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zoom RSS 自己愛肥大のメリット・デメリットと自己愛的な現代人の『老い・死』の受け止め方:2

<<   作成日時 : 2017/08/10 02:55   >>

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それぞれの個人の自己愛の幻想が維持されていれば、『社会・他者に対する不平不満や強い干渉』は表に現れにくい。だが、自己愛の幻想が衰弱したり破綻したりすると(あるいは自分自身の経済生活や人間関係そのものが成り立たなくなると)、格差のある他者や不公平な社会に対する『羨望・怨恨』が強まって、『不満のある社会・他者を変えようとする干渉や活動の動き』が出てきやすくなる。

自己愛の肥大にもメリットとデメリットがあるが、メリットは自己愛が強まることそのものが自分を『不快なもの・嫌なこと・不安なもの』から守ってくれる自我防衛機制として働きやすく、経済生活が成り立って自己愛の幻想の内部で生きられる限りは『それなりの主観的な幸福感・満足度』を得やすいということである。

自己愛の時代を生んだ『豊かさ・個人主義・消費社会の要因』と格差・貧困の影響:1

自己愛肥大のデメリットは自己愛の幻想に浸りきることで、『客観的な現実』を否認しやすくなることであり、特に『自分にとって不都合で不快な現実』を否認することによって、現実的な経済生活や人生設計、人間関係などに完全に適応できなくなってしまうリスクがある。

個人レベルを超えた国家レベルでも、トランプ大統領のアメリカファーストではないが自分の国さえ安全で利益を上げられれば良いとする『自己中心的・自己愛的な国家観や政治運営』が影響力を強めていることもあり、日本も自国の経済財政が上手くいかなかったり将来不安や格差拡大の問題があったりで『日本や先進国以外の貧困・飢餓・紛争・絶望』といったやや遠い場所の現実には意識が向かいにくくなっている。

自己愛の幻想に浸りすぎると、『現実的・客観的な問題状況への対応』がおざなりになりやすくなり、最終的な結果として自分自身や周囲の人達が困ったり社会の利益が損なわれたりするデメリットもでやすくなる。

しかし、自己愛というのは人間にとってなかなか根本的な欲求の一つでもあり、自己愛が現実的あるいは妄想的に十分に満たされてしまうと、人はそれ以外の欲求がかなり弱くなったり無視できるようになったりしやすく、『自分と異なる他者・別の世界』に対する共感的な想像力も弱まってしまう。

現代人の自己愛の幻想のもう一つの限界として『個人の死の運命』があり、どんなに自己愛を肥大させて不安なものや不快なものから自分を防衛しても、永遠不滅の生命を持つ人間はおらずいつかは必ず死ぬ。いずれは自己愛の対象である『自分自身』を失っていく逃げられない現実のプロセスに直面しなければならないが、現代人は『思想・哲学・国家・宗教に依拠した自己アイデンティティー』を確立しにくくなっている。

それだけでなく精神科医・精神分析家の故小此木啓吾氏が『モラトリアム人間・自己愛人間』の一連の書物で、現代人の自己アイデンティティー喪失を指摘し、誰か・何かのために大義名分を持って死ぬ『能動的な死』を死ぬことが不可能になったと指摘しているように、現代人の死の多くは病気・老いの先に待つ『受動的な死』になっている。

むしろ誰かや何かのために主体的に死ぬという『能動的な死』というのは、現代ではその誰かや何かに騙されたり洗脳されたりしている『悪』と見なされやすいだろう。そういった価値観や人生観の変化もあって、受動的に進んでいく死のプロセスをどう受け止めて支えてあげるか、本人の意思を尊重して楽にしてあげるかという『ターミナルケア(終末期医療)・尊厳死・安楽死』の議論も活発化しているところがある。

自己愛が肥大している人ほど『老い・死』にまつわる不安や苦悩は深くなりやすいともいえるが、それは自分が生きている意味や価値を確証する自己アイデンティティーの確立と納得の機会が過去より減ってきていて、家族・子孫・情熱を傾けた仕事くらいしか持続的な自己アイデンティティーの意味づけを支えられそうなものが無くなっているからでもある。

モラトリアム遷延や自己愛肥大によって『自己愛的なイリュージョン』の中で満足する現代人は増えているが、究極的には『自分自身の老い・死の運命』によって『現実否認の自己愛』は限界に直面することになる。高齢化社会の前提も影響してくるだろうが、自分自身の自己愛を満たせるリソースや可能性、関係性が減っていく『人生後半の老い方・生き方・死に方』がシビアに問われる局面が増えていくのかもしれない。

冒頭で、経済不況や格差拡大、貧困増加によって個人の自己愛を満たしづらい人が増えて、『個人・所有の自己愛の時代』から『共生・共有の共同体(関係性)の時代』への緩やかなシフトが起こっている側面もあるということを書いたが、こういった『他者との協力・協働・共感・共有』といった社会的動物であるヒトの原点に少し立ち返ってみることも、これからの個人単位でのサバイブが厳しい時代を生きる一つの方策になってくるかもしれない。


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