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zoom RSS 森田正馬の神経質の症状形成と自分・症状へのとらわれ2:あるがままをどう実現するか

<<   作成日時 : 2017/10/12 15:36   >>

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『注意』と『感覚(病気であるという感覚)』が相互作用して強め合うというのが、森田神経質でいう『精神交互作用』です。ヒポコンドリーと精神交互作用によって心身の不快感・違和感が『症状』として自覚されてしまうと、人はその苦痛な症状をどうにかして治したい、どうにかして取り除きたいと思うようになり、『症状との対決・格闘』に日々明け暮れることになってしまいやすいのです。

森田正馬の神経質の症状形成と精神交互作用1:注意・意識を向けすぎると悪化する

森田正馬の開発した『森田療法』では、『あるがままの自分であること』が何度も繰り返し強調されるわけですが、言い換えれば『症状との対決・格闘をやめること』によってしか森田神経質に由来する神経症的な症状は軽減・回復しないということになります。

神経質由来の症状との対決・格闘は、注意と感覚(症状)を相互に強め合う精神交互作用を繰り返しているようなものなので、『症状を無くそうとして意識して努力すればするほど無くならないという悪循環』にはまり込みやすいのです。

対人緊張が強まっている時に、『緊張するな緊張するな・頭を空にして自然体でいくしかないぞ』みたいな自己暗示をかけすぎると、かえって体が緊張してガチガチになってしまった経験がある人も多いと思いますが、『緊張や不安を取り除こうとする意識的な集中・努力』は往々にしてかえって緊張感に注意がいって逆効果になりやすいのです。

人前で緊張したり赤面・発汗したりしないように、人の前に出る時は必ず大きく深呼吸するというような努力も、『自分が人前で緊張する性格であることを意識しすぎる』と逆効果になりますし、座禅・鍛錬・苦行・マラソンのような『心身の鍛錬(苦痛・きつさに耐えるトレーニング)による緊張感・不安感の克服』というのも、自分が対人恐怖症であるという前提の自覚が強化されている状態ではほとんど効果がでないのです。

自分で自分に対してネガティブなラベリングをしたり病気であるという自己定義をしたりすると、『人と向き合う場面(ある場面)になると自分は必ず不安・緊張の症状が出てくるという古典的条件づけ』が起こりやすくなるので、『症状に対する格闘・努力』も無効化することになります。

多面的で柔軟かつポジティブな自己定義(自己規定)ができる人というのは、森田神経質に限らずあらゆる精神疾患の発症リスクが低くなることが分かっています。そのため、『いつも病者であるという悲観的な自己アイデンティティ以外の自己定義の幅』を広げたり増やしたりしていけるような意識の持ち方、対人関係(日常生活)の工夫も大切になってきます。

人前で話したり文字を書く時には、自分は必ずどもったり(声が出づらくなったり)手が振るえたりするという古典的条件づけは、いわば『ネガティブな自己暗示』によって形成された『症状へのとらわれ(無意識的な症状へのとらわれ)』なのです。

症状へのとらわれは、今よりも成長・発展をしたいという向上心(競争心)を生み出す『生の欲望』を根底に持っているので、簡単に克服することはできない面もあるのですが、『人生の有意義な目的の再設定』『目の前にあるやるべき仕事・事柄への集中』によって、生の欲望を有効活用できる可能性が開けてくることがあります。

森田療法では『あるがままの自分に対する過剰なこだわり』も神経質性格の原因になるとするので、意識の持ち方や心理状態の操作だけで『症状・自分へのこだわりの克服』をすることは難しく、『作業・仕事・関係などのやるべきことに対する集中と専心』が神経質の一つの治療方法として推奨されています。

『理屈・理論(頭)』ではなく『行動・作業(体)』を優先するというのが、作業療法的な側面のある森田療法の基本的な方法論になっています。

オーソドックスな森田療法では、入院療法の『第一期〜第四期』『何もしない時間+作業に没頭する時間』を作って、『自分・症状について敢えて考えられないようにすること(自分・症状について考える時間そのものを無くすこと)』によって、自分や症状へのとらわれを自然な作業時間の中で無くそうとしているのです。

第一期(絶対臥褥期)……患者は隔離された個室で生活する。食事・洗面・トイレ以外の活動を一切させずに、ずっと布団で寝ているだけの退屈なつらい『臥褥(がじょく)状態』にし、とにかく何か活動したくてたまらないという心的エネルギーを高めさせる。

第二期(軽作業期)……患者は隔離された個室から外界に出ることができ、鬱積していた活動したい心的エネルギーを開放して、掃除・炊事・草むしり・物づくりなどの『軽作業(思考力・自省を要さない主に体を使う仕事)』に従事することになる。この時期から、担当者との『個人面談』や『日記指導』も合わせて行っていく。

第三期(作業期)……本格的に『作業・仕事』のみに集中して没頭する時期であり、『睡眠時間・休憩時間・身支度』以外はほとんど何かの活動をしている生活なので、『自分・症状へのとらわれ』が半強制的に克服されることになる。

第四期(社会生活準備期)……個人面談(精神療法)などを行いながら、実社会で生きていくため、普段の日常生活・人間関係に戻っていくために『社会適応(社会生活)の準備』を整えていく時期である。

自分・症状のとらわれ以外のことに没頭しなさいとする森田療法の基本的な方法論は、『暇なく仕事・作業(やるべきこと)に没頭していれば、あれこれ自分について悩んでいる時間はなくなり気分は楽になる』といった経験主義的な気分転換法として昔から広く知られていたものではあります。

森田正馬はその経験論的に知られていた『仕事・作業への没頭の効果』を、理論的・臨床実践的に体系化したとも解釈できますが、徹底的に『自分・症状について考えないようにするやり方』の向き不向きには個人差もあります。

昔ながらの本格的な長期(1ヶ月以上)の入院療法としての森田療法を実践しているクリニックも今ではほとんどありませんが、『自分・症状・内面ばかりに注意(意識)を向けすぎることの弊害』は神経質・神経症でなくても多いですので、『注意・意識の向け方(自分と外界・他者への時間の使い方)のバランス』を工夫することはメンタルヘルス維持にとって重要なのです。

『あるがままの自分』にどうやってなれるか、力を入れず自然体でリラックスした状態でいられるかというのは、森田療法における『神経質の全治』が『悟りの境地』のアレゴリーで語られるほどに実際は難しい課題なのですが、『あるがままの自分から大きく外れてしまった不自然なきつい状態』にできるだけ早く気づいて、早くケアや対処をすることが現実的な治療方略になってくると思います。


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