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zoom RSS 前野隆司『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』の書評:人間はどうすれば幸福を感じられるのか?

<<   作成日時 : 2016/12/30 15:49   >>

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現代を生きる人間の目的の中心にあるのが『幸福追求』であり、多くの人が幸福になりたいと願い、不幸になりたくないと不安になっている。主観的な幸福感を実感することだけが、人間の生きる意味や価値なのかというと一義的に定まるものではないと思うが、それでも誰もが『幸福追求のプロセスとその帰結(現状の実感)における迷い・悩み・苦しみ』を背負っているのが現代である。

本書『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』は、幸福心理学や質問紙法の心理テストの因子分析を前提にして、人間の主観的幸福感を規定する要因と、できるだけ不幸にならずに幸せになるにはどうすれば良いのかを実践的な方法論を通して書いている本である。

人間の主観的幸福感に影響を与えるものには『外的要因』『内的要因(心的要因)』があるが、“職業・金銭・地位・健康・生活環境”などの外的要因に基づく幸福感は長く持続しないことが多く、また自分自身の行動や努力では思い通りにコントロールできないことが多い。

認知理論に基づく認知行動療法では、『自分・物事・他者・状況をどのように認識して解釈するのか=出来事や自他の状態をどういった意味を持つものとして受け止めるのか』という『認知(物事の受け止め方)』をポジティブに変容させることで、気分・感情を改善しようとする。

本書の実践的な幸福学の基本セオリーも、『外的要因』であるお金・権力・モノを豪華にしたり強力にしたりするのではなく、『自分自身にとってその行動・相手・結果がどのような肯定的な意味・価値を持つのか』といった自分の内的要因の向上・充実・価値づけに重点が置かれているのが特徴である。

人間の人生のマクロな幸福実感に対して大きな影響力を持っているものとして、『結婚(家族)・健康・信仰』の3つがあると書かれていますが、これらは『上手くいっている結婚(家族)=孤独や空虚の緩和』『病気のない健康=苦痛・不快やできないことの少ない爽快な状態』『生きる目的や価値基準を与えてくれる信仰=人生や人間関係における苦しい葛藤・迷いの解消』と考えれば(無論その三点だけが幸福感を構成する要素ではないですが)納得のできるものだと思われます。

著者の前野氏は第一章で、自分が幸福になるためには収入や財産、地位がなければならないと間違って思い込んでしまう『フォーカシング・イリュージョン(幻想の幸福に向かおうとする認知的な焦点づけ)』について指摘しています。人間が主観的に不幸になってしまう一つの要因が、本当はそれほど絶対に必要ではない幸福の条件・縛りに自分だけが執拗にこだわってしまうフォーカシング・イリュージョンなのでしょう。

主観的幸福感が長続きするか短期間で消えてしまうかの違いとして、経済学者ロバート・フランク『地位財(positional goods)』『非地位財(non-positional goods)』の違いを上げています。

地位財は主観的幸福感の持続時間が短く、非地位財は長いというわけですが、地位財は『周囲との比較により満足を得るもの=所得・地位・財産・モノなど』、非地位財は『他人との相対比較とは関係なく幸せが得られるもの=健康・自由・自主性・愛情・社会への帰属意識・良質な環境など』とされています。

地位財というのは、実際的な経済的利益や社会的地位とつながっているので、『個人の生存適応度・繁殖適応度』を上げてはくれるのですが、『自分自身の主観的な幸福感』を長続きさせるだけの効果は乏しい(初期の幸福感を長続きはさせないが不幸を感じるとも言えないのですが)というわけです。

非地位財というのは、『他人には価値や意味がなくても、自分自身にとっては価値や意味があるもの』と言い換えることもできるでしょうが、自由・健康・愛情などはその典型的なもので、他人にとって自分が自由で健康であるか(誰かに深く愛されてつながっているか)どうかはどうでもいいことかもしれませんが、自分にとっては非常に高い価値や喜びを生み出すものとなっています。

自分と他人を殊更に比較しない生き方や楽しみ方が、自分自身を幸せにする一番の近道であるというのは、私たちの日常生活の経験則とも合致する部分があるなと思わせられます。

本書は人間の主観的幸福感を生み出す中核的な因子を、心理テストに基づく統計的解析によって『幸せの四つ葉のクローバー』として4つ上げています。

第一因子・『やってみよう!』因子=自己実現と成長の因子

コンピテンス

社会の要請

個人的成長

自己実現

第二因子・『ありがとう』因子=つながりと感謝の因子

人を喜ばせる

愛情

感謝

親切

第三因子・『なんとかなる!』因子=前向きと楽観の因子

楽観性

気持ちの切り替え

積極的な他者関係

自己受容

第四因子・『あなたらしく!』因子=独立とマイペースの因子

社会的比較志向のなさ

制約の知覚のなさ

自己概念の明確傾向

最大効果の追求

主観的幸福感を感じるための各因子の具体的内容とその実践的な応用の仕方は、ぜひ本書を手に取って読んでみてください。

この4つの因子はフォーカシング・イリュージョン(幸福追求のプロセスにおける間違った幻想的な焦点づけ)を起こしやすい『一見複雑に見える人間の幸福追求の方法論』を、分かりやすい普遍的な因子として抽出してくれていますが、『どうすれば自分が幸福を感じやすいのかのダイレクトな道しるべ』になってくれるのではないかとも思います。


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