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zoom RSS C.G.ユングのアニマの元型(アーキタイプ)とジェームズ・フレイザーの『金枝篇』の王殺し

<<   作成日時 : 2016/12/11 20:59   >>

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分析心理学を創始したカール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung,1875-1961)は、人類に共通する普遍的無意識(集合無意識)の内容を示すイメージとして『元型(アーキタイプ)』を考えた。

元型にはグレートマザー(太母)やオールドワイズマン(老賢者)、シャドウ(影)をはじめとして色々な種類があるが、人間の人生の生き方や価値観の大枠を規定して大きく行動を左右するものとしてアニマとアニムスの元型がある。

アニマやアニムスは、人間の男女にとって重要なライフイベントや行動選択の動機づけ(あるいは発達課題の達成)になりやすい恋愛や結婚、自己犠牲(忘我・献身)、破滅・堕落に関係しやすい『異性像の元型』である。男性にとっての理想的な女性像のイメージとしてアニマがあり、女性にとっての理想的な男性像のイメージとしてアニムスがあるが、古来からさまざまな神話・伝説・物語(寓話)のヒロインやヒーローとしてその典型的なイメージが示されてきた。

グリム童話『忠臣ヨハネス』では、一つの時代が終焉して既存の秩序・規範が崩壊する(新たな秩序・規範が生成する)『王の死・王位継承』を起点として、死せる王の遺志を継いだ忠臣ヨハネスが、『次の王のアニマ(狂気的な愛・理想の対象となる姫)との遭遇』を防ごうとする。

中世以前の王・皇帝は、時間(御世の一つの時代)を支配する擬制された神のような存在であり、政治的な統治者であるだけではなく、一つの国家・集団・部族の存続を担保する『秩序・規範・神聖(宗教)の有形の体現者』でもあった。

古代から中世にかけての王の死は『国・部族の存続性(安定秩序)にとっての危機』でもあるから、『王位の迅速かつ確実な継承』は国・部族にとって極めて重要な儀式・行事となり、原始的な未開部族においては『王の病気・自然死(王の秩序の緩やかな衰退による混乱・破局)』を回避するために『象徴的な王殺し(王の殺害)』が行われることもあったという。

原始部族や古代国家の『王殺し(王の殺害による王位継承)』の風習・制度については、イギリスの社会人類学者・宗教学者のジェームズ・フレイザー(1854-1941)『金枝篇(きんしへん)』で、その神話的・宗教的・呪術的な王殺しのエピソードを蒐集している。

フレイザーの『金枝篇』はフィールドワークではなく文献・史料・口碑伝承の研究によって、未開社会・原始的部族の神話・呪術・信仰を集成して分析したものだから、後世において(実際に自分で現地に赴いて人々に接して調査したわけではないという意味で)『書斎の学問・安楽椅子の人類学』という批判もあったが、古代の信仰・呪術・禁忌の伝説や事例をここまで大量に集めた研究は類例がないとされる。

標題の『金枝』とは古代イタリアのネミにいた未開部族で『森の王の資格』とされていたヤドリギのことであり、女神ディアナ信仰と関係した『王殺し(祭祀王殺し)の風習』があったのだという。森に生えていた聖なるヤドリギには、逃亡奴隷以外の誰も触れてはいけないという禁忌があり、次代の森の王(祭祀王)になるためには『ヤドリギから金枝を手折ること』と『現在の森の王と戦って殺すこと』の二つの条件を満たさなければならなかった。

ジェームズ・フレイザーは、前代の王(政治的・宗教的な権威者)を殺害するという『王殺しの風習』が世界各地に存在していたことを指摘したが、時代が下るにつれて王位や神聖権威は『世襲制』に移行していき、『次世代の王(王子)の資質・能力の適格性』『未熟な新任の王を補佐する忠臣(側近)の役割・忠誠』のほうが問題になってくる。

グリム童話『忠臣ヨハネス』では、世襲の王政において年老いた王が臨終の前に、忠臣ヨハネスに若くて未熟な王子(次代の王)の補佐を依頼することから始まるのだが、『執政を担いにくい若年・未熟な王子』を親族・忠臣が補佐する仕組みは日本の朝廷の律令制でも『摂政・関白』というものがあった。

最近、高齢となって公務遂行の困難を心配されている今上天皇の『譲位(退位)の問題』がニュースで取りざたされることもあるが、天皇は摂政よりも譲位を望んでおられるようである。現代日本の天皇制は実権のない『象徴天皇』なので摂政・関白・上皇などの補佐があっても大きな問題は起こりにくいと推測されるが、古代から中世にかけては摂政(関白)や忠臣に補佐させて後事を託す方法には『権力権威の分裂・補佐役の裏切りや謀反』といった問題もあっただろう。


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