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zoom RSS グリム童話『つぐみの髯の王さま』と女性の持つアニムスの働き1:美貌と自我と男性原理の切断

<<   作成日時 : 2017/03/14 16:49   >>

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グリム童話の『つぐみの髯の王さま』ではお姫様のアニムスとして『父親である国王』が機能しているのだが、ユングが自己主張・意思決定としてアニムスの影響が現れるというように『男性の選り好み(あるいはかぐや姫による無理難題のふっかけによる拒絶)』というのも視点を変えればアニムスの働きとして解釈することが可能だろう。

美貌というかこのお姫様のように自分で慢心できるほどの外見というのは、一般に男性が内面に持つアニマや対女性の選好的欲望の投影でもあるのだが、同じ美貌に恵まれた女性であっても『美貌と男性側の理想化・欲望に自己同一化できるタイプ』『美貌・肉体を自分の本質的価値とは関係のない表面的な形態として自己と分離してしまうタイプ』とに分かれる。

ユングのアニマとアニムスの二元論:物語に見る親子関係(父娘)のコンプレックス

美貌・外見は近年では『可愛いはつくれるの標語』に象徴されるように、努力や道具(化粧・髪型・ファッション)によってある程度まで向上・装飾できるものに変化してはきたが、『知能(学力)・体力・職業(芸能のように外見がメインの売りではない一般の仕事)』と比べると継続的な努力が影響を与えるレベルが低く、自分が頑張って身につけた『自分自身の属性』としての実感は薄くなりやすい。

『美貌と男性側の理想化・欲望に自己同一化できるタイプ』の女性は、自分を誘ってきたり求婚してきたりする男性を受け入れるにせよ拒絶する(自分の高い基準で選びに選ぶ)にせよ、『男女関係(恋愛関係)の力学・男性から何かしてもらえる恩恵』を多かれ少なかれ意識したり利用したりする人生を半ば運命的に生きる蓋然性は高くなるだろう。

このタイプの女性は美貌や見た目の魅力を『自分自身の属性』として自我違和感なく受け入れることができるからである。

反対に、相当な美貌や外見の魅力に恵まれた人でも、ジェンダー的な女らしさがなくて男受けしないタイプ(男に媚びた所がなく過剰なおしゃれをせずサバサバしているなど、女性だけに持ち上げられて好かれる美人)というか、色恋沙汰にあまり関わらずあるいは結婚・出産などもせずに自分自身の能力で何とか自立していきていこうとするようなタイプの美人もいる。

こういった人が『美貌・肉体を自分の本質的価値とは関係のない表面的な形態として自己と分離してしまうタイプ』で、自分の見た目の魅力に引き寄せられて誘ってきたり求婚してくる男性を『体目当てで中身がない・人間の本質を分かっていない・どうせ私の本当の思想や趣味は理解できない』という風にネガティブに評価しがちであり、自分自身も女性としての美貌をある程度生かした恋愛・結婚・仕事をすることを好んでいないことが多い。

このタイプの女性は美貌や見た目の魅力を『自分自身の属性』ではないと感じる自我異質性が強く、『表面的な見た目の知覚・印象』によって大きく扱いを変えられること贔屓されることを不正・不公平と感じていたり、いくら自分に良くしてくれる男性がいても『どうせ私の見た目・体が目的なんでしょう』といった冷めたドライな視線、対人不信(利用される疑心暗鬼)が強くなりすぎている。自己の内面や言動、生き方に反映されるアニムス(内的な男性像)の影響が非常に強くなっている女性という見方もできる。

『つぐみの髯の王さま』の権力をもつ王様(父親)と美貌をもつお姫様(娘)は、母親不在の濃厚な絆のコンプレックスで結ばれているが、それぞれがお互いにとっての理想的・象徴的なアニマ(姫)とアニムス(王)になっていて、そこに割り込んで新たなパートナーシップを作ろうとする第三者(大勢の求婚者)をなかなか寄せ付けないのである。

最終的には息子でも娘でも、生まれ育った家庭や守ってくれた親子関係の自立を求められることになり、『エディプスコンプレックス以降の社会化(外部の他者との強い結びつき)』の帰結としての『恋愛・結婚・出産(子供の育児・次世代との関係)』へと行きつくことになる。娘のお姫様を溺愛していた父の王様も、娘が自分の庇護を離れて『自分(父)に代わるアニムス』を見つけ出すべき時期にさしかかったことを感じ、求婚者を募るパーティーを開く。

王侯貴族や富豪、賢者など名だたる求婚者がお姫様に愛の告白をして結婚してほしいとプロポーズするのだが、美貌に根差した自己愛・自己評価が非常に強く最高権力を有する父親(王様)をアニムスとしているお姫様は、求婚者たちの特徴や能力をさんざんにこき下ろして馬鹿にし、すべての求婚者を拒否してしまう(他者を拒否する切断の機能はアニムスや男性原理の典型)のである。

誰とも結婚しようとしないお姫様に業を煮やして怒った父親の国王は、何を考えたのか、他の有力な求婚者と比べて権力も財力も意欲も容姿も何も持っていない乞食を娘のお姫様の婿にすると強引に決めてしまうのである。

娘の尊大な自己愛・自尊心を満足させられる相手はどうせ誰もいないのだから誰が相手であっても同じだろうという自暴自棄な決定にも見えるが、美貌をたたえるアニマとして働く娘が、何の力もない乞食との結婚生活に疲れ果てて嫌気がさし、再び父親である自分の元に逃げ帰ってくるのではないかという無意識の目論見もあったのかもしれない。

結果として、姫は父親(王様)の元には戻ってこないのだが、乞食との結婚はお姫様の抱えるアニムスと母性性の独自の発展を遂げる物語のトリガーのように機能することになる。

お姫様が大勢の求婚者を拒絶して切り捨てたのも切断するアニムスの影響と考えられるが、アニムスや男性原理は他者を切断して切り捨てることによって『自立・自由』『孤独・不安』の両方のジレンマを経験させることになる。思春期・青年期の女性のアニムスの働きとして自立と孤独のジレンマ(葛藤)が生じることは珍しくないが、こういった体験はその女性独自の自我・自立の基盤を形作ったり、その自我に基づいた自分らしい生き方の模索・選択などにも影響を与えることになる。

『自立・自由』と関係する女性のアニムスの働きは、『どうして女性である自分だけがそれができないのか、許されないのか』という男女平等主義のエネルギーや未成年が大人になろうとする背伸び行動にもつながっていて、『今ある現状の閉塞感(それなりに守られて快適だが自立や自由はない状況)』をブレークスルーして自分・社会の望ましさを追求するような原動力になってきたことも少なくないのである。


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グリム童話『つぐみの髯の王さま』と女性の持つアニムスの働き2:アニムスと自立・孤独を巡る葛藤
女性の持つアニムス(内的な男性像・男らしさ)の強度には非常に大きな個人差があるとされるが、アニムスが強い女性というのは男性主義から自立を成し遂げて大きな成功・活躍(中には歴史的功績の達成)をすることがある一方で、あまりに女性の内面にあるアニムスの影響力が強すぎると『他者を切断して自立するための孤独・能力』や『他者(男性)に寄り掛からない自由のための戦い・不安』で大きな苦労や負担を背負い込むことも多いだろう。 ...続きを見る
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