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zoom RSS 森田療法の生の欲望に基づく“囚われ”とエニアグラムの性格の本質に基づく“囚われ”

<<   作成日時 : 2013/04/16 11:22   >>

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エニアグラム(enneagram)は古代のアフガニスタン一帯で考案され8世紀頃のイスラーム圏で再発見された性格心理学で、神秘思想家のゲオルギィ・イワノヴィッチ・グルジェフによってキリスト教圏にも伝えられることになった。エニアグラムでは便宜的に性格類型を9つのタイプに分類しているが、エニアグラムの性格テストで自分自身のタイプを知る目的は、『客観的な自己理解・自己洞察の深化』『より良い自分や環境適応への変化の動機づけ』である。

臨床心理学やカウンセリングへの応用可能性として各種の性格心理学の仮説理論を考える場合には、『現在における自分の特徴や傾向の理解』『過去における自分の問題や悩みの原因』『未来における自分の成長や問題解決』といった各時間軸ごとの課題が浮かび上がってくる。

性格テストを受けてみて自分がどのタイプに当てはまるのかを確認することも、自分に対する興味・好奇心を満たす効果があるのだが、心理臨床やカウンセリングでは『自分のタイプの長所・短所』『自分の現在・未来・過去の目的意識(解決したい悩み・問題)』に対応させながら、これからどのように変わっていくかを考えることがとても大切である。

森田療法を神経症・神経衰弱の治療法として開発した森田正馬(もりたまさたけ,1874-1938)は、身体の不調や精神の違和感に注意力を向け過ぎることで、より心身の異常な違和感が強調されて悪化するという『精神交互作用』を発見した。

この精神交互作用は注意と感覚(気づき)が悪循環を起こすという作用で、特に自分が心臓疾患・がんなどの何か深刻な病気に罹っているのではないかという不安につきまとわれるヒポコンドリー(心気症)の症状形成機序を説明したが、森田正馬が治療方略として強調したのは『囚われ(執着)からの解放』『あるがままの自分を実感・動作として受け容れよ』ということであった。

エニアグラムの性格理論を用いたカウンセリングの一つの目標も、『囚われ(執着)からの解放』であり、それぞれの性格タイプに特徴的に見られる『自分の問題状況や人間関係を悪化させる囚われ』からどのようにして自由になるか、悪循環に陥ると分かっている認知・行動の囚われを変えていけるかがポイントになってくる。

森田療法を用いた心理臨床のケーススタディ(事例研究)では、自分の心臓のドキドキという音が気になって仕方がなくなり自分が重症の心臓病だと思い込む『心気症(ヒポコンドリー)』、自分の鼻の高さや形が気になって囚われてしまい自分が人前に出られないくらい醜い外見をしていると思い込む『自己醜形恐怖(身体醜形障害)』などがある。自分の体臭・おならの臭いが非常に気になってしまい、どんなに風呂に入っても臭いが取れないと悩み外出困難になっていく『自己臭恐怖症』という特異な自己認知障害の事例も取り上げられている。

固定観念や強い信念(思い込み)によって生み出される『囚われ(執着)』は、客観的な自己認知や状況認識を歪ませてしまい、思いがけない精神疾患の発症や対人関係のトラブル、生きにくさの感覚につながりやすい。人前で話したり行動したりする社会的場面において、非常に強い苦痛・緊張・不安を感じて日常生活に支障が生じる『社会不安障害・社交不安障害(social anxiety disorder)』もまた、自分自身が他人に悪いように否定的に見られているはずという囚われ(執着)によって悪循環のループにはまり込んでしまっているのである。

森田正馬は『あなたはあるがままで良い、あるがままであるより他に仕方がない(治そうとしても治らないものは仕方がなくそれが普通であると思うより他ない)』という囚われない自然体であることの理(心身のバランスの取れた健康に近づく王道)を提唱したが、それと同時に『あるがままでなければならないという義務的・拘束的な囚われ』に陥りやすい問題に警鐘も鳴らした。

解脱(悟り)を目指す仏教の修行者が、『煩悩・執着・俗欲に囚われてはいけないという意識』を強めれば強めるほど、『執着してはいけないという執着・囚われてはいけないという囚われ』に自己撞着的に絡め取られてしまう問題は兼ねてより指摘されるが、客観的に見れば取るに足りない些末なことに囚われてしまう神経症的な精神疾患のケースでも、『あるがままであることへの逆説的な囚われ』に苦しめられる可能性は少なからずあるだろう。

森田正馬は注意と感覚が病理的な悪循環を繰り返す『精神交互作用』だけではなく、このようにありたいという理想の自分とそうではないという現実の自分のギャップに苦しめられる『思想の矛盾』、今よりももっと価値のある素晴らしい自分になることに拘る『生の欲望』によって、神経症的な囚われの病理は悪化していくと考えた。

エニアグラムを用いた性格心理学のカウンセリングでも、森田療法の『囚われからの解放=あるがままの自分の実践』、認知療法の『非適応的な認知(考え方)の変容=認知の歪みの修正』を積極的に導入することで、自分の性格タイプを前提にした問題解決や自己変容を進めやすくなっていく。






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