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zoom RSS ユング心理学のトリックスターの元型とグリム童話『黄金の鳥』1:最低と最高の交代可能性

<<   作成日時 : 2017/02/02 04:22   >>

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昔話や物語では『親による子殺し(子による親殺し)のテーマ』として、例外を許さない厳しい契約履行(約束遵守)が表現されることもある。昔話や物語(童話)における『王』は『規範・秩序の体現者』であり、王が悩んだり苦しんだりしている状況を『王子・若者・勇者』などが解決することによって、『規範・秩序の回復』や『旧体制の崩壊による新体制の構築』が展開されることにもなる。

グリム童話『黄金の鳥』では、王が黄金のりんごの森を『りんごの数』をチェックしながら神経質に管理している(既存秩序を維持している)のだが、ある日から毎晩一つずつ黄金のりんごが盗まれるようになる。『盗み』は分かりやすい法秩序の侵犯であり、規範に対する挑戦であるが、こういった『盗みの発生』は『既存秩序の揺らぎ・体制維持のための規範の改善』のメタファーとして機能している。

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『王』は黄金のりんごが盗まれることを防ぐため(危機に陥っている既存の規範秩序・体制を男性原理の方法で回復させるため)に、『三人の王子(息子たち)』に黄金のりんごの森の見張り番をするように命じる。長男と次男の王子は眠りこけて役に立つことができず、初めは能力が低いと見られて期待されていなかった三男の王子がりんごを盗んでいる『黄金の鳥』を見つけて弓を射るのである。

三男の王子は黄金の鳥を射て落とすことはできなかったが、弓矢が鳥を掠めたので一枚の『黄金の羽』を証拠品のように手に入れることができた。そのまばゆく輝く『黄金の羽』は、王が統治する一国全体の価値にも匹敵するほどの大きな価値のある羽だと鑑定され、王が神経質に守り続けてきた『黄金のりんご(既存の規範秩序・体制)』の価値が相対的に低下してしまうのである。

最も期待されていないダメな人物や能力・魅力に劣る人物が、最終的に『最高の成果・予想以上の成功・ハッピーエンド』を収めるというのは、童話に代表される寓話的な物語の典型的なパターンである。

つまり、『既存の体制(常識)から見た愚者・無能者』『既存体制を変革・刷新するトリックスター(現状を思いがけない方法で変えるいたずら者)』になりやすい、これは最高と最低の価値の交代可能性だが、自分の中にある『劣等な特徴』を『優越する能力・魅力』に変えられる可能性をも示唆していると考えることもできるだろう。

王が必死に守っていた黄金のりんごは『意識領域における価値ある宝』であり、三男の王子が弓矢を射て手に入れた黄金の羽は『無意識領域における価値ある宝』であるが、黄金の羽のほうが黄金のりんごよりも圧倒的に価値があると鑑定されたことは、父性原理(男性原理)を前提とする『世代交代・父殺し(王殺し)』のメタファーとしても効いているのである。

王は自分の国をも凌ぐような圧倒的価値を持つ黄金の鳥の羽に魅了されて、『一枚の羽だけでは足りない。黄金の鳥そのものを捕まえて持ち帰ってこい』と三人の王子に再び命令するが、ここでも一番目と二番目の兄の王子は『しゃべる狐』の助言を聞き入れずに次々に危険に見舞われて失敗してしまう。黄金の羽を得た三番目の王子だけが、『しゃべる狐』の助言・忠告をきちんと聴き入れて、更には狐の背中に乗せてもらって高速で移動して、黄金の鳥のいる所へと着実に進んでいけるのである。

グリム童話に限らず寓話や神話に登場する『狐(きつね)』は、一般的に他の動物よりも知能・言語能力が高くて、時に人を騙したり助けたりもする『神性(神獣性)』を持ち合わせた動物として扱われており、日本の稲荷神社信仰においても狐(きつね)は特別な霊性・ご利益・神罰(怪異を起こす超能力)を持つ存在として認識されることが多い。

古来からの昔話・物語において『狐(きつね)』は、特別な知能の高さや言語能力を持っていて『人を化かす役割(神性・妖怪・超能力)』を与えられていることが多いのだが、これをユング心理学の元型(アーキタイプ)で解釈すれば『狐=トリックスター(既存の価値・秩序・権威を転換させるいたずら者や自由自在に変異する力を持つ者)』として捉えることができるのだろう。


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