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zoom RSS 橋下徹・大阪維新の会の『維新八策・大阪都構想』は何を目指すか2:行政機構改革とトップの権限強化

<<   作成日時 : 2012/04/11 17:16   >>

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大阪や国の『体制(仕組み・システム)』を根本的に刷新しようとする“維新”とは何かについて、ブレーンの堺屋太一は『国鉄のJRへの分割民営化・電電公社のNTTへの分割民営化の成功事例(赤字から黒字転換・サービス水準の向上)』を引き合いにだし、橋下徹は『コンピューターのOSのバージョンアップの必要性(古いOSでは新しいソフトウェアは動かない)』を喩えとして用いている。

日本の近代化とアジア太平洋戦争の敗戦を経て、重化学・自動車・土木建設・鉄鋼機械の基幹産業による高度経済成長の段階(規格型商品の大量生産・大量消費の時代)までは機能していた『明治維新以来の国家の体制的・組織的なシステム(仕組み)』が時代や環境に合わなくなり機能不全を起こしている。だから、小手先の『人事・政党・政策』を変えてみても日本の抱えている構造的問題は解決できず、それを解決するためには『根本的な体制・システム(仕組み)の変革』をすること(=平成の大阪維新・日本維新)が必要になるというロジックである。

橋下徹・堺屋太一が、時代遅れになった旧態依然のシステム(体制的な仕組み)と言っているのは『政府が地方自治体を統制する中央集権体制』であり『東京だけが政治経済・文化・流行の中心となる東京一極集中』であり、『規格型大量生産とその労働形態にフィットした企業経営・教育制度』であるが、それらを変革するための具体的な方法論については十分に議論して確立されているとは言いがたいかもしれない。

地方自治改革としての『大阪都構想・道州制』は確かにアイデアとしては面白い試みであり、国に地方が従属して権限も財源も奪われているという現状を変えていくための試金石になるし、『政策・人事・政党ではなく政治・国家のシステム(仕組み)そのものを変革する』という大阪維新の会の目的意識そのものは個別政策の是非は別として評価すべき部分がある。また財源の使い方や政治の意志決定の権限について、“near is better(近いところにある組織や人が決めるほうが良い)”という原則は一定の普遍性を持っている。地方や住民、教育現場の実態を知らない中央官庁の官僚が財源・権限を掌握するという、ガチガチの明治以来の中央集権体制は段階的に改めていく必要がある。

『個人の豊かさの向上→基礎自治体の財源・権限の増加→広域自治体の財源・権限の増加→国家の財源・権限の増加』という政治目標の優先順位についても、それを本当に政策として落とし込むことができるのであれば賛成できるものであり、『個人・地方・国の自立性と責任感』を高めていかなければ、今後の日本の国家財政や社会保障制度は維持できないという見方は的を射たものである。橋下徹個人の政治思想については『日の丸や君が代斉唱の強制・天皇の元首制・憲法9条の改正(自衛隊の自衛軍としての法的な位置づけ)』など保守的な部分が見えたり、『TPP参加賛成・年金の掛け捨て制・ベーシックインカム・相続税100%』など自由市場主義的な部分や社会主義的な発想が見えたりしていて、『一貫した特定のイデオロギー』に基づく政治を目指しているわけではないように思える。

橋下徹の政治改革の本質は、『トップダウンで迅速に決定できる首長(リーダー)の権限強化』『成長戦略としての個人(地域)の自立及びコスト削減・競争原理の重視』にあり、そこに『立法過程・行政機構・公務員制度(雇用待遇)のシステムの変更』を加えたものであり、独断的・独裁的であると同時に機能的・実際的な側面を持っている。だが、橋下徹市長はシステム(仕組み)の抜本的な改革を急ぎ、マスメディアや世論の興味関心を集めやすい“(仮想敵を想定した)劇的・刺激的な改革案”を次々とぶち上げているため、『現実の政治情勢・財政状況・利害調整における実現可能性』の部分では多くの疑問・懸念を感じざるを得ない。

過去の経緯や思想に縛られない自由で革新的な発想である点は評価できるし、実現すれば理想的な状態に近づくかもしれないというアイデアは多いのだが、『維新版・船中八策(維新八策)』には憲法改正が必要な一院制・首相公選制の課題や年金制度の意味合いを変えるような『年金掛け捨て制』、国民の労働規範(仕事観)に影響するベーシックインカムなどが含まれており、短期的にそれらの目標を達成することは極めて難しいだろう。

今でてきているこの『維新八策』は、飽くまで衆院選の政権公約の“叩き台”として考えられたものなので、これから具体的・詳細的な内容は変更される可能性もあるだろうが、『競争原理と個人の自立の重視・システム(仕組み)の革新・非効率で不公正な既得権の破壊』という原則の部分は変わらないのではないかと思う。従来、橋下徹の示す政治改革(システム変革の維新案)では『トップの権限の強化・市場主義的な競争原理・既得権の破壊』ばかりがクローズアップされていて、『弱肉強食の競争原理の徹底・弱者の切り捨て・社会福祉の削減』が行われるのではないかという懸念が強く持たれてきた。

しかし、維新八策の社会保障の項目で『給付つき税額控除(負の所得税)・ベーシックインカム・基礎自治体の住民サービスへの特化・相続税100%・富裕層への資産課税・年金掛け捨て制』などのアイデアが出されており、それらは“格差縮小・弱者への給付・財の再分配・世代間格差の緩和”につながりやすい政策であるため、橋下流の経済政策でも『一定のバランス感覚(それぞれの政策に賛否はあり、年金掛捨てなどは公正性の問題もあるが)』が考慮されはじめたとは言えるのだろう。






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