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zoom RSS 小金井ストーカー刺傷事件とストーカーの心理:被害者保護の再犯予防策・矯正教育の検討

<<   作成日時 : 2017/02/24 15:50   >>

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音楽活動をしていた女子大生の冨田真由さん(21)が2016年5月21日に、東京都小金井市で、ファンとされる無職・岩埼宏被告(28)に折りたたみ式ナイフで首など34箇所を刺され重傷を負った事件は、奇跡的に一命は取り留められたもののストーカーによる事件の中でも極めて執拗かつ残酷な事件として印象に残っている。

地域のイベントなどを行って地道に音楽活動をしていた被害者の女子大生は、容姿端麗で芸能活動の履歴もあったことから、加害者からすれば純粋なアーティストというよりは見た目・雰囲気に惚れ込んだアイドル(女性としての魅力がメインで下心もあって会場に足を運び続けているアーティスト)の位置づけにあったと思われる。

この加害者の最大の問題点は、アーティスト(アイドル)と観客との立場の違いを理解しておらず、過去にも女性アイドルやアーティストに過度に接近してプライベートでのやり取りを求めたりして立ち入り禁止処分を受けた前歴があるように、『見た目が好みの女性が開催しているライブ・イベント』を観客として節度をもって楽しみに行くのではなく、あたかも『私生活の恋愛相手を探す出会い系か何かのサービス』と勘違いして半ば意図的につきまとっていた節があるのである。

確かに、被害者女性は一般的に見ても魅力的な容姿の整った若い女性であるだろうが、彼女が開催している小規模会場のライブは外見の魅力も加わったものであるにせよ、売り物にしているメインはあくまで『歌・音楽』であり、『彼女本人のプライベートでのやり取り(会場・音楽と切り離された彼女個人としてのつき合い)』などは料金にもサービスにも含まれていない。

ライブ(音楽の仕事)の最中にそんな恋人候補など探してもいないし、ライブやイベントで見せてくれる愛想の良さや会話の応答もあくまで『限定されたライブの時間中』だけのものであり、それが終われば『個人として会話や要求に応じる義務』などないのである。

何度も足を運んでくれているファンであれば会場外でも会釈・黙礼・微笑くらいはしてくれるかもしれないが、彼女自身の別の人間関係や私生活、考え事があればファンに気づいていても無視するかもしれないのが普通であり、『ライブ中の人格・言動は彼女の本音でない部分もある(アーティストもファンも限定された場所・時間で盛り上がって終わればそれぞれの私生活に戻る)』というのは常識的にも暗黙の了解でも分かっていて然るべきものである。

アイドルや芸能人を対象にしたストーカー(つきまとい)や熱狂的な好意・嫉妬がねじれての加害行為の事件というのは、昭和期の昔から繰り返されてきたものだが、『小金井ストーカー刺傷事件』は距離感の遠いプロフェッショナルのアイドルやアーティストではない(ライブ会場の距離感が近くてセキュリティもなく、本人と直接言葉を交わすようなチャンスもある)という意味で、過去の事件と比べれば特殊である。

過去の芸能人のファンがストーカー化する事件と比べれば特殊ではあるが、『会えるアイドル・握手会・小さな劇場』などが人気の大きな要因となったAKB48以降のアイドル業界のトレンドを考えれば、極めて現代的なストーカー殺傷事件としての側面も持っているだろう。

少し前までのアイドルや芸能人は、CD・DVD(VHS)・写真(ポスター)・ライブを介した『擬似恋愛の妄想』を楽しむという部分がなかったわけではないが、会えるアイドルやネットでのちょっとしたやり取りの要素もある現在の芸能界(アイドル界)と比べるとやはり『自分とは違う別の世界の華やかな人たち』という前提が強かった。セキュリティや事務所の防衛策の強さもあり、一線を超えてまで本人に無理やり接近することはできないという常識や自己抑制が効いていたはずである。

加害者がストーカー犯罪に転落することになった躓きの始まりは、上記したようにアイドルや芸能人の限られた時間だけを楽しむべきライブ・イベントを、自分の好みに合致する彼女を探しに行く出会い系かのように勘違いしたことだろう。

確かに、会える距離感にいる女性のアイドルやアーティストは、ある程度の数の人たちを惹きつけてファンにしてしまう魅力があるのだから、身近で見かける女性や知り合いになれそうな女性よりも相対的に綺麗で魅力があるように感じるとは言えるだろうが、普通はライブに通ったとしても『実際に私生活で親密なつき合いをしたり恋人になれたりする』とは思わない。ライブとは切り離された私生活や異性関係の好き嫌いは別物としてあるわけで、熱心なファンにさえなれば個人的な会話やつき合いができると思い込む初期の時点で妄想・現実逃避が激しい性格傾向だったのだろう。

『ライブ鑑賞(イベント参加)・擬似恋愛のルール』を踏み外して現実逃避的なアプローチを続けていく中で、被害者女性をまるで実際の親しい知り合い(彼女に近しい人)であると思い込むような一方的な妄想を募らせ、自滅的に傷ついて絶望・激昂の果てに反抗に及んだという流れが推測される。

どんな性格や動機の人が来るか分からない、どんな精神状態をこじらせているか分からないという点を深刻に考えるならば、『距離感の近い芸能活動・会える仕組みのあるアイドル活動』には潜在的にストーカー犯罪に遭遇するリスクがあるとは言えるかもしれない。

だが、通常は芸能・アイドル活動をする人も、『距離感や節度・擬似恋愛の要素に関係する暗黙の了解』が通じているもの(ファン側に誤解や妄想があってもきちんと説明してお断りすれば通じるもの)として活動しているので、ここまで一方的な恋愛妄想・被害妄想・怨恨感情(愛憎のアンビバレンツ)を募らせる相手につきまとわれるというのは想定外のケースではあるだろう。

今回の事件では、被害者の女性を外部の人の接近から守るセキュリティがまったくなく、電車移動でもライブ会場でもファンが接近したり話しかけたりしようと思えばできるという部分に高いリスクがあったと思われるが、電車・駅から会場までの単独行動の時に加害者に接近されて刃物で危害を加えられてしまった。

その場でどういった対応をしていれば、加害者の刃物による傷害(殺人未遂)を防げたのかの論は、どうしても後付けになり被害者の自責感を煽ることにもなりかねないが、自分ひとりで向き合っていてストーカーが差し迫った表情・態度・口調で詰め寄ってきた時には(どれだけ相手が差し迫っているか本当に危害を加えてきそうかの判断そのものが難しい部分もあるが)、『強い拒絶・無視・否定・非難』など相手の感情を刺激しそうな反応は抑えて、『相手を宥めて(適当に合わせて)その場をやり過ごすことだけ』に全神経を集中させ、とにかく物理的な安全距離を取ってから次の行動を考えるほうが良いだろう。

適当に合わせて勘違いさせてはいけない、毅然とした拒否や対抗の姿勢を取ったほうが良いのではと思うこともあるが、『一対一の状況(周囲の知人の支援・防御が期待できない)』で『相手の表情・口調・態度が差し迫っていて怒り出しそうな恐怖を感じる』ような場合には、警察や誰かに助けを求めたい気持ちは十分に分かるが、『(自分へのしがみつき・見捨てられ不安で)追い詰められている相手の感情・絶望・憎悪を刺激すること』が一番何をされるか分からない危険になる。

手が届く距離に怖さを感じるストーカーがいて、周囲に自分を助けてくれる警察や知人もいないのであれば、その場でストーカーに決定的なダメだし・絶縁宣言をすることに一定以上の危害を加えられるリスクが生じてくるので、『決定的な絶縁・無視』をいずれするにしても、『相手を激昂・逆ギレさせずにまずその場を安全に離れること(そつのない対応で相手を落ち着かせてから手の届かない距離にまで逃げること)』を最優先にしたほうが良いようには思う。

初対面の知らない相手であれば、声かけされても聞こえない振りをして無視してさっとその場をやり過ごす方法も悪くないが、『既に相手が自分のことを知っていて特定の人として標的にされているストーカー被害が明らかな状況』では、相手に対する一方的な無視・拒絶の持続だけでは、相手を諦めさせてストーカーをやめさせることは難しいからである。

ストーカー被害のベストな解決は『話し合いでストーカー本人に納得してもらって諦めてもらうこと』であるが実際にはパーソナリティー障害や妄想体系の強固さもあってなかなか難しいし、話して納得してくれる現実認識や他者の気持ちへの配慮が出来る人ならそこまでのストーカー行為をはじめからしないということもある。

『怒り・憎悪を回避しながら、あなたの気持ちは受け入れられないと返事をしてやり過ごしながら執着の対象が移ることを待つ』か『どうしても相手のストーカーや執着心が変わらないのであれば引越し・転職も含めて完全に相手の前から姿を消す』などの次善の対応になりがちではある。

被害者の女性はこれほどの被害を受けてPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症しながらも、裁判所に出廷して勇気のある再犯恐怖(再び自分を殺しに来るのではとの恐怖)と厳罰化の要求の意見陳述を行っている。その意見陳述に対して、被告は感情的に興奮・激昂して『じゃあ殺せよ』『殺すわけがないだろ』など不規則発言の怒鳴り声を上げて、裁判長から強制的に退廷させられているが、自分の思い通りにならなければ怒りや暴力を抑制できないセルフコントロールの弱さが垣間見えた一幕のように思えた。

本件のように特定人物だけを執拗につけねらったストーカー犯罪では特に単純な懲役(刑務所習慣)の刑罰だけでは、被害者の不安・恐怖の心理を十分に癒して安心させることが不可能であり、『出所してくると予測される時期前後の不安・恐怖』を軽減するための再犯予防策・矯正プログラム(出所後の矯正教育・カウンセリングの定期的実施の義務付け)・被害者保護制度を真剣に検討していく必要性が高まっているように思う。

ストーカー本人の『絶対にもうしない(自分は心を完全に入れ替えた)という言葉の誓約の信用性』そのものが、興奮錯乱・殺傷沙汰のストーカー事件の発生によって完全に壊れてしまっているので、長期の懲役に処されていてもその期間に『自分(被害者)に対する興味関心・執着心』が完全になくなったことを証明することは、専門家・専門医であってもかなり困難のように思える。

『殺人未遂のような悪質なケースではGPSによる現在地把握(常時監視ではなく問題発生時に居場所をチェックできる体制)+定期的なストーカー心理に対応した矯正プログラム・自分のセルフチェックをする認知行動療法的なカウンセリングの実施+定期的なレポートの作成提出』など加害者の再犯予防の再教育だけではなく被害者保護の目的も兼ねた『ストーカー犯罪の懲役以外の法的処遇』の見直しも急がれるのではないだろうか。

ストーカー心理の根底には、『自己愛・孤独感・所有欲(支配欲)・見捨てられ不安・焦燥感と衝動性・愛着障害(深い情緒的絆の履歴の欠如)』などさまざまな要因が介在しているので、ストーカー犯罪の前科があるということで一義的な心理分析や対応策があるわけではないのだが、『加害者の再犯予防・人格傾向や認知行動の改善(今の自分に絶望せずに現実的な適応や関係を模索できるようにする)』と『被害者の保護体制の強化・心身両面の傷つきのケアシステム』などを整備していく必要があるのだろう。


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