾つかの記事において(最後に挙げる関連URL参照)重篤な精神障害と法的な責任能力の問題について考えてきたが、刑法の責任原理が有効になるためにはその人間に『善悪を判断する自由意志』が存在しなければならない。 ...続きを見る

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2007/07/02 06:29
Amazonが開始した年会費3,900円の“Amazon プライム”とリアルの書店との使い勝手の違い
ECサイト最大手のAmazon.co.jpが、『Amazon プライム』という無料配送サービスを新しく開始しました。インターネットを使った買い物では配送料の高低が購入の決め手になることも多いのでなかなかいいサービスだと思いますが、Amazon プライムの年間利用料が3,900円なので、利用回数の多いヘビーユーザ向けのサービスになります。 ...続きを見る

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2007/06/10 22:29
本を読む人と本を読まない人:子ども時代の『友達との遊び』と『一人での読書』が持つ発達的効用
2chの話題を紹介するブログで『本を読まない人の特徴』というスレッドが取り上げられていましたが、『読書』という外観的には単調な作業を巡って色々な解釈や意見が出ています。本を読む人と読まない人の感情的な対立は、結局、基本的価値観や主観的選好の差異であり、物理的世界における感覚的経験と対人コミュニケーションだけで満足できるのか否かということに行き着くと思います。本を日常的に読むか否かが、人間的な価値の優劣やコミュニケーション・スキルの巧拙に直接的に関係しているとは思いませんが、『本を読む人=内向的・... ...続きを見る

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2007/06/06 01:36
武井麻子『ひと相手の仕事はなぜ疲れるのか―感情労働の時代』の書評:2
『善意の職業(善意の人)』という社会通念によって押されたスティグマ(烙印)に過度に束縛されて過剰適応すると、与えられた社会的役割に機械的に従う無感情なパフォーマー(演技者)になったり、フラストレーション(欲求不満)による攻撃性を爆発させて職業倫理から逸脱したりする恐れが高くなります。 ...続きを見る

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2007/04/03 16:56
武井麻子『ひと相手の仕事はなぜ疲れるのか―感情労働の時代』の書評:1
社会の中での役割や位置づけによって自己の同一性や連続性を確認することを『社会的アイデンティティ』といい、生活を支える為に仕事を持つ多くの社会人にとって、社会的アイデンティティは職業アイデンティティとほぼ同じ意味をもっています。 ...続きを見る

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2007/04/03 16:48
村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の書評
過去に村上春樹の小説では『海辺のカフカ』と『ダンス・ダンス・ダンス』の書評を書いたが、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は、二つの物語がパラレル(同時並行)に進行する形式を採っており、読者は『ハードボイルド・ワンダーランド』と『世界の終り』という二つの“異世界”で魅惑的に展開する物語を忙しく行き来する仕掛けになっている。 ...続きを見る

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2007/03/28 01:45
スティーブン・J・グールド『人間の測りまちがい』の書評3:ロンブローゾの決定論に基づく刑法思想
イタリアの医師チェザーレ・ロンブローゾは、刑法学のテキストに掲載されるほど犯罪心理学に大きな影響をもたらした歴史的人物ですが、ロンブローゾの構想した『犯罪人類学』というのは単純にまとめれば、『犯罪者は、生まれながらに犯罪者としての解剖学的特徴を持つ(サルに先祖返りした身体的特徴を持つ人間が、原始的本能を制御できずに犯罪を犯す)』という生得的犯罪説を肯定するものでした。 ...続きを見る

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2007/01/14 07:13
スティーブン・J・グールド『人間の測りまちがい 差別の科学史』の書評:2
近代統計学の黎明期を築いたフランシス・ゴールトン卿は、優生学を提起する以前にも徹底的に『あらゆる差異を定量化して測ること』に執着的な熱意を燃やした人物であったようで、グールドは『定量化の使徒』という副題をつけています。しかし、本書のタイトルが“測りまちがい”とあるように、自然科学は研究対象となる事物を客観的あるいは計画的に『計測すること』によって始まり、計測して得た『数値データ』を分析したり解釈したりして一般理論へと帰納していく学問的営為ですから、ゴールトンの“客観的計測へのこだわり”は科学者と... ...続きを見る

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2007/01/11 00:05
スティーブン・J・グールド『人間の測りまちがい 差別の科学史』の書評:1
観察や実験によって実証的に仮説の真偽を検証する自然科学(natural science)は、客観的な事実探究の学問として認識されており、普遍的な一般法則を発見することを目的としています。自然科学が普遍的であるというのは、観察条件や実験条件が同じであれば、誰が観察(実験)をしても同じ結果が出るということ、つまり、自然科学が正しいとする法則や理論に異論があれば、誰でも追試(反証)を出来るということです。 ...続きを見る

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2007/01/10 13:35
トーマス・フリードマン『フラット化する世界・上 経済の大転換と人間の未来』の書評:2
『フラット化する世界』とは、発展と成長を目指して絶えず状況と需要が変化し続ける世界のことであり、集団(国家・企業)に対して個人の影響力がより大きくなる中で、現状のまま安定して時間が過ぎる可能性が低くなる世界のことである。相対的に時間の流れるスピードが加速されて速くなり、今まで新しかったことがすぐに古くなり、今まで適応的で有効だった戦略がすぐに無効な戦略となってしまう世界と見ることも出来る。 ...続きを見る

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2007/01/04 09:23
平野啓一郎『顔のない裸体たち』の書評2:複数のアイデンティティを模索する現代のシゾイド人間
エロスの欲求は、二人だけに閉ざされた空間における非社会的で刹那的な関係性においてエクスタシー(脱自己)を迎えることがある。その一方で、社会的な他者の承認を得た継続的な結婚関係(公然の恋人関係)では、社会道徳を嘲弄する行為から生まれる忘我のエクスタシーを得ることは難しい。日常から隔絶した性愛の快楽とは、『日常から隠蔽されたものを暴くこと(非日常性)』であり『性に特化した承認を得ること(性的な自尊心)』であり『道徳規範に偽悪的に違背すること(社会常識からの逸脱)』である。 ...続きを見る

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2006/12/08 01:31
平野啓一郎『顔のない裸体たち』の書評1:ウェブ世界でバーチャル化する出会いの特徴
平野啓一郎の『顔のない裸体たち』の具体的な感想を記述する前に、現代の多様化する『バーチャルな性愛事情』について若干の解説をしておきたい。ここでバーチャルな“恋愛事情”と書かずに“性愛事情”と書いたのは、『顔のない裸体たち』では精神的な信頼や敬愛を前提とする恋愛感情ではなく、『匿名的(バーチャル)な出会い』から始まる支配と服従の倒錯的な性愛関係を中心にして物語が進展していくからである。 ...続きを見る

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2006/12/08 00:50
宮城谷昌光『奇貨居くべし 天命篇』の書評
宮城谷昌光『奇貨居くべし 春風篇』の書評を書いたが、先日、「火雲篇」「黄河篇」「飛翔篇」に続く最終巻の『天命篇』を読み終えた。群雄と賢哲が割拠する戦国乱世を泰然自若として駆け抜けた商賈(商人)の呂不韋は、幾つもの色恋の悲哀と度重なる戦火の悲惨を潜り抜けて成長し、自らの政治的理想を追求する投資の大道へと行き着いた。 ...続きを見る

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2006/11/06 23:37
宮城谷昌光『奇貨居くべし 春風篇』の書評
『奇貨居くべし』の格言は、始皇帝の父となる荘襄王(子楚)を補佐して秦の宰相となった呂不韋(りょふい)の優れた先見の明の故事に基づくものである。春秋戦国時代も末期に差しかかろうという時代に、商賈(しょうこ)の次男として生を受けた呂不韋は商人として各地を遍歴し巨富を築く。 ...続きを見る

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2006/09/13 13:49
ジョン・バッテル『ザ・サーチ グーグルが世界を変えた』の書評
Googleの中核事業である検索サービスの開発と普及の歴史を追い、検索テクノロジーがインターネットに与えた衝撃を解説しながら、未来の検索の可能性を探求する書籍がジョン・バッテルの『ザ・サーチ グーグルが世界を変えた』である。 ...続きを見る

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2006/08/29 12:56
平野啓一郎『一月物語』の書評:時代を問わない伝奇物語の妙味と含意
平野啓一郎の精緻な文章で綴られた短編小説『一月物語』は、現代社会で生きる人々が無意識の彼方へ追いやってしまった『幽玄な異界』を思い出させてくれる伝奇的作品である。 一炊の夢や胡蝶の夢など中国の故事成語を彷彿とさせる夢と現(うつつ)が交錯するストーリーが、難渋な漢字と巧みな修辞によって語られていく。明治時代の深山幽谷を舞台とした妖しくも純潔な恋物語には、現代人の憂鬱と空虚を癒す『伝承文学の知恵』と『普遍的なメッセージ』が込められている。 この本を読了して、曖昧に閉じた『一月物語』の結末に何を見... ...続きを見る

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2006/08/12 23:29
島田雅彦『エトロフの恋』の書評:“現在・過去・未来”を永劫回帰する情愛の記憶と表象
島田雅彦が自身の作家としての命運を懸けたという無限カノン三部作の第三部『エトロフの恋』を読み、無限に循環するエロスの喪失と再来の物語が、現世では克服不可能な恋の障碍を飛越していく展開に心を打たれた。 ...続きを見る

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2006/07/06 02:53
塩野七生『ローマ人の物語]W キリストの勝利』の書評:ギリシア・ローマの伝統の衰退とキリスト教の台頭
紀元前44年、共和政ローマで絶大な権力を得たガイウス・ユリウス・カエサルは、ブルートゥスとカッシウスらに敢え無く暗殺されることになった。 カエサルが構想した少数の政治的リーダーによって国家を統治する三頭政治(カエサル・ポンペイウス・クラッスス)は、共和政体堅持を主張する元老院との対立の中で自壊していった。 ...続きを見る

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2006/06/11 17:06
村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス 上・下』の書評
夢の世界と現実の世界が歪曲しながら不安定に繋がる不思議な場所、社会における関係や役割から生み出されるリアリティがぐらぐらと揺らぐ独我論的な領域……それが『ダンス・ダンス・ダンス』の主要舞台となる札幌のいるかホテルだ。 ...続きを見る

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2006/06/03 02:32
塩野七生『ローマ人の物語W ユリウス・カエサル ルビコン以前』の書評:三頭政治の確立と瓦解
塩野七生の『ユリウス・カエサル ルビコン以前』は、ローマ全体の歴史を復刻する彼女の壮大なライフワーク「ローマ人の物語」シリーズの第W巻である。 第X巻『ユリウス・カエサル ルビコン以後』と合わせて読むことで、ローマ史上最高のカリスマ性を持つガイウス・ユリウス・カエサルという人物の人生と思想の概略を抑えがたい興奮と共に知ることが出来る。 ...続きを見る

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2006/05/05 08:59
頻度依存行動として発生するいじめ現象:『望ましい行動』を取るコスト・リスクによる葛藤
前回の記事で書いた『心でっかちな日本人―集団主義文化の幻想―』の感想の続きを書きながら、集団の中で起こる個人の相互作用について考えてみます。 ...続きを見る

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2006/03/31 13:03
山岸俊男『心でっかちな日本人―集団主義文化という幻想』の書評:行動に結びつき難い人の心
社会心理学の知見をもとにして書かれた山岸俊男氏の『心でっかちな日本人』では、アメリカ人の個人主義と日本人の集団主義のステレオタイプの欺瞞を幾つかの実験を元に反駁し、いじめ現象の心理学的還元に対して『人間は集団内で自分の心(判断)に従った行動を必ずしも取るわけではない』ということを“頻度依存行動と相補均衡”の概念を元にして説得力のある考えが展開されます。 ...続きを見る

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2006/03/30 08:07
三島由紀夫『暁の寺』『天人五衰』の書評の補足:仏教解説に込められた『存在・生命』への思い
下記の引用部分からは、飯沼勲の悲劇的な人生の末路と晩年の切迫した三島由紀夫の心情や悲劇の予兆が重なってしまうかのような印象を受ける。 ...続きを見る

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2006/02/23 15:17
三島由紀夫『暁の寺』『天人五衰』の書評
三島由紀夫の壮大な構想と豪奢な舞台の下に描かれた『豊饒の海』の第3部『暁の寺』は、仏教の信仰厚いタイ(シャム)の地を中心に話が進められる。 ...続きを見る

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2006/02/23 13:21
重松清『ビタミンF』の書評:家庭生活に疲弊し倦怠した人のビタミン剤としての短編集
2001年の直木賞を受賞した重松清の『ビタミンF』という小説を読んで心地よい読後感を得ると同時に、結婚や育児という選択と共に失われていく時と取り戻せない関係の切なさのようなものを感じた。 ...続きを見る

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2006/01/31 20:04
三島由紀夫『春の雪』『奔馬』の書評
前回の記事で、三島由紀夫の『豊饒の海』の各作品を架橋する超越的な古代インドの宗教理念である輪廻転生について説明しました。 『春の雪』と『奔馬』の登場人物である松枝清顕と飯沼勲が輪廻転生の円環によってつながっているという本多繁邦の直感の中で、悲劇的な物語は淡々と流れていきます。 ...続きを見る

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2006/01/15 13:43
三島由紀夫の『豊饒の海』の通奏低音として機能する輪廻転生について
左翼系学生運動が過激さを増す1970年、三島由紀夫(本名:平岡公威)は、陸上自衛隊の市ヶ谷駐屯地で自衛隊に愛国心に基づく決起を促した。しかし、その自立的な民族防衛と天皇中心の国体復帰を志向する先鋭なナショナリズムの目的は挫折し、彼の理想的な死の形式である割腹自殺によって三島は自決した。 ...続きを見る

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2006/01/15 13:30
大江健三郎『個人的な体験』の書評
1994年にノーベル文学賞を受賞した大江健三郎だが、彼の小説家としての評価には、平和主義と護憲を根幹に置く政治的主張と合わせて毀誉褒貶がある。 文筆を生業とする小説家ではあるが、文筆を左派的なイデオロギーと結びつける思想家としての側面も持っているのが大江健三郎である。 ...続きを見る

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2006/01/09 01:45
村上春樹『海辺のカフカ』の書評:2
本来、小説の情景を理論的に解釈すべきではないのだろうが、結局、ジョニー・ウォーカーの猫殺しというのは戦争の無情性とユダヤ人大虐殺であるホロコーストのメタファーになっているのだろう。ジョニー・ウォーカーは、ナチスの官僚や将校がユダヤ人を機械的に虐殺した理由を国家の一員としての職務だと語ったように、アドルフ・アイヒマンが何の罪悪感も感じずに自分の使命としてユダヤ人の大量虐殺を指揮したように、観念的な目的のために無感情に猫を殺していく。 ...続きを見る

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2005/12/18 09:24
村上春樹『海辺のカフカ』の書評:1
村上春樹の筆が描く世界は、何処か儚く、今にも壊れてしまいそうな脆さに満ちていながら、人間の精神と世界のあり方を細くしなやかな鋼線で結び付けている。 その鋼線は冷たくしなやかに私の心を縛り、実存の彼方へと解き放ち、自己と対象の間で親和反応を起こす愛を性のヴェールの中で表現しようとする。 ...続きを見る

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2005/12/16 20:45
平野啓一郎『葬送 第一部』の書評:2
ポーランドという国の歴史を振り返ってみると、文化芸術の振興や都市建築の華麗さという点では諸国に優越するものを数多くもっているのだが、軍事力や政治的ヘゲモニーの点ではいつも周辺国に圧倒されてきた。つまり、ロシア帝国、オーストリア王国、ドイツ第三帝国などの列強によって国土を侵略され占領されて、自国の独立性を侵害された歴史を背負っているのである。 ショパンが生きた19世紀の時代には、ポーランド王国は建前としては独立国であったが、実質的にはロシア帝国の支配下にあり従属国としての地位に甘んじていた。 ... ...続きを見る

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2005/12/01 16:16
平野啓一郎『葬送 第一部』の書評:1
古典文学や純文学というものの衰退が叫ばれて久しい現代日本の文壇において『葬送』のような重厚で悠然とした読み応えのある文学が新たに生み出され出版されたことの奇跡的な幸運に感謝したい。 『葬送 第一部』は典雅な黄金のカバーにウージェーヌ・ドラクロワの肖像を掲げた装丁であり、『葬送 第ニ部』は清冽な白銀のカバーにフレデリック・ショパンの肖像を掲げた装丁である。 両作品を合わせて1280ページという長大な文学作品に相応しい気品溢れる装丁が為されていて、書籍を手に取るとずっしりとした重みを感じる。現在... ...続きを見る

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2005/11/30 02:08
スチュアート・カウフマン『自己組織化と進化の論理』の書評:歴史偶発的な自然観への抗いとしての複雑系
スチュアート・カウフマンの『自己組織化と進化の論理』という進化生物学の大胆な仮説にまつわる書籍を読んだ。 副題に『宇宙を貫く複雑系の法則』とあるように、この本は無数の要素が相互に作用し合い、その作用の結果を予測できない系(複雑系)によって、生命の誕生や生態系のシステム、生命の進化過程を統一的に解明しようとする意欲作である。 ...続きを見る

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2005/11/21 10:31
森博嗣『四季 秋』『四季 冬』の書評:ヒトの才知と成長が醸成するレゾンデートル
森博嗣の四巻組の小説『四季』のうち、前半部に当たる『春 green spring』と『夏 red summer』の書評を以前書きました。 『四季』というタイトル通り、後半部は『秋 white autumn』と『冬 black winter』というタイトルになっています。 ...続きを見る

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2005/10/28 14:03
小川洋子『ブラフマンの埋葬』の書評
古代インドのウパニシャッド哲学からヒンズー教に至る流れにおいて、宇宙の中心的原理とされたのはブラフマン(梵)であり、人間個人の支配原理とされたのはアートマン(我)でした。 宇宙の中心にあって万物の生成の根拠となり、宇宙の隅々にまで遍在して生命力の源泉である普遍的原理がブラフマンですが、古代インド哲学の最重要概念はそのブラフマンと個人(自我の魂)が究極的には同一であるとする梵我一如です。 ...続きを見る

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2005/10/16 22:10
瀬戸内寂聴『釈迦』の書評
『仏教とは何であるのかを一言で語るのは難しいが、それはゴータマ・シッダールタ(釈迦)という仏教の創始者の思想や実践が難解だったことを意味しないのではないか』……私が瀬戸内寂聴氏の『釈迦』を読了して感じた第一印象はそういったものだった。 この『釈迦』は、釈迦の臨終(入滅)に付き添うアーナンダの視点を通して、釈尊の実に人間的な温かい側面を描写した小説である。 ...続きを見る

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2005/10/12 00:04
森博嗣『四季 春』『四季 夏』の書評
森博嗣の『四季』という四巻組(『春・夏・秋・冬』)の小説のうち、二冊『春 green spring』と『夏 red summer』を読みました。 二巻を読むのに3時間ほどかかったのですが、私としては結構早いペースで読み終えたほうだと思います。 私は、それほど速読が得意なわけでもないので、途中の単純な情景描写や叙情性の強い詩の部分などはざっと眺める程度に読み、ストーリーの展開と人物の関係・配置に注意しながら読むことで読書時間を短縮しています。 ...続きを見る

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2005/09/23 01:09
池田晶子『14歳からの哲学』の書評:各論への感想の補足
『14歳からの哲学 考えるための教科書』から個別のテーマを幾つか選んで、雑駁とした感想や簡単な意見を書き残しておきます。 ...続きを見る

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2005/09/17 00:10
池田晶子『14歳からの哲学 考えるための教科書』の書評
過去の書評で、池田晶子の『41歳からの哲学』を取り上げましたが、今回は、4と1の数字を入れ替えた『14歳からの哲学 考えるための教科書』をご紹介します。 ...続きを見る

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2005/09/16 19:43
土屋賢二『われ大いに笑う、ゆえにわれ笑う』の書評
お笑い哲学者と異称される土屋賢二の『われ大いに笑う、ゆえにわれ笑う』を読んだ。 このお笑い哲学は、徹底的に、何が何でも現実を楽しむという姿勢の面白さに裏打ちされた笑い、現実を都合良く解釈するユーモアによって作られたものである。 何気なく手にとったのだが、読んでいるうちに次々と「いかにも現実でありそうな情景や人間心理」に行き当たる。 別段、笑おうなどと思わずに読んでも、何度かは、くすりとおかしく感じる部分に行き当たるのではないだろうか。 ...続きを見る

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2005/08/19 06:35
池田晶子『41歳からの哲学』の書評:自分の頭で不思議や疑問を考える哲学
「週刊新潮」で2003年5月1日から2004年6月3日まで「死に方上手」というコーナーで連載されていた池田晶子のエッセイをまとめて収載した41歳からの哲学を読みました。 ポップな語り口調でありながら、遠慮会釈のない直截な言葉で、社会問題、政治経済、倫理問題を快刀乱麻を断つかのような切れ味鋭いエッセイ集。 ...続きを見る

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2005/07/12 00:08
賢者は、歴史と経験と科学に学び、時空を超えて他者と語り合う。
人生を生きていく途上で出会う数々の問題や困難を解決する為に、ある人は自らの主観的な経験則に従って判断し、ある人は書物から得た論理的な知識に従って判断する。 プロイセンを中心としたドイツ帝国を創建し、ドイツ近代化の礎石を築いたプロイセンの鉄血宰相オットー・フォン・ビスマルクは、『賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ』と語ったが、過去の歴史記述からだけでは現代社会の動静や個人の社会生活の指針を得ることは難しい。現代社会で、適切で妥当な判断を行う為には、『賢者は歴史・哲学と経験と科学に学ばなければなら... ...続きを見る

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2005/06/12 00:18
塩野七生『三つの都の物語』の書評・3:孤高と連帯……自己の帰属する場所と価値を求める人
自由な経済活動によって自国の優雅な繁栄を導いたヴェネツィアは、カトリックのイタリア各国やヨーロッパ諸国とも交易していたし、イスラム教のトルコ帝国とも貿易をしていたが、迫り来るハプスブルク家の君主カルロス5世の猛威の前にどのような方略で自国防衛をすべきかという窮迫した状況下にあった。 ...続きを見る

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2005/05/30 00:43
塩野七生『三つの都の物語』の書評・2:16世紀ヴェネツィアと現代日本のデジャヴュ
オスマン・トルコがヨーロッパ世界への浸透を始め、ヴェネツィアの隆盛が頂点から衰退に向かおうとする時代の転換期を舞台にして、『緋色のヴェネツィア』というヴェネツィア貴族の宿命と試練を描いた悲劇が語られる。 生まれながらに対照的な境遇にある美しい二人の貴公子マルコ・ダンドロとアルヴィーゼ・グリッティは、陰謀と政略が渦巻く国際政治の渦中に身を投じる。ダンドロ家の嫡子であるマルコは、名門貴族のエリート路線を順当に歩んで元老院(セナート)議員となり、グリッツィ家の庶子であったアルヴィーゼはトルコに渡って... ...続きを見る

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2005/05/29 08:11
塩野七生『三つの都の物語』の書評・1:独立の岐路に立つ海の都ヴェネツィア共和国
歴史的事実と創作的ロマンスが絶妙な配分で織り込まれた“塩野七生『三つの都の物語』朝日新聞社”を読み、私の精神は暫しの間、人文と芸術の隆盛が頂点に達したルネサンスの余韻を残す16世紀初頭のイタリアを浮遊しました。 『三つの都の物語』は、非常に長大で重厚な大作(547P)であり、文庫本では3冊に分冊されていますが、ハードカバーの単行本では『緋色のヴェネツィア』『銀色のフィレンツェ』『黄金のローマ』という三章に大きく分けられています。 ...続きを見る

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2005/05/25 21:46
森博嗣『朽ちる散る落ちる』の書評
森博嗣の小説『朽ちる散る落ちる――Rot off and Drop away』を読んだが、この小説は前作の『六人の超音波科学者』の事件の経緯や人間関係と連続しているミステリーなので、前作を読まずに偶然手にした本書を読んだ事を私は些か後悔したが、本書だけでも物語の大略と事件の顛末を掴む事は出来る。 ...続きを見る

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2005/05/19 01:17
重松 清『流星ワゴン』の書評:3
しかし、この物語の主人公はやはり飽くまでもカズオであり、カズオと美代子の揺れ動く夫婦関係と理性の制御を打ち崩す性愛感情の悲劇、カズオと広樹の擦れ違う親子関係と広樹の回避的な性格と悲観的な生き方の問題、カズオと父親忠雄の積み重なった誤解と対立の解消こそが『流星ワゴン』の物語のメインストリートである。 ...続きを見る

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2005/05/14 00:13
重松 清『流星ワゴン』の書評:2
どうして――。 予兆など、なにもなかった。我が家はどこにでもある当たり前の家族だったはずだ。平凡で穏やかな日々を続けていたはずだ。僕は美代子を愛していて、美代子も僕を愛していて、それはもちろん新婚時代のような熱く燃え上がるものではなくなっていても、だからこそ織火(おきび)のように、いつまでも我が家の暮らしを温めてくれるのだと思い込んで、信じ込んでいた。 『教えてよ、お父さん』声が震えた。『知ってるんだったら教えてよ。美代子は、なんでこんなところにいるんだ……わからないんだよ……なにも』 ... ...続きを見る

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2005/05/12 06:04
重松 清『流星ワゴン』の書評:1
現代社会における不安定な家族関係と父性の衰退、男女の複雑な感情が取り交わされる恋愛の歓喜と悲哀、過去に戻ってやりなおす事が適わない運命論的な人生のあり方といった様々なテーマが散りばめられた重松清の小説『流星ワゴン』を読みました。 この小説は、信頼していた妻の不倫、優秀だった子どものひきこもりと家庭内暴力、そして、予期せぬリストラに遭って、人生に絶望し死を覚悟した主人公が、死者の親子が運転するワゴンに乗って現在と過去を往還するという幻想的な物語です。 主人公のナガタカズオが、何度も途中で挫折し... ...続きを見る

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2005/05/11 00:10

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