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zoom RSS キリスト教の普遍性を求める世界観とヨーロッパの大航海時代1:ポルトガル・スペインの隆盛期

<<   作成日時 : 2012/04/18 17:28   >>

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現代の世界秩序や社会制度の大枠を規定しているのは“近代”の価値観であり、ヨーロッパに発した近代的価値観の多くは『キリスト教』にその起源や原動力を持っている。世俗的な法治主義の古代ローマ帝国を宗教化していったキリスト教の教義・世界観は、千数百年にも及ぶ『中世の迷信的・信仰的な停滞と抑圧』を生み出したとも言われるが、それと同時に“絶対者である神・普遍的な真理・プロテスタンティズムの倫理(天職・勤勉・蓄積)”といったキリスト教的な観念や目的性が、『近代化』を推進する原動力として働いた。

西欧におけるキリスト教が日常生活を不自由にする宗教規範や道徳禁忌のレベルを落として世俗化しはじめると、キリスト教は『科学技術・物質文明・資本主義・自由主義(個人の快楽の容認)』との相性を向上させ、同じ世界宗教の一神教であるイスラーム(イスラム教)の文明圏よりも政治的な影響力を強めたり、経済的な豊かさを高めたりした。

だが近代以前のキリスト教(ローマカトリック)とその聖職者は、『神の栄光と恩恵・福音と真理の伝達・蛮族(異教徒)の教化』などを理由として、領土拡大の世界征服や植民地支配を正当化する役割を果たした。セルジューク朝トルコなどイスラム国に占領された“聖地エルサレムの奪還”を理由にして、1096年からローマ教皇・各国の国王(皇帝)が指揮する『十字軍』の遠征も繰り返し行われたが、十字軍には狂信者・無法者・戦場泥棒も多く含まれており、異教徒(ムスリム・ユダヤ人)に対する暴虐・略奪も行われた。

西欧世界でポルトガルとスペインが覇権国家として繁栄すると、その財政力を用いて“アジア・アフリカ・アメリカ”に至る航路が開拓され、キリスト教の神の恩恵を広げるための新たな『地理上の発見(侵略搾取と海外貿易に伴う巨富の獲得)』が相次ぎ、世界はトルデシリャス条約(1494年)で西欧中心に恣意的に分割されるまでの状況となる。

ポルトガルのエンリケ航海王子の西アフリカ探検(1415年)に始まる『大航海時代』は、バルトロメウ・ディアスのアフリカ南端・喜望峰到達(1488年)、ヴァスコ・ダ・ガマのインド航路開拓(カリカット到達)と香辛料貿易(1498年)を経て、マレー半島・セイロン島を侵略した。1500年にカブラルが南米大陸のブラジルを発見して占領し、1557年にポルトガルはマカオに要塞を築いてアジア貿易・植民地支配の拠点としている。

スペインはフェルナンド5世と王女イザベラがクリストファー・コロンブスを支援して1492年に西インド諸島(バハマ諸島)を発見することになる。その後、アメリゴ・ヴェスプッチが1501年に北アメリカ大陸の本体に到達して、発見者であるアメリゴ・ヴェスプッチの名前にちなんだ『アメリカ』という地名が定着していくのだが、南北のアメリカ大陸には西欧人がインディアンやインディオと呼んだ“ネイティブ・アメリカン”の先住民が先に暮らしていたのであり、アメリカという呼称そのものも西欧中心史観(キリスト教文明の布教性・侵略的拡張性)の現れではある。

スペインは南米大陸のインカ帝国で大勢の人々を虐殺したフランシスコ・ピサロやアステカ帝国を侵略したエルナン・コルテスといったコンキスタドール(征服者)を生み出しているが、当時の南米は金・銀の希少な鉱物資源が豊富であり、南米の支配者となったスペインに一時的に莫大な富をもたらすことになった。

1494年のトルデシリャス条約、1529年のサラゴサ条約によってポルトガルとスペインは『世界の東西分割の仮想境界線』を引いたが、その法的根拠は地上における神の代理人であるローマ教皇(ローマ法王)の認可であり、キリスト教の信仰と権威が大航海時代の探検・覇権・支配を正当化していった。キリスト教と海外進出に随従した教戒師(伝導師)の聖職者は、実質的な海外進出による植民地支配を、キリスト教(神)の恩恵を受けられない不幸な未開の土地への『布教行為(福音・真理・救済の伝導)』として追認したのであり、開戦前に神父が聖書を手に持って異教徒に改宗・改心を迫る儀式的な行為も行われていたという。






■関連URI
大航海時代とスペイン・ポルトガルの最盛期を支えた『非ヨーロッパ世界からの富の流入(収奪)』

中世ヨーロッパの精神的支柱となったキリスト教とスコラ哲学:精神(観念)の実在性と内面(欲求)の自由

キリスト教初期の歴史と聖書の構成:サイトの更新

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