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zoom RSS 近代経済学と行動経済学と人間の行動選択:常に人間は合理的で、市場は効率的なのか?

<<   作成日時 : 2017/08/01 19:52   >>

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経済学では合理的なホモ・エコノミクス(経済人)を前提にして、自由市場原理が効率的な価格決定を行うとする『効率的市場仮説』が信じられている。

効率的市場仮説の基本原則は『市場で取引されている株・債権・商品などの現時点での価格』『ファンダメンタルな価値(業績・財務・需給など基礎的諸条件)』を効率的に反映した適正価格であり、市場原理は各時点において間違った価格をつけないということである。

あくまで、“今の時点”での『市場が決めた適正価格』であって、市場価値は絶えず変化を続けるので、“次の時点”や“かなり先の時点”では『適正価格が暴騰・暴落する可能性』が常にあるので、効率的市場仮説を前提にする限り『市場価格の未来予測』には限界があるか概ね不可能である。

効率的市場仮説では、何人といえども証券や商品、為替の市場価格の未来予測を確実に行うことは不可能であり、『フリーランチ(金融市場で自分たちだけが必ず儲かる絶対的な必勝法)』はないということである。自由市場におけるフリーランチの必勝法がないということを、『市場はランダムウォーカー(無作為でランダムに歩くもの)』といった言い方をすることもある。

自己利益を最大化しようとする合理的な経済人や市場原理の各時点での価格形成は間違わないという効率的市場仮説には、さまざまな反論や抵抗があるけれど、ノーリスクで必ず儲かる投資がまず有り得ないという『フリーランチはないの原則』は、あの手この手で勧誘してくる投資詐欺の自己防衛の知識としては役立つかもしれない。

すべての人間(投資家)が合理的に意思決定するという近代経済学は、人間の非合理的な行動を説明する現代の行動経済学・行動ファイナンスの知見からすると、信憑性が揺らいだ眉唾な前提になってきてはいる。

しかし、『すべての人はリスク回避的(利得の喜びよりも損失の苦痛のほうが大きい)である』『投資対象に対する同一情報を入手できればすべての人は概ね同じリターンとリスクを予測できる(実際の行動では違いがでるにせよ)』というレベルの話であれば、やはり人間は合理的な意思決定をする動物としての傾向がかなり強いとは言えるだろう。

合理的なホモ・エコノミクスの意思決定(行動選択)という時に反論・異論が出されやすいのは、『人によって好み・価値感が違うからどんな行動を選択するかは合理的に説明しづらい』ということである。

単純に、余暇の5時間に時給1000円の仕事をしないかと誘われても、『5000円の現金収入』を選ぶか『5時間の自由時間』を選ぶかは、その人の経済状況(お金がどれくらい欲しいか)や主観的な疲労感(疲れていて休みたいか元気で働いてもいいか)、今やりたいことの有無によって変わってくるというような反論である。

合理的な意思決定に個人の好み・価値感の要素を加えた経済学の概念が『期待効用最大化』であり、人間はそれぞれの期待効用(その選択で得られるメリット)を最大化できるような意思決定・選択をするということになる。

食費を切り詰めてロト6を1万円買って6億円が当たる夢を見ることを選択する人もいれば、宝くじなんてどうせ当たるはずがないからその1万円を食費・家族の外出に使ったり貯金したほうがいいという選択をする人もいるが、この個人間の選択の違いは『期待効用最大化の原理』によって説明することができる。

自分にとっての主観的な効用を重視する『効用理論』そのものは、ジョン・フォン・ノイマンやオスカー・モルゲンシュテルンによって1940年代から唱えられていたが、合理的な人間が行うとされる意思決定では『各選択肢がもたらす結果の確からしさ(確率)と好ましさ(効用)』から『期待効用』が導かれるということである。

大多数の合理的な人は、その期待効用が最大のものを選択するのであり、市場原理が働くものであれば商品でもサービスでも自由恋愛(結婚)でも、『その人にとって可能な範囲内で期待効用ができるだけ大きく感じられるもの』が選ばれているということになる。

株・債券などをはじめとする市場価格が『適正なファンダメンタル価値』と一致するという効率的市場仮説にも反論は多い。そういった反論に対しては、ファンダメンタルな理論価格から見て割高なものはいずれ売られ、割安なものはいずれ買われるので、『各時点での割高・割安な価格』はあっても長期的には需要と供給(裁定取引)によって適正価格に近づいていくという説明が一応なされることになる。

しかし、現実の市場での取引は中長期的に見ても理論価格から乖離していることは少なくなく、必ずしも市場価格が『適正なファンダメンタル価値』に近づいていっているとは言えないのだが、その理由としては『市場には必ずしも投資対象以外の代替物=別の選択肢が存在するわけではない』『裁定取引があっても理論価格に収斂する保証がない』『機関投資家が短期的利益ばかり追求して十分な価格調整が行われにくい』などを上げることができる。

効率的市場や合理的な経済人を前提とする近代経済学は、現実の市場(景気)の上がり下がりや価格決定を十分に説明できないことが多く、近年ではバブルの高騰や破綻を引き起こしたりもする『非合理的な投資家心理』を考慮する行動経済学(行動ファイナンス)の分野が盛り上がりを見せている。

『非合理的な人間の心理+非効率的な市場の動き』というのは、数量経済学的なモデル構築においては予測困難を導く障害になりやすいものであるが、現実の経済・市場・人間の意思決定を考える上では『完全にシステム化して予測できない非合理性・非効率性の要素』のほうが重要になってくるだろうと思う。

近代経済学は標準的かつ合理的な理論モデルを前提にして、妥当な推論を展開して何を為すべきかの規範を示すという『規範理論』の傾向が強い。それに対して心理学的要素を加えた行動経済学は、現実の人間行動を実験的に観察しながらその理由を推測していくという『実証理論』の傾向が強くい。

行動経済学は『証拠』を挙げて、現実の人間行動の傾向性を実証していくという考え方や方法論がより科学的なのだが、『近代経済学の合理的な理論モデルと実際の人間行動の比較』を行っていくという点において、規範理論としての近代経済学と相互依存的な側面(規範と実際の差異を調べてその理由を推測する側面)も持っている。


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