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zoom RSS グリム童話『忠臣ヨハネス』と破壊・創造を担うトリックスター(道化+英雄):2

<<   作成日時 : 2016/12/11 21:03   >>

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C.G.ユングは普遍的無意識(集合無意識)の内容である元型(アーキタイプ)を直接に知覚・認識することはできないとしたから、アニマ(アニムス)という元型も直接の認識はできない。

だがアニマ(アニムス)の元型のイメージは、『社会的・文化的・時代的・物語的な共通のヒロイン(ヒーロー)のイメージ』として触れることができたり、『実際に激しく心を揺さぶられる異性の外見・性格・雰囲気』を通じてアニマの輪郭や断片を推測することができる。

グリム童話『忠臣ヨハネス』と理想的・陶酔的な異性像を示すアニマの元型:1

アニマ(アニムス)の元型が反映されたイメージや異性像は、人間の理想や情欲を激しく揺さぶり刺激して陶酔(没頭)させる、すなわち『心・魂を奪い去るほどの影響力』を振るうことによって、自分とアニマとの幻想的な一体感に至高価値があるような錯覚を引き起こすのである。その意味で、アニマ(アニムス)の元型は、人間を幸福にすることもあれば不幸にすることもあるアンビバレンツ(両価的)な特徴を持っている。

アニマ(アニムス)の元型イメージとの関わり合いが、新たな可能性の境地を切り開いてくれることもあれば、ファム・ファタルな美女に誘われ今ある安定や秩序を完全に壊してしまい、自分や周りの人々・家族をどん底に突き落としてしまうこともあるのである。

既存の家族・夫婦の安定的秩序や道徳的規範が『浮気・不倫(抗いがたい魅力を持つ別の異性像にのめり込んで今ある大切なものを捨てさせる)』によって崩される不幸も少なくないが、道徳や常識を踏み外すような危険な挑発・誘惑に逆らえず魅了されてしまう時には、アニマ(アニムス)の理想的な元型のイメージがどこかしら人間の心に揺さぶりをかけているのかもしれない。

アニマの理想的・陶酔的な女性像に誘われてそれを手に入れようとする時、男性は『創造・飛躍』『破滅・堕落』かの両極端な選択を強いられているような情況に追い込まれやすい。

精神内界の無意識領域にあるアニマの女性像が大きく強くなりすぎると、男性は往々にして『本来やるべきこと(社会的・道徳的な義務や常識)』よりも『女性との刹那的・快楽的な行為』を優先させてしまって破滅しやすくなるが、この実際の事例として『浮気・不倫・性依存(恋愛依存)・ストーカー・セクハラ・性犯罪』などを想定することができるだろう。

グリム童話『忠臣ヨハネス』では、家臣のヨハネスは『老王の遺志』と『新王の願望』の板挟みのジレンマに悩まされるが、行き止まりの部屋を新王(息子の王子)に見せてはならないという老王の遺言を守ろうとしたヨハネスは、新王にとってはいずれ乗り越えるべき『父親のイメージ』にもなっている。

背伸びしてヨハネスの肩ごしに黄金の館に住む王女の絵姿を盗み見た新王は、この生命をかけてでもあの王女(女性)を手に入れてみせると燃え盛る恋心をヨハネスに宣言する。このヨハネスに対する新王の宣言は、『アニマに魅了されて抵抗できない男の盲目的な姿』であると同時に『前代の老王の定めた規範・秩序を自分の代で乗り越えていくというある種の王殺しのメタファー』にもなっているのである。

老王との約束を破ってしまった家臣ヨハネスだが、今度は若き新王の願望充足を手伝うことに決めて、黄金が好きな王女を手に入れるために、黄金細工を売る商人の姿に変装して近づき、そのまま自国に連れ去れば良いと新王にアドバイスする。このアドバイスに従って黄金細工売りの商人に変装した新王とヨハネスは、遂に黄金の館に住む王女を連れ帰ることに成功する。

商人に黙れた王女は嘆き悲しむが、商人の正体が王だと分かると喜んで、王の結婚のアプローチを受け容れるという展開になる。これは一見するとハッピーエンドの展開なのだが、この王女は新王に『新たな不運・危険』をもたらす両価的な存在でもあり、忠臣ヨハネスはその不運・危険を防ぐために捨て身の献身をするのである。

家臣ヨハネスは老王との約束を破って、若き新王を行き止まりの部屋の中に入れて『美しい王女の絵姿(アニマの元型のイメージ)』を見させ、更には新王と王女を結びつけるために『黄金細工売りの商人に変装する作戦』を新王にアドバイスする。

家臣ヨハネスは老王の『意識の価値観(既存の規範・秩序の維持)』『無意識の価値観(アニマの元型に接近することによる新たな創造・喜びの獲得)』の葛藤を、新王をバックアップすることによって解消するトリックスターの表象として描かれている。

トリックスターの元型を反映した人物(キャラクター)はさまざまな神話や伝説、物語に登場するが、トリックスターというのは『破壊と創造の担い手となるいたずら者・道化・ペテン師』であり、どこか真剣味に欠けていて悪ふざけやトリック(騙し)の仕掛けをしながら、既存の秩序・権威・価値をユーモラスに破壊していくのである。

既存の常識的な上下関係や権威主義を転倒させるのがトリックスターの役割であり、『忠臣ヨハネス』におけるヨハネスも、古い常識的な規範性・秩序性(老王の時代の常識)を破壊する手助けをして、商人に変装して王女を騙して連れ去るというトリックを用いることで、新たな世界や価値観の実現(新王と王女の結びつきによるアニマ獲得の体験)を成し遂げている。

トリックスター(いたずら者・道化)の元型のイメージを反映したキャラクターは、ある時にはただいたずらや悪ふざけ、トリックの仕掛け(騙し)をするだけの反骨者・破壊者に過ぎないが、ある時には『破壊・騙しの後の意図しない創造・建設』を成し遂げてしまう時代・常識の変革者(おどけた英雄的人物)としての性質を帯びることになる。

トリックスターは『真面目で規範的・常識的なだけの秩序』を転倒させることによって、『世界の一面性の偏り(物足りなさ・変化のなさ)』を修正するおどけた存在であり、『正(真面目)と負(悪ふざけ)を合わせた世界の全体性』を回復して古いものを新しいものへと転換していく革新や変化の歴史的役割を担っているのである。

トリックスターは王様や将軍などの実力のある権威者に逆らう反骨者として描かれることも多く、その末路は袋叩きや処刑・虐殺などの悲惨な目に遭わせられることも多い。

『忠臣ヨハネス』における英雄的なトリックスターであるヨハネスは、『カラスが予言した新王と王妃の危険を防ぐための忠誠』を尽くすのだが、『新王の信頼を失うかもしれない忠誠の示し方(王妃の胸から三滴の血液を吸い出して吐くなど)』をしなければならず、新王がヨハネスの絶対的な忠誠心を疑ってしまったことで、最後は遂に忠臣ヨハネスは石火して石像になってしまったのである。

ヨハネスに対する後悔・贖罪の念に駆られた新王と王妃は、石像となったヨハネスを再び蘇らせるために、自分たち二人の子供を殺してその血液を石像に塗らなければならない(最終的には奇跡で子供は生き返るが)という苛烈な選択を突きつけられることになるが、その苛烈な選択は忠臣ヨハネスのそれまでの献身・貢献に報いるべきはずの新王が『ヨハネスを信用してやれなかったこと(ヨハネスの裏切りや悪意を想像してしまったこと)』によって生み出された贖罪の義務でもあった。


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