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zoom RSS 福岡市の原三信病院にタクシーが突っ込んだ交通死亡事故1:ハイブリッドカーの回生調整ブレーキ

<<   作成日時 : 2016/12/06 06:19   >>

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福岡市博多区の原三信(はらさんしん)病院のガラス張りのロビーに、64歳の運転手が運転するタクシーが突っ込み10人(うち3人が死亡)が死傷する大きな交通死亡事故が起こった。亡くなられた一人は患者の50代男性で、二人は40代の夫婦で小学生のお子さんが一緒にいる時に突然の事故に巻き込まれてしまったという、ご冥福をお祈りすると共にあまりに深刻な事故の結果に慄然とさせられた。

事件発生当初は、最近集中的に報道されている高齢者ドライバー(64歳は定義的には境界的な年齢だが)の『ブレーキとアクセルの踏み間違え事故』かと思われたが、事故の詳細が伝えられるにつれて、従来の踏み間違え事故のケースとはかなり状況が異なる種類の事故であることが分かってきた。

従来の踏み間違え事故の多くは、『駐車時(バックも前進もある)の最後のブレーキの踏み込みの時点』か、『瞬間的にブレーキと間違えてアクセルを踏んで加速してしまい、パニックになって更に強くアクセルを踏みこんだ時点』で起こっている。

いずれもアクセルペダルをブレーキペダルと本気で思い込んで踏んだ時に起こった事故である。ブレーキと思い込んで何度もペダルを踏んでいるのに止まらないので焦ってパニックに陥り、思い切り『ブレーキのつもりで踏んでいるアクセル』を強く踏み込んで人・建物・店舗に突っ込んでしまうのである。

しかし、今回の事故で自動車運転処罰法違反(過失傷害)容疑で逮捕された64歳のタクシードライバーの男性は、『(病院の手前約350メートルにある)公園を出発した後からブレーキが効かなくなった』と証言しており、『ブレーキの踏み間違え』に関する本人の発言は全く出ていない。

公園のトイレを利用するために、いったん公園周辺に駐車したというからその時点までブレーキが効いていたことは確実なのだが、車に戻って運転を始めるとすぐにブレーキが効かない状態になっていたというのが事故を起こしたタクシードライバーの話である。

事故を起こした車種は世界でアクアと並んで最も売れているハイブリッドカーのプリウス(現行モデルより一つ前の3代目プリウスZVW30系)であり、仮に本当にブレーキが効かないばかりか、ブレーキを踏んでも逆に加速する(目撃者の証言で病院に突っ込む直前に加速したという話もあるが約350mの直線上を等速で走ってきた可能性もある)という車両の欠陥があったのなら販売台数の多さからしても大変な問題になってしまうだろう。

現状ではブレーキが全く効かず、ブレーキの踏み込みで加速して突っ込んだ類似事件(日本国内でのブレーキの致命的欠陥が発生したプリウス30系の車両の報告)は無いが、プリウスに低速走行時にブレーキが効きにくくなったり抜けたりするブレーキトラブルは過去に起こったことがあるようだ。2009〜2010年にアメリカで提訴されたプリウスにブレーキシステムの欠陥があるとする損害賠償裁判は、最終的にトヨタが勝ちプリウスに減速できないような致命的欠陥はなく、運転者の操作ミスとフロアマットのめくれ上がりが原因だったという判決が出されている。

2010年にプリウスの特定条件下でのブレーキの効き具合に関連するリコールがあったが、ブレーキのABS制御プログラムに不具合があったのでこのプログラムの内容を修正するというもので、(ABSが作動しない)通常の街中の路面状態でブレーキが効かないというような致命的なものではなかった。

プリウスやアクアなどのハイブリッド車に搭載されているブレーキシステムは、車の運動エネルギーを自然なエンジンブレーキで回収して電気エネルギーに転換する『回生協調ブレーキ』という特殊なものである。

プリウスのブレーキはこうなっている,汎用部品の活用で回生協調機能を低コスト化

簡単にいえば『回生ブレーキ(アクセルから足を離すと自動的にエンジンブレーキのように作動)』と『一般的な油圧式ブレーキ(ブレーキペダルを踏むと作動)』を組み合わせて、その両者のバランスと切り替えを運転手のブレーキの踏み具合によってコンピューターが調整するというものである。

ブレーキペダルからの油圧配管が、切り替えソレノイドバルブによって、ブレーキ配管から遮断されている『ブレーキ・バイ・ワイヤ』という方式であり、プリウスのブレーキは従来の物理的にブレーキオイルを踏み出して止める油圧式ブレーキではなく、ブレーキペダルを踏む速度や角度などをコンピューターがセンサーを経由して判断するという、完全に電子制御されたブレーキシステムなのである。

ブレーキの踏み具合・踏み応えそのものも、物理的な油圧式ブレーキの反力ではなく、ペダルストロークシミュレータという部品を配置して人為的に作り出しているものだという。

ブレーキが全く効かなかったという運転手の証言が仮に事実なら、『回生協調ブレーキシステム』における『ブレーキ・バイ・ワイヤ』の電子部品かソフトウェアに何らかの故障が発生して、ブレーキペダルを踏んでも全く踏み応えがなくてブレーキが作動しなかったという可能性は想像される(そうなった場合にブレーキランプまで点灯しなくなるかは分からないが)。

だが、車の基本性能と安全運転にとって最も重要なシステムであるブレーキがそこまで何の反応もないほど完全に壊れる設計になっているのかは自動車工学・電子機器の専門的な問題でもあるが、事後の詳細な検証(ドライブレコーダーなりイベントレコーダーなりの分析)を待たなければ分からないだろう。


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福岡市の原三信病院にタクシーが突っ込んだ交通死亡事故2:ヒューマンエラーか車の故障か
常識的に考えれば、日本国内で何百万台も走っているプリウス30系の他の車両に類似の事故回避不能な致命的なブレーキトラブル(ブレーキが完全に効かなくなり逆に加速する)が起こっていないことから、運転者の踏み間違えのヒューマンエラーや知覚の錯誤(踏んだペダルを間違って記憶する脳機能の錯覚)、意識状態の変性・喪失を生む何らかの精神疾患・脳機能障害(認知症・てんかん・解離・脳の器質的問題など)の可能性のほうが高いということにはなるのだろう。 ...続きを見る
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2016/12/06 06:22

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