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zoom RSS 物事はなぜ計画通りに進まないのかの心理学2:統計の外部情報と他人の意図・能力の無視

<<   作成日時 : 2017/03/23 19:16   >>

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極端にリスクや浪費を恐れて未来を悲観する人、今までの成功経験や周囲の支持・賞賛がない自分に自信がない人は、最高責任者や意思決定者にまずなりにくいというのが『楽観バイアスによる計画の錯誤(予算の肥大)』の要因になっているのである。

物事はなぜ計画通りに進まないのかの心理学1:計画の錯誤を生む楽観バイアスと専門家の直感

豊洲市場移転や東京オリンピックを決定した当時の石原都知事や猪瀬都知事は、やはり相当な自信家としての風貌を備えていたし、一般に首相や知事、社長、官僚になるような人は(特に仕事能力・判断力の)自己評価が高い、自分に人並み以上の判断力があると思っていないとそのような職責は務まらないのである。

当時の知事に『土壌・水が汚染されていたらどうしよう、本当に大丈夫かな』とか『東京オリンピックに事前の予算以上のお金がかかるかもしれないからどうしようかな、やめて節約したほうがいいかな』とかいう自信のなさや自分への疑いというものは全くなかったはずだし、そういった慎重過ぎる懐疑主義や計画の白紙撤回というのは、世の中において一般に低く評価される(その地位につく人間として不適切だと評価される)ことにもなるのである。

『楽観バイアスによる計画の錯誤(予算の肥大)』は行政や大企業の大プロジェクトになると、数百億円〜数千億円の浪費・損失の原因にもなるが、一般論として大勢の人々に大きな影響力を振るえるような地位・権限・役割を持つ人は、一般国民との比較では楽観主義かつ自信過剰(自己の過大評価)であることが必然的に多くなる(リスクがあること、お金がかかることは全てやらないほうがいいという悲観的な現状維持派の人はその地位まで上がれない)ということは言えるだろう。

自信過剰な人のほうが信用(優遇)されやすいとか成功しやすいとかいった、社会的・経済的・プロフェッショナル的なプレッシャー(期待感・責任感)といったものも、楽観バイアスによる計画の錯誤を生み出しやすくしている。差し迫った状況や判断で『不確実性』が高くても、地位の高い人やプロフェッショナルほど『私はどう判断して良いかわかりません・不確実なので判断を保留するしかありません』とは言いにくいプレッシャーがあることもまた事実なのである。

行政・大企業のような大きなお金の関係するプロジェクトでなくても、人間は一般的に『統計的傾向(外部情報)がどうであれ、自分だけは上手くいくという楽観バイアス』を非常に持ちやすい傾向がある。例えば飲食店の新規事業を始めようとする人やこれから結婚生活を始めようとする人は『外部情報(統計的事実)』を確認しようとしないことが殆どである。『確率では5年後にお店が継続していない可能性(最期まで夫婦で連れ添うことがない離婚の可能性)は高いかもしれないが自分だけは大丈夫なはず』という楽観バイアスは非常に強いものになる。

楽観バイアスの根底にあるのは『自分は平均的な人間よりも能力・属性において優れている』という過去のいくつかの成功経験に基づく根拠の薄い思い込みなのだが、これは『平均以上効果』と呼ばれる認知バイアスである。平均以上効果の典型的な例として、『90%のドライバーが自分は平均以上の運転技能(安全運転の注意力・事故を起こさない能力)があると思っていること』があり、自分を棚に上げて『他のドライバーの運転技能や安全運転の注意力などに文句をいう人』はかなり多いものでもある。

ダニエル・カーネマンも複数の学者を集めてチームを作り、高校生向けのカリキュラムと教科書作成の計画を立てた時に、『計画の錯誤(計画した通りには全く物事が進まない失敗)』の経験をしている。

教科書作成の最終案を教育省に提出するまでに何年かかるかのチームメンバーの事前予測では『1年半〜2年半』という楽観的なものだったが、共同研究者のセイモア・フォックスは過去の教科書作成計画を思い起こして統計的には『約40%が教科書作成事業を完成させられなかった・最低でも7年はかかった』という事実を告げた。そして、教科書作成チームのメンバーの能力・実力についても、過去のチームに比べると平均以下に当たるだろうというのだ。

しかし当事者であるカーネマンらは『最低7年かかる+失敗確率40%』という過去の多くのチームの現実から導かれた統計的事実を軽視して、『自分たちのチームだけは例外的にもっと早く教科書作成を完了できるし、絶対に失敗もしないだろう』という楽観主義のバイアスを持ってしまったのである。しかし現実には『カリキュラム・教科書の作成事業の難易度』はカーネマンらが思っていた以上に高いものであり、チームメンバーに起こるトラブルや病気なども予測困難なものだった。

結果は、事前の計画では後2年もあればカリキュラム・教科書の作成を簡単にやり遂げられると自信満々だったのに、実際には多くのアクシデントに見舞われて完成までに『8年以上』もの歳月がかかって、教科書の内容が古くなり一度も使われないままにお蔵入りになるという苦い失敗(計画の錯誤と挫折)に終わったのである。

自分たちが自分の能力や計画についてどう思っているかという『内部情報(主観性)に頼ったアプローチ』ばかりに気を取られて、自分以外の他の人やチームが過去に同じような計画を立てて実行してどうだったかという『外部情報(客観性)に頼ったアプローチ』を不当なまでに軽視無視してしまったのである。

共同研究者のセイモア・フォックスから、過去に同じような教科書作成計画にチャレンジした学者・チームの『平均的レベル』が自分たちよりも高かった(統計的には自分たちはもっと教科書作成に時間がかかって失敗する可能性も高い)と聞かされていたにも関わらず、『自分たちだけは特別に短期間でやり遂げることができるだろうという自信過剰と自己の過大評価・外部情報(同等の能力の他者)の無視』に陥ってしまったのである。

心理学実験では特別な成功者・有力者でなくても人の多くは『自分が人並み以上に勤勉・誠実・責任感があるという自己の過大評価の傾向』を持っており、本当に真剣にお金をかけるような実験でも、他人より自分のほうが勤勉(誠実)であるというほうに賭ける人が多いことが知られている。

なぜ人間は楽観バイアスによって『計画の錯誤・予算の肥大・結果的な失敗』を起こしやすいのだろうか。その原因は、『外部情報・統計的な傾向・他人との競争の無視』にある。

1.自分の計画と目標ばかりにフォーカスして、他のケースがどうなったのかという統計的な傾向(確率的な可能性)を無視してしまう。

2.成功と失敗がすべて『能力』だけで決まると思い込み、『運・偶然・他者』を軽視することで、自分の能力さえあれば状況を上手くコントロールできるという『コントロールの錯覚』に陥る。

3.自分の知っていることばかり強調し、知らないことや他人の意見を無視することで、盲目的に自分の意見・価値観を過大評価してしまう。

4.自分の計画や目標、能力ばかりに意識が向かい、競合する要素のある『他人の能力・努力・意図・影響力』を不当に過小評価したり無視したりする。

スタートアップの起業に成功した新進気鋭の経営者などは、特に『2のコントロールの錯覚』に陥りやすく、自分に能力があったから上場して成功したと思い込みやすく、『競争相手となる他社やこれから先の市場環境の不当な軽視無視』をしたために、追い上げられたり景気が悪化したりして(自分の能力だけでどうにでもなるというコントロールの錯覚が通じなくなって)、結局は起業した会社が長続きしないということにもなりやすい。

とはいえ、組織集団における意思決定は、『いったん動き出した公共事業は止まらない』にも似た慣性が働きやすく、意思決定の方向性や目標がはっきりして最高責任者がゴーサインを出せば『懐疑なしの集団思考(懐疑・躊躇は忠誠心・意欲の欠如)』に陥りやすくはなる。

ただ学習性無力感やポジティブ心理学などで知られるマーティン・セリグマンは、楽観主義の性格の最大のメリットは『失敗しても挫けないこと・折れないこと』にあるとしており、成功は自分のおかげで失敗は他人のせいというご都合主義の『楽観的な原因帰属』によって、ポジティブなセルフイメージを維持して失敗・挫折からの回復の短期化を図ることができるとしている。


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