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zoom RSS グリム童話『忠臣ヨハネス』と理想的・陶酔的な異性像を示すアニマの元型:1

<<   作成日時 : 2016/12/11 21:01   >>

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グリム童話の『忠臣ヨハネス』では、死を目前にした老王が家臣のヨハネスに、『お前が父親代わりになって王子の後見をしてくれれば、安らかな眠りにつくことができる』と語り、ヨハネスを国家の秩序・規範の暫時の継承者に指名するのだが、王はヨハネスに『王子に長廊下の行き止まりにある部屋の中だけは見せてはならない』と遺言した。

だが禁止・禁忌はいずれ必ず違反されてしまうものであり、人間は禁止されればされるほどに好奇心や想像力を掻き立てられて『禁止・禁忌の違背の誘惑』に抗えなくなるとC.G.ユングも語っている。

C.G.ユングのアニマの元型(アーキタイプ)とジェームズ・フレイザーの『金枝篇』の王殺し

禁止されている行為やモノの先には『大きな危険・危機』が待ち構えているが、禁止を打ち破ろうとする好奇心が『危険に呑み込まれる破滅・崩壊』をもたらすか『危険を克服した成功・幸福』に行き着くかは事前には予測できない。投資においてリスクのないリターンがないように、予定調和的なリスクヘッジをするだけでは、ギリギリの現状維持はできても、『既存秩序を刷新する新たな経験・喜び』を得ることはできないのである。

王が王子に対して入室することを禁止した『廊下の行き止まりにある部屋』に隠されているのは、王自身も魅惑されてのめり込むことを恐れた『黄金葺きの館に住む美しい王女の絵(絵姿)』であり、この絵に描かれた王女はC.G.ユングのいうところの『アニマ』として機能しているのである。

王は王子がその王女の絵姿を一目見てしまえば、美しい王女の姿に惚れ込んで耽溺してしまい、何が何でもその王女を手に入れたくなってしまうことを知っていたが、『アニマへの没頭・耽溺』によって既存の規範性・秩序性に支えられてきた王国の存続が危うくなることを恐れたのである。老王もまた自分自身がその王女の強い魅力に抗えないことを知っており、知っていればこそ王女の美貌の輝きに満ちた絵姿を封印して目にしなくても良いようにしていたのである。

黄金葺きの館に住む美しい王女の絵を捨てずに持っていた老王には、『王女に魅了されて王国の秩序・存続が脅かされてしまう不安・恐怖』『アニマである理想の王女を手に入れて新たな幸福・喜びの可能性を実現したい願望・期待』との矛盾する欲求のジレンマがあった。

老王は王子の後見人として補佐してくれるように頼んだヨハネスに『王子に絶対に行き止まりの部屋の中を見せてはいけない』と遺言したが、この強い禁止・禁忌の遺言は『パラドキシカル(逆説的)な挑発・誘惑』としても機能している。本音の部分でアニマである王女を手に入れたいという老王の欲望を、代わりに王子が実現してくれるのではないか(禁止を破って危険を乗り越え新たな可能性を切り開いてくれるのではないか)との矛盾する期待感がそこに宿っているのである。

老王の死後、忠臣ヨハネスは老王の息子(王子)の新たな王に対して忠誠を誓って仕えることになる。ヨハネスは初め亡くなった老王の遺言を守って、『行き止まりの部屋』を若い王に見せないようにしていたが、遂にどうしても禁止された部屋に入りたいという若い王の懇請と欲望に打ち負かされて入室を許してしまう。

黄金の館に住む美しい王女の絵を、ヨハネスは王子に何とか見せないようにしようとして、身を挺して立ちふさがる。だが王子は爪先立ちになって背伸びして王女の絵を盗み見てしまい、あまりの美しさと魅力に圧倒されて気絶してしまう。目覚めた王は王女の絵姿の虜(とりこ)になってしまい、家臣ヨハネスにその激しく燃え盛る恋心を訴えて、必ず王女を自分のものにしてみせると意気込むのである。

黄金の館に住む美しい王女の絵姿は王にとっての『アニマ』であるが、男性の多くは心の中に『自分にとって理想的・陶酔的な女性像のイメージ』を抱えていて、普段はほとんどそのイメージを想起することはないのだが、『理想的・陶酔的な女性像のイメージに近い実際の女性(知覚した途端に半ば反射的に激しい欲望・劣情・陶酔を刺激されるようなずっと見ていたくなるような女性)』を目にすると、アニマによって心理・行動が半ば無意識的にコントロールされてしまうことがある。


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