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zoom RSS 境界性・自己愛性のパーソナリティ障害と自己愛の発達1:S.フロイトの二次的ナルシシズム論

<<   作成日時 : 2012/01/22 12:17   >>

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精神分析におけるクラスターB(B群)のパーソナリティ障害(人格障害)の研究は、オットー・カーンバーグの境界性パーソナリティ構造(BPO)の研究が中心になっていますが、BPO(Borderline Personality Organization)の最大の特徴は『傷つきやすさ・精神発達の未熟・対象喪失の不安・気分と対人関係の不安定性・自己否定性』です。

境界例(ボーダーラインケース)という言葉そのものは、1938年にアメリカの精神科医のアドルフ・スターンが考案したものであり、従来の古典的精神分析ではほとんど治療効果が出ない『あらゆる側面において不安定な症例』として注目されました。O.カーンバーグが臨床的概念として考案した境界性パーソナリティ構造(BPO)は『境界例(ボーダーラインケース)』の時代の影響を受けているので、『神経症と精神病の中間領域の人格状態』という意味合いが強くなっています。

しかし、精神病(統合失調症)ほどには現実社会やコミュニケーションへの適応力・理解力が落ちていないのがBPOの特徴であり、『正常な知覚体験と意思疎通・一般的な社会認識と現実感覚』が完全に失われるほどの幻覚・妄想症状が起こったりするわけではありません。

クラスターBのパーソナリティ障害(人格障害)に分類されるものには、『境界性・自己愛性・演技性・反社会性』のパーソナリティ障害がありますが、これらに共通する問題は『自己愛と自他の関係性の調整障害』であるとされ、精神分析の病理学では“自己愛障害”という呼び方がされることもあります。自己愛が強すぎたり偏り過ぎたりしているために、自分と他人との適切な距離感や関係性、依存(頼りにする事)のレベルを調整できないという問題の集合として、自己愛障害(クラスターBのパーソナリティ障害)が形成されるという病理学の図式になっています。

自己愛の理論というと自己心理学の創始者ハインツ・コフート(Heinz Kohut, 1913〜1981)『自己理論』がよく知られていますが、ジークムント・フロイトの時代から自己愛の強さと対象関係(人間関係)の問題は考えられてきました。

自己愛性人格障害のサイトの項目では、精神分析的な自己愛理論を背景において、自己愛の過剰や承認欲求の不全、他者の心情の無視がなぜ起こるのかを書きましたが、精神分析では『幼少期の親子関係のトラウマ(母性剥奪)あるいは過保護過干渉(自律性の発達不全)』“非適応的・非共感的な自己愛”を肥大させるという考え方になります。

しかし現代では、『幼少期・親子関係だけに限定されない対人関係全般のトラウマ』も、自己愛障害の原因論(環境要因)として想定されているので、児童期に友人関係に仲間はずれにされたり、思春期に学校でいじめられたり好きな異性から完全に拒絶されたりといった経験もそこに含まれます。

S.フロイトは性的精神発達理論(リビドー発達論)を前提にして、自己愛のナルシシズムを『乳幼児期の正常な自己愛(一次的ナルシシズム)』『思春期以降の異常な自己愛(二次的ナルシシズム)』に分けて考え、自己愛から他人を愛する対象愛への移行である『本能変遷』が順調に進まないと、さまざまな自己愛障害(現在のクラスターB相当の問題)が起こりやすくなるという仮説を立てたのでした。

『一次的ナルシシズム(一次的自己愛)』というのは、母親(父親)の全面的な愛情と保護、世話がなければ生きていく事ができない乳幼児期に誰もが持つことになる自己愛であり、精神発達段階の面で見ても『自他未分離な状態』にあるのが普通なので、一次的自己愛は『自然で正常な生存欲求の発露』として理解されます。

乳幼児の無力さや母子分離不安に根ざす“一次的ナルシシズム”は、3〜4歳くらいでとりあえず克服されて、『自己と他者との境界線』が段階的にしっかりと引かれていき、他人には他人の内的世界(感情・意図)があって、譲れない他人の都合もあるという現実認識が強化されていきます。

児童期〜思春期以降になると自分で自分だけを愛したり、自分の欲求や願望だけを相手に一方的に押し付けたりという『ナルシシズムの自己愛・自他未分離な欲求の押し付け』は抑制されていくのが普通なのですが、S.フロイトが性倒錯の一種とした思春期以降の“二次的ナルシシズム”が強い場合には、現在でいう『自己愛性パーソナリティ障害・境界性パーソナリティ障害』の問題が発生しやすくなってしまいます。






■関連URI
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自己顕示的なパーソナリティ障害における“虚言癖・演技性の心理”と“他者操作・場の支配の影響”

他者の評価や反応を求めるB群(クラスターB)の人格障害:“特別な自分の価値”を自己顕示する方法の違い

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